2016年05月04日
チェコ人も知らないチェコ語――トルハーク三度(五月一日)
ここ三日ほど、筆が進まず、内容も中途半端で時間も無駄にかかりすぎているのは、金曜日に久しぶりに飲みに行ったからに他ならない。最近飲まなくなったせいか、一度に飲める量が激減し、飲んだら翌日、翌々日ぐらいまで引きずるようになってしまった。金曜日も、四時間で二杯しか飲んでいないのに、土日は半分使い物にならなかった。午後は、コーヒーを飲んで目を覚ましたはずなのに、昼寝してしまったし。昔は昼寝なんてできなかったのが、できるようになったと考えたほうがいいのだろうか。
とまれ、ゴールデンウィークを利用して、十年以上前にオロモウツでチェコ語の勉強をしていた知人が、オロモウツに来ることになったから、一緒に飲みに行こうと日本語ぺらぺらのチェコ人から連絡があったのが、二週間ほど前のことだっただろうか。そのチェコ人と飲みに行くのも久しぶりだったし、否やはない。場所もスバトバーツラフスキー醸造所のビアホールだから歩いていけるし。
こちらに来てから思うのは、年をとったせいなのか、外国にいるせいなのか、時間の流れが実感よりもはるかに早く、その人と会うのも十年以上ぶりなのだけど、何年か前のことのように思われてしかたがない。懐かしいねえ、久しぶりだねえという感じはあるのだけど、十年といわれるとそんなになるのかなあと思わず遠くを見てしまう。体内時計ではまだ2014年ぐらいのはずなのだけど、それでも十年ぶりかあ。
チェコに来るの自体が久しぶりだというその人は、現代人の例にもれずフェイスブックなどでチェコの友人たちと連絡を取り合っているらしく、一緒にいたチェコ人と二人で、チェコにいる我々より、日本にいる人のほうが、共通の知人の消息に詳しいってのはどうなんだろうと首を傾げてしまった。そんなに連絡を取り合えていたら、久しぶりに会うときのありがたみがなくなるよねというのが、我々の負け惜しみ。
共通の知人の話をしていて思い出したのが、その人が日本に帰った後、ビールを送るといって颯爽と郵便局に向かうのを見かけたチェコ人のことだった。なんか適当な梱包の仕方だったから無事に届くのかどうか不安だったのだが、やはり無事には届かなかったらしい。クッション付きの封筒に瓶ビールを二本入れただけで送ってしまうのはチェコ人だからなあだけど、割れてびしょびしょになってしまった郵便物を律儀に配達してくれる日本の郵便局は素晴らしい。それにしても、流出したビールで他の荷物にも被害が出ていたのではないだろうか。
スーツケースに入れて飛行機に乗せるにしても、小包として郵送するにしても、パッケージングには細心の注意が必要である。郵便局は丁寧に扱ってくれるかもしれないが、外国の飛行場での荷物の扱いのひどさは周知の通りである。ぽんぽん放り投げられても大丈夫なようにしておかないと、大変なことになる。以前、日本から荷物が送られてきたときに、中に入っていた煎餅が粉砕されて、おそらく袋が破裂するのと同時に袋から噴出し、中に入っているもの全てが煎餅の粉まみれになっていたのには閉口した。空気を抜く小さな穴でも開けてあれば、割れはしても粉まみれにはならなかったと思うのだが。その辺は実際に体験してみないとわからないだろう。
スースケースに缶ビールやスリボビツェを入れて帰ったら、缶や瓶が割れてしてえらいことになったという人も多いし、以前はこういう割れそうなものは、手荷物として機内に持ち込んで丁寧に持ち運ぶというのが一番の手だったのだけど、機内に液体を持ち込めなくなってしまったのが痛すぎる。結局は衝撃を吸収するための緩衝材として、タオルや服で巻くのはもちろん、スーツーケースや箱の中でがたがた動かないように固定する必要があるとかいう話で盛り上がってしまった。チェコ人の話では、知り合いの日本人の中には、お酒お持ち帰り用キットとして、そのためだけにスーツケースにつめるものを準備している人もいるらしい。何でも一度スリボビツェが割れてしまって……。
また、そのチェコ人が言っていたのは、最近日本からの荷物が税関で引っかかって消費税を請求されるようになったことへの対策として、日本で買ったものをすべて開封したり、袋にはさみを入れたりして、販売できない状態にしたうえで、価値のないものとして送ると、税関で引っかからないということだった。郵便事故が起こった場合に、何の保証もなくなるだろうけれども、毎回税金を取られるよりはましかもしれない。
その後、チェコの映画で何が好きかという話になったときに、日本から来た人が挙げたのが、「ブルノでの退屈」(直訳)で、これはチェコに住んでいる我々二人は、題名は知っているけれども見たことのない映画だった。チェコの友人は、最近初めて見たんだけどと言いながら「球雷」というツィムルマングループの作品を上げた。チェコ最高の名優ルドルフ・フルシンスキーの演技に感動したらしい。日本だとチェコの映画はお涙ちょうだい的な泣ける話が受けるようだけど、チェコ映画で一番素晴らしいのは、やはり笑えるコメディなのだ。外国人には笑えないことも多いけど。
というわけで「トルハーク」である。この映画を日本から来た人が知らなかったのはともかく、驚いたのは、チェコの友人もスポーツの世界で「ぶっちぎり」的な意味で使われる「トルハーク」を知らなかったことだ。こういうチェコ人多いんだよなあ。スポーツの中継を見ないということか、それとも、中継を見ても実況を聞いていないということだろうか。日本でもここの中継は聞いていられないなんて人がいることを考えると、後者かな。
思い返せば、昔民放のノバがスポーツの中継をしていたころはひどかった。選手の名前を間違えるのはしかたがないにしても、得点したチームを間違えたのには唖然とさせられたし、90分のサッカーの試合中に同じ選手についてのどうでもいい情報を十回以上も繰り返し聞かされたときにはやめてくれと思った。批判がすごかったせいか、ノバ本体はスポーツの中継から手を引き、今ではスポーツ専用チャンネルで中継するようになっているのは、スポーツ界にとっても、視聴者にとっても幸せなことだ。いまでもしゃべるなと言いたくなるアナウンサーはいるけど、昔に比べれば雲泥の差である。チェコテレビでも、アイスホッケーは素晴らしいけど、去年のラグビーのワールドカップを担当していた二人のうちの一人はひどかった。あまりにひどかったので、音量を絞って、集中して聞かないと何を言っているのかわからないぐらいにしてしまった。
だから、チェコ人でも「トルハーク」の意味を知らない人がいるのだろうと考えたのだが、そもそも映画「トルハーク」を知らない人も多いんだよなあ。とまれ、「トルハーク」も、チェコ人の知らないチェコ語なのだ。ふう、やっと題名にたどり着いた。
5月2日11時30分。
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