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2020年10月17日

そろそろ引退してくれないものだろうか(十月十四日)



 武漢風邪の流行の拡大を巡るチェコの政治家の言動にはろくでもないものが多いのだが、今回はゼマン大統領の出鱈目振りである。すでに春の非常事態宣言と厳しい規制の導入に当たって、激しく批判をした人たちに対して、大統領が使うなよと言いたくなるような罵詈雑言を投げていたのだが、今回の規制強化に際しても、「暴言」をはいて物議を醸している。

 レストランなどの飲食店や、ホテルなどの宿泊施設は、春の非常事態宣言に伴う規制によって経営の危機に陥り、廃業を選んだところもかなりあった。春の危機を乗り越えたところで、客が戻りきらないうちに、再度の規制強化でもう倒産するしかないところまで追い詰められているところも多い。春は、政府を強く批判する経営者もニュースに登場したのだが、今回は諦めの表情で、どんな支援でもあれば嬉しいと語る人が多い。それだけ状況は絶望的だという事なのだろう。
 それに対してゼマン大統領は、「この程度で倒産の危機に陥るのは、普段から十分に稼いでいないからであって、倒産するところは倒産するべくして倒産するのだ。そんなところは今回の規制がなくても遅かれ早かれ倒産したに違いない」とか言って、政府を擁護したらしい。無能な経営者だけが倒産するのだと言ったというニュースも見かけた。

 これだけなら、いつもの戯言として騒ぎにもらならなかったのだが、劇場や博物館が閉鎖され、コンサートも禁止された文化関係を支援するために、政府が補助金を出すというのについても無駄なこととして批判した。その理由は、「芸術家が最も傑作を生み出すのは空腹のときだ」というものだった。つまりは、補助金など出さずに、芸術家を生活苦に陥れた方が、傑作を生み出す可能性が高まって、芸術のためには、もしくは芸術家本人のためにもなるということだろうか。
 確かに、過去の芸術家の中には、極貧の中でも創作活動を続け傑作を生み出した人たちもいる。ただ、その作品が誰もが知るべき傑作として認められたのは芸術家の死後であることが多い。それは本人たちの望んだ人生ではなかっただろうし、今の「芸術家」がそんな貧苦に耐えて芸術活動を続けられるとも思えない。それに芸術なんて人生に必要不可欠なものではないのだから、芸術家は芸術家として生きていられるだけで幸せだと思えというのには一面の真実はあるにしても、現状の問題は芸術家としていき続けられるかどうかの瀬戸際にあるという点にある。

 このゼマン大統領の発言には、反ゼマン派の「芸術家」だけではなく、本来ゼマン親派として知られる「芸術家」の中からも、批判の声があがった。ゼマン大統領はお友達の「芸術家」にあれこれ理由をつけて勲章を与えることでも知られているが、そのうちの一人、歌手のダニエル・フールカが、ゼマン大統領の発言に対する批判として、勲章を返上すると言い出した。
 同時に、「昔はそんな奴じゃなかったのに」とか、「何で変わってしまったんだ」とか、かつてのゼマン大統領を偲ぶようなことも言い、「民族に対する裏切りだ」とまで断じていた。「芸術家」を支援しないことが、民族に対する裏切りだというのは短絡的であるにしても、ゼマン大統領を信じていたからこそ反発も大きかったのだろう。

 この発言に、大統領自身は反応していないが、広報官のオフチャーチェク氏が例によって辛らつな批判をしていた。ゼマン大統領の健康状態を考えると、周辺の人たち、いわゆる君側の奸が、好き勝手やってゼマン大統領の評判を必要以上に落としているんじゃないかという気もする。周囲の人間を制御できない時点で大統領としての能力には「?」がつくのだから、これ以上晩節を汚す前に、身を引いた方がゼマン大統領自身のためじゃないかねえ。

 10月28日はチェコスロバキアが建国された日で、毎年この日には大統領府であるプラハ城で、叙勲式が大々的に行われる。今年も、春の感染症の封じ込めに成功したように見えた時期には、プリムラ氏に勲章を授与することを発表するなど、年に一度の晴れ舞台として精力的に準備を進めていたようだ。叙勲者を決めるのは大統領だけではないけれども、大統領の意向が大きく反映され、また拒否などと言うことがないように事前に打診が行われるものである。
 ところが、現在は、武漢風邪の爆発的な流行の拡大の結果、規制が強化されさまざまなイベントが中止に追い込まれているわけである。それなのに、ゼマン大統領とその周辺は、叙勲式を予定通り、当初の予定よりは規模を小さくはするようだが、開催する意向のようなのだ。バビシュ政権の場当たり的な感染症対策を擁護して、規制の再強化は仕方がないというなら、自ら範を示して叙勲式は中止にするなり延期にするなりするのがまともな対応というものではないのか。政府側も中止を申し入れるべきだろうに、なぜか妙に遠慮している。

 こういうところに、大統領も含めたチェコという国の政府のまずい部分が如実に表れている気がする。ゼマン大統領が変わったのかどうかはともかく、今の大統領は見ていられないという点では、フールカの発言は正しい。流石にもう付き合いきれんと思っているチェコ人も多そうだ。
2020年10月15日14時。









2020年10月16日

息詰まる生活再び(十月十三日)



 チェコテレビのニュースが終わって、次はスポーツニュースだと思っていたら、プリムラ厚生大臣が画面に登場して演説を始めた。本来は、昨日月曜日に政府の会議で決まった新たな規制について説明するために午後8時から行われることになっていたのだが、政府の会議が長引いたために中止になったのである。昨日の夜10時過ぎに会議が終わって主要な閣僚が雁首並べて記者会見をしたんだから、今更何を話すんだというのが正直な感想である。

 それはともかく、バビシュ政権は、時間をかけて話し合いをしているという印象を与えるためか、感染症対策に関して、深夜近くになってから記者会見を開いて新たな規制を発表することが多い。それで、朝早くから仕事に出る人たちはすでに寝ている時間なので、規制について知らないまま仕事に出かけるという事態がまま起こる。担当を交替しながらひねもすニュースを流しているテレビ局はともかく、新聞や雑誌の記者たちは、政府の会議が終わる予定だった夕方からずっと待ち続けだったわけだからいい迷惑である。慣れてはいるのだろうけどさ。
 政府の会議は、先週の月曜日から始まった非常事態宣言とともに導入されたさまざまな規制をさらに強化することについてで、事前にさまざまな憶測が流れていた。レストランの営業時間の更なる短縮とか、学校での授業の禁止とか。長らく待たせた挙句に登場した政府の発表は、その憶測よりも厳しいものだった。

