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2024年06月25日

冷戦の亡霊OTHレーダーが復活するとは!

『冷戦期の亡霊が現代に蘇る!
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最近防衛装備庁が与那国島にて、新型レーダーの試験場を整備していることが話題になりました。

令和5年度に、行政評価を受けたOTHレーダーです。

図1 レーダー
図1 レーダー.png
引用URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000191485.pdf

冷戦期の超兵器OTHレーダーが現代に蘇るとは、想像もしていませんでした。

MIMOレーダーと組みわせて、本土防空の切り札となるか!
(前回記事):『韓国レーダー照射事件は玉虫色の決着!
\こちらもご参考にPR!/
(1)OTHレーダーとは何ぞや?

いきなりOTHレーダーと言っても、何のことか分からないかもしれません。

図2 防空レーダー
図2 ガメラレーダー.png
引用wiki

空自のJ/FPS-5(ガメラ)レーダーを、引き合いに出して説明していきましょう。

1.1 レーダーは水平線より遠くは見えない!

FPS-5ガメラレーダーは、BMDの切り札として活躍しています。

図3 ミサイル探知
図3 ミサイル探知.png
引用URL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10953661/www.mod.go.jp/e/d_act/bmd/bmd.pdf

強力なレーダ―ですが、水平線の先にある物体までは探知できません。

これは電波が直進するため、通常のレーダーでは水平線より下の超遠距離の探知は難しいのです。
(北朝鮮弾道ミサイルの発射の瞬間を、日本が探知できない理由!)

図4 水平線
図4 水平線.jpg
引用wiki

1.2 冷戦期のOTHレーダー

そんな中でも冷戦期に弾道ミサイルの早期探知を目指して、OTH(超水平線)レーダーが開発されました。

図5 原理
図5 OTHの原理.jpg
引用wiki

短波が電離層で跳ね返り遠距離に到達する原理を利用したのが、OTHレーダーの基礎となっています。

冷戦期には、米ソ両国がOTHレーダーを建設して弾道ミサイル探知を目指していました。

図6 ドゥーガ2
図6 ドゥーガ2.jpg
引用wiki

ソ連のOTHレーダーは、巨大な鉄格子となり強力な電波を出していたそうです。

1.3 中国のOTHレーダー

OTHレーダーについては、中国も配備を進めています。

図7 巨大レーダー
図7 巨大レーダー.jpg
引用URL:https://k.sinaimg.cn/www/dy/slidenews/8_img/2017_04/400_34714_206076.jpg/w640slw.jpg

アメリカの攻撃を遠距離から探知するために、中国内陸部に巨大レーダーを設置しています。

既に九州沖縄列島を監視下に置き、ASBM(対艦弾頭ミサイル)と組合わせてA2ADを計画しています。

図8 探知距離
図8 探知距離.jpg
引用URL:https://k.sinaimg.cn/www/dy/slidenews/8_img/2017_04/400_34709_430163.jpg/w640slw.jpg

OTHレーダーは、冷戦の亡霊ながら現代でも使用し続けられている物です。
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(2)日本のOTHレーダー計画

現在与那国島で試験が始まったのは、短波帯表面波レーダ(固定式)の研究という物です。
図9 研究
図9 研究.png
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_04_honbun.pdf

対中国を睨んだ、早期探知レーダーとなるでしょう。

2.1 1980年代にもOTHレーダー計画はあった!

実は1980年代の日本でも、OTHレーダー導入が計画されていたことがありました。

図10 防衛白書
図10 防衛白書.gif
引用URL:http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/1986/w1986_03021.gif

1986年(昭和61年)の防衛白書では、本土防空・洋上防空に最適であるとして導入検討開始をしています。

当時はソ連爆撃機による日本本土攻撃が危惧されており、米国製OTHレーダーを導入しようとしていました。

ただ冷戦崩壊と共に、OTHレーダー導入計画は立ち消えになっています。

巨大施設と広大な敷地、多額の費用が掛かるためです。

2.2 NICTの海洋レーダー研究が転機!

転機となったのは、NICT(情報通信研究機構)の海洋レーダー研究です。

図11 海洋レーダー
図11 海洋レーダー.png
引用URL:https://www.soumu.go.jp/main_content/000191485.pdf

平成19年(2007年)に海洋基本法が制定され、海洋状況把握(MDA)が求められるようになりました。

総務省のNICTが研究を進めていた海洋レーダー研究が、与那国島で長期間実施されました。

この間に台湾有事をめぐる動きが活発化して、OTHレーダーを駆使した海洋状況把握(MDA)と中国沿岸の状況探知を考慮する形になります。
図12 海洋状況把握
図12 海洋状況把握(MDA).png
引用URL:https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2019/doc/yamazaki.pdf

防衛省でも似たような研究を進めていたため、統合してMDAのために研究を行ことになりました。

冷戦期に立ち消えとなった、OTHレーダーが復活したのです。

さらに防衛省が研究していた新技術を利用して、より小型化を目指しています。
2.3 MIMO技術をOTHレーダーに使用!

