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2020年03月19日
朝起きたら(三月十六日)
朝起きたら、うちのがリトベルとウニチョフが封鎖されたらしいよなんてことを言う。二つの町であわせて30人以上の感染者が出て、千人単位で感染予備軍がいる恐れがあるということで、この二つの町と周囲の町や村、合わせて21の自治体を封鎖し、住民がそれぞれの自治体の外に出るのと、住民登録のない人が中に入るのを禁止する措置が取られたということだった。
うんざりするのは、日曜日の深夜の政府の記者会見ではそんな話は影も形もなく、決定されたのが午前3時ごろだったという事実である。朝方まで対策会議をしているというアピールなのかもしれないが、予防のためには健康的な生活を続けるのが一番だという発生当初からの厚生省の見解に、対策を行なっている政府が反してどうするんだろう。
実は政府の決定ではなくオロモウツ地方の保健所の決定である可能性もあるのだが、政府側との調整は行なっているはずだし、保健所で対策の最前線に立っている人たちが、不健康な生活をしているのでは、医者の不養生そのものである。政府自体もしばしば午前2時、3時まで会議を行なって、みんな寝ている時間帯に新たな決定を発表することもある。
寝不足で病気に対する抵抗力を落としかねないといえば、自治体の首長たちも、寝ているところに連絡が着たのか、起きて連絡を待っていたのか知らないけれど、そうだし、封鎖を担当する警察官達も突然早朝から呼び出されたに違いない。医療関係者も含めて、こういう対策の最前線に立っている人たちこそ健康でいる必要があるわけだから、余裕を持って仕事に当たれるような配慮があってもいいと思うのだけど。
感染者数は日曜日の夕方に発表されたものがもとになっているのだし、この時点で検討を始めて早めに決定を下していれば、朝起きたら町から出られなくなっていたという事態も、緊急に睡眠不足のままに出動しなければならなかったという事態も防げていたはずである。早めに決定して発表すると、直前に閉鎖される地域から脱出しようとする人が出かねないのを嫌った可能性もあるのか。イタリア帰りの人を強制的に14日間の自宅待機にすると決めたときも、それを避けるために期限ぎりぎりで帰国する人が多かったし。
閉鎖されたリトベルやウニチョフでは、域外から通っている店員が中に入れなかったために、品物はあってもお店が開けられなかったとか、工場で従業員が足りなかったり材料の納入と製品の搬出ができないので生産停止を余儀なくされたりといろいろ問題が起こっていたようだ。店員の問題は例外的に許可を出して毎日出入りできるようになったようだが、帰宅後の外出が禁じられるのだとか。
お昼ごろにチェコテレビに電話でインタビューに答えていたキリスト教民主同盟のユレチカ元濃霧大臣の言動にもいらいらさせられた。閉鎖地域に地域外の人の農場があるのか、その反対なのかよくわからなかったけど、この閉鎖措置によって農場の家畜たちが世話されないまま放置されることになるのが問題だと、乳牛の搾乳の問題を例に挙げて指摘したところまでは、まだ許そう。その後、だから自分が政府と交渉して牧畜農場に関しては例外を認めさせたなんて自慢する必要はあるのか。三月に入ってチェコでコロナウイルス感染者が発生して以来、野党の存在感はゼロに等しくなっているから焦りがあるのかなあ。
ようやく高齢者に対して、外出を避けるように指示が出たのは悪くない。イギリスで同じような命令が出たのに倣ったのだろうか。ただこれも順番が違うよなあ。高齢者と持病もちの人が、感染すると一番危ないというのは以前から言われていたことなのに、老人ホームと病院の入院病棟のお見舞いを禁止しただけで、これまでは放置されていた。ここは、学校の閉鎖より先に、高齢者の保護だろうに。イギリスはこの順番だけど、ちょっと遅すぎたかな。日本は、何か高齢者に対する保護策、いや制限は課しているのだろうか。
政府だけでなく、プラハ市も市長を中心に何人かぞろぞろ出てきて独自の対策について記者会見していた。他の町でも独自にしない交通機関を利用するときにはマスクなどで口と鼻を覆うようにという命令を出したとこともあるのに、何故プラハだけ大々的に記者会見するんだなんてことは言うまい。気に入らないのは、この事態の中で政治家たちが、手柄の奪い合いのようなことをしているところである。
挙国一致で、国民全体で団結して対応しなければならないなんていってるのなら、誰のおかげでも彼のおかげでもいいだろうに、「我々が」とか、「政府が」とか、自分たちの手柄を誇るような言い方をするんじゃない。こちらのチェコ語のつたさなからの誤解ならいいのだけど、政府やプラハ市なんかの記者会見での発言を聞くたびに、うんざりして気が滅入ってくる。政府が主導して国民の恐怖をあおってどうするよ。
職場に出る以外は自宅に引きこもっているのは、普段の生活と大差はないから、それ自体にはストレスは感じないのだけど、政府の発表によってストレスがたまっている。病気への抵抗力も落ちているだろうなあ。対して高くないとはいえ高血圧だし、ちょっと不安になってきた。チェコは400人近くも感染者を出していながら、重症化した人は2人だけで、様態は安定しているという。ということは重症者と死亡者を出さないというのは結構うまくいっているということで、安心しよう。
2020年3月17日24時。
2020年03月18日
非常事態にうんざり(三月十五日)
先日投稿したチェコ政府のコルナウイルス対策の記事に、コメントがついていた。パラツキー大学の医学部で勉強している方で、バビシュ政権の大学での授業中止の被害を受けているようだ。チェコ人の学生たちもそうだけど、留学生も健康には何の問題もなく、コロナウイルスに感染しても大した症状がでないことがわかっているのに、勉強の場を奪われたわけである。オンラインで授業とか言っても限界があるし、試験がどうなるかも不明とくれば、特に卒業試験を控えた人なんかは不安に駆られているに違いない。高校や大学の入試はどうするんだろ。それまでにはこの騒動が鎮静化していることを祈るしかない。
15日夜の12時の時点で国境が貨物の輸送を除いて閉鎖され、滞在許可を持たない外国人に対しての入国と、チェコ人と滞在許可を持つ外国人に対して出国が禁止されることになっている。例外として、国境を越えて仕事に通っているチェコ人は、国境から100キロ以内なら毎日国境を越えてもいいことになっている。ただし、その場合には会社の発行した就業を証明する書類が必要になるという。木曜日の時点では危険地域に指定された国だけが出入国規制の対象だったのだが、翌日には対象をすべての国にすることに変更されていた。
そこで気になるのが、チェコの日本企業に赴任している人の中に、年度末の三月末で帰任が決まっている人がいることである。帰任と滞在許可の期限が重なるなら何の問題もないだろうが、そんなタイミングのいい人はほとんどいるまい。滞在許可を残している場合に空港で出国を止められる可能性があるのか心配だったのだが、ちょうどオロモウツにも何度か来てくれたことのある方が帰任することが決まっていたし、大使館からの情報で、非常事態宣言中は再入国できないという条件で出国が認められることが判明した。一安心である。