 マスクの着用が、屋内だけでなく公共交通機関の停留所にまで拡大されたのは、バスやトラムに乗る際には着用を義務付けられるのだから特に反対もなかろう。一番物議をかもしたのは、レストランなどの飲食店の完全営業禁止だった。非常事態宣言中はずっと適用されるというのだが、宣言事態の延長の可能性も高い以上、春以上に飲食店の倒産が起こりそうである。レストランは持ち帰り用の食事の販売は許可されたが、それだけでは経費すらカバーできないところが多いようだ。最近は外で飲食する機会はほとんどないから実害はないのだけど、月曜日にモリツの前を通ったら、営業禁止でもないのに休業していたのが心配でならない。

 それから、学校に関しても規制が強化され、幼稚園、保育園の類を除く、すべての学校で対面授業が禁止され、オンラインでの授業に移行することが義務付けられた。これは文部大臣の奮闘で、11月2日までという期限がつけられており、二週間ちょっとで少なくとも日本の小学校にあたる部分は再開される予定となっている。
 子供たちが学校に行けないせいで、仕事に出られない親たちに対しては国からお金が出されることになっている。これは仕事のない企業にとっては給与の負担が減ることを意味する。ただ、医療関係者や警察、消防などでは、子供が自宅にいるせいで休まれては仕事が回らない。それで、例外として一部の学校を開けて、そこに医療関係者などの子供たちを登校させることになっている。

 また、高校や大学などには、実家から通うのではなく、寮に入っている生徒、学生も多いのだが、水曜日までに退寮して実家にもどることが求められた。これに関しては、学校側から問題しかないことが指摘され、今朝になって特別な事情がある場合には残ってもかまわないという変更がなされた。その事情としては、自分自身が感染、感染の疑いで隔離されている場合、実家の家族が隔離されている場合、実家に病気の人や高齢者など感染させるのを恐れるべき人がいる場合などが挙げられている。寮から実家にもどる移動の途中での感染の恐れも考えれば、寮の中でじっとしているのが一番だとは思うのだけどね。

 他にも細かいことはあると思うけれども、以上の規制は、停留所でのマスクが火曜日から適用される以外は、水曜日の深夜からの適用だと発表された。それがまたわかりにくいと批判されることになる。水曜日の深夜というのが、火曜日の夜遅く12時過ぎて日付が変わってからを言うのか、普通に理解した場合の水曜日の夜遅く木曜日になるときを指すのかわかりにくいのである。何月何日何時からと言えばいいのに、政治家というのはややこしい言い方しかしない。

 それはともかく、プリムラ厚生大臣の演説の大半は、前日の記者会見の繰り返しだった。特筆すべきことがあるとすれば、珍しく自己批判をして謝罪の言葉を並べたことぐらいである。本当の意味で政治家ではないからできることということか。ただ、失った信頼を取り戻すに足るようなものではなく、この人の言うとおりにすれば、状況が改善されると思えるような希望はもたらさなかった。
 なぜか例外として結婚式とか葬式のようなものが、特別な対策を取ることで開催が許可されているようなのだが、意味不明である。一説にはゼマン大統領が熱心に準備を進めている10月28日のプラハ城でのセレモニーが行えるような規制にする必要があったからだともいう。
2020年10月14日16時30分。










2020年10月14日

バビシュ首相迷走2(十月十一日)



承前
 感染症の拡大が、いよいよどうしようもなくなると、バビシュ首相の意向に沿って出来るだけ規制を強化しない方向で頑張ってきたボイテフ厚生大臣に因果を含めて辞任させ、政府特任の伝染病担当官に任命されていながら、たまにマスコミに意見を発する以上のことはしていないように見えたプリムラ氏を大臣に任命することで、規制の強化に向けて大きく舵を切った。それでも最初のうちは、そこまで厳しい規制はいらないと主張していたのだけど。
 厚生大臣に就任したプリムラ氏の主張する規制の再強化を導入するに当たって、バビシュ氏は国民に呼びかけると称してテレビで演説した。そのときには、チェコの状況はよくないけれどもスウェーデンに比べればマシだという耳を疑うような発言が飛び出した。そもそも感染症対策だけでなく、高齢者や重病者に対する医療のコンセプトが全く違うスウェーデンと死者数を比べても全く意味がないと専門家に言われなかったのかね。いや、恐らくは無視したのだろう。

 再度の非常事態宣言については、専門家の意見に従ったとか、規制の内容は衛生局の専門家が決めるとか、政府では決めないようなことを言いだし、上院議員選挙の第二回投票が行われた金曜日の演説では、規制が強化されるのは国民のせいだとまで言い出した。それによれば、新規の感染者の数が減らないのは、導入された規制を守らない人が多いからだというのである。春はみんな規制を守ってマスクをしていたけれども、最近はマスクを拒否している人が多いらしい。
 統計上、そんな統計があるとも思えないけれども、個人的な感覚では、マスクの着用率は春と変わらないと思う。ただ、春とは違って屋外では着用の義務がないから、付けていない人が多いという印象を持つ人もいるのかもしれない。買い物に行っても春同様にみんなマスクしているけどね。屋外でも自主的にマスクしている人もいるし。自分も外に出ても外すのを忘れて附けっぱなしにしていることもある。

 それから、選挙が行われているというのに、先週の地方議会と上院議員の選挙の第一回投票までは、選挙に行くのは安全だと断言していたのに、週末は外出しないように呼びかけていたのも意味不明である。ANOの候補者で第二回投票に進んだのはそれほど多くなかったから、皆落選してもかまわないとでも考えたのだろうか。実際当選したのも27の選挙区でたったの一人だけだった。外出禁止令は出さないけれども、外出しないように呼びかける、やってることが日本政府に近づいてきた感じである。
 最後には、今後も規制を守らないようなら、規制の強化が続くぞと脅しをかけ、再度の国全体の封鎖が起るとしたら、規制を守らない人たちの責任だと、責任を国民に押し付けやがった。現在の感染の拡大が止まらない現状の原因は、8月から9月の前半にかけて、感染が拡大し始めていたのに何の対策も取らなかったことにある。存在しなかった規制を守らなかったことを批判されても困るというものである。

 地方議会選挙の前の討論会でもそうだったけれども、最近のバビシュ首相の発言には支離滅裂なものが増えている。金曜日のテレビでの演説も、バビシュ首相は、非常事態宣言が出されてからは、プリムラ氏を表に立ててが雲隠れして責任を放棄しているという批判にさらされて、その批判をかわすために急遽設定されたものだった。成功したとはいえないけど。

