癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

S氏のお見舞に行った

先週の金曜日以来だから・・・

5日ぶりの顔合わせだった

また一回りやせ細り

若々しいS氏はすっかり老け顔となっていた

日常的に会話が少ないということもあり

活舌が少しずつ悪くなっている感じを受けた

リハビリ中の左腕と左足は少しずつの回復を感じつつも

未だ自力では動かせない左腕を歯痒そうにさするS氏

しかしながら左足は大分動かせるようになってきたらしく

リハビリにも力が入っている様子

ほんの一時間程度ではあるが

普段は聞けないS氏の想い出話を中心に

色んな話をした

なるべく私が話さず

話の聞き手になろうと努めた

S氏が話している途中

口元で何かが光った

ヨダレだった

父と重なる光景

麻痺は口元へも及んでいる

だから活舌もイマイチ

麻痺している左側から溢れ出る一筋の唾液

S氏のこのような姿を目の前にするとは考えたこともなく

それは両親の時も同じだった

何かが頭の中ではじけたような衝撃（ショック）が走り

目の前の現実から目を背けたくなった

表情に出てしまってはいけない・・・そう思いつつ

心で泣いた

ジャージの上からでもハッキリと確認できる左太ももの細さ

左右で段違いに違っている

本人が一番ショックを受けている筈である

だからこそリハビリの成果が欲しい

焦る気持ちをどのようにしてコントロールしているのだろう

S氏は私の前では至って落ち着いている

一番最初のお見舞の時に一度取り乱したS氏は

私の前で男泣きした・・・悔しそうに・・・

溢れ出てくる涙と声を押し殺すようにして泣いた

二度目のお見舞以降、S氏は落ち着きを取り戻していた

いつものS氏

それは今日も変わらなかった

少しずつ・・・ほんの少しずつの筋力の回復に反して

少しずつ・・・ほんの少しずつ老けて行くS氏

そのどちらも現実の出来事

現在進行形の現実なのだ


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