非常事態宣言が出されたことに対しては、チェコに住ませてもらっている外国人としては、文句は言わずに粛々と決定に従うしかないのだが、その後の規制を小出しに追加して、大抵は深夜に発表する政府のやり口にはうんざりする。次の日の予定を立てて寝ていた人たちにとっては、朝起きたら規制が変わって予定の変更を余儀なくされる場合もあるのだから、いい加減にしてくれといいたくもなるだろう。ただニュースのインタビューなどでも文句を言う人はほとんど出てこず、日本人以上に従順な印象である。
金曜日の夜のニュースで、昼から深夜にかけて営業しているレストランの店主が、今日が最後の夜遅くまで営業できる日で、明日からは昼間だけの営業になるから、営業時間を朝からにすることも考えなければならないと言っていたのに、土曜日の朝起きたら飲食店は全面的に営業禁止になっていた。例外として、料理の出前と、客を店内に入れずに窓口で持ち帰りの販売は許可されるという。使い捨ての容器の手配に苦労するのだろうなあ。
非常事態宣言が出た木曜日の時点では、バビシュ首相が自信満々の様子でお店の閉鎖は絶対にしないと言っていたはずなのだが、食料品店や薬屋など生活必需品を扱うお店を例外として、すべての店舗の閉鎖が決定された。これも土曜日の朝起きたら決まっていたんだったかな。この対策をとる理由として、ショッピングセンターに人が集まるのを避けたいという理由を挙げていたが、学校の授業を中止にして、スポーツクラブでの練習もできなくなった子供たちや、スポーツや演劇、映画などを見ることができなくなって暇をもてあますようになって人たちが、買い物するわけでもないのにショッピングセンターに集まるようになるのは予想できたと思うのだけどね。
何か新しい対策を導入するたびに、この対策が効果を表すかどうか確認した上で、次の対策を考えるという発言を聞くような気がするのだが、効果があるとかないとかいえない段階で次の対策が追加される。次々に矢継ぎ早に対策を立てるというか、変更を加えていくことで、規制される側の人々が思考力を奪われているような感もある。
バビシュ首相は、日曜日の午前中にはテレビのインタビューで、国全体の隔離というイタリアと同じような政策を導入することを示唆していたのだが、政府の会議が延々と続いた結果、正式に発表されたのは夜遅くなってからだった。当初の予定では午後3時だったのかな。国全体を隔離状態に置くというのもよくわからないのだけど、できるだけ外出を避けるように求めるのが中心のようだから今までとあまり変わらないような気もする。散歩は、出先で人に会わなければいいらしい。
政府の発表の仕方にしても、ANOのバビシュ首相だけでなく、社会民主党のハマーチェク内務大臣も対策の正当性を訴えるためか、ウイルスの危険性を声高に叫ぶことが多く、対策そのものの効果よりも、自分たちはこれだけの対策をやっているのだとアピールしているような印象を与えるのもうんざりする理由になっている。やるなら徹底的にというのは悪くないのだけど、規制の進め方とか、発表の仕方とか、もう少し何とかしてくれんかね。
政府主導でコロナウイルスの感染の検査ができる病院を増やして、検査数を増やすと宣言した結果、不安の解消のために検査を求める人が押し寄せて、現場が悲鳴を上げていて、病院関係者がインタビューを受けるたびに、症状の出ていない人は検査をする意味がないどころか、検査のための行列で感染する恐れもあるから来ないでくれと連呼している。それでもある漠然とした不安から検査を求める人は堪えないようで、日本と似ているなあ。陰性になったからと言って、その後も感染しないというわけではないのだから、検査なんて症状が出てからで十分だと思うけどね。個人的には受けるなら症状が消えてから受けたいところだ。ちなみにオロモウツの大学病院では、検査を始めて数日で資材が尽きて検査ができなくなっている。困ったもんである。
2020年3月16日24時。
2020年03月15日
さらに混乱するチェコ社会(三月十二日)
火曜日の夜の時点での混乱ぶりについてはすでに記したが、木曜日になって、さらに事態が大きく進展した。患者数が100を越えたらなんて予想もあったのだけど、90人を越えた今日、政府が緊急事態宣言を発して、これまで以上に大きな制限が科されることになった。その内容について触れる前に、火曜日以後の進展を見ておこう。
水曜日にそれぞれの協会で話し合いが行われた結果、アイスホッケーとサッカーのプロリーグは、全く異なる対応を取ることになった。アイスホッケーは、政府が100人以上は禁止という数にこだわるなら、試合の開催自体が不可能だとして、始まったばかりのプレイオフの三月末までの延期を決めた。準々決勝に進出する最後の2チームを決めるシリーズが始まって2試合終わったところで、どちらの対戦も1勝1敗の五分になっているんだったかな。
スロバキアやドイツなのどのアイスホッケーリーグは打ち切りを決めているが、チェコでもその可能性もあり、現時点で打ち切りになった場合に優勝チームや、最終順位をどのようにして決めるのか、検討が始まっているようだ。2部からのの昇格チームを決めるプレイオフもあるし、今年は入れ替え戦もあるんだったかな。ただでさえよくわからないのが、さらによくわからなくなっている。
サッカーは対照的に、三月末まで無観客で試合を続けることを決めた。こちらも、チーム関係者の人数はアイスホッケーと変わらないだろうから、100より少ない数で試合を実施するのは大変だろうけど、役割によっては試合中はスタジアムにいなくてもいいものもありそうだから、入れ代わり立ち代わりで人数が100を越えないようにするのだろう。頭痛の種がテレビ中継のスタッフのようで、最悪中継なしなんて話も聞こえていた。
この入れ代わり立ち代わりというのは、子供たちが練習に通うスポーツチームも抱えている問題で、普段なら早めに練習会場に入るところを、とにかく時間ぎりぎりに来て、前に練習していた子供たちが会場を出てから中に入るように求められているらしい。そして、付き添いの親たちも普段は客席から練習の様子を見ていられるのに、今はとにかく外で待っているように求められるのだとか。体を動かすことが必要な子供たちから運動の場を奪いかねないという点でも、この人数制限は厳しい。
その水曜日の議論を不要なものにしたのが、今日、木曜日に政府が決定した緊急事態宣言で、これまで洪水や強風で大きな被害が出た地域限定で出されたことはあったが、全国的に出されるのは初めての事態である。スポーツと関係ありそうなものとしては、これまで100人以上は禁止だったのが、30人に人数が減らされたことで、この数ではほとんどのスポーツは試合自体が成立しなくなってしまう。無観客で行われる予定だったサッカーも、下部リーグも含めて軒並み中止ということになりそうだ。アイスホッケーはプレイオフの中止を決定した。プレイオフの優勝チームはなしという扱いになるのかな。
