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2019年07月01日

生産者直売市場(六月廿九日)



 チェコ語で「ファルマーシュスキー・トルフ」だから、カタカナでファーマーズ・マーケットなんて言い方をしてもいいのかもしれないけど、外国に暮らしていると日本語に対して、特に外来語の使用に対して保守的になるところがあるようで、書いてみても口にしてみても、どうにもこうにも落ち着かない。自分が日本にいた時代に定着していなかった言葉は使いにくいのである。

 題名に関する言い訳はこのくらいにしておいて、オロモウツで生産者直売市場というと、昔からトルジュニツェという文字通り市場という名前の場所がある。ただ、以前はベトナム系の人たちの服や履物を売る簡易店舗が並んでいるだけで、特に農家の人が野菜を売ったりなんてことはしていなかったと思うのだが、最近は少なくとも毎週土曜日の朝は、多くの地元の農家の人たちが、自分たちが作った農作物の販売をしている。この前、元代表監督のブリュックネルの姿を見たのもここで、買い物に来る人の数も多く、近くの駐車場に停める場所を探すのも大変なぐらいである。
 その市場で、直売市みたいなのが始まったのが、いつなのかも、以前何もなかったと思っていたころから行なわれていたのかもわからないが、うちのが利用し始めたきっかけは、十年ほど前にプラハからチェコ各地に広まった生産者直売市場の流行が、オロモウツにもやってきて、確か4月ごろから10月ごろまで、毎週土曜日にホルニー広場で行なわれるようになったことである。確か何度か買い物をした農家の人に、トルジュニツェにも店を出していることを教えられたんだったかな。

 そのホルニー広場の生産者直売市場が今年は行われていない。名目上は市庁舎の改修工事のために場所が取れないということになっているようだが、ホルニー広場全体が工事の対象になっているわけでもないので、多少場所を移したり、規模を縮小、もしくはドルニー広場を使うなどすれば、いくらでも対応可能、開催可能なはずなのに不思議な話である。
 もともとホルニー広場の生産者直売市場は、農産物だけでなく食品や木工製品などの生産者も出店することが許されており、下手すると、いつも同じようなものしか並ばないクリスマスや、イースターのときのマーケットよりもいろいろなものが売られていて評判がよかった。しかし、残念ながら、よかったと過去形にしなければならないのである。

 これは、プラハなど他の町でも問題になっていたことではあるが、本来はチェコの農家の人が生産したものを販売するためのもので、そういう人たちにしか出店が許されていなかったのに、いつの間にか、業者、農家から生産物を仕入れた業者が出店するできるようになっていた。そのため、品物について聞いても、全く答えられないお店が増え、ひどいところになると輸入品を店頭に並べていたというから、何のための生産者直売市場なのか意味不明である。
 こういう、制度が本来の目的からはなれて骨抜きにされていく裏に考えられることとしては、担当の役人が、流通を商社や大手スーパーなどに握られて苦しむ農家を支援するという本来の目的を忘れて、儲ける方向に走ったとか、販売業者が担当者に「依頼」して出店できるように制度を変えさせたとかいうことが考えられる。

 オロモウツでは、昨年の地方選挙の結果、新たにANOを中心とする市政府が誕生しているが、この市政府は今年ホルニー広場で生産者直売市場が開催されないことに対して責任を負うべきなのは確かだとしても、生産者直売市場がその当初の目的から外れて輸入品さえ販売されるような場になってしまっていたことの責任は、昨年までの市政府にある。その昨年までの市政府は社会民主党が中心となったもので、市長を務めていたのは今話題の文化大臣スタニェク氏なのである。
 スタニェク市長自信がこの件に度の程度かかわっていたのかは不明だけれども、スタニェク市政があまり評判がよくなかった理由の一端がこんなところにも現れているのである、なんていうと言い過ぎだろうか。
2019年6月30日24時。












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