 首相だけではなくて大臣たちの発言にも何言ってんの? としか言えないものが多く、内閣の支持率低下につながりそうである。今回の地方議会選挙の結果、ANOは勝ったけれども、支持政党に関する世論調査の結果から予想されるほどではなかったという事実が暗示するように、ANOに対する支持は、特に中道から右側の有権者の間で下がりつつあるのである。
 バビシュ首相を強く支持していて支えるべき存在であるゼマン大統領も、非常事態宣言で規制が強化されることで、倒産するのは経営者が無能だからとかいう問題発言をして、反感を買っているからなあ。腕の骨折を押して、イベントに出ているゼマン大統領の姿は、弱々しく頼りがいのある大統領には程遠い。これもまたバビシュ首相にはマイナスの要素であろう。

 仮にの話だが、今回の武漢風邪対策の失敗がきっかけとなって、今まで様々なスキャンダルを乗り越えて存続してきたバビシュ政権が、来年の下院の総選挙結果、倒れるとしたら、非常に皮肉な話である。投資の件で裏切られても中国を支持し続けるバビシュ政権が倒れる原因となるのが、中国からの世界への贈り物武漢風邪だということになるのだから。
 バビシュ首相にとっての救いは、下院の総選挙までまだ一年あることか。失敗を重ねても最終的に感染を押さえ込むことに成功さえすれば、他の誰がやっても同じ結果になったという言い訳で支持者を呼び戻せる可能性はあるが、現在の状況が繰り返すようであれば、選挙で負けるのは必至である。上院議員選挙の結果を見ると市長無所属同盟が一番多くの議席を獲得して、対ANO戦線の一番手に出たようにも見えるけど、国政に関しては疑問符がつくからなあ。ANOが議席を減らしても僅差の第一党にとどまった場合に、ゼマン大統領が簡単に他の党の党首に組閣させるとも思えないし……。前途は多難である。
2020年10月12日23時。






 市民民主党が、今回の非常事態宣言が終了したら下院で内閣不信任案を提出すると言い出した。今なら社会民主党の一部が造反してもおかしくないから、倒閣の可能性はゼロではない。バビシュ政権最大の危機である。









2020年10月13日

バビシュ首相迷走1(十月十日)



 最近バビシュ首相の劣化が酷い。来年の下院の総選挙で海賊党が第一党になって政権交代というのは難しいだろうと思っていたが、今のバビシュ氏が調子で、信じられないような言動を続けるのであれば、ANOの支持者が大きく減って、熱心なバビシュ信者以外は離れてしまう恐れもある。そうなると海賊党ではなく、市民民主党が政権を取る可能性もありそうだ。海賊党にはもう一期ぐらい野党で国政の修業を積んでもらうのが、短期政権で終わらないためにもいいと思うのだけど、どうなることやらである。

 バビシュ首相は、春の武漢風邪流行の始まりのころ、チェコでも感染者が出始めた時点で、非常事態宣言を発した。その際の演説では、非常事態宣言を発したことに関しても、非常事態宣言下で導入される規制に関しても、すべては自分の責任だと断言した。うまくいっているときは自分の手柄にして、問題が起こると他者に責任を押し付けるような発言をすることの多かったバビシュ首相が、武漢風邪の流行という問題に際して、自分が責任を取ると言い出したことに、驚く思いをした人も多かったはずだ。

 それがおかしくなったのは、国境の閉鎖、外出禁止令などの対策が功を奏して、感染者の数が減り始めたころ、そろそろ規制の解除が日程に上がってもいいのではないかと思われ始めたころのことだった。すでにハマーチェク氏がプリムラ氏に代わって対策本部の指揮を執っていたかな。とまれ、専門家である衛生局が感染状況を見て決めることだから、政府に規制の解除をしろと言われても、困るなんてことを言い出した。
 プリムラ氏が対策本部長の役割を内務大臣のハマーチェク氏に譲ったのは、規制を導入して感染の拡大を食い止めるのは厚生省の疫病専門家の仕事だけど、解除するほうは、時期や順番などを決めるのは政治家の役割だと主張してのことだったのだが、バビシュ氏はちゃんと聞いていなかったらしい。頻繁に相互のコミュニケーションの不足を批判するバビシュ氏自身がちゃんとコミュニケーションが取れていなかったのである。

 その後、規制解除を求める勢力の圧力に負けて、専門家の意見をどこまで聞き入れたのかは知らないが、徐々に規制を解除し、夏休みになると、外国への旅行もほぼ無制限、マスクの着用の義務も廃止するなど例年とあまり変わらない状態にまでなった。そのころには、武漢風邪の流行を抑え込んだとばかりに政府の対策のおかげで武漢風邪に勝ったとまで自画自賛していた。野党は春の対策の導入や、その後の解除のやり方が場当たり的で、このままでは第二派が来たときにも対策が遅れると批判していたのだが、批判する前に数字を見ろとか言って威張っていたのがバビシュ首相である。

 プラハのクラブの深夜パーティーで100人以上の集団感染が発生した際にも、操り人形であるボイテフ厚生大臣に、無軌道な感染の拡大は起こっていないと言わせ、同時に経済を止めないという理由で、深夜営業の禁止や、座席数以上に客を入れることを禁止するような、9月の半ばになってから導入された対策も導入されなかった。

 9月が近づいて、休暇で国外の感染地帯に出ていた人たちが職場や学校に戻る前に、ボイテフ厚生大臣がこっそり再導入しようとしていたマスク着用の義務を、大臣が発表する横から口を出して、導入させなかったのもバビシュ首相である。規制については専門家が決めると言っていたはずなのに、横車を押して決定を変えさせた結果、流行の拡大が止まらなくなったのである。この頃は、チェコは感染症の押さえ込みに成功したという神話によっていたから、人々が望まない規制の導入には踏み切れなかったのだろう。これに限らず、バビシュ首相の意向と、現実に必要な対策のスリ合せに腐心していたボイテフ厚生大臣大変だっただろうなあ。調整型の政治家としては、実はそれなりに有能だったんじゃないかという気もしてきた。

 その後、バビシュ首相の予想を超えて、いや期待を越えて患者の数が増え始めると、それまでは、チェコは世界でも感染症対策に成功している国だという主張を突然変えて、状況が非常によくないことを認め始めた。君子は豹変するとは言うものの、それまでの反省もなく、皆が規制を解除して経済の再スタートが必要だというから、規制を解除したらこうなったんだなんて言い訳を述べていたような気がする。確かに野党も含めて規制の解除を求めていたのはそのとおりだけど、最終的に決定したのは政府であって、その責任を負うべきも政府のはずなのだが……。
 長くなったので次回に続く。
2020年10月11日22時。












2020年10月10日

地方議会選挙2020結果4(十月七日)