さらに、飲食店の営業も夜の8時から朝の6時までは禁止された。朝昼晩の三食外食は不可能ではないけれども、お酒を飲みに行くのは無理そうだ。フィットネスセンターやプールなどのスポーツ施設、公共の図書館やギャラリーなどの人が集まりそうな場所は全面的に営業禁止。いやはや何とも思い切ったことをするものである。まあ、この手の対策は、中途半端にやるよりは、徹底的にやったほうがいい。どっちにしても批判はされるのだし。
そして、感染者がチェコに入ってくるのを防ぐために、オーストリア、ドイツとの国境を封鎖し、指定された通過点には検問を設け、危険地域に指定された地域からチェコに向かっている人は入国させないという。ただ、ドイツもオーストリアも危険地域に指定されているから、これらの地点から入国できるのは、規定の適用外とされているチェコ人、およびチェコの滞在許可を持っている外国人に限られるようだ。
ちなみに危険地域に現時点で指定されているのは、中国、韓国、イタリアに加えて、感染者が急増しているイラン、スペイン、オーストリア、ドイツ、オランダ、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、ベルギー、フランス、イギリスとなる。西ヨーロッパほぼ全滅である。おそらくこれらの国を経由して飛行機でチェコに入るのも禁止されたと考えたほうがいいだろう。日本からだと南回りを除けば、残っているのはモスクワかヘルシンキで乗り換える便ぐらいか。そのうち日本も危険地域指定されそうだけど。
同時にチェコ人が危険地域に出ることも禁止された。ただし、国境地帯に住んでドイツやオーストリアで仕事をしている人たちは国境から50キロ以内なら例外扱いになるらしい。鉄道やバスの国際線も運行禁止になっているから、チェコの人が国境を越えるには自家用車を使うしかない。これも乗っている人数が多いと、9人以上だったかな、国境で止められるようだ。ただし貨物の輸送に関しては出入りともに禁止されていない。
この国境の封鎖は、外国から新たなウイルスを持ち込ませないという意味では一定の効果はありそうだ。むしろ、陸続きの隣国ばかりのチェコよりも、海で他国と隔てられている日本でのほうが効果がありそうだけど、日本は何でやらないんだろう。飛行機も船も外国からのものはすべて運休にして、リスクの高い高齢者と病人を守る対策をとって、あとは普段通りにしたほうが、小学校を休みにして親まで休ませた結果補償金をばらまくことになりそうな現状よりは、はるかにましになると思うのだけど。
チェコのこの人が集まりそうなところは全部閉鎖してしまえという対策が、どこまで効果を上げるのかはともかく、長続きしないことを願っておこう。うまくいってチェコ国内からウイルスが消えたとしても、周囲の国で流行が続いていたら、国境の閉鎖は継続するはずだ。そうなると、ドイツあたりのEU加盟国に自己中心的だと非難されるのだろうなあ。
ここにあげた規制は、それぞれ発効する日時を微妙にことにしているのだが、煩雑なのでいちいち記さない。
2020年3月12日22時。
タグ:コロナウイルス
2020年03月13日
混乱するチェコ社会(三月十日)
今日準備期間なしに発令された新たなコロナウイルス対策によって、チェコ社会に混乱が広がっている。特に大学も含めた各種学校の授業禁止と、参加者100人以上のイベントの禁止が、その解釈、適用のしかたを巡って混乱を起している。幼稚園と、一部の子供たちが放課後に通う芸術学校は対象外だけど、園長、校長の裁量で閉園、閉校にしてもかまわないという。
義務教育の、日本の小学校、中学校に当たる基礎学校と高校では、宿題を課して自宅で勉強することを求めるようだが、中学生、高校生が素直に自宅に閉じこもって勉強するとも思えない。実技が中心の専門学校、専門高校になると、自宅学習でできることはそれほど多くないし、休校命令が長期化すると試験や卒業審査なんかでも大きな問題になりそうだ。
大学は、可能であればネットを使ったオンライン形式の授業をと言うのだが、火曜日に決めて水曜日からというあわただしさでは、技術的にはある程度対応できても、時間の問題でできないというところも出てきそうである。だからなのか、ブルノのマサリク大学では学長権限で二週間のお休みが与えられることになった。
大切なのが重症化して死に至る可能性の高い高齢者を守ることだと考えれば、外出させないようにする対象は、子供たちではなくお年寄りだと思うんだけどね。イタリアのデータでは、亡くなったのはすべて60歳以上の人だと言うし。だから、年齢の高い先生を自宅待機にして、その授業を休講にして、高齢者と同居している子供に関しては個別に自宅待機を検討すればいいと思うのだけど。自宅に隔離すべきは高齢者と病人であって、運動の必要な健康な子供たちではない。
100人以上のイベント禁止に関して、文化省とその管轄下の役所が管理している施設に関しては、劇場、博物館、お城などすべて閉鎖されることになった。お城などは4月1日のシーズンの始まりに向けて準備を進めていたところのようだが、シーズン開始が何週間か贈れることになる。劇場に関しては私営でも休業を求められたのか、俳優のヤン・フルシンスキーが、バビシュ政権に対する怒りをぶちまけていた。もともと反バビシュ政権の人だから、この機会に日ごろの鬱憤をということだったのかもしれない。同じように反バビシュの俳優たちもフルシンスキーを支持する声を上げているようだ。
映画館でも、収容人数が多いところは営業を停止するところが多いようだが、一部の映画館では、定員を99人に変更して営業を続けることを決めている。一回の上映あたり99枚のチケットしか売らないように調整するというのだが、その99人の中に映画館で仕事をしている人は含まれていない。このニュースだけだと問題ないように思われるが、スポーツのイベントに課された条件と比べると、このやり方はおかしい。
スポーツ界の混乱を如実に反映していたのが、火曜日に行われたアイスホッケー関係者の記者会見である。最初は100人以上というのを観客の数だと解釈していて、現在進行中のプレイオフに関しては、ホームチームが99人の観客を選んで入場させればいいだろうなんてことを言っていた。映画館のやり方を考えればこれでいいはずである。
それが、政府から連絡が入ったことで大混乱が巻き起こった。政府の見解では、観客だけでなく会場のスタジアムにいる人は、選手もチーム関係者も、スポーツ記者たちもすべて数に入るというのである。アイスホッケーは出場選手は1チーム6名だが、交代選手を入れればベンチに入るのは20人を超える。それに監督やコーチ、チームドクターなんかを入れると、チーム関係者だけで、40人を超えても不思議はない。それに、審判などのアイスホッケー協会関係者、テレビや新聞などの取材記者などを加えたらすぐにリミットの100人を超してしまう。
だから、観客以外の会場にいる人も含めて99人までという情報に、アイスホッケー協会の関係者が、「そりゃホッケーの終わりだ」と思わずこぼしたのも当然なのである。スパルタやリベレツなどの資金に余裕のあるチームは抱えているスタッフの数も、スタジアムで仕事をしている人の数も多く、1チームだけで100人を超えかねないという話である。つまりどうにもこうにも観客を入れる余裕はないということになる。
