(2018年投稿記事です。)
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自衛隊幹部の学歴に関して、高卒の上級幹部が存在することを問題視する記事が出ました。
この記事に関して、非常に違和感を覚える部分と共感できる部分がありました。
自衛隊幹部の学歴が低いことが問題じゃないでしょ!入学させない大学側に問題があります。
本当に問題である、専門(軍事)知識吸収意欲をそぐ体質が問題なんです!
(前回記事):『英仏ホタテ戦争で海軍同士も衝突?!』
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(1)幹部が低学歴?そもそも大学が自衛官入学を拒否してるでしょ!
自衛隊幹部の約半数が高卒であり、大学で学ばせる機会を作るべきだという記事が発表されました。
この記事に、元職として非常に違和感を覚えざるを得ません。
(元記事『プレジデントオンライン』2018年9月12日)
何しろ、大多数の大学側が自衛官入学拒否を現在もしているからです。
大学から入学拒否をされるのに、大学で学ばせる機会を作れというのは、変だと言わざるを得ません。
1.1 卒業生の自衛官でさえ大学院入学を拒む現状
私の同期に東大大学院修士課程修了で、海上自衛隊幹部候補生になったものがいます。
彼は、海上自衛隊に勤務して何年かした後、母校の博士課程入学」を希望しました。
自分がいた研究室に戻りたいと希望しましたが、拒否されました。
研究室の教授は歓迎していたのに、大学教授会の方針が現職自衛官の入学を認めない為です。
実際、平然と自衛官入学拒否は差別ではないと公言する大学関係者がいます。
そんな事態を知らず、自衛隊幹部が低学歴と論じるのは不可思議です。
1.2 大学側の独善的意識を変える方が先決では?
記事を書いた人は、幹部自衛官に大学で学ぶ機会を与えよと真剣に考えてくれています。
それならば、大学側の意識を変える方が先なのではないでしょうか?
このようなことをやってた世代が、現在大学の教授陣で居座っています。
図1 学生運動の時代
高卒から部内幹部となった幹部自衛官に、大学教育の機会を奪っているのは、大学側自身です。
まずは、自分と同業の大学陣営に働きかけを行うべきではないかと思います。
こんなことを叫ぶ暇があれば、入学拒否をやめるべきです。
(関連記事):経済的徴兵制が実施される!と叫ぶ皆様方へ
ただ、今回の記事は本当に問題にしなければない部分も、ちゃんと書いてあります。
その部分は、私も実体験から賛成できます。
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(2)全般専門知識習熟を白眼視する術科偏重主義こそ問題!
私ペンギンは海上自衛隊での勤務が長かったのですが、薄々感じていたものがあります。
術科偏重主義に陥って、海外軍事情勢や全般軍事関連知識を吸収しようという考えを白眼視する空気がありました。
1尉になってくると、段々と全体を見渡せるようになります。
そして、海外などの最新情報がどうなっているのか気になりだします。
しかし自分の専門のことをやっていればよいという、上司のプレッシャーがありました。
2.1 専門外の器材について説明できない幹部
艦船補給処にいたときも、そんなことを感じる機会がありました。
当直士官は、課業始めの時間に行われる、処長以下管理職が集まる毎朝の朝礼にて報告をします。
課業時間外での、故障対応・部品手配・故障復旧の状況を報告します。
そんな中、護衛艦主GTの軽微な故障で部品を管理替えで修理すると報告がありました。
そこで故障したGTの名称を当直士官が理解しておらず、グダグダな報告になってしまったことがあります。
図2 ガスタービンエンジン(SM1A)
引用URL:https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/B/Blueforce/20080317/20080317002221.jpg
当直士官本人には専門外の分野だったとはいえ、ちょっといただけません。
艦船補給処は、艦艇全般の補給を担当する機関なんですから・・・
幹部自衛官の、専門外への関心の薄さを実感するエビソードでした。
2.2 中国海軍艦艇にフランス製ヘリ?
今では、当たり前に存在が認識されている、中国海軍艦載ヘリZ-9Cでもドタバタが・・・
図3 中国海軍Z−9C
引用URL:https://image02.seesaawiki.jp/n/2/namacha2/afc0c9605ca03b99.jpg
この機体は、仏(ユーロコプター)製AS-565パンサーのライセンス生産版です。
そんなZ-9Cについて、中国にフランス製ヘリがあるわけないだろ!なんて叫ぶ古参幹部を何度か見たことがあります。
(1989年の天安門事件前真まで、西側兵器ライセンス生産が盛んだった。)
海外軍事ニュースで報道されていることを見ていないことが、よく分かる話です。
2.3 やる気を削いだ上司の言葉:まるで軍事オタクみたい〜!