 三つ目のANOが勝てなかった地方は、リベレツ、中央ボヘミアと隣接するフラデツ・クラーロベー地方である。この地方では前回は第一党になったANOを押しのけて、第二党の社会民主党が市民民主党などと連立を組んで知事を出していた。社会民主党が全国的な凋落を止められない中、知事の座を維持できるのかどうかに注目が集まった。
 フラデツ・クラーロベー地方で第一党になったのは、市民民主党が市長無所属連合などと組んで結成した同盟で、全45議席中12議席を獲得した。第二党になったANOも議席は12だが、得票率で1.5パーセントほど負けての2位だった。3位が海賊党で7議席、4位に社会民主党と緑の党というありえない組み合わせで4議席、同じく4議席を取ったのが、キリスト教民主同盟を中心とする同盟とTOP09を中心とする同盟の2つ。最後にオカムラ党が5パーセントの壁を越えて2議席獲得。全部で7つのグループが議席を獲得したわけだが、単独で候補者を立てたところが少ないので、政党の数で言うと10を越えることになる。

 選挙後の連立交渉は、ここもすんなり進み、市民民主党を中心にした同盟が、海賊党と、キリスト教民主同盟、TOP09を中心とする同盟と連立することになった。つまりANOと社会民主党、オカムラ党の三つが排除されるという形である。知事に選ばれることになったのは、市民民主党の上院議員である。ここでも兼職が起こるわけである。
 この地方で市民民主党と市長無所属連合の同盟が獲得した票は23.5パーセント。地域差というものを考えず、全国的な両党の獲得票の傾向から考えると、「東ボヘミア人」という地域政党も同盟に加わっているし、それぞれ単独で立候補した場合とあまり変わらない結果のようにも思われる。別々に合計23パーセントよりも、一つにまとまって23パーセントの方が獲得議席数が増えるのかな。比例代表制はよくわからない。

 次はANOが勝ったのに、ANO外しの連立が成立した、もしくは成立しそうなところだが、南ボヘミア地方、ビソチナ地方、南モラビア地方、パルドビツェ地方がこれに当たる。
 このうち南ボヘミアでは第一党のANOと第二党の市民民主党の差はほとんどなく、どちらも55議席中12議席を獲得した。ここでは第一党のANOだけではなく、海賊党と市長連合もはずした連立が成立し市民民主党から知事が選ばれることが決まっている。つまり連立に参加するのは市民民主党、社会民主党、キリスト教民主同盟、TOP09と「南ボヘミア人」という地域政党になる。

 ビソチナ地方でも、勝者のANOを排除して、第二党となった海賊党と、第三党の市民民主党を中心に、社会民主党。キリスト教民主同盟、市長連合からなる連立が成立し、知事は市民民主党から出されることになっている。これは海賊党と市民民主党の獲得した議席数が同じで、海賊党に有力な政治家がいないことが理由だろうか。

 南モラビアでは、第二党になったキリスト教民主同盟から知事が出ることになった。キリスト教民主同盟と、3位の海賊党、4位の市民民主党、5位の市長連合が連立を組むようである。二年前の市町村長選挙でも、南モラビアの中心都市であるブルノで、第一党のANOはずしの連立が成立しており、今回もそれに続いたと考えてよさそうだ。この地方は、地方知事だけでなく、ブルノの市長などの汚職疑惑が相次いでいるからANOとANO以外であんまり大差はないような気がするんだけど。

 パルドビツェ地方では、前回と同様に第一党になったANOではなく、社会民主党から知事が出ることになった。全国的に凋落が止まらない社会民主党だが、パルドビツェ地方では、名称隠しなのか他の政党と3PKという同盟を組んで出馬し、ANOに次ぐ第二党の座を獲得した。連立を組むのは知事を出す社会民主党等と、同じ数の議席を獲得した市民民主党+TOP09と、KPPというグループに市長連合となっている。海賊党はここでも連立から排除された。

 続いて第一党になったANOが知事を出して連立与党を主導することが決まっている地方だが、モラビア・シレジア地方とズリーン地方、それにウースティー地方の三つだけである。
 かつて共産党と社会民主党の支持者が多いことで知られたモラビア・シレジア地方は、左寄りの政策を取り入れたANOによって席巻され、ANOの大票田となっている。今回も30パーセントちょっとというリベレツ地方の勝者である市長連合に次ぐ得票率だった。その結果全65議席中24議席を獲得し第二党以下の各党に倍以上の差をつけることに成功した。この圧倒的な勝利と、これまでの協力関係がうまくいっていたことが理由で、ANOの知事が知事を続け、市民民主党+TPO09と、キリスト教民主同盟、何とか議席を確保した社会民主党が連立することになった。

 北ボヘミアのウースティー地方でもANOが他の党に倍以上の差をつける圧勝を果たし、全55議席中17議席。それに第二党の市民民主党8議席、市長連合7議席をくわえて、32議席で過半数を確保する連立が成立する見込みである。ただし、議席を確保した党が全部で8もあるため、別の組み合わせになる可能性もある。ただANOを排除してしまうと過半数を確保するのが難しくなりそうである。
 ここも石炭(褐炭)の産地で、共産党と社会民主党の支持が高かったのだが、度重なるスキャンダルで社会民主党は地方議会の議席を失ってしまった。確か、一時党首として党を引っ張ったパロウベク氏がこの地方から出たのではなかったか。あれこれもめた挙句の果てが、この凋落である。

 最後のズリーン地方は、ANOと第二党のキリスト教民主同盟の差は小さく、キリスト教民主同盟が知事を出して連立を指導する可能性もあったのだが、現知事のチュネク氏の存在が嫌われたのか、ANOではなく、チュネク外しの連立が成立しそうである。この二党は得票率の差が0.45パーセントほどで、獲得議席数は、全45議席中どちらも9だった。連立を構成するのは、ANOに加えて、海賊党と市民民主党、社会民主党の4つの党である。
 ちなみに、この地方では、バーツラフ・クラウス若の率いるトリコローラが、他の政治団体と組んで候補者を立て、全国で唯一議席を確保した。オカムラ氏が最初に上院議員選挙に当選したのもズリーン地方の選挙区だったし、ここの有権者たち、たまにあれっというような選択をするのである。チュネク氏もフセティーン市長、ズリーン地方知事、上院議員の三職を兼ねていたこともあったと記憶するしさ。

 のこりのカルロビ・バリ地方、プルゼニュ地方、オロモウツ地方は、ANOが第一党になったのは共通するが、それぞれの事情で連立交渉に時間がかかっており、どの党から知事が出るのか見通しが立っていない。いやあ、ついつい長々と書いてしまった。
2020年10月8日23時













2020年10月09日

地方議会選挙2020結果3(十月六日)