そこで、疑問なのが、上にも書いた映画館の場合で、映画館にだって上映中仕事をしている人はいるから、観客を99人いれたら、リミットを越えてしまうはずだ。逆に言えば、映画館が99人の客を入れられるのなら、スポーツのイベントも同じ扱いにしないとおかしい。この辺、検討の時間もないまま突然導入した対策であることが見て取れる。
結局、アイスホッケー協会では、火曜日の夜に行われた2試合だけは無観客で行うことを決め、その後の試合をどうするかは、今日水曜日に決めると言っていた。状況はサッカー界も同じで、サッカー協会が管轄する3部よりも下のリーグに関しては、どうせ観客も多くないので、100人以上の人が会場に集まらないように徹底した上でリーグ戦の継続を決めたが、サッカープロリーグ協会が管轄する1部と2部の試合をどうするかは、こちらも今日水曜日に決めるらしい。
水曜日には、二月末にグラウンドの芝の状態がひどすぎて開催できなかったテプリツェ−リベレツの試合が予定されていた。この試合に関しては、無観客どころか取材の記者たちも排除して開催することが決められたのだけど、グラウンドの状況が再び悪化したため、さらなる延期が決められた。週末の試合も、中止になってもおかしくないぐらい芝の状態が酷かったからなあ。
スラビアのオーナーのトブルディークは、観客のいないサッカーなんて意味がないと、無観客での試合ではなく、延期を主張している。今度の週末にスパルタを迎えて試合を行うプルゼニュでは、入場券の払い戻しをすでに始めている。
2020年3月10日24時。
木曜日にはさらに大きな展開が待っていたのだけど、それについては木曜日の分で。
タグ:コロナウイルス
2020年03月11日
バビシュ首相迷走か(三月八日)
ビソチナ地方のノベー・ムニェスト・ナ・モラビェで行われていたバイアスロンのワールドカップが終わった。大会そのものよりも、政府の突然の決定によって無観客で行われたことの方が話題になっている。疑問なのは、感染の恐れが少ないとされる屋外での競技を無観客で行うことを求めておきながら、アイスホッケーなどの屋内の競技では普通に観客を入れての試合を許可していることである。
今週末は、金曜と土曜日を使って、ブラチスラバで、すっかり魅力をなくしたデビスカップの予選? が行われ、連邦ダービー、つまりチェコとスロバキアが対戦したのだが、観客は意外と少なく、金曜日は5割ほどの入りで、土曜日はさらに少ないように見えた。アナウンサーの話では、入場券は9割以上売れており、コロナウイルスの感染を恐れて来場を控えた人が多かったのかもしれないという。
警戒する人は、禁止されなくても自ら行かないことを選ぶもので、能天気な人は熱があろうと試合を見に出かけるのだろう。バイアスロンの大会だって、立ち入り禁止を示した柵の中に入った観客はいなかったが、柵の外側からレースを見て、遠くから声援を送る人たちはかなりの数存在した。日本だったらそんな観客まで追い払いかねないけど、立ち入り禁止区間外ということで黙認されていた。中継では大会関係者が、そんな熱心な観客に感謝の言葉を述べていた。
土曜日のサッカーのチェコリーグの試合では、ホームで試合をしたプルゼニュがファンに対して、熱などの症状が出ている人は無理して見に来ないでくれと呼びかけていた。対戦相手がチェスケー・ブデヨビツェで観客数八千人ほどというのは、呼びかけの効果があったのかどうかよくわからないけど、屋外で行われるスポーツならこのぐらいの対応でよかったんじゃないかとは思う。
バイアスロンを無観客にして、サッカーを無観客にしなかった理由としては、国際大会であるバイアスロンには、感染者が多発しているイタリアから観客を入国させたくなかったという事情があって、サッカーのほうは、日曜日にスラビア対スパルタのプラハダービーが行われるので無観客にしたら両チームのファンが暴れて収拾がつかなくなるという恐れがあったのかもしれない。コロナウイルスとスパルタ、スラビアファンの暴動、どちらが怖いかと言われたら断然後者である。バイアスロンのほうは、無策を批判されて発作的に決めたようにも思えるけど。
専門家たちにポピュリズムの発露だと批判された北イタリアとプラハを結ぶ飛行機の便を停止した件は、EUでもやりすぎだと批判されたらしい。そして、木曜日には、北イタリアに滞在して土曜日以降にチェコに帰国する人には、無条件で14日間の自宅待機を命じるという対策を決定した。違反した場合は最大300万コルナの罰金が科される。これも厳しすぎるという批判を浴びている。この手の対策は、やってもやらなくても批判されるものだが、突然すぎると批判する人の気持ちはわからなくない。感染者が出たらとか、人数が何人を越えたらという条件付きで事前に発表しておけば混乱は少なかっただろうに。
週明けからはさらに対策を進めて、イタリアから戻ってくる人が使う可能性の高い、オーストリア、ドイツとの国境の通過点で、警察官や税関職員、消防隊員などを動員して検問を設け、入国者のチェックをすることになっている。最初は、入国後どうするべきなのかが書かれたビラを配ると言っていたのだが、最終的には、選ばれた人に対して検温も行うことになっていた。熱が高い人を見つけたらそのまま病院で隔離するのだろうか。ビラの配布は鉄道の国際列車の中でも行われるらしい。ゴミが増えるだけだろうけど。
この14日間の自宅待機の義務は、チェコ国民と外国人で永住許可を持ってチェコに在住している人を対象にしている。だから、旅行者や留学生などは対象とならない。留学生は留学先の学校が何らかの対応をするだろうけど、旅行者どうするんだろう。この状況で北イタリアから旅行に出るというイタリア人はいないと思うけど、イタリアに留学している外国人や旅行客なら、イタリアを逃げ出してよその国にと動いても不思議はない。
イタリアでの休暇から帰ってきた医師がコロナウイルス感染が明らかになり、症状が出る前の二日にわたって、通常通り診察を行っていたというニュースもある。この件に関しては、日本だと大批判になりそうだけど、診察をしていたのは症状が出る前で、症状が出た時点ですぐに診察をやめて、保健所に連絡をして検査を受けているのだから、その行動には何の問題もないという判断が下されている。診察に際しても、念のために患者との距離を取っていたなんて話もある。この辺の対応はさすが専門家である。
実際問題、イタリアから帰ってきた医者を、自動的に全員自宅待機にして診察させなかったら、チェコの医療体制は崩壊しかねない。お金持ちになったチェコの人たちにとって、子供の春休みを利用して、北イタリアなどのアルプスのスキー場に出かけるのは、ごく普通のことになっていて、医療関係者も例外ではない。ということで、医療関係者に関しては、今回の自宅待機命令の例外とされた。他には飛行機のパイロットと長距離トラックの運転手が例外扱いされる。出入りのたびに二週間も自宅待機をしていたのでは、輸送システムが破たんしかねないということなのだろう。