私ペンギン自身も、全体専門知識習得を白眼視する空気を体感しました。
艦船補給処計画部の、管理業務を兼務していた時です。
特別警備隊(SBU)関係の部品(艦補処統制品目)が、登録され始めた時期でした。
部品登録がされたからには、何に使用されている器材というのを知識として知る必要があります。
当時の課長は、私が艦艇開発隊で特別警備隊関係の実験に参加していることを知っていました。
そのため課内勉強会で、特別警備隊関係の登録部品について講義をしてくれと指示がありました。
(関係記事):【艦発隊】特別警備隊(SBU)に関係する研究について
特別警備隊関係器材は、詳細情報が部内にも知られていないためでした。
『今回登録された部品は、この器材に使われているもので〜』
補本統制部品や艦補処統制部品についての違いを、色々と説明をいたしました。
艦艇全般にわたる部品登録なので、いろいろなものがありました。
図4 補給管理統制品目で見た特警隊装備
その課内勉強会で、上司(先任者の1尉:防大文系卒)から、やる気を削ぐ言葉が出てきました。
『君〜まるで軍事オタクみたいだねえ〜(^○^)an>
はっきり言ってこの言葉に、完全にやる気を削がれた思いがしました。
他の課員(海曹・技官・事務官)は真剣に聞いていたのに(怒)!
その上司にとっては、職種も違う専門外の話だから興味が無いのでしょう。
ただ、今回記事の中で触れられている(軍事・戦争)専門知識に対する軽視という意味では、見事に当たっているといえます。
海上自衛隊の部隊に関わることなのに軍事オタクみたい!で知識習得が軽視される空気があるのは事実です。
この空気は、絶対に改善して欲しいところです。
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(3)自衛隊内部でも危機感を持って、部下を鍛えている人もいる!
なんだか、気が滅入る話をしてしまいましたが、危機感を持っている人たちも幹部自衛官の中にはちゃんといました。
その後転勤した部隊の指揮官は、そんな危機感を持った方でした。
特に若い幹部の世界視野の軍事知識不足を危惧して、教育をしている方でした。
報告や決済で指揮官のところに行くと、いろんなクイズが出題されました。
航空隊のブリーフィングで、若いパイロットに行うアラートクエスチョンを模擬した方法です。
このように鍛えている上級幹部も多くいます。
自衛隊幹部が異様に低学歴!というセンセーショナルな記事は、確かに注目を引くタイトルです。
しかしまずは大多数の大学が、現職自衛官の入学拒否をしているという事実を踏まえて、大学側自身が変わるべきでは?
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自衛隊では、通信制大学の私費での受講はすでに行われており受講している隊員への「スクーリング(対面授業)」参加への配慮を指示する通達が出ており、一応高等教育を受ける機会はあります。
だた、本記事でも書いているように海自内部だと学習意欲をそぐような職場の空気があったりするのも事実です。
(通信制大学に通っている海士(曹候補生)を部下に持ったことがあるのですが、中堅海曹・幹部などからイヤミや嫌がらせがあり、厳しく指導したことがあります。)
まずは、自衛隊部隊内の空気を変えていくのが先かもしれません。
航空学生、部内課程への大卒資格付与の通信教育は私も同意見です。航空学生、部内課程は公費、曹士の希望者には私費で大卒資格付与の通信教育課程を受講させれば良いと思います。また、昨今国民の経済的格差が問題化されています。国防や災害救助、国際貢献のみならず、高等教育の機会を与えることも自衛隊には必要だと思います。自衛隊で得た大卒資格を利用して優秀な若者が市場に出ることや、それを求めて経済的には恵まれないが優秀な若者が入隊し、部隊として新陳代謝が進むことは必要なのではないでしょうか?
航空学生についても、可能であれば大学・短大の学歴資格編入に結び付けられればいいのですが、専門教育(あくまでパイロットとしての教育)に特化しすぎているところもありなかなか難しいところがあります。
(高等工科学校・防衛大学校等は文部科学省の基準に合わせているので高校卒業認定・大学卒業認定が出ています)
授業カリキュラムの修正などで専門学校卒と同等の学位「専門士」を授与できるようにするのがやりやすいかもしれません。
これは防衛省の教育部門の努力次第でしょうね。
航空学生出身者は、優秀な人が多いので追加の教育を受けて大学卒業資格までキャリアを形成していく道を示すもの人事制度として必要だと思います。
(防衛大学校に部内・航空学生向けの大卒資格付与の通信教育制度を設けるのもありだと思っています。)