 結果といいつつまともな結果を書いていなかったので、いくつか注目に値する結果の出た地方、特にANOが第一党になれなかった地方について簡単に書いておく。

 まずは、リベレツ地方からである。この地方は、市長無所属連合の揺籃の地とも言うべきところで、前回の選挙で第一党になったのも市長連合で、現職の知事も市長連合の人である。ただ、最近この地方知事に関して汚職の疑いで捜査を受けるというスキャンダルが勃発したこともあって、どのような結果になるのか注目を集めていた。チェコの場合には、汚職で摘発されても、裁判で無罪になることも多く、またどうせ他もやっているだろうというイメージがあることもあって、疑惑の政治家に対して比較的寛容である。
 結果は、市長連合が圧勝し、全45議席のうち半数に迫る22議席を獲得した。これまでよりも議席を増やしているので、知事の疑惑はあまり問題にされなかったと考えてよさそうだ。第二党になったのは10議席のANO、それに海賊党と市民民主党が5議席ずつで続き、3議席を確保した5位のオカムラ党までが、5パーセントの議席を獲得するためのラインを超えた。

 リベレツ地方でも、社会民主党と共産党の凋落は著しく、共産党は3パーセントちょっと、社会民主党は2パーセントちょっとの票しか集められず、どちらもそれまでの4議席を失うことになった。全部で16の政党、政治団体が候補者を立てているが、バーツラフ・クラウス若が市民民主党から追い出されて設立したトリコローラとか、一時国会に議席を持った緑の党が議席を獲得できなかったのは幸いである。

 選挙後の連立の交渉では、市長連合が海賊党と市民民主党に声をかけていて、市民民主党はこの3党連立に積極的らしいが、海賊党が難色を示して、2党だけの連立を求めていたらしいが、最終的には市長連合の主張が通って3党で連立することが決まったようだ。気になるのは、この地方の市長連合が、全国的に使われている市長無所属連合ではなく、リベレツ地方(のための)市長連合という名称を使い続けていることで、中央からの自立性を主張しているのだろうか。

 二つ目は、人口が最も多い中央ボヘミア地方で、これまではANOが第一党で知事の座も確保していた。ただ、ANOの女性知事が、いろいろと、武漢風邪騒ぎの最中にマスクなどの医療物資が届かないと不満の声を上げた消防士を裁判で訴えるとか、やらかしたせいで支持を落としており、前回と比べると得票率も議席数も減らすことが予想されていた。結果は減らしたものの予想ほどではなく、議席数は−1で15議席となり三番目だった。
 中央ボヘミア地方で勝ったのは、下院議員を務める党首のラクシャン氏が候補者名簿に登場した市長無所属同盟で全65議席中18議席を獲得。第2位の市民民主党は、2議席少ない16議席、3位のANOを挟んで、4位の海賊党が12議席、5位のTOP09と緑の党などの同盟が4議席で、ここも5つの政党が議席を獲得した。
 社会民主党と共産党は、リベレツ地方に比べれば善戦したとは言うものの、どちらも4パーセントちょっとで、5パーセントの壁を越えることはできず、社会民主党は11、共産党は8つの議席を失うことになった。オカムラ党も0.4パーセントほど足りずに議席の確保には至らなかった。不思議なのは、議席は確保できなかったけど、「モラバネー(モラビア人たち)」といういかにもモラビア的な団体が候補者を立ていて、0.07パーセントとはいえ票を投じた人たちがいることである。

 選挙後の連立交渉は、この地方は選挙前からANO外しで話し合いがついていたこともあって、ANO以外の4党が連立することがあっさり決まった。知事になるのは、市長無所属連合の名簿1位だった女性候補である。ただこの人、どこかの町の町長を務めていて、町長と知事の兼職は流石にまずいと思うのだけど、市長無所属連合がどう判断するか注目である。日本的に考えたら県知事と県内の市町村の首長を兼任するのはありえないと思うのだが、民主主義が大好きなチェコだからなあ。
 このANO外しは、単に反バビシュというだけでなく、ANOの知事が、任期の途中で連立を組み替えるという連立から外された党にとっては裏切りを働いたという中央ボヘミア地方独自の事情も絡んでいる。恐らく第一党になった政党から知事を輩出するという合意がなされていたものと考えられる。選挙前から連立交渉ってのはフライングじゃないの? と思わなくもないし、こういうあからさま過ぎる反ANOの姿勢が、逆に既成政党に主導されたANOいじめのように見えて、ANOの支持者を増やさないまでも、支持者が減らない原因になっているのだろう。
2020年10月7日10時。












2020年10月08日

地方議会選挙2020結果2(十月五日)



 今回の地方議会の選挙は、来年行なわれる予定の下院の総選挙の前哨戦という意味も持つ。だから、各種世論調査で30パーセント前後の支持率を保ち続けているANOが、比較的弱いとされる地方議会選挙で他の政党にどのぐらいの差をつけて勝つのかも注目を集めていたが、もう一つの注目は、バビシュ首相と対決姿勢を強めているいくつもの野党のうち、どこが抜け出して野党第一党になるかだった。これには、地方議会の選挙だけでなく上院議員の選挙の結果もかかわってくるから、今週末ま結果は出ないのだけど。

 バビシュ首相と対決姿勢を強めている政党としては、既存の政党側から市民民主党、キリスト教民主同盟、TOP09の三党、新興勢力としては海賊党と市長無所属連合の二党が上げられる。このうち、キリスト教民主同盟は、地方によって支持率のばらつきが大きくANOの対抗馬とするには弱い。地方議会選挙に、下院や上院の議員を務める党の大物を出馬させて票を集めるという子供のけんかに親が出るような手法を使っているのも高く評価できない。

 カロウセク氏がキリスト教民主同盟を割って結成したTOP09は、結党当時の勢いを失いその他の政党の中に埋没しつつある。一時市民民主党出身の政治家が党首を務めていたことからもわかるように、党の象徴だったシュバルツェンベルク氏が引退した後、迷走に迷走を重ねている印象である。実質的な党首だったカロウセク氏も、次の下院の選挙には出ないと言って、裏から反バビシュ連合の結成に尽力するというのだけど成功するとは思えない。この党は、結局シュバルツェンベルク党の顔をしたカロウセク党だったのだろう。世代交代をするなら党名も変えてしまった方がよさそうだ。

 市民民主党は、一時の解党の危機を脱して支持を増やしたが、それも最近頭打ちになった感がある。かつて1990年代から2000年代の初めにかけて、社会民主党と組んで好き勝手にやらかした過去を忘れていない有権者も多く、かつての支持者が完全にもどってきていない印象である。地方に大物政治家がいて中央の意向を無視しがちだという問題もまだ残っているようだし、しっかり過去の清算をしないと、新しい政治家たちは出てきつつあるけれども、ANOを批判しても、お前らも同じことやってるだろという反論に、程度が違うという反論しか出来なくなってしまう。