自宅待機命令を決めたのがバビシュ氏なら、例外規定を押し込んだのは厚生省などの医療関係者だと見る。厚生省は事の初めから、チェコ人の感染者を出さないことよりも、チェコ国内での感染をできるだけ出さないことと、医療システムを崩壊させないことを目的として対策を取っているように見える。チェコの感染が発覚した人の中には、病院に入院せずに自宅で隔離されて療養している人たちもいるのである。恐らくは症状が全くないか、きわめて軽く、家族全員が感染したため、家から出なければ感染者を増やす恐れがないと判断された場合だけだろうけど。このまま快癒すれば、医療機関の負担は小さなもので済む。
現時点で感染者31人、重症者0というのは、対策がうまくいっていると言ってよさそうである。あとはバビシュ首相とゼマン大統領が批判に対する条件反射でヒステリックな対策を言い出さないことを祈っておこう。
2020年3月9日17時。
今日、火曜日になって状況が大きく変わった。プラハ市内のタクシー運転手が、恐らくイタリアからチェコに入った人を乗せた際にだろうが、コロナウイルスに感染したことが明らかになったのである。しかも発熱などの症状が出てからも何日か仕事を続け客を運んだという。ということは、チェコ国内で感染の輪が広がる可能性が高いということである。
それで、バビシュ首相は、日本の安倍総理大臣に倣って、いきなり学校の閉鎖を決めた。大学も授業を中止するというから安倍首相よりも上である。ただ、同時に行ける人は仕事に行くように呼びかけているので、子供たちを預ける幼稚園や託児所は閉鎖しないようだ。
現時点では、一律閉鎖じゃなくて、熱があったりして体調が悪い奴は、仕事にも学校にも行かないでうちで寝ていろぐらいの対応でいいと思うんだけどなあ。スロバキアで感染者が出た段階で、すぐに学校閉鎖の命令が出たのに慌てて対応したのかな。
同時に100人以上の人が集まるようなイベントの開催も禁止された。多くのスポーツでリーグ戦も佳境に向かうこの時期、無観客でなら開催できるのだろうか。ハンドボールとアイスホッケーの試合は無観客で開催された。とにかくプラハダービーの後でよかったという感想しかない。
これまで、プラハとウースティー・ナド・ラベム地方でしか出ていなかった感染者が、すりーん地方とオロモウツ地方でも新たに確認された。オロモウツ地方の感染者は外資系の会社の社員という話だが、日系企業ではないことを願っておこう。
感染者数の合計は、61人で、今日一日で20人以上増えた。
3月10日追記。
2020年03月07日
チェコのコロナウイルス感染症続報(三月四日)
日曜日に最初の三人の患者が確認された後、月曜日に一人、火曜日に一人、水曜日に三人追加されて現時点では全部で八人の患者が確認され、プラハとウースティー・ナド・ラベムの病院に隔離されている。いずれも軽症で、すでに熱が引いて快癒に向かっているようで、現時点ではチェコでこの病気で亡くなる人は出そうにない。最初から症状が全くないと言う人もいたらしい。
すでに書いた件でも新たに明らかになった事実もあるので追加しておく。新しい情報が出てくるのは、チェコテレビの取材だけではなく、保健所の職員による探偵まがいの調査のおかげでもあるらしい。その調査の結果もあって、感染者と同じバスに乗っていた人など全部で600人以上の人が、自宅待機などの隔離状態に置かれているという。
一件目のプラハの大学の先生は、農大学に勤めているようである。ということはイタリアで参加した学会も農学関係のものであるはずで、これが恐らく月曜日に、ブルノのメンデル農業大学が、今週と来週、二週間の授業をすべて休校にすることを決定した理由であろう。もしかしたら学生か教員が学会に参加していたことが判明したのかもしれない。
二件目のイタリアから来ているアメリカ人学生については、さらにいくつかのことが明らかになった。一つは同行していた二人の留学生も病院に収容されていたようで、そのうちの一人が検査で陽性となりチェコでは五人目の感染者となった。一説によると、最初の検査では陰性だったのが、二日後火曜日の検査で陽性となったのだという。これをチェコで感染したというべきなのかは微妙である。
またこの留学生三人組がブルノ滞在中に市営病院に出向いて検査を求めていたという事実が明らかになった。病院の人の話では、受け付けた人が、その病院では検査が行なわれていないことを説明し、検査が行なわれている6キロほど離れた病院に行くまでの間に感染を広げないようにマスクなどの装備を取りに行っている間に姿を消したのだという。同日のうちにプラハに移動しているから、コロナウイルスの件がなければ病院に行くほどの症状ではなかったのだろう。
三件目のウースティーからプラハに移送された患者だが、この患者とイタリアのスキーリゾートで同じホテルの同じ階に泊まっていた人の中から陽性反応の人が出た。この人は日曜日から病院に収容されていて感染が確認されたのは月曜日で、四人目の患者だということになる。この件に関しては、最初はチェコ国内での感染かなどという憶測も流れていた。その後、イタリア滞在中にベネチアに足を伸ばしていたことも明らかにされていた。別の人だったかもしれんけど。
その四件目の感染者の家族二人が、六人目と七人目の感染者である。一人は発熱などの症状があっての検査だったようだが、もう一人は全く健康で念のために検査をしたら陽性になったというから、自覚症状のない感染者としては、チェコ国内初の事例となる。以上の四人はウースティーの病院で検査を受けたが、デチーンというドイツとの国境の町に住んでいる人たちらしい。
最後の八件目に関して最初に情報が流れ出たのは今朝のことで、前の二人よりも早いのだが、公式に感染が認められたのはついさっきのことなので、八人目ということにする。この感染者に関しては、スタンドプレーが大好きなプラハ市長が、不確かな情報をSNSで拡散したことで、混乱を巻き起こした。公式な発表がある前に、感染者の子供が月曜日と火曜日は小学校に通っていたなんて情報を、しかもSNSで流したのは無責任以外の何物でもない。
八件目の感染者が子供たちと一緒に出かけていたのは北イタリアは北イタリアでも、まだ危険地域に指定されていない地域だったので、特に自宅待機の指示も受けていなかった。ということは子供たちを学校に行かせたのには何の問題もないのである。危険地域ではなかったからか、最初は民間の検査機関で検査を受けて、陽性であることが判明してから病院に向かったようだ。この件に関して、国の検査機関、つまりは国立病院で検査を拒否されたから民間の機関に行ったという話も出ていたが、確認はされていない。
子供ともども病院に入ってから改めて検査され、こちらでも陽性が確認されたことで、公式に感染者として認められた。同時に検査を受けた子供たちは陰性だったようだが、念のために同じ病院に隔離されるようである。子供たちが通っている小学校は木曜日は臨時休校で、以後の対応は未定とのこと。
幸いにこれまで重症化した患者は一人も出ていないが、これは運がいいからだけではなく、重症化しやすいとされる高齢者や持病のある人が、北イタリアにあまり出かけていないおかげでもあろう。老人ホームや病院の入院病棟では外部からの訪問を全面禁止するという対策も取っているが、これは特別なことではなく、毎年インフルエンザの流行する時期には適用されている対策だという。高齢者や病人を感染させるのが危険だというのはインフルエンザも今回のコロナウイルスも変わらないのである。
