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向井潤吉アトリエ館への旅

サイトにアクセスして交通案内を見れば一目瞭然、とてもわかりづらい所にある。
世田谷線松陰神社前から徒歩17分になってはいるが、慣れないと20分以上かかるのではないかと思う。
閑静な住宅街にあるので立地条件としては最高なはず、が、美術館としてはちょっと困る。
元々が氏のアトリエだったので仕方のない話なのだが。
タイトルどおり、ここに行き着くまでには“旅”だった。
数日前、「向井潤吉の作品を見たい!」という母の言葉に押され、お供としてここに向かったのが始まり。
松陰神社前は世田谷区役所があるところで、私にとってはそちらの方が馴染みが深い。そのため世田谷区役所とは反対側に向井潤吉アトリエ館が位置することをすっかりぽっかりと忘れ、区役所方面へ歩みを進めてしまった。
行けども行けどもそれらしきものは見えてこず、目印のはずの交差点も通りの名前も見つけられず、気がつけば“宮の坂”の駅が見えるではないか!
宮の坂は下高井戸から4つ目の駅。松陰神社前は7つ目の駅。
私と母は間違えて3駅分戻ってしまったわけなのだ。
世田谷線なので3駅分といっても距離にして1.3kmほどなので、たいした距離ではないものの、3駅も戻ったという精神的ダメージは母には大きかったらしく、ぐったりしながらも私を睨みつけ怒りを露わにしてくれた。
豪徳寺が見えた時点で方向を間違えたことに気付かなきゃいけなかったのに、逆方向に進んでいるイメージがないもんだから、ついつい突き進んでいってしまったというわけだ。
この時点で16時。
出足が遅かっただけに逆方向へのロスは大きい。
このまま帰ればよかったのだが、まだ見られるかもしれない!という儚い思いを抱いた母は道を戻って向井潤吉アトリエ館へ行こうと頑張った。しかしまだ、駅の向こう側であることを認識していないらしく、迷い続けてしまい……。私も正直なところ場所が分からないので共に迷い(さまよい?)続け、疲れが増したところにお巡りさんが2人たまたま通りかかり……。
道を尋ねる母にお巡りさんが「えー!?」と驚く。「これから行くには、ここからでは遠くてかなり距離がありますよ」と。
(おそらく、ここからだと30分はかかるんだろうと今なら思う)。
笑顔でお巡りさんと別れた後、そんなに遠いなら暗くなるし着いたところで見る時間もないし…と私に対してお怒りモードの母は諦める決意をした。(たぶん着く頃には17時まわるので閉館)。
その後、喫茶店で一休みしているとき、あまりにもグッタリ疲れている母が妙に面白かったので携帯で写真を撮っておいた。あまりにステキにやつれているので今度プリントアウトしてプレゼントしよう。。。
とまあ、その数日後が今日なのだ。
再チャレンジにまたお供して、今回は場所も事前に念入りに調べて、電話番号もメモしてと準備万端で出発。(前回は行きたいと言った母が、この展示を紹介している記事の切抜きを家に忘れて置いてきたことが迷った最大の原因なのだと私はふんでいる)。
駅周辺にはアトリエ館への案内が出ていないようだけど、既に調べてあるため、今回はスムースに現場へ到着!(途中途中には目立たない矢印入りの看板が立ってはいた)。
趣のある家の中に趣のある向井潤吉氏の絵が飾られていて、元が住居だっただけに他人の家をぐるぐるまわるようで申し訳ない気持ちにもなりつつ、日が暮れる頃までじっくりと鑑賞した。
藁葺屋根と田園風景の油絵が主で、昔の日本らしい風景が広がっていた。稲の緑がとても美しくて空に映えている。現代ではなかなか見ることのできない情景だ。そういった環境に生まれ育ったわけではないのに、郷愁が湧いてくるのはなぜだろう。日本人のアイデンティティが遺伝子に刻み込まれているからなのだろうか。それとも子供の頃に見た『まんが日本昔ばなし』が知らぬまに沁みこんでいたということか。不思議な気持ちになる。
個人的には2階に展示されていたデッサンや水彩画が好きだ。
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻2-5-1

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