 以上三つの既存の政党の中で、ANOと対決できそうなのは、市民民主党しかない。実際、今回の地方議会の選挙でも既存の政党の中では圧倒的な支持を集めて一丸多くの議席を確保した。多少の凸凹はあっても全国的に支持者がいるから、どの地方でもある程度の票をえて議席を確保するだけの力があることを示した。疑念があるとすれば、今回来年に向けての実験の意味もあったのだろうが、いくつもの地方で単独ではなく他党と共同で同盟を組んで候補者を立てていた点である。それが新たな支持者の掘り起こしにつながって議席増をもたらす可能性もあるが、かつてのチェコ最大の政党である市民民主党の支持者の中には、姑息な手段だとして反発する人も出そうである。

 そうなると、期待は新興の二政党、海賊党と市長無所属連合ということになる。同時にこの二党は今回の地方議会選挙で前回と比べてもっとも議席数を増やした政党でもある。ただし、どちらの政党にも弱点があって、それをどう解決するかが、来年の下院の選挙で、勝てないまでも、バビシュ政権の成立を阻止するための課題になるだろう。

 海賊党はいくつかの市議会選挙で議席を獲得して、市政で実績を上げた後、地方議会に足場を築く前に国政選挙に進出して、一躍野党の第一党を争う立場に立った。そのため国政にかかわる政治家たちは知名度も高めているのだが、地方に、この地方ならこの人という有力者がいないのが弱点になっている。二年前の市町村議会の選挙でも議席を増やし各地で実績を積み重ね、今回の地方議会選挙でもANOについで二位の座(いろいろな政党の同盟があって明確には決められないのだが)を獲得したから、時間をかければANOに対抗できる唯一の政党になるとは思うのだけど……。
 問題は、保守派の有権者には敬遠されているところか。これも、市町村議会から国会までの活動を通して、意外とまともなどころか、極めてまともな政党で、日本の野党とは違って実務能力もあることを示しつつあるから、そのうちに保守派の中からも海賊党支持者が出てくるかもしれない。このぽっと出ではなく、地道に勢力を拡大してきた政党に必要なのは、やはり時間であろう。

 もう一つの市長無所属連合の場合には、もともと政権に不満を持つ地方自治体の首長たちが集まって結成した党で、地方単位で微妙に違う名称を名乗っていることもあって、党全体としてのイメージにかけるところである。今回の地方選挙でも、単なる市長無所属連合だけでなく、リベレツ地方市長無所属連合のように、チェコテレビの得票率集計では別扱いされているものがいくつかあって、一つの政党なのか別物なのか掴みにくいのである。
 結党の経緯からも明らかなように地方自治に関しては、明確な政策を持ち、高い実務能力を誇るが、ことが外交や国防などという国政レベルの問題になったときにどこまで党全体として意見をまとめられるのかという疑問もある。それから、今回の選挙で地方議会の議員になった人の多くが、同時に市町村の長を務めているのだが、これも兼職できるのが理解できない。ただ、市長たちが作った党であるということは、地方議会であれ、国会であれ、候補者たちが市長たちになるのは当然と言えなくもない。

 政治学者の中には、海賊党と市長無所属連合が来年の下院議員の選挙で同盟を組んで候補者を立てるのがANOを下野させる最善の手だという人がいるが、あまり賛成できない。二つの党の支持者って反バビシュでは一致できても他の点ではあまりに対照的な気がする。実際にこの二党が同盟を組んで立候補したオロモウツ地方では、ANOの得票率は27パーセントと平均よりもかなり高く、この二党は19パーセントほどだった。単独でこれだけの得票率ならすごいが、二党合わせてなら別々に立候補していても大差はなかっただろうと思われる。
 個人的には、ANOの次は海賊党だと確信しているのだが、それが来年の下院選挙で実現するとは、現時点では思えない。あせりすぎているように見えることもあるんだよなあ。あせらずに地道に勢力を増やしていけば、海賊党の時代が来るはずである。
2020年9月6日12時。










2020年10月07日

地方議会選挙2020結果1(十月四日)



 金曜日と土曜日の二日間、より正確には、金曜日の午後と、土曜日の午前中から午後2時までを使って行われた地方議会の選挙の結果は、事前の予想通りバビシュ党であるANOの圧勝だった。全部で13ある地方のうち、リベレツ地方、中央ボヘミア地方、フラデツ・クラーロベー地方を除いた10の地方で、第一党となったのだから、圧勝といっても過言ではなかろう。全国における得票率でも20パーセントを越えて、他の政党、政党同盟を圧倒していた。

 ただし、これがバビシュ氏が望んでいたレベルの圧勝かというとそうも言い切れないところがあって、ANOだけで議会の過半数を確保して、単独与党として知事を出せるような勝利をおさめた地方は一つもない。国政における野党側のANO外しの連立交渉もあって、ANOが地方政府の与党となって、地方知事を輩出できるのは、10よりもはるかに少ないと予想されている。
 この多くの地方でANOが野党化しそうな原因は、国政で連立を組んでいる社会民主党と、与党ではないけれども政府を支持している共産党の凋落である。武漢風邪第二波の対応に失敗したことや、直前の討論会でのバビシュ氏の迷走ぶりから、ANOが予想ほど票を伸ばさないのではないかとか、一部のANO支持者が見限り始めたのではないかという予想は出ていた。ということは、中道右寄りの支持者を失ったANOは、左の社会民主党と共産党の支持者を取り込むことで、選挙に勝つだけの票を集めることに成功したのだろう。

 そうでも考えないとこの固定支持者の多い2党が、社会民主党は多くの議席を失い、一部の地方では議席を一つも確保できず、共産党は議席が0の地方が過半数という結果は理解しづらい。共産党の場合には、オカムラ党に票が流れた可能性も高いが、どちらの党も大躍進を遂げた海賊党よりも得票数、議席数が少なかっただけでなく、オカムラ党にも逆転されてしまったのである。これは正直以外すぎる結果だった。
 日本と同じで、共産党を中心とする左の政党を支持する人の高齢化が進んでいて、今回の武漢風邪の中で行われた選挙は棄権することを選んだ人も多いのかもしれないが、高齢者も投票できるように老人ホームには出張投票所が設置され、希望する人のところにか感染対策をした選挙管理委員会が投票所の出前を行ったことを考えると、それだけが、この2党の凋落の原因とは考えにくい。

