2016年04月05日
チェコの道路はどこでも高速道路(四月二日)
この週末は、自動車の冬用のタイヤを、普通のタイヤに交換する必要もあって、うちのの実家に滞在することになった。オロモウツからブジェツラフのほうに向かって南に下りていくルートは、高速道路の建設の計画はあるものの、完成しているのはごく一部、プシェロフの先からオトロコビツェまでの20kmぐらいしかない。それにもかかわらず、時速100km以上で走っている車の数が多いのがチェコの交通事情である。
チェコの道路交通法における最高時速は、市街地が時速50km、それ以外が90km、高速道路が130kmということになっている。市街地は道路を走っていて、町や村の入り口の名前の書かれた看板が道路の右側に立っているところから、名前に赤い斜線の引かれた看板が立っているところまでで、この間は特に指定のない限り、時速50km以下で走らなければならない。特に市街地に入るところでスピードを落とさない自動車が多いために、スピードをはかるカメラを設置して、速度が表示されるようにして、制限速度を越えるスピードの場合には、「スピード落とせ」という表示が出るようなシステムや、ダミーの信号が赤になるシステムを導入しているところも多い。
一時期は、市街地でスピードを出しすぎる車の多さに業を煮やした、自治体の間で、スピード違反の車を感知して自動で撮影するシステムを導入して、それを罰金の請求に使用するのが流行ったのだが、プライバシーの侵害に当たるとかいう意味不明の理由で使用が禁止されてしまった。「この区間は速度を測定しています」という表示なしに、自動車の速度を測定して写真を取るのはいけないのだそうだ。こういう人の生命に関わる部分では、自動車を運転するものの権利よりも、安全の方が優先されるべきだと思うのだが、それを許さない当たり、チェコは病んでいるなあ。もしかしたらEUの指示かもしれないけど。同じようなよくわからない理由で、普段は青でスピード出しすぎの車にだけ赤を表示するダミーの信号の使用も禁止されてしまった。
今回も、市街地で50kmで走っていたのに、しかも追い越し近視区間にもかかわらず、われわれの車を追い抜いていった車は片手の指の数では足りなかった。市街地の外に出てからも、時速90kmという日本では高速道路でしか出せないスピードで走っているのに、無理やり抜いていく車は多かった。休日だからこの程度で済んだが、平日の交通量の多いときであれば、反対車線で追い抜きをかける車も多く、恐怖を感じることもあるほどである。
道路脇に小さな十字架が設置されていて、花やろうそくが供えられていることがある。これは交通事故の犠牲者を悼んで遺族が事故現場に設置するものなのだが、すべての遺族がこんな追悼の碑を建てるわけではないことを考えると、その数はびっくりするほど多い。だた、スピードの出しっぷりを見ていると、事故が多いのも納得してしまう。今回もオロモウツの郊外で、点滅するランプが見えると思っていたら、交通事故現場で警察と消防が事故処理の作業をしているところだった。おかげでその場からUターンさせられて、30分以上も時間のロスをしてしまった。
チェコは、街の外に広がる畑の中のところどころにこんもりとした森が残っており、そこに意外なほどたくさんの動物達が生息している。畑で芽を出した農作物を食べている鹿の群などは、牧歌的でほほえましい光景であるが、ときどきウサギやリス、ハリネズミなどが、道路を渡ろうとして車に轢かれて尸をさらしているのには、思わず目を背けてしまう。これが鹿だったら、多分車のほうもただでは済まないはすだ。
チェコの高速道路には規格が二つある。一つはDと一桁の数字で呼ばれるもので、もう一つはRと二桁の数字で呼ばれている。Dで規定されるものの方がランクが高いみたいなのだが、その違いはよくわからない。プラハからブルノを経て現在はプシェロフの近くまで延びているD1は舗装がアスファルトではなく、コンクリート製のパネルを敷き詰める方法を使っているという特徴がある。しかし、これがほかのD高速道路にも適用されているのかどうかはわからない。よくわからないのが、最近、R高速道路の一部がDに格上げされたことである。今回使ったプシェロフの先からオトロコビツェまでの道路も、以前はR55だったのが、D55に名称が変更されていた。その根拠は不明である。
とまれ、どちらも制限速度130kmで、走行のためには、高速道路走行券を買ってフロントガラスの右下の部分に貼っておかなければならない。カミオンなどの大型自動車の場合には、走行料金を自動で調整するシステムがあって端末を購入して登録すると、各地に設置されている装置で高速道路を何キロ走ったかがわかるようになっているらしい。
この高速道路でも、時速130kmを超えて走っている車の数は多く、昔日本で流行った「狭い日本、そんなに急いでどこに行く」というスローガンを思い出してしまった。日本よりもチェコの方がずっと狭く、制限速度も高いのに、スピード違反だらけなのである。
しかも、最近国会では、高速道路の一部で最高時速を150kmに引き上げ、一般道でも一部100kmに引き上げる法案が出されたらしい。それに、サイクリスト向けにビール二杯までだったら自転車に乗ってもいいという法案も提出されているというから、この国の国会議員には交通事故を減らそうという気はあまりないようである。だから、平日の車での移動は避けて、なるだけ車の少ない休日に移動するようにしているのである。
4月3日23時。
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