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2019年09月02日

勉強しない高校生?(八月卅一日)



 またまた日本の話で申し訳ないのだが、「高2生、3割が勉強時間ゼロ」というかなり衝撃的な記事を見つけた。見出しを見たときには、日本では大学だけでなく高校も勉強しなくてもいい場所になったのかと愕然としたのだが、記事を読んだら、見だしに騙されただけだということがわかった。

 見出しだけからは、高校二年生の3割は全く勉強していないと理解するのが普通、いや、この見出しの掲げ方だと、学校での授業も含めて全く勉強していないと理解する可能性だってなくはないと思うのだが、そうではなかった。こんな見出しのつけ方でいいのか、共同通信。
 実際は「宿題を除く1日の勉強時間がゼロ」だということで、これなら特に驚くにはあたらない。少なくとも我々の時代田舎の公立の自称進学校では、朝の7時半から夕方5時まで、課外とか補習とか言われる強制された希望者が参加する追加の授業を含めて、学校で勉強させられていたし、宿題も山のように出ていたから、宿題以外の勉強を自宅でする時間などないに等しかった。

 さらに読み進めていくと、「休日に授業の予習や復習などを全くしていなかった」とあって、授業のある平日ではなく、休日の勉強時間に関する調査であるらしいことがわかってくる。わかってくるのだが、記事を読んだだけでは、別の調査項目の可能性も否定できない。付載の表に「高校2年生の休日の勉強時間」とあるのだが、希望進路別のデータはあっても、全体を総計したデータがないので、3割が勉強時間ゼロというのが、休日だけを対象にしているという確証は持ちきれない。
 最後にこのデータが「2001年の特定日に生まれた子どもを毎年調査する「21世紀出生児縦断調査」の結果」だということと、回答者数が「約3万人」であることが明らかにされるんだけど、何とも読みにくく、わかりにくい記事の書き方である。長いあれこれ説明の出てくる記事であれば、最初に最も重要な結論を書いておいて、それを細かく説明していくような書き方でもいいのだろうけど、こんな短い記事でそれをやるとこの記事のように、読者が理解したのかどうか確信の持てないものが出来上がってしまう。新聞記者なら記事のタイプによってスタイルを使い分けるぐらいの芸を見せろよというのは、今の日本のマスコミの惨状を考えるとないものねだりなのだろうか。

 調査から明らかになったとされる結論が、「望む進路によって、学習時間に差がついている状況が浮かんだ」って、こんなの調査するまでもなく、予想できることである。就職志望の場合には、進学希望の学生と比べると高校での授業時間からして少ないのが普通なのだから。しかも休日の、しかも宿題以外の勉強時間の調査では、「学習時間に差がついている」という結論を導き出すのに無理がありすぎる。
 仮に、「学習時間に差がついている」という結論を、それが単に予測の確認に過ぎないとしても、導き出すとしたら、必要なのは、平日も含めた授業以外の勉強時間の統計である。当然そこには宿題にかける時間も含まれるべきで、宿題さえしない、もしくは課されない高校生がどのぐらいいるのかの方が、休日どれぐらい勉強しているかよりも重要な情報である。その結果、ありえるとは思うけど、3割の高校生が宿題すらしないという状態であれば、大学進学率が50パーセントなんてことになっている現在、大学教育の無償化がいかに税金の無駄遣いであるかが明らかになる。

 そして、気に入らないのは、「宿題以外の」といういやらしい設問のしかたである。ここに調査を行なった文部省の、高校生が自主的な勉強ができていないのはよくないという一見もっともらしい結論を導くための意図が読み取れてしまう。「休日に授業の予習や復習などを全くしていなかった」というのだが、予習が宿題になっている授業も多いはずだし、復習は宿題で出されたことだけで十分な場合だって多い。宿題以上に復習をするのはテスト勉強ぐらいというのが普通の高校生の姿じゃないのか。テストが終わった後に間違えたところを徹底的に復習するという勉強の仕方もあると思うけど、それを休日にやらなければならないいわれはない。
 そもそも、宿題以外の勉強が指すものがはっきりしないのに、「予習や復習など」云々という結論につながるのがよくわからない。宿題の中に予習、復習が含まれている可能性も高いのである。学校の宿題以外の勉強といわれたら、模擬試験のための勉強、資格試験のための勉強、塾や予備校の宿題ぐらいしか思いつかない。そんなのの有無を元に、高校教育のあり方を評価されても、説得力はまったくない。
 むしろ、休日に学校の勉強をしないで、自分の趣味にかかわる勉強、就職後のことを考えてアルバイトをしているのであれば、逆に高く評価できることになる。例えば歴史好きの高校生が、学校の授業や受験とはまったく関係のない歴史書を読むことを勉強だと認識しているとも思えないしさ。憶測になってしまうのでこの辺でやめるけど、この記事に上がっているデータからは、ほとんど何も読み取れないというのが正しい。

 文部省嫌いのひねくれものが読み取るとすれば、考える能力という本来数値化して評価できるはずのないものを評価するとか言っている新しい大学入試の導入に関連して、今の指示待ち勉強はだめなんだという風潮を盛り上げるためのデータとして使おうとしているのではないかということだ。それにしても中途半端すぎて失敗しているけど。
 このデータについてのコメントで、文部省の担当者が「皆が前向きに勉強に取り組めるよう、授業などの改善に向けた検討を続けたい」と言っているようだが、文部省は検討なんかしないで、何もしないのが、日本の教育には一番役に立つと思う。
2019年8月31日24時。











タグ:日本 文部省
posted by olomoučan at 05:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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