 特に社会民主党は、春の武漢風邪対策で、がちがちの規制強化派であるプリムラ氏が引いた後に対策本部の長となって、対策の指揮を執ったハマーチェク内務大臣が、政治家の人気調査では圧倒的な支持を集めるなど、個人の政治家の人気は回復する傾向にあったので、それが地方議会選挙にもいい影響を与えることが予想、いや期待されていたのだが、完全に期待外れに終わった。
 最近の社会民主党は、選挙運動も迷走することが多く、ポスターなんかを見ても何がやりたいのか、何が主張したいのか意味不明なことが多く、それが選挙での低迷にもつながっている。今回もハマーチェク氏を題材にした選挙運動用のクリップビデオの出来が酷く、いや作品としての出来はいいのかもしれないが、有権者に何も訴えかけないという点で最低なものだったらしい。

 せっかく、自らをチェコの救世主と位置付けて張り切っていたバビシュ首相を押しのけて、感染症対策の顔になって、好感度と支持を高めたのに、ビデオに登場するハマーチェク氏が、友人なのかどこぞのおっさんと、バイクで二人乗りしてツーリングするという、えっと目を疑ってしまう内容のビデオが選挙に向けて公開されたらしい。ハマーチェク氏の活動のおかげで、ツーリングできるようになりましたということなのか、二人乗りしても感染しないということなのか、有権者置き去りである。
 それなら、ANOは左っぽい政策も取り入れていて、地方政府の与党になる可能性も高い、つまりはその公約が実現する可能性も高いから、ANOに入れてしまえと考えた社会民主党支持者がいたとしても驚きはない。ANOとの連立に走ったことで、ANOにアレルギーを感じる支持者を失った上に、連立したことを責めない支持者の一部も失ったと考えると、踏んだり蹴ったりである。

 ANOが、期待したほどの価値を収められなかった理由としては、上にも書いた通り武漢風邪対策の迷走と、バビシュ氏の酩酊したゼマン大統領をも思わせる党首討論会での醜態が挙げられるが、もう一つは、伝統的な大政党とは違って地方組織が弱い、地方で活動して実績を上げてきた政治家がほとんどいないことも挙げられるだろう。
 例外的に、ANOの現職の知事が実績を持ってANO以外の党からも評価され、一般市民にも支持されているモラビアシレジア地方では、ANOは30パーセント以上という数字で圧勝し、選挙後の連立交渉でもANO外しは起こっておらず、ANOの知事が再度知事に選ばれることが確実視されている。

 ちなみに、我らがオロモウツ地方では、現職の知事はANOの人なのだが、モラビアシレジア地方の知事ほどの指示は集めていない。それでもANOが27パーセントの票を集めて圧勝し、55議席中18議席を確保したが、海賊党と市長連盟の同盟が13議席、キリスト教民主同盟を中心とする同盟が12議席、市民民主党が7議席、オカムラ党が5議席という結果になっており、ANO外しで2位から4位までの3つのグループが連立を組む可能性が高い。

 それにしても、今更なのだが、理解不能なのは、下院議員の現職にある人間が、辞職もしないままに、地方議会の選挙に立候補し、当選したら当然のように兼職が認められることである。これって日本の世襲議員の山並みに、民主主義にとってはよくないことじゃないのか。民主主義、民主主義うるさい連中がこれを放置しているのが理解できない。たまに禁止しようという動きは出るけれども、選挙が近づくとうやむやにされるというのがチェコの現実である。既存の政党と違ってANOはこれを原則として禁止しているのかな。それも支持がなかなか減らない理由である。
 この話もうちょっと続けよう。
2020年9月5日18時。










2020年10月06日

地方議会選挙2020(十月三日)



 十月の第一週の週末は、日本の県に近いレベルの地方行政単位である「クライ(地方と訳すことが多い)」の議会の選挙が行なわれた。首都のプラハは、行政レベルでは地方と同じ扱いをされるが、議会選挙は市町村議会の選挙と同時に行なわれるため、今回はプラハを除く13の地方で議員を選ぶ選挙が、比例代表制で行われた。同時に、二年に一回、三分の一ずつ改選される上院の選挙も行なわれたので、全部で81の選挙区のうち27の選挙区では、二つの選挙が同時に行なわれることになった。

 チェコの地方公共団体の首長は直接選挙ではなく、議会に議席を得た政党間の連立交渉で、過半数を確保した側が与党となって、与党の議員の中から選ばれる。だから、選挙で勝って第一党になっても知事や、市町村長を輩出できず、野党の立場に落ちてしまうこともある。その場合、議員になっても国政の大臣に当たるような要職につくこともできなくなる。
 国政の場合には大統領が組閣指名件を持っているので、大抵は下院の第一党の党首が首相に指名されて組閣することになるのだが、地方政府の場合には指名権を持つ人がいないので、第二党以下か連立を組んで第一党を排除する形で連立与党を形成することも多い。というか、バビシュ氏のANO党の台頭以来、第一党となったANOを排除した連立が成立する例が増えている。また地方では、個人的な人間関係による連立なんてこともあるので、国政レベルではありえないような組み合わせの連立が成立することもある。

 今年の選挙は、他のあらゆるものと同様、武漢風邪の流行の影響を被っており、感染者や隔離対象者向けの、ドライブスルー投票所と出張投票所の設置が決まっている。この二つは、本来の投票日である金曜日と土曜日に行うと、選挙管理委員の仕事が大変になるだけではなく、感染の温床になる恐れもあるということで、期日前の水曜日と木曜日に行われることになっていた。回収された投票用紙は開票の始まる土曜日の午後まで役所に保管されるという。ここで保管期間中にすり替えが起こったらどうするなんて質問がニュースでのインタビューで飛び出す辺りはチェコである。

 その最初の投票が行われた前日の火曜日だったか、当日の水曜日だったかは記憶が定かではないのだが、チェコテレビで各党の党首を集めた討論会のようなものが放送された。それまでは、毎日地方ごとにその地方で候補者を立てている政党、グループの地方代表を集めて、政策を論じる討論会が行われてきて、最後の最後に中央の政党の党首を集めたという経緯のようだが、大失敗だった。
 それまでの地方代表の討論会は、出席者の大半が司会役を務めたチェコテレビのアナウンサーの質問に素直に答えていて、質問とは関係のない話を始めたり、他の人が回答しているところに口を挟むような人はほとんどおらず、大きな混乱もなく進行したという印象(ちゃんと見ていないので印象でしかないけれども)だったのだが、党首の討論会はひどかった。

