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2020年02月21日

艦艇開発隊の大衝撃!日本でのショックトライアル実施!

『日本でもショックトライアルを実施していた!』
(2018年投稿記事です。)
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艦艇開発隊で勤務していた時、最大の試験といえばショックトライアル(耐衝撃試験)でした。

米海軍が行っているショックトライアルを、日本でも行っていたことはあまり知られていません。

まさに、壮絶な状況といろいろな葛藤があった試験です。

知られざる、日本でのショックトライアル(耐衝撃試験)をご紹介!
(前回記事):『ロシアが北方領土に対艦ミサイルを増強する真意を見抜け!
\こちらもご参考にPR!/

(1)米海軍で行われているショックトライアル

ショックトライアルといえば、米海軍で行われている実験の状況をご覧になった方も多いと思います。

この時、乗員や試験関係者は乗艦したまま実施されます。
図1 米海軍LCSショックトライアル
LCSショックトライアル.jpg
引用URL:https://www.armytimes.com/resizer/JXCTj3qQ2W-67PqaV_OPkUvu85g=/1200x0/filters:quality(100)/arc-anglerfish-arc2-prod-mco.s3.amazonaws.com/public/WKOJWT7CWZG7RLGRUJI4STTZWM.jpg

米海軍では、動画も公開しています。

1.1 1万ポンドの爆薬による試験


米軍の軍用耐衝撃規格「MIL-S-901D」にて、新造艦での耐衝撃試験を行う項目があります。

米海軍では、以前からショックトライアルを行ってきました。

図2 1982年のCGN-41でのショックトライアル
750px-USS_Arkansas_(CGN-41)_shock_trials.jpg
引用uRL:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/70/USS_Arkansas_%28CGN-41%29_shock_trials.jpg/750px-USS_Arkansas_%28CGN-41%29_shock_trials.jpg

1.2 照明が落ちるほどの激しい衝撃!

最近は、艦内の映像を公開することが少なくなりましたが、以前の試験映像では天井から物が落ちたり、照明が一瞬消えるほどの激しい揺れが襲うのがよくわかります。

意外と知られていない事実として、日本でもショックトライアルを実施したことがあります。
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(2)知られざる日本でのショックトライアル!


私が艦艇開発隊に勤務していた時に、ショックトライアル試験を実施する機会がありました。

当時、除籍船で無人のまま実施した例はあったのですが、実動艦に対して実施した例がほとんどありませんでした。(掃海艇は、実機雷処分訓練にて「耐衝撃試験」を実施している)

図3 耐衝撃試験1
耐衝撃1.png
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/frdc/whatsnew/ssc/taishogeki.files/image002.png

日本でもショックトライアルを実施したことは、ほとんど知られていないと思います。

2.1 乗員・技術者を乗せたまま試験を実施することの葛藤!

日本でのショックトライアル実施には、いろんな壁が立ちはだかりました。

最大限の安全を確保していますが、実際に人が乗ったまま耐衝撃試験を実施するのですから。

実験艦(対象艦)の乗員全員に対して、説明を何度も実施いたしました。

それでもやはり数名の乗員から、試験への不安から下艦希望者が出ることになりました。

艦発隊・技術研究本部(現:防衛装備庁)・海上幕僚監部でも、実艦試験に不安を持つ人が出ました。

どれだけ安全を確保したといっても、不安が残るのは当然です。

ギリギリまで試験の結果を求めるのと、不安を払拭することの難しさを思い知らされました。

2.2 海上試験における指揮と統制問題の露呈

ショックトライアル試験では、海上自衛隊における技術試験の指揮と統制の問題が露呈しました。

開発や技術・実用試験は、開発隊群や艦発隊が実施します。

しかし、作戦部隊に対する指揮権が開発隊群司令にないことが問題になりました。

護衛艦・掃海艇・掃海母艦・多用途支援艦・潜水艦・ヘリコプター部隊など、いくつもの部隊が参加する試験です。

この時の試験は、掃海隊群司令が「俺が指揮権を持って責任を取る!」と決心いたしました。

試験後の報告書で、臨時の海上試験部隊(JTG)を編成して開発隊群司令(海将補)が指揮できる必要がある!と記されるほどの問題でした。
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(3)試験実施!いろんなものが壊れる〜!

いろんな事前調整を経て、何とか試験実施にこぎつけることができました。

数回の水中爆発試験を実施して設計通りに耐えられるのか、どれほどの衝撃データになるのか実験です。

図4 耐衝撃試験2
耐衝撃試験2.jpg
引用URL:https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcTc8JyPakIIdx8ckVzRNfcHYXc91XJ99ocwgQEqNZ2U0n7krcdplg

3.1 潜水艦のレーダーが壊れた〜!

第1回の試験から、波乱が待っていました。

第1回試験の発破終了後、即座に各艦に異常の有無を確認すると、
(潜水艦)『水上レーダー(ZPS)に異常発生!回転が安定しない!』

いきなり、重要な故障が起きる艦が出てきました。

シミュレーション上、水中を伝わる衝撃波から安全な距離にいたはずの潜水艦から異常発生報告が上がりました。

掃海艇の先導で、潜水艦は帰港することになりました。

3.2 実験艦:1MG(主発電機)故障!非常用発電機に切り替え!

数回の発破をするごとに、徐々に損傷が出始める状態になりました。

最終の発破を実施する前に、試験続行か?中止か?の協議が行われました。

最終的には、実験艦の艦長による続行の意志が示され実施することになりました。

最終発破の点火後、実験艦から緊急を知らせる無線が鳴りました。
『1MG(主発電機)故障!非常用発電機に切り替える!』

2機ある主発電機のうち、1機が完全に故障して電源が一時ダウンというところまで行きました。

何とか、電源系統が復帰して試験は終了となりました。

あの時の背中を流れる冷や汗の感覚は忘れることができないでしょう。
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(4)実艦試験からシミュレーションの時代へ・・・

当時、日本で実際に実艦を使ったショックトライアルは、ほとんど公表されることはありませんでした。

しかし記録された貴重なデーターは、衝撃試験の貴重な資料となりました。

実際に記録されたデーターから、シミュレーションの精度が向上して、艦艇設計の基礎となっています。

苦労して実験しただけの効果を得ることができました。

実験艦や損害が出た艦の修理は、かなりの高額となりました・・・
(全ての修理費用は、艦発隊の予算で実施)

こんなことも艦発隊では実施していました!
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posted by sstd7628 at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 軍事技術
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