2020年3月4日25時。
2020年03月06日
チェコテレビのコロナウイルス関係の報道(三月三日)
民放のノバやプリマが今回のコロナウイルスをめぐる騒ぎに対してどんな報道をしているのかは、特に興味もないから知らないが、チェコテレビでは極めて正確な報道がなされている。2011年の福島原子力発電所の爆発の際もそうだったけれども、日本とは違って、アナウンサーや、テレビ局の自称専門家、タレント上がりのコメンテーターなんかが好き勝手に自分の見解を垂れ流したり、不正確な情報をもとに政府を批判したりすることはなく、政治家を除けば、常に専門家、しかも理論家ではなく現場で働く専門家にしか見解を語らせていない。
ニュースでは、中国の病院の様子や、チェコで感染者が出たときの対応などを報道するので、どうしても劇的な印象を与えることになってしまう。それで、不安を感じる人もいそうである。ただ、意見を求められた専門家が、病気を過剰に大きく評価して恐怖をあおるような発言をするのは聞いたことがない。当初は情報が不足しているので、はっきりしたことは言えないという答えが多く、現時点では学校の閉鎖などの全国的な対策が必要なレベルの病気でないという答えをよく聞く。
ニュースだけでは細かい情報が伝わらないからか、チェコテレビのニュースチャンネルでは、4人の専門家を呼んで、視聴者のさまざま質問に答える形式の番組を放送していた。質問者の中には、病気を恐れる人、逆に恐れない人など様々な人がいたが、アナウンサーは感情的に質問者の気持ちを代弁することはなく、専門家に質問を割り振りする司会の役に徹していた。
呼ばれた専門家は、二人は医療関係で、保健所で防疫対策にあたっている伝染病の専門家と、ウイルス性の感染症の専門家。こちらがどこで仕事をしているかは確認しなかった。三人目は旅行業界の代表者でイタリアへの旅行のキャンセル云々について答えるために呼ばれていた。四人目は労使関係を専門とする弁護士で、職場でのコロナウイルス感染症関係で起こりうる問題について答えていた。重要なのは、自分の専門分野以外のことに嘴を挟む人がいなかったことである。
病気そのものに関しては、医療関係の専門家二人が口をそろえて、そんなに大騒ぎするほどの病気ではないと語っていた。アナウンサーがちょっと死亡率の高いインフルエンザのようなものかと尋ねると、それはそうだけど、その死亡率も、WHOが出した3.4パーセントという数字がどこまで正しいかわからないと言って説明を続けた。
それによると、現時点でも感染者の約40パーセントは、症状が出ない感染者だと言われている。その場合、せいぜい朝起きたときに何かだるいなと思う程度で済んでしまう。そんな人が医者に行くわけもなく、自覚症状のない感染者が実際にどのぐらいいるかはわからないから、3.4パーセントという数字は最大に見積もったときのもので、実際にはずっと低い可能性もあるというのである。
これは毎年流行するインフルエンザも同様で、ただ、インフルエンザの場合には毎年のデータの蓄積があるから、ある程度実際の感染者数を推測することができるけど、今回のコロナウイルスは新しい病気のために過去のデータがないので推定も難しいらしい。ということはこちらが求める比較も難しいということか、残念。
新しい病気だということは、免疫を持つ人が皆無だということである。これが、毎年流行を起こして免疫を持つ人の多いインフルエンザよりも感染者数が増えやすく、広がるスピードが高い理由だという。だから、ある程度特別な対策が必要なんだと、普通のインフルエンザと同じ扱いでいいんじゃないのという視聴者からの質問に、答えていた。感染が急速に広がるのを防ぐのも大切だけど、次に発生したときのために情報を集めることも大事なんだと理解するべきか。
日本だとこういう番組に対して、政府の圧力が云々と言いだす人が出るのだろうが、それはありえない。番組の初めの方で、政府のこれまでの対策について聞かれたときに、他に移動手段のない中国、韓国への飛行機の便を停止したのはともかく、陸続きのプラハと北イタリアの空港を結ぶ便を停止にしたのは、何の意味もないと切って捨てていた。そして、四人とも異口同音に、ポピュリズムの発露だと強く批判していたのだ。チェコで行われるバイアスロンのワールドカップも無観客で行うことになったしなあ。政府としても何もしないというわけにはいかないのだろうけど、無駄なことをである。
この番組を通して、インフルエンザに毛が生えたようなものというこちらの理解が正しいことが確認できたのがありがたい。実はチェコで患者が出たというニュースにちょっと不安を感じたのだけど、きれいさっぱり消え去った。後は手洗いうがいを徹底して健康的な生活をするだけである。大事なのは夜更かしを避けることだな。軽い高血圧ぐらいなら持病にはならないだろうしさ。
2020年3月4日19時。
そう言えば、医療関係者二人が、WHOが発表した、アルコールと塩素ではウイルスは殺せないという情報に驚いたと言っていたのが印象的だった。口ぶりからは、あんまり信じていなさそうな様子が読み取れた。この手の国際機関は、国連もそうだしIOCもそうだけど、設立当初の存在意義を失って腐りはていているからなあ。
特別な病気ではなく、今後とも付き合っていかなければならない、普通のウイルス性感染症だと理解する必要があると言っていたのも覚えている。
3月5日追記。
2020年03月04日
チェコでも新型ウイルス感染者(三月一日)
ついに、というか予想通りというか、チェコでも新型コロナウイルスの感染者がでた。ただし一度に三例というのは、こちらの予想を上回っていた。三人とも感染したのは来たイタリアで、現在はプラハの病院の感染症病棟に隔離されており、入院はしているものの命にかかわるような重態にはなっていないという。
一つ目のケースはチェコの感染対策がほぼ完璧にうまく行った。この人はイタリアのウーディネの大学で行なわれた学会に出席して帰国して、しばらくしてから発熱などの症状が出て、さらにイタリアから出席した学会参加者の中から感染者が出たという知らせを受けて、医者だったか保健所だったかにコンタクトを取ったらしい。
その結果、救急車が派遣され、そのまま受け入れ態勢の整っている病院に運び込まれて隔離され、検査の結果陽性が確認できたということのようだ。イタリアからウィーンの空港を経てプラハに戻ったという話もあって、その帰りの経路ではともかく、帰国して以後は他者との接触はほぼなかったようなので、感染の拡大は最小限に収まりそうだ。
二つ目もプラハなのだが、こちらは外国人の旅行者という厄介なケースだった。イタリアのミラノの大学に留学しているアメリカ人の学生が、旅行に来たプラハで具合が悪くなって、病院に行ったら、検査で陽性の反応が出たというのである。幸いなのは外国人なので、普通の開業医ではなく、外国人に英語で対応できる大きな病院に行ったことだった。一つ目のケースで患者が救急車で運び込まれた病院だったかもしれない。
