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2016年12月16日

全面禁煙(十二月十二日)



 日本では、2020年の東京オリンピックに向けて、外国から応援に来た人たちが不快に感じないように、飲食店の全面禁煙の導入を目指しているらしい。これ、正直やめたほうがいいと思う。非喫煙者が一番不快に思うのは、煙草が吸えるとわかっている飲食店での煙草ではないのだ。

 もちろん、禁煙の店が少ないのは問題だから、完全禁煙の店を増やすことに反対する気はない。ただ、全飲食店が禁煙になってしまうと、今でもちょっと見苦しいレストランや、飲み屋の入り口にたむろして煙草を吸っている集団が増えるのではないかと心配である。特に冬場は、入り口のできるだけ近くで吸おうとするので、出入りの際に邪魔になることもあるし、店の前を通るときにたばこの煙に包まれて不快な気分になることもある。そして、喫煙者のマナーの悪さを反映して、営業時間外に店の前を通ると、たばこの吸い殻がいくつも落ちている。
 日本だと飲食店だけではなくて、コンビニの前で煙草を吸っているのも目に付くことになりそうだ。特に深夜二十四時間営業の店舗の前に誘蛾灯に誘い寄せられた餓のように、煙草を吸うために寄り集まってくる人々の姿は、外国人の目には奇異に写るに違いない。そして、その集団が入り口をふさぐように煙草を吸っていたら、出入りの邪魔になるだけでなく、出入りの際に煙草の煙をかがされることになって、不快感を感じることもあろう。

 そう考えると、外だから煙草を吸えるようにするのではなく、特に道路に面したところ、人通りのあるところでは煙草を吸えないようにした方が、景観上も、他人にタバコの煙を吸わせないという面でもよさそうだ。もちろん歩き煙草なんてもってのほかである。あれは不快なだけではなく危険でもある。
 だから、やはり喫煙は屋内で、屋内の決められた空調設備の整った場所でさせるに限る。下手に飲食店是面禁煙なんてことにすると、喫煙者が路上に出るようになるだけである。それは、決して現在の状況を改善することにはならないだろう。ならば、調理師から従業員まで全員喫煙者の飲食店で、空調設備も最高のものが整ったお店にだけ、喫煙の飲食店としての営業を許可するというのはどうだろう。そして客も基本的に喫煙者だけにしてしまうのだ。

 考えてみれば、オリンピックで日本に来る外国人だって、全員が全員非喫煙者ということはあるまい。飲食店を全面禁煙にしてしまうと、外国から来た喫煙者が不満に思うかもしれない。それに日本で、外国から来た大男達が店の前で煙草を吸っていたら、その店には近づきたくないと感じてしまう人も多いだろう。店の中で座って食事なり飲酒なりしていれば、また感じ方が違うのだろうけど。
 正直な話、飲食店の全面禁煙は、路上の状況を悪化させるだけだろう。禁煙の店が増えることはいいことではあろう。しかし一定数は喫煙できるお店を残しておいたほうがいい。それを認可制にすると、新たな利権ということになりそうなのが問題なのだが……。

 飲食店よりも完全禁煙にしてほしいものがある。それはホテルである。以前、日本に帰ったときに、禁煙の部屋を頼んでいたはずなのに、数が足りないとかで普通の部屋にまわされたことがある。空調設備はもちろんあったので、煙草の煙が残っていて臭いが不快というほどではなかったのだが、内装に染み付いたものがあったのだろう。なんだか鼻の奥にぴりぴりと感じるものがあって、滞在中体調があまりよくなかった。一緒に行ったうちのは、そういうのに敏感なので体調を崩して、二日三日の東京滞在中、ほとんどずっとホテルで寝てすごすという二重の苦痛を味わわされたのだった。
 飲食店なんてせいぜい、数時間しか過ごさないようなところよりも、下手すれば一日の半分を過ごしかねないホテルの部屋の方が、本気で喫煙による不快感を減らしたいと考えているのなら、早急に対策されるべきものであろう。煙草の煙は、その場でかがされるものよりも、染み付いて残ったものの方が不快である。健康被害についてはしらないけれども。

 いや、本気で煙草による健康への害をなくそう、医療費への負担を減らそうと考えているのなら、他にやるべきことはあるだろう。本当に喫煙が喫煙者の健康を損ない、排出された煙が非喫煙者の健康を損なっており、その分、健康保険に負担がかかっているのであれば、喫煙者の保険を別枠にして保険料を上げてしまえばいいのだ。そして、喫煙者用の保険に入っている人にだけ煙草を販売するようにすればいい。生命保険ではおそらくすでにそうなっているはずだから、それを健康保険に導入するだけである。いや、逆に非喫煙者の保険料を下げるという形にした方が反発が少ないか。

 ついでに、飛行機の運賃を体重が軽い人には割引するようなシステム、もしくは、平均体重より少ない分、荷物の重量を増やしてくれるようなサービスを導入してくれないものか。飛行機の運行経費の多くを占める燃料費なんて、重量に比例するのだから。我々チビで体格もよくない人間は、人生において背が高くて体格もいい連中に比べたら、大きな不利を背負って生きているのだ。それぐらいの役得があってもいいじゃないか。バスや電車で座れないときに手すりを掴むのに背伸びし、靴を買いにいけば、サイズがないので女物や子供物の靴を買わされる小さな男の僻みである。
12月12日23時。


 チェコでも飲食店全面禁煙の法律が可決されたらしい。しかし、歩き煙草については特に気にかけてもいないようである。12月15日追記。


posted by olomoučan at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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