(2019年投稿記事です。)
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海上自衛隊特別警備隊の創設に関わった幹部自衛官は、なぜ途中で異動命令が出たのか?
特別警備隊に関わった者として、いくつかの事例を耳にすることがありました。
創設に関わった強烈なリーダーの功と罪が、組織にとって不利益となったのでは?
あえてSBU創設者の功と罪を考えてみる!
(前回記事):『倉庫の棚卸はちゃんとしましょう!』
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海上自衛隊で勤務していた時、SBU創設者の先任幹部が退官するという話を耳にしました。
私自身も艦艇開発隊で、SBU関係の試験に従事していたため驚きが一杯でした。
図1 特別警備隊
引用URL:http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2009/2009/image/l310212q.png
その後振り返ってみるといくつかの問題事例の発生や、組織間での問題がありました。
特別警備隊を創設したことについて、彼ほどの強烈なリーダーシップがなければ早期の編成は不可能だったでしょう。
ただ、後方におり組織の中にいた私から見て、功と罪が存在したといえます。
1.1 罪は個人ではなく既存組織としての罪!
ここで、彼自身に全て罪をなすり付ける気持ちは一切ありません。
罪については、特殊部隊という新規の存在をうまく既存組織に適合できなかったという問題があります。
さらに、SBUの組織拡大にともなう歪みを放置した罪もあると考えております。
1.2 功は特別警備隊を定着させたこと!
創設者の最大の功は、特別警備隊を発足・定着させたことに尽きます!
短期間にて必要な人員をそろえて発足させたことは、他の人物には難しかったでしょう。
ソマリア海賊対処派遣にて、立入検査隊支援のSBU派遣などにつながりました
その点を考慮すると、異動させることは悪手だったと言えます。
それでは何が罪と言えるのか、経験したことから推察していきます。
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ある時艦補処武器部に、特別警備隊作戦資材班からのSOSが入りました。
通常は呉造補所又は第1術科学校経由で話が来るので、直接特別警備隊が連絡してくるのは珍しいことです。
珍しいこともありますが、何か緊急の要件なのかと聞いて見ます。
『SBUの物品管理で手に負えない事態が発生したので支援してほしい』
(艦補処武器部にいた補給員が、特別警備隊作戦資材班に転勤していたため)
詳しく内容を聞くと、あぜんとするような事態でした。
『班長はどうした?先任は何か言っていないのか?』
『作戦資材班で処理してくれで、無関心なんです!』
詳細については伏せますが、海幕および内局の決裁を必要とする事態でした。
そんな大事を、特別警備隊だけで処理できるはずがありません。
図2 問題の物品(イメージ)
引用URL:wiki
艦補処・補本・海幕を巻き込んでの後始末となりました。
2.1 必要なことなので実施した。処理はそちらで行って欲しい
後処理終了後に武器部長が特別警備隊側に抗議を入れると、そっけない返事しか帰ってきません。
艦発隊にいたころに、直接やり取りしていたSBUとは何か違う感じになっていました。
『何かSBUが変な状態になっていないか?』
人員も増加して、SBUの部隊の空気がどこか変質したのを感じ取りました。
2.2 幹部中級課程で起きた「SBU副長吊るし上げ事件」
その後、私が幹部中級課程の共通教育(江田島)で、SBUへの不満が爆発した事例がありました。
中級課程学生にSBUの説明をしていたSBU副長を、中級課程学生が吊るし上げしたのです。
(関連記事):『特別警備隊(SBU)副長吊し上げ事件の顛末!』
『SBUのやり方は乱暴すぎる!』
『人員選抜で差し出したのに、人事取扱を悪くして返すのか!』
『運用・訓練支援での準備・実施内容が遅すぎる!』
『中級課程学生にまで内容を「秘匿」するのか!』
1時間以上、100名近い中級課程学生がSBU副長(2佐)を吊るし上げする異常事態でした。
各部隊で、科長などを経験してきた1尉・3佐が、不満を爆発させる事態となりました。
最終的に、中級課程学生を統括する統率科長(1佐)の仲裁で、事態は終了しました。
各種部隊の人間から、これだけの不満を爆発させるほどSBUが変質した原因は、罪といえます。
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当時のことを振り返り、必要とされていたことを用意できなかった罪を考えてみます。
3.1 組織をかみ合わせる仲介者が育たなかった。
罪の部分として、最大のことは組織を融合させる仲介者が育たなかったことだと考えます。
特別警備隊という、全く新しく既存の組織・規則にかみ合わない組織は不和の温床になります。
図3 かみ合わないパズル
この時、円滑な組織運営に必要なのが仲介者の存在です。
既存の組織と新しい組織を仲介する者が、特別警備隊に必要でした。
この役目は、隊長・副長など上級幹部が担うべき役目です。
図4 円滑な紹介
仲介者が育たなかったことが、他部隊との軋轢を生んだ罪と言えるでしょう。
3.2 高度な秘密保全ゆえの忖度が歪みを生んだ
特別警備隊には、訓練や運用のために多くの予算が割当られています。
海幕から、直接ひも付き予算として割当があります。
調達部門では、特別警備隊への忖度がどうしてもありました。
(予算を持つ部隊には、往々にしてあります。)
図5 予算を持つ
引用URL:https://www.pakutaso.com/20170605177500.html
しかし、秘密保全が徹底されているため「あいつらは何をやっているのか?」となってしまいます。
必要な情報開示などを、仲介者を通して行うべきでした。
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知らず知らずのうちに、特別警備隊は組織の中で小さな歪みを生んでいました。
創設者の功は、計り知れないものがあります。
しかし既存の組織に融合させる努力が、やや弱かったと言えます。
その結果小さな歪みが積り、異動という結果になったと考えております。
当時の海自は、特別警備隊をどう取り扱うのか過渡期でもありました。
図6 戦闘要員(イメージ)
引用URL:https://pixabay.com/
優秀な隊員が集まったのに、組織として問題が起きていたのです。
創設期を過ぎて、継続期となった特別警備隊は改善出来ているのでしょうか?
関わりを持ったものとして、心配しています。
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