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2017年08月27日

クビトバーの左手(八月廿四日)



 まずは、こちらの記事の写真をご覧いただきたい。スプラッタなのは苦手という方は見ないほうがいいかもしれない。

http://isport.blesk.cz/clanek/vip-sport/311165/kvitova-ukazala-jak-ji-lupic-zmrzacil-ukazovacek-drzel-na-vlasku.html


 チェコのテニス選手のペトラ・クビトバーが昨年の十二月に強盗に入られ、左手をナイフで切られる大けがをしたという事件については、これまで何回か書いてきた。その手の怪我というのが、重症だとは言うものの、それがどんな怪我だったのかについては、それほど情報がなく想像するしかなかったし、正直な話想像するのも難しかった。
 当初のニュースでは、選手生命を危惧される怪我だと言っていたのに、わずか半年ほどで復帰を遂げたことから、復帰後の戦績は決して安定したものではないけれども、最初に言われていたほどひどい怪我ではなかったのかもしれないなんてことを考えていた。それが、クビトバーが自ら公開したらしい怪我の様子を撮影したこの写真を見たら……。この写真、手術を行なった病院で、クビトバーが麻酔で眠りに落ちてから撮影したものだという。本人が怪我の状態を直接見ていないことを祈ろう。

 それにしても、こんなにひどい怪我だったとは……。骨が見えるというか、かろうじてつながっている状態の指もあるし、この状態から復帰できたことだけでも奇跡じゃないのか。半年だと日常生活に支障がなくなるまで回復するだけでも大変そうである。血のにじむような涙を流しながらのリハビリを乗り越えて復帰したというのは、誇張でもなんでもなく単なる事実に過ぎなかったのだ。マネージャーを務める人物は、今だから言えるけどと前置きして、この左手の状態を見たときには到底復帰できるとは思えなかったと述懐していた。
 それが、復帰できたのは、強盗事件が起こってから、クビトバーにかかわったすべての人々、救急隊の人たちから手術を担当した医師、リハビリを指導した人たちなどなどの努力の賜物だと言える。もちろん、一番讃えられるべきは、クビトバー本人の復帰を目指した強靭な意志と不断の努力である。さすがは、数々の苦難を乗り越えて哲学史に不滅の業績を残したコメンスキーと並ぶフルネク市の名誉市民だけある。
 そうなると唯一の不満は、いまだ犯人を捕らえられないどころか、捜査自体が行き詰っているらしい警察に向かう。所詮政策捜査にすぎないバビシュ氏の事件なんかよりも、このクビトバーを怪我させた犯人を見つける方がはるかに大切だろうに、管轄の内務大臣は何をやっているのだろうか。警察の全力を傾けてでも犯人を捕まえろよ。

 こんなものを見せられると、今年のチェコのスポーツ界の最大の出来事はこれで決まりである。カロリーナ・プリーシュコバーがチェコ人としては初めて世界ランキングの一位になったのも、ルツィエ・シャファージョバーがダブルスの世界一位になったのも、これに比べれば特筆するようなことではない。他のスポーツに目を向けても、最近バルボラ・シュポターコバーが陸上の世界選手権のやり投げて優勝し、男子でバドレイフとフリドリフが銀メダルと銅メダルを獲得したのも、どれもこれも大したことではないように見えてくる。

 今後、クビトバーのことは成績が上がらなくても、無条件で応援していくことになりそうだ。とにかく元気で試合に出場している姿が見られる、それだけで十分だと思わせてくれる。このクビトバーの絶望からの復活劇が、来年のウィンブルドンでの優勝という形で大団円を迎えることを、ちょっと気が早いけれども、祈って今日の分はお仕舞いにする。
8月25日23時。




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