2016年04月04日
オロモウツ大勝(四月一日)
仕事帰りに街中を歩いていたら、妙に警官の姿が目立っていた。トラムが通る大通りを渡るために信号待ちをしていたら、警察の車が何台か通り過ぎた。サイレンを鳴らしているわけではないので、大事件が勃発したというわけではなさそうだ。ベルギーでのテロを受けて警戒態勢を強化したというには、始める時期が遅すぎる。それに、プラハならともかく、オロモウツでテロというのは、ちょっと想像しづらい。
うちに帰って、テレビのニュースを見て納得。オロモウツでオストラバのサッカーチーム、バニーク・オストラバとの試合が行われるのだ。バニークのファンは、あらゆるスポーツを通じて、チェコで最悪のファンである。だから、オストラバとの試合が行われるときには、ファンが移動する電車にも警察が乗るし、駅に着いてからスタジアムまでは、余計なことをしでかさないように、警察官が包囲して連れて行く。そして、集団と一緒に来なかったファンが街中で問題を起こさないように、警備体制も強化されることになる。
ファンを直接批判することがタブーになっている嫌いのあるスポーツマスコミによって、バニークのファンは熱狂的な応援で素晴らしいとか、チームが低迷していても応援をやめない素晴らしいファンだとか褒められることも多いが、発炎筒を持ち込みグラウンドに投げ入れたり、相手チームのゴールキーパーに向けて爆竹やビールの入ったプラスチックカップを投げつけたりするような連中は、スポーツを見に来る資格はない。もちろん、バニークのファンがすべてこんな連中というわけではないし、他のチームのファンにもこんな連中はいるのだけれども、サッカースタジアムで大きな問題が起こるのは、たいていバニークかスパルタの試合なのである。
もう十年以上も前の話になるが、ファン同士のオロモウツとのライバル関係が今よりも強かった時代に、オロモウツファンがオストラバでの試合の応援に出かける電車に襲撃をかけて、石だのガラス瓶などを、通行する電車の窓に投げつけた結果、乗っていたファンが大怪我(失明だったかな)をしたという痛ましい事件も起こしている。それに、バニークがスパルタとの試合でプラハに行くだびに、チェコ鉄道の車両は、ファンたちによってかなりの被害を受けているのである。最初からおんぼろの多少は壊されても問題のない車両を使っているとはいえ、試合会場に向かう電車の中で酒飲んで暴れるのは、許されることではなかろう。サッカー協会も、この手のファンに対して妥協しないで、強硬な手段をとらないと、一般のサッカーを見たいファンが会場に足を運ばなくなると思うのだが。
さて、肝心の試合のほうである。バニーク・オストラバは、ここ数年財政上の問題から成績が低迷しぎりぎりで残留というのを繰り返してきたのだが、今年はそれが頂点に達し、ダントツの最下位に定着している。22節を終えて勝ち点8という成績は、チェコのリーグでも滅多に見られない圧倒的な成績である。一方のオロモウツも、秋には何とか残留圏内にいたものの、春に入ってから一勝もできず、降格圏内に碇を下ろしてしまった。勝ち点はここまで17、バニークに抜かれることはないだろうけど、一つ上のイフラバとの差は6点もあり、残留は難しくなってきている。最悪なのは点を取れないことで、ここまでの22節で17点、春になってリークが再開してからの六試合では3点しか取れていない。
前半は、見ていないのだが、互角の展開だったらしい。それでも地力で勝るオロモウツが、オストラバに先制されたものの、すぐに逆転して2対1で終了。後半、テレビのチャンネルをチェコテレビスポーツに替えてすぐに、オロモウツのゴール前の混乱から、オストラバの選手がサイドに出そうとしたパスに、オロモウツの選手の足が当たって、ゴールに吸い込まれて同点。今期のオロモウツを象徴するようなしょうもないゴールで、今日も勝てそうにないと思った。
それが、今日のオロモウツは違った。二年前には、オストラバとの試合で、大逆転負けを喫して、立ち直ることができずそのままずるずると降格してしまった。試合中の選手同士の当たりの激しさという意味でも、結果から見ても非常に痛い試合だったのだが、その再現は御免だとばかりに、攻勢をかけ、まずペナルティエリアでシュートしようとした選手が腰をつかまれたファウルでPKをもらって勝ち越し。そして二年前も主力選手だったオルドシュからナブラーティルへの絶妙のウリチカパスで4点目を取ると、あれよあれよという間に、更に2点追加して、全部で6点も取ってしまった。オロモウツが一部リーグでこれだけ点を取ったのは、2009年ぐらいに、インフルエンザの流行でぼろぼろだったテプリツェを粉砕した時以来じゃなかろうか。これをきっかけに何とか一部に生き残ってほしいものである。
今期のオロモウツは、上位チーム相手には結構互角に戦えている。春になってからも、負けはしたけれども、プルゼニュともスパルタともいい試合をしたのだ。特にスパルタとの試合は、スパルタのバーハのプレーがちゃんと判定されていたら勝てていた可能性もある。バーハは、この試合でフィールドプレイヤーのくせに、GKみたいにパンチングでゴールに向かうボールをはじき出したのだが、後ろにGKもいて一緒にボールに触ったせいか、反則も取られなかった。これは退場でPKを取られても仕方がないプレーである。大事なところでこんな信じられないようなプレーを繰り返すバーハは、代表では絶対に使ってほしくない選手である。こいつ使って負けたら絶対悔いが残るし。チェコのU21代表は、ロンドンオリンピック出場をかけた試合で負けたのだが、止めを刺したのが、こいつのあからさまに意図的なハンドと退場だったもんなあ。
それはともかく、比較的下位のチーム相手に勝てないのが、今期のオロモウツの問題である。これから上位チーム相手の試合が続くみたいだけど、内容はどうでもいいので何とか勝ってもらいたい。このオストラバとの試合でのゴールを、別の試合に残しておけばよかったと言われなくてもいいことを祈ろう。いや、その前に、この試合がエイプリルフールの冗談でしたということにならないことを祈るべきか。
4月2日15時。
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