保健所の人の話では、最初から自分はイタリアから来た人間だということを病院の関係者に告げていたため、普通の待合室には入れられず、すぐに特別な対応が取られて隔離入院することになったという。留学先の大学がこの件で閉鎖になったので旅行に出たとかだったらたちが悪いけど、現時点ではそんな情報はない。もしかしたらこちらがウィーン経由でチェコに入ったという話だったかもしれない。
三つ目はウースティー・ナド・ラベムのケースなのだが、こちらは対策があまりうまくいかなかった例になる。北イタリアのスキー場で滞在中に感染したようなのだが、どういう経緯で入院に至ったのかはよくわからなかった。問題は病院に付き添ったという人の情報によると、ウースティーの病院では何人かの他の患者と同じ病室に入れられていたらしいこと。この病院で感染が広がっていなければいいのだけど。その後、このウースティーで陽性が確認された患者も、プラハの他の二人が入院している病院に移送されて隔離されている。
見事に三者三様に分かれたわけだが、感染の拡大が一番心配されるのは、二番目の旅行者のケースだろうか。観光旅行ということで、あちこち巡り歩いているだろうし、レストランや飲み屋などの人が集まる場所にも足を向けたに違いない。プラハだけでなく他の町に立ち寄っている可能性もあるし、今後調査が行われるのだろう。
三つ目のウースティーのケースは、患者が医者か保健所に連絡をして、その指示で病院に向かったのなら問題はないのだが、付き添いの人と一緒にいきなり病院に行ったのであれば、大きな問題である。あれだけ医者に行く前に相談をしろと繰り返しているのに、それを聞き入れない人がいるということになる。新型ウイルスだとは思わなかったという言い訳はできそうだけど、問題になっている北イタリアのスキー場から帰ってきたのに、軽率だという批判は免れ得まい。
チェコでは、子供たちは感染率も、発症率も高くないことから、学校の閉鎖は考えていないようである。ただ、最初のケースで学会参加者から患者が出たことで、大学が独自の判断で大学の閉鎖を行う可能性はある。大学関係者の中に他にも同じ学会に参加した人がいる可能性は高く、それが明らかになり、その中から感染者が出た場合には確実に閉鎖されるだろう。
これからはチェコでも患者の数が増えていくのだろうけど、毎年のインフルエンザのデータがほしい。年ごとにどのくらいの数の人が感染して、どのぐらいの割合で重症化したり肺炎を起こしたりしたのかという数値がないと、今回のウイルスをどのぐらい恐れるのがいいのか判断できない。今はとにかく恐ろしいが先に立ってしまっている。
2020年3月2日11時。
その後、月曜日の夜までに判明したことを追加しておく。三つ目のウースティーのケースを中心に、いくつか誤解があったが、上の記述はそのままにする。昨日の夜のニュースでは、上に書いたように理解できるような報道だったのである。
一つ目のケースの感染者は、大学の先生で、帰国後も自宅待機の指示がなかったので、普通に大学に出勤していたらしい。その後具合が悪くなって先週の水曜日からは医者とコンタクトをとっており、週末に救急車で運ばれたということのようだ。その結果、勤務先の大学が、確か所属する学部の休校を決めた。
二つ目のケースの旅行者は、イタリアから留学生4人組で旅行に出、先ず飛行機でウィーンに行き、そこからバスでハンガリーのブタペストに向かった。1人はブダペストに残ることを選び、3人でブルノにバスで移動。ブルノでいくつかのレストランや飲み屋に行ったことが明らかになっており、ブルノの人たちはちょっとしたパニックになっているようだ。その後、またバスでプラハに移動し、宿を取ってすぐに夕食に出かけ、出かけた先で感染者となった1人が具合が悪くなったために、タクシーを呼んで全員でモトルの病院に向かったらしい。これは現在収容されているのとは違う病院である。
よくわからないのが、同行者2人が病院に収容されて隔離されているかどうかということである。一応、出国しないようにという指示は出されており、病院の管理下にあるような報道だったのだけど、感染者と同じところには隔離できないだろうから、どうなっているのかねえ。症状が出ていなかったら、そのまま収容はされなかいだろうし、検査ぐらいはしたと考えておこう。
三つ目のケースでは、すでに帰国の途中で体調の不良が現れており、保健所と連絡を取った上で、病院に向かったようだ。その後よくわからない理由でプラハに移送されている。上に書いた他の患者と同室だったというのは、ウースティーの病院ではなく、プラハの初日のことのようで、隔離するための病棟の準備が終わっていなかったために、一部屋に入れられていたが、現在ではそれぞれが個室を与えられ、すでに回復して熱すらない状態になっているのだとか。
3月2日追記。
2020年03月03日
チェコのコロナウィルス対策(二月廿九日)
日本の対応にあれこれいちゃもんをつけてばかりではあれなので、チェコの対応を簡単にまとめておこう。新型ウイルス騒動の勃発以来チェコがとった最大の対策は、中国とプラハを結ぶ直行便の停止を決めたことである。あとは感染者が多発している中国やイタリア北部を筆頭に、国外への移動が緊急不可避なものか十分に検討するようになんて指示が出ていたけれども、これは対策と言えるのかな。
フランス政府の特別機で武漢から帰国した人は、直接病院に隔離され感染の有無を確認するための検査を受けたが、それ以外の中国から帰国した人については、疑わしい症状が出た人しか検査は行なわれていない。これはイタリアで患者が大量発生した後も変わっておらず、飛行機で入国した人に関しては空港で症状が出ている人は検査を受けることになっているようだが、それ以外はそのまま帰宅が許されている。
ただ、北イタリアの患者が大領に発生している地方から帰国した人に関しては、地方の保健所が、潜伏期間とされる14日間の自宅待機を命令することがある。そして、厚生省の関係者も、開業医の代表も、自宅待機中に疑わしい症状がでてもかかりつけの医者に行かないようにということを、口を揃えて強調している。まず、電話で医者、もしくは保健所に相談をしろというのである。
これにはいくつか理由があって、一つは発熱などの疑わしい症状がでてもそれが軽症で済んでいる時点では、ウイルス感染の検査が陽性であれ陰性であれ医者にできることには大差がないことである。相談を受けた医者や保健所が必要性を認めた時点で、特別な救急車を出して、万全の対策をとった上で受け入れの準備のできている病院に運び込むことで、更なる感染の可能性を最小限に抑えようと考えているようである。これが100パーセントうまく行くとは限らないけど。
もう一つは、チェコの開業医の特殊事情である。チェコの医療業界では、主に待遇の差の問題で、若手の人材のドイツ、オーストリアへの流出が進んだ結果、開業医の大半が定年退職寸前という状態になっている。感染した場合に重症化する確率の高い高齢者たちが、医療の現場を支えているわけで、そんなところに感染者に大挙して来られたのでは、医者の感染と重症化が多発して、医療システムの崩壊を招きかねないのである。
さらに、旧共産国の福祉大国であるチェコでは、医者の診察料は原則として必要ない。その結果、退職してすることのない高齢者たちが、ささいなことで医者に出向く傾向があり、開業医の待合室にはお年寄りが集まっていることが多い。そんなところに感染者が混ざったら、最悪の事態を想定しなければならなくなる。