平成23年以降に研究が始まり、革新的技術と言われたMIMOレーダーという物があります。

図13 運用構想図
図13 運用構想.png
引用URL:https://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/MIMO_27.pdf

警戒管制用のFPS−7の後継として、小型分散型レーダー(バイスタティックレーダー)の開発が進んでいます。

対空用としては現在開発が難航していますが、各種技術をOTHレーダーに転用しようとしています。

図14 小型アレイ
図14 小型アレイ.png
引用URL:https://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/MIMO_27.pdf

巨大になりがちだった短波用アンテナと管制装置を、MIMO技術により小型化しようという物です。

開発が難航するFPS-Xの技術を、海洋監視に転用することで技術的熟成を図ることが出来ます。
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(3)OTHレーダーを活用せよ!

OTHレーダーは、水平線外の遠距離探知を可能にするものです。

図15 極超音速誘導弾
図15 極超音速誘導弾.png
引用URL:https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2022/pdf/jizen_02_honbun.pdf

極超音速誘導弾の目標選定にも、十分役立つでしょう。

冷戦期の亡霊OTHレーダーが、日本を救う!
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この記事へのコメント
ゆんゆんさま、こめんとありがとうございます。

米軍んも第三列島線探知のために、頑張っているのですね!
Posted by 管理人 at 2024年07月05日 11:36
少し話題が逸れますが、べいぐんがパラオに超水平線レーダーを建設中ですね。
西太平洋の防衛体制構築は急務です
Posted by ゆんゆん at 2024年07月05日 08:41
ROKETTOさま、コメントありがとうございます。

恐るべし「ふにに」さまの、情報収集能力!

日米共にかなり緊張感を持ち始めたということでしょう!
Posted by 管理人 at 2024年07月01日 12:17
追加情報有難うございます>千里眼
一般公開少ない、といいつつ探せば画像位なら即出てくるのが昨今のネット時代の恐ろしさですけども
https://x.com/hunini181202/status/1446449769325346819

更に直近の演習で米軍のTPS80まで与那国島への展開が出て来ている辺り
現場もとい市ヶ谷方面の中の人はどの程度危機感抱えているんでしょうなって……
https://www.qab.co.jp/news/20240624215509.html
Posted by ROKETTO at 2024年06月30日 22:35
ROKETTOさま、こめんとありがとうございます。

ニュースを見ると、光学情報収集を行う装置の模様で「広域監視装置GOB-206(千眼里)」が設置されるものと思われます。

未だ一般公開が少なく、詳細不明な情報収集装置です。

15年前には、与那国島に自衛隊が無く防衛の空白地帯と言われたころから異様に進化してきていますね〜!
Posted by 管理人 at 2024年06月30日 17:30
昨日の今日でまた与那国島における防衛関連の続報が……
本当に要塞化のペースがえげつない事に(汗

https://news.yahoo.co.jp/articles/7f7044c84a69901a5e46ec0f55ace6babd32cb75
与那国島、宇良部岳に映像監視装置/自衛隊、設置向け施設取得/旧海軍も戦時中に監視

与那国島でまた軍事化に向けた動きです。与那国島で最も高い宇良部岳に、自衛隊が映像監視装置を設置を計画していることがわかりました。
Posted by ROKETTO at 2024年06月29日 19:07
ゆうゆうさま、コメントありがとうございます。

開けた土地で、住民の生活を害さないように慎重に設置をすることが重要ですね。
(かつて米軍が設置したOTHレーダーは、住居のTV電波受信を妨害して大問題になった。)

半導体不足がようやく収まりましたが、ここまで影響があるとは思いませんでした。
Posted by 管理人 at 2024年06月27日 11:30
更新お疲れ様です。機材が大きいとなると島嶼部の設置は慎重に地域住民や自治体との協議が必要ですね。半導体不足が色んな所に響いて大変です。
Posted by ゆうゆう at 2024年06月27日 07:38
ROKETTOさま、コメントありがとうございます。

与那国島に色々と詰め込み過ぎているようで、ちょっと地元負担が過大になりかねないところです。
ただOTHレーダーを置くなら、NICTの試験跡地が最適であり何とか試験稼働が間に合って欲しいところです。

FPS-5のように試作機を、そのまま実戦配備ということになるかもしれません。
Posted by 管理人 at 2024年06月26日 11:21
ぷーさま、コメントありがとうございます。

次期警戒管制レーダJ/FPS-Xについては、2018年(平成30年)に研究試作契約が三菱電機と結ばれました。(納期2023年)

しかし、半導体不足での試作品製造の遅れや器材不具合・コロナ過での実働遅れ・管制技術の問題発生で2年ほど遅延が起きているようです。

何とか遅れを取り戻しているようですが、研究試作の納期が2023年(令和5年)から2025年(令和7年末)まで延長されたそうです。
(参考資料:令和5年度LCC):https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/project/gaiyo_r050831.pdf
令和7年度概算要求に、もしかしたら取得要求が乗るかもしれません。(かなり流動的みたいです。)
Posted by 管理人 at 2024年06月26日 11:13
更新お疲れ様です

陸自電子戦部隊と施設科の追加配置どころか高射部隊配置まで予定されていた所に
更に新規追加と来た辺り順調もといなし崩し的に与那国島の拠点化が進んでいるようで(場所が悪すぎるからやむなしとはいえ

果たして開戦までにどの程度間に合うのか、と言われたら怪しい所では有りますが
さてどこまで要塞化が進むのやら(次は海自か米海軍艦艇による近海での常駐化辺りだろか
Posted by ROKETTO at 2024年06月26日 09:49
開発が難航してるのですか FPS-X、、
Posted by ぷー at 2024年06月25日 18:27
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