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2020年10月07日

地方議会選挙2020結果1(十月四日)



 金曜日と土曜日の二日間、より正確には、金曜日の午後と、土曜日の午前中から午後2時までを使って行われた地方議会の選挙の結果は、事前の予想通りバビシュ党であるANOの圧勝だった。全部で13ある地方のうち、リベレツ地方、中央ボヘミア地方、フラデツ・クラーロベー地方を除いた10の地方で、第一党となったのだから、圧勝といっても過言ではなかろう。全国における得票率でも20パーセントを越えて、他の政党、政党同盟を圧倒していた。

 ただし、これがバビシュ氏が望んでいたレベルの圧勝かというとそうも言い切れないところがあって、ANOだけで議会の過半数を確保して、単独与党として知事を出せるような勝利をおさめた地方は一つもない。国政における野党側のANO外しの連立交渉もあって、ANOが地方政府の与党となって、地方知事を輩出できるのは、10よりもはるかに少ないと予想されている。
 この多くの地方でANOが野党化しそうな原因は、国政で連立を組んでいる社会民主党と、与党ではないけれども政府を支持している共産党の凋落である。武漢風邪第二波の対応に失敗したことや、直前の討論会でのバビシュ氏の迷走ぶりから、ANOが予想ほど票を伸ばさないのではないかとか、一部のANO支持者が見限り始めたのではないかという予想は出ていた。ということは、中道右寄りの支持者を失ったANOは、左の社会民主党と共産党の支持者を取り込むことで、選挙に勝つだけの票を集めることに成功したのだろう。

 そうでも考えないとこの固定支持者の多い2党が、社会民主党は多くの議席を失い、一部の地方では議席を一つも確保できず、共産党は議席が0の地方が過半数という結果は理解しづらい。共産党の場合には、オカムラ党に票が流れた可能性も高いが、どちらの党も大躍進を遂げた海賊党よりも得票数、議席数が少なかっただけでなく、オカムラ党にも逆転されてしまったのである。これは正直以外すぎる結果だった。
 日本と同じで、共産党を中心とする左の政党を支持する人の高齢化が進んでいて、今回の武漢風邪の中で行われた選挙は棄権することを選んだ人も多いのかもしれないが、高齢者も投票できるように老人ホームには出張投票所が設置され、希望する人のところにか感染対策をした選挙管理委員会が投票所の出前を行ったことを考えると、それだけが、この2党の凋落の原因とは考えにくい。

 特に社会民主党は、春の武漢風邪対策で、がちがちの規制強化派であるプリムラ氏が引いた後に対策本部の長となって、対策の指揮を執ったハマーチェク内務大臣が、政治家の人気調査では圧倒的な支持を集めるなど、個人の政治家の人気は回復する傾向にあったので、それが地方議会選挙にもいい影響を与えることが予想、いや期待されていたのだが、完全に期待外れに終わった。
 最近の社会民主党は、選挙運動も迷走することが多く、ポスターなんかを見ても何がやりたいのか、何が主張したいのか意味不明なことが多く、それが選挙での低迷にもつながっている。今回もハマーチェク氏を題材にした選挙運動用のクリップビデオの出来が酷く、いや作品としての出来はいいのかもしれないが、有権者に何も訴えかけないという点で最低なものだったらしい。

 せっかく、自らをチェコの救世主と位置付けて張り切っていたバビシュ首相を押しのけて、感染症対策の顔になって、好感度と支持を高めたのに、ビデオに登場するハマーチェク氏が、友人なのかどこぞのおっさんと、バイクで二人乗りしてツーリングするという、えっと目を疑ってしまう内容のビデオが選挙に向けて公開されたらしい。ハマーチェク氏の活動のおかげで、ツーリングできるようになりましたということなのか、二人乗りしても感染しないということなのか、有権者置き去りである。
 それなら、ANOは左っぽい政策も取り入れていて、地方政府の与党になる可能性も高い、つまりはその公約が実現する可能性も高いから、ANOに入れてしまえと考えた社会民主党支持者がいたとしても驚きはない。ANOとの連立に走ったことで、ANOにアレルギーを感じる支持者を失った上に、連立したことを責めない支持者の一部も失ったと考えると、踏んだり蹴ったりである。

 ANOが、期待したほどの価値を収められなかった理由としては、上にも書いた通り武漢風邪対策の迷走と、バビシュ氏の酩酊したゼマン大統領をも思わせる党首討論会での醜態が挙げられるが、もう一つは、伝統的な大政党とは違って地方組織が弱い、地方で活動して実績を上げてきた政治家がほとんどいないことも挙げられるだろう。
 例外的に、ANOの現職の知事が実績を持ってANO以外の党からも評価され、一般市民にも支持されているモラビアシレジア地方では、ANOは30パーセント以上という数字で圧勝し、選挙後の連立交渉でもANO外しは起こっておらず、ANOの知事が再度知事に選ばれることが確実視されている。

 ちなみに、我らがオロモウツ地方では、現職の知事はANOの人なのだが、モラビアシレジア地方の知事ほどの指示は集めていない。それでもANOが27パーセントの票を集めて圧勝し、55議席中18議席を確保したが、海賊党と市長連盟の同盟が13議席、キリスト教民主同盟を中心とする同盟が12議席、市民民主党が7議席、オカムラ党が5議席という結果になっており、ANO外しで2位から4位までの3つのグループが連立を組む可能性が高い。

 それにしても、今更なのだが、理解不能なのは、下院議員の現職にある人間が、辞職もしないままに、地方議会の選挙に立候補し、当選したら当然のように兼職が認められることである。これって日本の世襲議員の山並みに、民主主義にとってはよくないことじゃないのか。民主主義、民主主義うるさい連中がこれを放置しているのが理解できない。たまに禁止しようという動きは出るけれども、選挙が近づくとうやむやにされるというのがチェコの現実である。既存の政党と違ってANOはこれを原則として禁止しているのかな。それも支持がなかなか減らない理由である。
 この話もうちょっと続けよう。
2020年9月5日18時。










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