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2017年08月01日

有朋自遠方来、もしくは秘密のオロモウツ(七月廿九日)



 縁あって親しくさせていただいているコメンスキー研究者が、チェコ語のサマースクールに参加するためにオロモウツに来られた。今年も来るという話は以前から聞いていたのだが、ご本人のブログを見ていても、いつまでたってもオロモウツに向かうという記事が出てこなかったので、仕事が忙しくて来られなくなってしまったのだろうかと不安だった。
 サマースクールが始まったのが7月24日の月曜日、普通は前日か前々日にオロモウツに入るものだが、前々日の22日まで、忙しく仕事をされている様子が書かれていて、これから日本を出ても間に合わないんじゃないかと思っていた。それが、22日の夕方まで日本で仕事をして、23日の夕方にはオロモウツに到着するという強行軍で無理やり間に合わせてしまったらしい。さすがである。思い返してみると、初めてサマースクールに参加したときには似たようなことをやったかな。あの時は出発の前日に仕事ではなく、飲み屋に壮行会と称して引っ張り出されたんだったか。
 サマースクール第一週の週末にあわせて、プラハの日系企業で活躍している共通の知人もオロモウツまで出てきてくれたので、以前からの約束通り土曜日に三人でお酒を飲みにいくことになった。前回五ヶ月ほど前に一緒にお酒を飲んだときから、楽しみにしていたのである。朋の遠方より来たる有り、亦た楽しからずやである。

 天文時計の前で再会したあと、いきなり飲みに行くのも遠くから来てくれた二人に申し訳ないということで、普通の観光客が足を運ばないところからのオロモウツをお目にかけた。二人とも初めてのオロモウツではないので、典型的な観光名所は一通り回っているのだ。だから、街の中心部の外側のは要塞都市時代の城壁の残骸が残っているところ、見上げるとかつてオロモウツが城砦であったことがよくわかるところをお目にかけることにした。
 ホルニー広場からガレリエ・モリッツの脇を通ると、複雑な形状の屋根が特徴的な聖母マリア何とか教会がある。聖母マリア教会は、前にあれこれ形容詞がついて、いろいろな種類に分かれる。その区別はキリスト教にほとんど興味を抱かない人間にはよくわからない。聖書の伝説か何かに結びついた形容詞なのだろう。「昇天せし聖母マリア」は何となく理解できても、「雪をかぶりし聖母マリア」と言われても何のこっちゃである。

 さらに進んで大通りに出て左に曲がって旧市街のほうを見ると、城壁が一部丸く突き出した形になったところが復元されている。向かい側の保険会社なんかの入ったガラス張りの現代建築物とは対照的である。この通がオロモウツの旧市街の中と外を分けていて、内側の建築物に関しては、新築、改築を問わずかなり厳しい制限がかかっていると聞く。
 反対に右に曲がると、城下の四角い塔のようなものが残っていて、何かの店にされているのが右手に見える。さらに交差点を超えて、右に曲がり旧市街のほうに入ると、美術館や博物館の建物を裏側から見上げることができる。ここから見るオロモウツの街の姿というのは、オロモウツをよく知っている人にとっても、はっとさせられるものである。

 さらに進んで、道がムリーンスキー川とぶつかるところから公園に入ると、所謂オロモウツ城が崖の上に見えてくる。街の内側のバーツラフ広場の側からは、教会と博物館が並んでいるだけで、城という印象は全く感じられないのだが、こちらから見ると、崖の上のいくつかの建物が結びついて全体として城を構成していることがよくわかる。プラハ城ほどではないにしても、なかなかの威容である。この公園の木々がなく、もう少し遠目から見ることができたら、さらに威風堂々たるお城なのだろうが、それだけのために公園の木々を切り倒すわけには行くまい。
 この公園は、地元の人たちの散歩コースになっているけれども、観光客が足を運ぶことはほとんどない。穴場のオロモウツの中でも穴場だと言っていいところである。公園を出てぶつかる通りがコメンスキー通りだというのも、今回の散策にはふさわしかった。狙ったと言いたいところだけど、偶然の産物である。

 そこから旧市街のほうに戻って、大饗宮殿の前を右に曲がって、目指すは聖バーツラフビール醸造所である。前回もここで飲んだのだが、プラハから来た知人は前回は車でプラハに戻るというので、ビールは飲めなかったのだ。ということで、中庭のザフラートカに席を取って、皆でお約束のジェザネーを注文する。出てきたビールが黒と金色できれいに半分半分に分かれていて、写真を撮るところまでが決まりごとである。
 それぞれ専門分野の違う三人だけれども、不思議と話がかみ合うのである。日本の政治、教育、高校、大学、チェコ語、英語などなど、流れるようにテーマを変えながら、ついつい時間を忘れて話し続けてしまった。酒を飲みて語り、語りて復た飲む、是れ亦た説ばしからずやであった。
7月30日23時。






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