2016年03月10日
オロモウツプロスポーツ事情(三月七日)
オロモウツには、プロのスポーツチームだと確実に言えるチームが二つある。一つはサッカーのSKシグマ・オロモウツで、もう一つはアイスホッケーのHCオロモウツである。
サッカーのシグマは、昨期二部で優勝して今期から一部のシノット・リーガに復帰したものの、調子が上がらず、シーズンが半分と少し終わった時点で、降格圏内の下から二番目十五位という位置に沈んでいる。以前は、不調のシーズンでも落ちそうで落ちないチームだったのだが、このままではフラデツ・クラーロベーやチェスケー・ブデヨビツェのような降格と昇格を繰り返すエレベーターチームになってしまいそうである。
アイスホッケーのほうは、昨期から一部に復帰してレギュラーシーズンでは下位に沈んで、14チーム中のうち下4チームが参加するプレイアウトを経て、13位に終わったために入れ替え戦への出場を余儀なくされた。何とか残留を果たして、今期は好調で5位に入り、プレーオフに直接進出する権利を得たのである。こちらは一部リーグに定着しそうである、と言いたいのだが、近年のアイスホッケーは、順位の入れ替わりが非常に激しく、前年の優勝チームが入れ替え戦に回ったりするので、油断は大敵である。ヤロミール・ヤーグルを生み、ヤーグルがオーナーを務めるクラドノも、プラハ第二のチームであるスラビアも、現在は一部にはいないのだ。
私がこちらに来た2000年前後、シグマ・オロモウツは一部のガンブリヌス・リーガでがんばっていたが、アイスホッケーのチームは存在しなかった。1993-94のシーズンに、チェコスロバキアが分離して最初のチェコ一部リーグで優勝したのがオロモウツのチームなのだが、その後財政難でチームが分解していき、90年代の後半には、一部リーグに参戦する権利を、カルロビ・バリのチームに売却し、オロモウツは二部リーグに参加する。しかし1999年には二部リーグ参戦の権利も売却され、オロモウツからプロチームは消滅してしまう。優勝時の中心選手で長野オリンピックでも活躍したイジー・ドピタは、フセティーンに移籍し、フセティーンの六回の優勝のうち五回に貢献することになる。
2001年にはチームが再建され、三部リーグの参戦権を購入することで、チェコのホッケーシーンにオロモウツが復帰する。すぐに二部リーグに昇格するがそこから一部リーグに上がるまでには、十年以上の歳月が必要だった。途中でオロモウツが生んだ英雄ドピタがチームを買収してオーナーになったり、ドピタが選手としてオロモウツに復帰したりして、チームの強化が進み2013-14のシーズンになってやっと入れ替え戦に勝利して、一部リーグに復帰できたのである。
ただ、今シーズンが始まるころに、HCオロモウツの事務所が警察の捜査を受けたというニュースが流れ、ほぼ同時にドピタがチームの株式を売却してオーナーから外れたというニュースもあった。ドピタは、その後、一部リーグのトシネツの監督に就任したので、警察の捜査とは関係ないのかもしれない。さすがにチェコでも、あるチームのオーナーが別のチームの監督になるというのは問題になるだろうし。元選手がオーナーになることのあるアイスホッケーでは、オーナーが自チームの監督になるというのはたまにあるのだけど。
一方、2000年代初頭のシグマオロモウツは、一部リーグに欠かせないチームの一つとなっていた。当時のチェコリーグは、スピードもなくチャンスも少なく点も入らないというつまらない試合が多く、オロモウツも例に漏れず、0対0の引き分けを連発していて、見ていて面白いと思えるような試合はほとんどなかった。当時のことをよく言えば守備は堅かった。GKとして足元はいまいちだけど、ライン上でボールを止めるだけなら世界有数の魔術師とまで呼ばれたバニアクが君臨し、攻撃よりも守備に手間をかけていたのだから、点が取れれば勝てることも多かったのだが、スパルタなどの上位チームには本当にいいようにやられていた。しょうもないミスで失点をすることも多かったけど。何かの間違いでFWに点の取れる選手がいると、上位に進出できたけれども、大抵は中盤から下位をうろついているというのが、シグマ・オロモウツというチームの立ち位置だった。
ハパルやラータルなど、オロモウツで活躍して代表に呼ばれ、ドイツなどに買われていった選手が戻ってくることもあったが、それが成績の向上にはほとんどつながらなかった。
以前から、ウイファルシやロゼフナル、コバーチなどを代表に輩出し守備よりの選手の育成には定評のあったオロモウツだが、いつのころからか、攻撃よりの選手も育ち始め、チェコには珍しい攻撃的なチームが出来上がったのが2009〜10年ごろだったと記憶する。このころのオロモウツの試合は勝っても負けても面白かった。
チェコ全体を見ると、2005年ぐらいからスパルタの一強時代が終わり、リベレツやスラビア、オストラバがかわるがわる優勝を遂げ、スパルタ以外のチームでも、優勝を目指して攻撃的なサッカーを志向するようになるのもこの時期である。そして、2010年代に入ると、プルゼニュが攻撃偏重のサッカーで、スパルタとならぶチェコを代表するクラブになっていくのである。
その一方でオロモウツは、攻撃はするけれども得点ができないというよくないパターンにはまってしまって、若手の評価の高かった監督のプソトカでは悪循環に向かった流れを止めることはできずに、成績が凋落していき、2013-14年のシーズンに15位で二部降格の憂き目にあったのだった。
先日久しぶりにテレビで見たオロモウツのサッカーは、攻撃がかみ合わない昔の姿を見ているような気がした。ユース出身の若手を次々に使って上昇気流に乗っていた時代の面影はあまり感じられなかった。若手ばかりで苦境を乗り切れなかった反省から、ベテラン選手を補強したようだが、なんだかやっていることがバラバラで、今年も残留は難しそうだなあというのが正直な感想である。
サッカーにしてもアイスホッケーにしてもオロモウツのチームというだけで応援してしまうのだけれども、応援するからには頑張ってほしいとも思ってしまう。だから今期は、サッカーよりもアイスホッケーということになりそうだ。
3月8日14時30分。
これは優勝したチェコの選手なのかな? 3月9日追記。
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