 まず、司会者の質問に直接答える党首がほとんどいなかった。手前味噌、我田引水の連続で、司会者が質問に直接答えるように何度も繰り返さなければならなかった。他の党の回答しているところに茶々を入れたり、発言を被せたりするのも多く、正直まともに聞いていられなかった。一番ひどかったのがANO代表のバビシュ首相だったのだけど、他の党首たちも多かれ少なかれ似たようなことはしていた。仮に自分が有権者だったとしたら、この討論会で投票する党を決めるのは不可能に近い。どれも選びようがないのだ。
 それぞれの党首の振る舞いのひどさに程度の差はあったとはいえ、五十歩百歩だったし、バビシュ氏は反バビシュの陰謀があることを叫び、野党側は大声で反バビシュを叫んでいて、あまり具体的な話は出ていなかった。いや出たのかもしれないけれども、ほとんど印象に残らなかったというのが正しい。

 所属政党を問わず、すべての人が主張していたのは、地方議会と上院とはいえ、民主主義のためには重要な選挙だから、棄権せずに投票してほしいということだった。たださえ投票率の低い、大抵は30パーセントちょっとにおわる地方議会選挙なので、今回の武漢風邪騒ぎで棄権者が増えたら、EU議会並の20パーセント台になるのではないかという恐れがあったのである。投票率が下がることで不利になると予想される党も、こぞって投票を呼び掛けていたのは、民主主義を標榜する以上は当然のことというべきか、みな楽天的だというべきか。
 昨日から始まった選挙は意外と投票率が高くなり、最終的には35パーセントを越えて40パーセントに近づいた。これは地方議会の選挙としては過去二番目に高い数字だという。結果についてはまた明日である。
2020年10月4日22時。











2020年10月03日

非常事態宣言再び(九月卅日)



 辞任したボイテフ氏に代わって就任したプリムラ厚生大臣が、武漢風邪対策の指揮を取るようになって、対策としてのさまざまな規制が強化されてきたが、来週の月曜日、つまり10月5日にまた非常事態宣言が出されることになった。実際のところ、非常事態宣言を出して規制を強化する役を担わせるために、ANOの党員でも、ANO推薦の国会議員でもないプリムラ氏を厚生大臣の座に据えたのだから、予定通りというところではあろう。バビシュ首相がプリムラ氏が正式に提案するまでは、非常事態宣言は不要だと公言していたのは、ANOは規制の強化に積極的ではないというイメージを守るためだろうか。
 ただ、同じ非常事態宣言とは言っても、全国一律で外出禁止令が出て経済活動をストップさせるようなものではないという。春とは違って、レストランなどの飲食店も、大きなショッピングセンターも営業禁止にはならないし、日本の小学校と中学校をあわせた基礎学校も授業は継続される。もちろん完全に普段どおりとは行かないのだが、規制が行われても地方単位のものがあるのはありがたい。

 非常事態宣言にともなって強化される規制としては、レストランなどの飲食店に関するもので、深夜0時以降、午前6時までのあいだの営業禁止が、プリムラ氏の登場で午後十時以降に早められていたのだが、追加で6人よりも多いグループでの飲食が禁止された。人数が多ければ多いほど大声で話すようになり、食事中はマスクの着用義務もなくなるから、感染の危険性が高まると考えられたようだ。
 さらに、ドイツでも導入したとかいう話なのだが、レストランなどの飲食店に入る際に、登録を義務付けるという案も出ている。具体的にどうするのかはわからないが、そのレストランで感染者が確認された場合に、誰がいつどの時間にその店にいたかを把握できるようにしたいということのようだ。いやあ、これ無理だろう。昼食時の混雑を考えたら、店側で来客の名前などを記録していくような余裕があるとは思えない。まあ、それ以前に実行されるかどうかもまだ未定なのだけど。

 劇場関係では、歌を伴う公演が禁止された。つまり普通の演劇やクラシック音楽のコンサートは問題なく開催できるが、ミュージカルやオペラなど歌が中心となる公演は開催禁止。だから歌手のコンサートも屋内であれ、屋外であれ行えないということである。しゃべる演劇はよくて歌うのは駄目というのはよくわからない。
 ネット上の冗談では、これはボイテフ元厚生大臣に対する復讐だというのがある。ボイテフ氏は昔ノバがやっていたオーディション番組に応募して歌を歌っていたらしいのである。予選落ちではなく、準決勝までは進んだらしいから、それなりには歌えて人気もあったのだろう。だからボイテフ氏にコンサートを開かせないように導入された規制だというのである。

 スポーツ関係では、選手、スタッフなど試合場にいる人の数は制限しないが、すべて無観客で行われることになった。これには特にアイスホッケー協会が強く反対していて、何で演劇はよくてホッケーは駄目なのか理解できないと言っている。スポーツの応援の場合には演劇と違って大声で叫ぶことが多いし、終わった後、ファンが集団で飲みに行きがちなのも嫌われた結果のようである。
 因みにスロバキアではすでに非常事態宣言が出されていて、スポーツに対する規制も発表されている。それが会場にいる人数が合計で50人以下とかいう無観客での試合の開催すら不可能な数字で、アイスホッケーの選手たちを中心に抗議集会が行われていた。最終的には政府が譲歩して、開催は可能になったようだが、当然無観客である。

 春にはすべて閉鎖されてオンラインでの授業が行われるところもあった学校関係では、高校の授業がオンラインで行われることが求められている。ただし、これは全国一律ではなく、それぞれの地方の保健所が、感染状況を元に判断して、対面授業を地方全体で禁止するのか、しないのか、もしくは一部の町だけで禁止するのかを決めることになっている。またオンラインではできない実習系の授業は通常通り行われる。大学は高校に準じるようだが、同時に大学独自、学部独自の対策を導入しているところが多いので、すでに一部をオンラインに移行している大学もある。
 幼稚園、保育園、日本の小学校、中学校に相当する学校は、通常通り授業が行われ、マスク着用の規制も高校に比べるとゆるいものになっている。高校大学は授業中もマスク着用が義務付けられるが、中学校以下は、廊下などの他のクラスの人と共同で使う部分でだけマスクが義務付けられているのかな。語学の授業とかマスクしていると大変そうである。

 他にも結婚式や葬式などのイベントの参加人数制限とか、セルフサービスのスーパーマーケットでは使い捨ての手袋を提供しなければならないとか、細かな規制は出ているが、春に行われたものが多く、同時に春ほどは厳しくないという印象である。それでも、いつまで続くかわからないというのは、気を滅入らせてくれる。
 それはともかく、プリムラ厚生大臣とハマーチェク内務大臣の一日あたりの新規感染者が6000を越えるという予言は今のところ実現していないし、非常事態宣言とそれに伴う厳しい規制が本当に必要なのかという疑問はこの騒ぎが収まるまで消えることはないだろう。
2020年10月1日22時30分。











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