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2017年11月04日

今チェコ語を勉強している人がうらやましい(十一月一日)



 自分が日本でチェコ語を勉強していた廿年ほど前と比べて、今チェコ語を勉強している人をうらやましいと思うことがあるとすれば、それはインターネットの普及とデータ送信量の圧倒的な拡大である。90年代の後半は、日本におけるインターネット普及の黎明期で、ネットの利点を紹介し導入を推進するような雑誌や書籍は山のように出されていたけれども、実際に導入している企業や個人はそれほど多くなかったはずである。
 実は初めてインターネットなるものに触れたのは、2000年代に入ってチェコに来てからである。パラツキー大学でのサマースクール期間中に大学のコンピューター室のPCが使えるようになっていたので、日本のヤフーで新聞や雑誌の記事を読ませてもらって、日本語への飢えを癒していた。チェコ語のコンピューターでありながら、インターネット・エクスプローラー上では日本語の表示ができるようになっていたのは、前年からパラツキー大学に留学していた日本人が、PCの管理者にお願いをして必要なソフトだか、設定だかをインストールしてもらっていたおかげだった。日本語の入力はできるのとできないのとあったかな。

 メールアドレスを取ったのもチェコに来てからで、せっかくチェコにいるのだからと、チェコ版ヤフーのseznam.czにしたのだけど、日本語入力ができるようになっているPCでも、日本語でメールを送ることができなかった。一見入力はできたのだけど、送信すると文字化けして読めなかったんだったかな。結局ホットメールでアドレスを取り直すことになる。
 最初に送ったメールは、日本にあったチェコ関係の商社でいろいろ情報を教えてくれた方へのメールだったので、2000年代初頭には、特に外国との貿易をしている商社ではメールがすでに導入されて活用が始まっていたのだろう。どうしてその人に送ったのかというと、友人知人でメールアドレスを持っている人がいなかったからである。そんな時代だったのだよ。

 そして、フリーメールの場合には、容量に制限があってしばしば古いメールを消さなければならなかったし、添付ファイルでデジカメで撮影した写真なんかを送ろうとしたら、まずしなければならないのは写真の大きさを小さくすることだった。写真の多いページは開くまでに時間がかかって大変だったし、音声ファイルや映像ファイルを再生するのには嫌になるくらい時間がかかり、それもしばしば停止して、聞くのも見るのも辛いという代物だった。
 それに比べて現在は、ネット上でチェコから日本の新聞記事が読めるだけでなく、ラジオ放送を聴いたり、テレビのニュースの一部を見たりすることができようになっているのである。チェコから日本のものが見られるということは、日本からもチェコのものが見られるということである。昔はチェコのラジオを聞くのでさえ、チェコ語の先生がチェコの友人にエアチェックしてもらったというカセットテープを借りてダビングするしかなかったのである。時代は変わってしまった。

 チェコの公共放送のラジオであるチェスキー・ロズフラスのページでは放送中の番組をリアルタイムに聞くこともできるし、放送済みの番組を探して聴くことも、個々のニュースをばらばらに聞くこともできる。物によっては音声ファイルをダウンロードして、オフラインで繰り返し聞くこともできる。以前ある番組でH先生のインタビューが放送されたときには、番組のページから音声ファイルをダウンロードして聞いたのだった。
 そうなのだよ。今チェコ語を勉強している人は、かつてあんなに苦労していたチェコ語の音源を入手するのに何の苦労もないのだ。毎日同じテープを聴かなくてもいいのだ。同じテープを毎日聴いていると聞き取れる範囲が、少しずつ増えていって(少なくともそんな気がして)、それはそれで意味があったのだろうけど、初学の頃からいろいろ聞けるというのはうらやましい限りである。ただのラジオではないから、必要なところで止めて聴きなおすこともできる。
 恐らく、民放のラジオでも同じようにネット上で聞けるようになっていると思うけれども、チェコ語を勉強しているのなら、原則として正しいチェコ語を使うチェスキー・ロズフラスを聴くのが一番いい。中でもお勧めは右側のチャンネルリストの一番上にあるラディオジュルナールである。ニュースが中心の放送なのだけど、途中で音楽が入ったり、ゲストのインタビューが入ったりすることもあって結構バラエティーに富んでいる。

 ニュースはたしか一時間ごとぐらいに繰り返されるので、同じニュースを何度も聞くことで少しずつ理解が進むし、時間と共に微妙に内容が変わっていくこともあるから違いを聞き取れるようになると自分が成長したという感慨に浸ることができる。それから交通情報の「ゼレナー・ブルナ」は、数字の聞き取りの練習にいい。高速道路はもちろんのこと、一般の道路でも番号で示されることが多いし、事故などが起こった地点も、地名とキロメートル表示で伝えられる。地名はともかくキロメートルを聞いても具体的にどこなのかは想像もできないが、数字を聞き取る練習には十分である。
 具体的には、「高速道路D1のプラハ方向163.5km地点でブタを積んでいたカミオンが転倒し、逃げ出した百頭ほどのブタが路上を走り回って通行の妨げとなっております」なんてのが聞こえてくるわけである。その際の渋滞の距離的時間的長さにも、迂回路の説明にもkm表示が使われるし、数字にあふれている。
 数字の聞き取りの練習にいいと言えば、駅の構内放送もそうなのだけど、こちらは日本からは聞くことができないからなあ。日本でチェコ語耳を鍛えようと思ったら、 ラジオを聞いたりテレビを見たりするしかない。集中して聞くだけでなく他のことをしながら流し聞きするのも、結構役に立つものである。

 それにしても、日本からチェコのラジオが聞き放題とはいい時代になったものだ。その分どうしてもチェコに行きたいという願望がスポイルされるのかもしれないけどさ。
2017年11月2日24時。





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マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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