以上のようなリスクを考えた上で、チェコでは何が何でも検査をして陽性の感染者をあぶりだそうとは考えていないのだろう。ウイルスに感染して発症したとしても、軽症ですんで、人に移す前に快癒してくれるのが一番いいわけである。軽症で済む人を病院に呼んで検査をして陽性の確認ができても、現時点では統計上の数字が一つ増える以上の意味を持たない。
渡航手段の限られている中国だけでなく、陸続きのイタリアでも患者が大量に発生した以上、チェコでも感染者が出るのは時間の問題である。これで感染者がゼロであり続けたら検査の正当性を疑う必要が出てくる。大切なのは、チェコ国内で感染者を出さないことではなく、感染者が出ても重症化する患者をできるだけ出さないようにすることである。考えてみれば、チェコ政府、いや厚生省は騒動が中国で収まっていた時点で、すでにこのことを見通していたようにも見える。
問題は、厚生大臣が、時に無表情にも思われるレベルで冷静な発言を繰り返している脇で、バビシュ首相がヒステリックに聞こえる発言をし始めたことだろうか。安倍首相と同じように突然思いつきの政策を打ち出して、社会を混乱に陥れるのではないかとちょっと不安である。国民を不安に陥れてストレスを感じさせないためにも、首相は落ち着いた言動をするべきだと思うのだけどなあ。
ところで、3月に日本に行くことになっている知り合いがいるのだが、日本の受け入れ先から、コロナウイルスの問題で日本に来るのが不安なら、延期してもかまわないという連絡をもらったらしい。その人は、自分の体の抵抗力を信じているから不安は全く感じないと言い、仮に日本で病気になったとしてもそれはそれいい経験になると言って予定通り出発するという。これぐらいの気持ちでいた方が、精神の健康にはいいし、精神が健康であれば、病気になる確率も下がるはずである。
2020年3月1日23時。
日曜日に三件、月曜日に一件の感染者が確認され発表された。
3月2日追記。
2020年02月20日
聖母マリアの碑(二月十七日)
聖母マリアの碑、チェコ語で「Mariánský sloup」は、「柱」と訳す人もいるけど、柱には建物の中にあるイメージが強くて自分では使えない。日本の板碑、つまり薄い石の板に文字が彫りこまれている碑のことを考えると、柱碑と呼んでもいいのだろうけど、「柱」を音読みで「ちゅうひ」にしても、訓読みにして「はしらひ」でも、語呂が悪いことこの上ない。ということで、無難に碑と呼ぶわけだ。
聖母マリアの碑は、オロモウツのドルニー広場に置かれたものがよく知られている。一番上に聖母マリアと幼子イエスの像が乗っかったあれである。オロモウツのものは18世紀に、ペストの流行が終結したことに感謝するために設置されたものである。モラビアがペストに襲われたのは1713年から14年にかけてのことで、流行が終結してすぐに建てられ始め、完成したのは1723年だという。
それに対して、プラハの旧市街広場にも聖母マリアの碑が設置されていたことを知っている人はそれほど多くあるまい。チェコスロバキア第一共和国が独立を達成した1918年の11月初めまでは、旧市街広場のヤン・フスの像にも近い辺りに建っていたらしく、現在でもそのことを記したプレートがはめ込まれているのだとか。
1918年に撤去された聖母マリアの像は、破壊されたのではなくどこかに保管されていたようで、これをどうするかで延々議論が続いていた。旧市街広場の元の位置に再建しようと活動しているグループもあれば、断固反対というグループもあって、プラハ市の中でも意見が半々に割れていた。それが先日のプラハ市議会か、区の議会かで採決が行われ、事前の予想に反して再建案が可決された。それでそろそ工事が始まるんじゃないかな。
もともとプラハの聖母マリアの碑は、オロモウツのものとは違って、ペストの流行の終結に感謝して建てられたものではない。1650年に、チェコの国土を荒廃させた三十年戦争の終結、具体的にはプラハ市がスウェーデン軍の攻囲を撃退できたことに感謝して、設置されたものである。この事実が、1918年に碑が倒された原因にも、現在再建に反対する人が多い理由にもなっている。
三十年戦争の終結は、一般的にはヨーロッパに平和が戻ったという意味でめでたい出来事なのだろうが、チェコ民族の観点から言うと話はそこまで単純ではない。宗教的には、それまでも禁止されながらも黙認されていたフス派などのプロテスタントの信仰が弾圧の対象となり、再カトリック化が強硬に推し進められることを意味した。コメンスキーなどを庇護したモラビアのジェロティーン家も没落して、カトリックに転向した系統が細々と生き延びるに過ぎなくなる。
政治的には、チェコ全土に対するハプスブルク家の支配が強化され、さらなるドイツ化が進行することを意味した。プロテスタント系の諸侯が没落した後に、外国からカトリック系の貴族が入ってきた結果、貴族社会におけるチェコ起源の貴族の割合も低下した。その結果、神聖ローマ帝国内におけるチェコの国体というか、国家的独立性はほぼなくなってしまい、イラーセクの言うところの「暗黒」の時代が始まることになる。
だから、チェコ人にとっては、1918年の独立は、三十年戦争で失った国体の回復をも意味したのである。それが、1918年の独立直後に、三十年戦争の終結を祝う碑が解体された理由になる。しかも、実行したのは、フス派の英雄ヤン・ジシカの名前を冠したジシコフの住民たちだというから、話が出来過ぎているような気もしなくはない。
再建賛成派のほうは、歴史は歴史として理解するにしても、過去に建てられた記念碑を現在の論理で解体するのはどうかということなのだろう。さすがにゴットバルトなど共産党の指導者の像は撤去されたが、第二次世界大戦中のソ連軍の犠牲者をたたえた碑は、解体されないまま残っているものが多く、終戦記念日などには記念式典が行われることもあるから、三十年戦争終結の碑も、個々の戦争指導者をたたえたものではないし、同じように扱うべきだと考えているのではないかと推測する。まあ、観光名所を増やしたいだけという可能性もあるけど。
そんな賛否半々だったのが、予想に反して可決された功労者は、共産党の政治家らしい。審議が行われた議会の議員ではなく、オブザーバーとして参加していて意見を述べたのだが、これを聞いた中立派と一部の反対派が賛成に回った。共産党の政治家が賛成の意見を述べたことが賛成者を増やしたのではなく、強硬な反対の演説をしたことが賛成派を増やす結果につながったのである。
ようは、三十年戦争の終結は、ハプスブルク家によるチェコの国体の解体を意味しており、それを祝うような記念碑を旧市街広場に再建するのは許されないというようなことを語ったらしい。それを聞いた人たちの反応は、共産党員の、未だに1968年のプラハの春の弾圧を否定するような共産党員のお前が言うなというもので、強硬な反対派意外、みな賛成に回った結果、可決されたのだという。
チェコ人のこういうところは、個人的には高く評価している。最近、同じようなことが国会の場でもあったのだけど、その件については、また別稿とする。
2020年2月17日24時。