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2017年08月03日

飲而語、語而復飲(七月卅一日)



 土曜日の三人での宴は、当然酔郷に及んだのであるが、自邸での饗宴ではなかったので着ているものを脱いで与えるには至らなかった。当然の話ではあるし、こんな『小右記』を読んでいる人にしか通用しない冗談から始めてしまうのは、どこから書き始めていいのかわからないからである。断片的な話の内容に取り囲まれて、どちらに進んでいけば出口の光が見えてくるのかもわからない、迷宮の中にいる気分である。

 とりあえず、土曜日にいろいろ話をしたなかで考えたことを、思いつくままに記してみようと思う。まずは世界に恥を撒き散らしつつある政治の話だが、二人とも政治的には特に支持する政党があるというわけではなさそうだった。ネット上で読む新聞などの政治記事は、個々のマスコミのフィルターがかかっていて、日本で普通に暮らしている政治的に右でも左でもない人たちの考えというものが見えてこない。だから日本を離れて長い人間にとっては、貴重な機会でもある。
 マスコミが客観性を失って自らの正義に陶酔してしまっては、存在意義を失うことになると思うのだが、日本のマスコミにはそれに対する危機感さえないようである。自己の正義に陶酔することが許されるのは、せいぜい宗教家と革命家ぐらいのものだ。ただしこの二つに現代の社会で存在意義があるかというとそれはまた別問題であるが。

 とまれ、二人とも現在国会で行なわれているらしい茶番劇にはうんざりしているようで、ほかに重要な議論されるべきテーマがいくらでもあるはずなのに、それらをすべて放り出して、よく言っても針小棒大としか言えない疑惑を元に、延々と無意味な追及を続ける野党側は評価のしようもないと言っていた。だからと言って、首相の側を評価するかというと、そんなことは全くなく、ここまで議論が紛糾してしまった原因は首相の不用意な言動、特に周囲にお友達ばかりを集めた政権運営に問題があると批判していた。

 与党の支持が下がっても、野党の支持が上がらず、その反対にもならないとなると、新政党の出番だと言いたいところだが、都議選で躍進した東京都の新しい地域政党ももぐりこんだ旧来の政治家に牛耳られ始めているようで、与党に対しても野党に対しても期待できなくなってしまった層の受け皿にはなれそうもない。
 そうなると、旧態依然のそしりは免れないだろうが、自民党内の権力闘争の中から、新たな首相が誕生して日本の政治が正常化(チェコ的にはあまりいい意味で使われる言葉ではないが)されるのを期待するしかない。ということで、安倍首相の次の首相候補の話になったのだが、何人か名前の挙がった候補は、年齢や能力などの面で、それぞれ一長一短というところだった。

 ただ、二人の意見が一致したのは、小泉進次郎氏が将来の有力な首相候補となりつつあるということだ。次の首相というには若すぎ経験不足を否めないが、このまま経験をつめば待望論が出てくるのは間違いないと言う。何でも農協改革に力を入れていて、若さに似合わぬ老獪さで成果を挙げつつあるらしい。
 正直な話、親の七光り以外にとりえのない典型的な世襲議員だと思っていたのだが、それは偏見だったようだ。父の小泉首相が自民党の支持基盤の一つであった郵便局を解体したのに続いて、自民党の大票田を解体しようというのだからなかなかのものである。

 世襲議員が増えるのはよくない。女性の政治家の数が少なすぎるから女性の政界進出を支援しなければいけない。どちらも正しく、二世議員を制限し、女性の候補者を増やすのは必要なことである。ただそれを教条主義的に適用してはいけないということなのだろう。世襲議員の中にも本当に能力のある人はいるし、女性だからという理由で能力を超える地位を与えてしまえば失敗するのである。
 その失敗した女性政治家の象徴とも言うべき二人が、同日にそれぞれの役職を辞任したわけだけど、その差が三時間しかなかったという話を聞いて笑うしかなかった。野党の党首のほうは、かつて無責任に政権批判しておけば、一定の顧客のニーズを満たせるテレビのコメンテーターを務めていたという話で、コメンテーター的に批判のための批判に終始したのでは共産党の党首は務まっても、政権奪取を狙う野党の党首は務まらない。二重国籍の問題がなくても、遅かれ早かれ辞任に追い込まれたであろうことは想像に難くない。

 防衛大臣のほうは、安倍首相のお友達内閣の象徴らしい。辞任のきっかけとなった出来事自体は、本人の責任というよりは、法的な位置づけのはっきりしない自衛隊を、法的にはっきりしない任務に送り出さざるを得ない状況を作り出したまま放置した政治家全体の責任であろうが、能力の欠如を批判されても仕方のない言動を繰り返していたようである。できるだけ話題になりにくいように、野党の党首の辞任直後に辞任したという姑息さは本人のものなのだろうか。首相の指示という可能性もあるのか。
 問題が発生したことを貴貨として、自衛隊の海外派遣の条件、任務についての法律の見直しと整備を訴えるぐらいの芸は見せてほしかった。今の自衛隊の国外任務のあり方は、国際的に見ても国内的に見ても健全なものではあるまい。今のままでは、黙って死んできてくれと言って任務に送り出すことになりかねないのである。

 この二人以外にも女性政治家の不始末が相次いでいて、女性の政治家の比率を上げるための優遇が、かえって女性のさらなる政界進出の妨げになっている。男性にも世襲議員を中心に、不始末を起こした女性議員以上に無能なポンコツ議員はいるはずだから、本当に政治的に有能な女性を見出してふさわしい地位につけていくだけでいいはずなのに、与党も野党も有権者受けがいい見た目のよさで女性を評価するからこんなことになるのだ。

 かつて、小泉首相が、自民党をぶっ壊すとか何とか言って、派閥や当選回数などそれまで重視されていた選抜の基準を無視視して、閣僚の任命を行なった。あれが、実力主義の選抜だったのかも、あれによって自民党がどこまで変わったのかも、よくわからないが、今の自民党は、小泉以前の自民党と大差ないようにも見える。野党のほうも社会党並みだから自民党が勝っているという面もありそうだけど、自民党の窮状を救うとして期待されているのが、かつての自民党的にあとを継いだその息子だというのも、皮肉なものである。

 うーん。酔郷の迷宮から光にたどり着くところまではいけなかったなあ。酔いの残った頭で考えていたときは、光をたどって楽園にまでたどり着いた気がして、コメンスキーとお酒の関係について考えた説を証明できそうだと考えていたのだけど。酔っ払いの頭の働きなんて所詮そんなものってことか。

8月1日12時。




posted by olomoučan at 06:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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