2017年08月28日
パベル・ネドビェットを巡るあれこれ(八月廿五日)
昨日だっただろうか。チェコテレビの7時のニュースを見ていたら、スポーツニュースでもないのに久しぶりにチェコサッカー界最後の英雄パベル・ネドビェットが登場した。この人の名前、これまでは日本の通例に倣って「ネドベド」と表記していたけれども、なんだか落ち着かないので、やはりチェコ語の発音に近づくように「ネドビェット」と書くことにした。末尾の「ト」を軽く発音するのがチェコ語風に響かせるコツである。
ネドビェットが前回一般ニュースに登場したのは、ゼマン大統領とともに中国に出かけた時以来だろうか。あのときは、チェコから送られた遣共使の献上物として、中国でサッカー関係の仕事をさせられたのだったか。下賜されたのは中国企業のチェコへの多額の出資だった。
そのときの仕事に関して、中国の企業と契約を交わしていたのに、謝礼が一コルナも払われていないということで、弁護士にその回収を依頼したらしい。契約を交わした相手の中国企業が、スラビア・プラハのオーナーになっている何とかいう投資会社で、そのチェコ支社の代表でスラビアのオーナーを務めるのがトブルディーク氏である。
ネドビェットが中国に向かったのも、ゼマン大統領の意を受けてなのか、中国企業の意向でなのかは知らないが、トブルディーク氏からの依頼だったようだ。トブルディーク氏は、すでに一部の謝礼は払っているし、残りの分については、契約の条項の中で満たされていないものがあるので、減額して支払う予定だとか反論しているようだ。ネドビェットのほうは、契約に書かれていたことはすべて実行したと言っているのにである。
このトブルディーク氏とネドビェットのどちらの言葉に信頼性があるかと言えば、もちろんネドビェットのほうである。トブルディーク氏なんて元政治家で、所属する社会民主党で孤立してほぼ引退状態になっていたのをゼマン大統領に中国との交渉役に引っ張り出してもらったような人物だよ(この辺は推測なので違うかもしれない)。政治家時代から自分が目立つことしか考えていないと批判されていたし、中国の国家主席がプラハに来たときの過剰なまでの歓迎もトブルディークの仕業だった。今回も目立つためにネドビェットを引っ張り出したに決まっている。詐欺かなんかで捕まってスラビアのオーナーもやめてくれんもんかと思う。中国企業もこんなのを選ぶなんて目がねえよなあ。
そのネドビェットが、えらいさんを務めているのがイタリアのユベントスなのだが、六月の時点では確実だといわれていたパトリック・シクの獲得が破談になった。健康診断で心臓に問題が発覚したらしい。ユベントス側では、そのため数週間の休養が必要になるとか言っていたけれども、ちょうど夏休みに入るところで、特に問題はなかったはずである。
それに対して所属するサンプドリアのオーナーは、シクは完璧に健康だと反論して、交渉を打ち切っていた。ユベントスに移籍しても、レンタルでサンプドリアに残ってプレーするということで話がついていたようだから、移籍金を下げるための交渉のつもりだったのかもしれない。
移籍が消えて傷心のシクをネドビェットが慰めたとか、シクはあまり気にせずにのんきに趣味の魚釣りに出かけていたとかいうニュースを挟んで、イタリアを中心としていくつかの有名クラブがシクの獲得に名乗りを上げたことが伝えられた。ナポリとかインテルとかの名前が聞こえていたのだけど、現時点ではASローマ行きが一番有力なのだそうだ。
シクの移籍問題は、チェコ代表の成績にも関係してくるから早めに決着をつけてほしいものである。U21のヨーロッパ選手権で期待されたほどの活躍ができなかったのも、A代表で監督のヤロリームを納得させられるだけのプレーができなかったのも、噂されていたユベントス移籍が関係しているに違いない。九月初めのワールドカップ予選も現時点では召集外になっている。
チェコ代表の弱点は、得点を計算できる選手が、コレルと一時期のバロシュ以来存在しないことにある。候補者だけは、ずらずらと何人も登場したけれども、一瞬の光芒を放って消えるか、実力の片鱗すら見せられないままに消えていくかで、コレルの後継者探しの道は尸累々と言った状態である。現在中心となっているシュコダにしても、クルメンチークにしても、コレルの後継者というにはまだまだである。できればこの辺を飛び越えてシクに代表のフォワード一番手として定着してもらいたいところなんだけどねえ。
移籍という自分だけではどうしようもない問題に、若いシクが振り回されないのは無理だろうけれども、その辺のフォローは、ユベントスからの罪滅ぼしということで経験豊富なネドビェットに期待してもいいのだろうか。ネドビェットも、スパルタからイタリアに移籍したときに、オーナーやらマネージャーやらの意向で、いろいろ大変だったらしいし。
8月27日11時。
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