2017年08月26日
接頭辞の迷宮第一期最終回(八月廿三日)
接頭辞のことばかり書いていても切りがないので、それにチェコ語頭を使って文章を書くのに疲れてしまったし、今回でこのテーマについては一区切りつけることにする。そもそもこのブログは自分の日本語頭の再生のために書いているのだから、たまにだったらいいけど、チェコ語で考えながら日本語で書くのは、ちょっと目的から外れてしまうのである。
いや、ちょっと今、ややこしい文章をチェコ語で書いていて、チェコ語のことを考えるのが面倒くさくなったという面もあるのかな。最初は相乗効果と言うかなんと言うか、結構うまくいっていたのだけど、だんだんだんだんうんざりしてきたのである。チェコ語は好きだけど、たまには忘れたくなることもあるのだよ。と言って日本語での読書に没頭していたのが今の苦境の原因なのか……。
さて、今回は今まで取り上げた接頭辞の反対の意味を持つものについて簡単に触れておく。昨日の分で書いたように、上へ向かう「vy」の反対は、「s」である。「jezdit(=乗り物で行く)」に「s」を付けてちょっと変形させた「sjíždět」から派生した名詞「sjezd」は、アルペンスキーの滑降を意味する。一気に滑り降りていくことを「s」で表しているわけだ。チェコ語の残念なところは、派生動詞が普通に「sjezdit」にならないところで、これが「sjezdit」だったら、最初から最後まで統一感があってわかりやすかったのに。他にも下のカテゴリーに降格するときに使う「sestoupit」、跳び下りるときに使う「seskočit」あたりにこの接頭辞の下へ向かう動きがよく表れている。
この「s」は、現在のチェコ語では前置詞として使うと「〜と共に」と言う意味を表す。それが接頭辞として使うと「下へ」という意味になるのは、かつてのチェコ語では、前置詞も「下へ」という意味で使われることがあったからだという。その使い方が非常に難しく、現在では意味の重なる部分の多かった前置詞「z」に吸収されてしまって、よほど古いテキストでも読まない限り出てくることはないらしい。ただ耳で聞くだけだと「z」が無声化して「s」と区別がつかなくなることが多いんだけどね。
現在の前置詞の意味に近い接頭辞の「s」もあって、二つ以上のものが集まって来るとき、二つ以上の等価のものが結びつくときに使われる。「sejít」はいわゆる再帰の代名詞「se」と共に使って、集まるという意味になるし、「sbírat」は集めるという意味で、派生した名詞「sbírka」は集められたもの、つまりコレクションを意味することになる。「číst(=読む)」につけると、なぜか「合計する」という意味になるけれども、「s」の意味自体は反映されている。
上ではなく、外に向かう「vy」の反対は、中に入る「v」だが、部屋の中に入る時などに使う「vstoupit」、銀行にお金を預けたり出資したりするときに使う「vložit」あたりがわかりやすいだろう。「立ち入り禁止」の意味で使われる「vstup zakázán」の「vstup」は「vstoupit」の派生語だし、貯金の意味で使われる「vklad」は「vložit」の不完了態「vkládat」からできた言葉である。そうだ。もう一つわかりやすい例があった。サッカーの用語のスローインは、チェコ語では「vhazování」という。不完了態の動詞「vhazovat(=投げ入れる)」からできた言葉である。反対はもちろん「vykopat(=蹴りだす)」である。
その前に取り上げた「pře」と「do」については反対の意味が定義しにくいので置いておいて、最初の「při」に戻ろう。この接頭辞の反対の意味を加えるのは「od」である。前置詞だと場所的な意味でも時間的な意味でも「〜から」を意味するので、対義語は「do」になるのだけど、接頭辞の場合には「při」になるのである。これだからチェコ語ってのは……。
この接頭辞は、全体から小さな部分が外れていく動き、基準点から離れていく動きを示している。だから、インターネットに接続されているPCを外す時には「odpojit」を使うし、合計の数字から特定の数値を引き算するときには「odečíst」を使う。こんなの経費の精算か税金の計算のときしか使わないかもしれないけどさ。それから、動作主がいる場所を基準としてそこから離れるという意味では「odejít」が使われる。日本語にすると「行く」「帰る」「出発する」など文脈によっていろいろ訳せる言葉である。旅に出るためにその場所を離れる場合には「odcestovat」なんてのも使えるか。これもサッカーを使うと、自陣のゴール前から遠くに蹴りだすのを「odkopat」と言う。ゴールを基準にしてそこから離れる方向ということなのだろう。
ということで、チェコ語の迷宮接頭辞編の第一期はこれでおしまいである。いつ第二期が始まるのかは、そもそも始まるかどうかは、このブログがいつまで続くか、そしてネタがいつ尽きるかにかかっている。最近二日前の記事を書いていることが多いしさ。
8月25日16時。
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