2021年01月02日
レクサスLS500h(MC版)を新型ミライ試乗後に乗って感じたこと
やはり、低速度域(0km-60km/h)においては、「新型ミライ」の方が「乗り心地」、「振動のなさ」、「シームレスな加速」という点で優位であると素直に感じました。
一方、高速道路でのレーンチェンジ/追い越しなどが発生するシチュエーションや、交通の流れをリードするような場合は「レクサスLS500h」の方が圧倒的にパフォーマンスが高いと感じました。アクセルをぐんぐん踏んでいくような乗り方ではドライバーズカーの要素も強いLSの方がメリハリのある運転できるので楽しく感じます。「新型ミライ」は、あまりにスムーズ過ぎて、どうも(良い意味で)「ゲーム感覚」で運転をしている印象なんですよね。
レクサスLS500hは、初期型に比べ、課題であった「静粛性」や「乗り心地」が乗り比べればだれでも分かるレベルで改善されています。といっても、決して耳が「ツーン」とするような不自然なほどの静粛性の高さや、ふわふわの乗り心地ではなく、うまくロードノイズを低減しつつ、路面のインフォメーションもしっかり伝えるようにして、快適性を向上してきたのは再評価できるポイントと思います。
初期型では首都高の道路のつなぎめ(ジョイント部分)を乗り越えた際のエアサスペンションとは思えないショックなどが、MC後モデルでは大きく改善されて、非常にショックも少なく快適性が増していましたし、道路の路面状態によるロードノイズの違いが大きかった点も、かなり均一化され、気にならなくなりました。ニュースリリースのとおり、足回りの軽量化や、ランフラットタイヤの改良など、目には見えない部分のさまざまな改善により実現したものと思います。
また、アクセルを踏み込んだ際に、意図しないほどエンジンの回転数が上昇し、エンジンが唸る「無駄吠え」が大幅に改善され、EVモードからエンジン走行に切り替わる際の、ドライバーや後席のVIPに与える「微振動」は大きく減少し、ハイブリッドカーらしい、スムースな走行ができるようになっていると感じました。ただし、「エンジンON/OFFのタイミング」は明確に体感できますし、下り坂などでエンジンブレーキをかけた際には、エンジン回転数が3000rpmを超えてきて、それなりのノイズが入って来るのは、このエンジンの限界なのかな、と感じさせます。
なお、LS500hのハイブリッドモーターでの「EV走行性能」はまだまだ多くの人が期待するレベルには達してないと感じます。
重量級モデルということもあり、基本的に、停止状態からアクセルを踏んで加速をした場合、時速20km/hを超えるといったんエンジンがかかり、「1200rpm」回転あたりで微振動がアクセルペダルなど、主にフロアやステアリングから伝わってきます。
一度速度が乗れば、EV走行の範囲(頻度)はたしかに増えている印象ですが、都市部での信号待ちなどでのストップ&ゴー状態が続くシチュエーションでは、そのたびにすぐエンジンがかかり、微振動が伝わってくるのは改善されていません。
なお、いったんエンジンがかかってしまえばその後は、「アクティブノイズコントロールシステム」のおかげもあり、エンジンの「こもり音」も打ち消されるので更に強化されたロードノイズ対策も含め、不快な気分は少なく、とても快適なドライブが楽しめます。しかし、前述のとおり、エンジン停止状態からエンジンがかかった際の「微振動」は「新型ミライ」にはありませんので、ここは両車で大きく異なる部分です。
今回の一般道および首都高速道路(C1&C2)を中心とした試乗で感じた感想としては、ドライバーズカー視点で見ると、一般的な日常領域の範囲では「新型ミライ」の方が満足度が高いということです。また、補助金を考慮すると「600万円程度」の新型ミライと、かたや「1200万円台」のLS500h(I Package)では価格が「倍」も違いますのでなおさらです。
ただ、後席の居住性に関しては、スライリッシュな構造のため、どちらも頭上の余裕はあまりないものの、後席の広さ自体は、ホイールベースの長さもありLSの方がずいぶん広く快適です。なお、「新型ミライ」は、後席への乗降性もあまり良くないので、後席へVIPを乗せるための用途も多い場合はあらかじめ乗降性などをチェックしておくべきでしょう。
ところで、レクサスLS500hは「version.L」や「Executive」になりますと、後席の高級感や快適性が圧倒的に向上しますので、新型ミライをまったく寄せ付けない魅力があります。「セミアニリン本革/Lアニリン本革」の質感や、豊富なシートポジション、マッサージシステム、ドアトリム/ルーフ/ピラー/インテリアパネルなど内装の質感にいたっては、価格差なりの違いがあり、新型ミライにはどうやっても追いつけない領域です。
またLSの「F SPORT」ではスポーティな内外装専用装備やホールド性と質感を両立した専用本革シートなども魅力的です。
なお、新型ミライに関しては、リチウム電池への換装など、従来型より「約10%程度」燃費が向上しているとの情報もありますが、新型ミライの燃料である「水素」の価格も決して安くはなく、1kgあたり「1100円前後」ということで、ハイオクガソリン相当の価格と言われています。
また、ガソリンのような価格競争もほとんど無いようですから、水素ステーションが行動範囲内にあったとしても、移動にかかるコストの面では、燃料電池車の新型ミライの優勢性はほとんどないことには注意が必要です。
しかし、走行中に空気をきれいにする「マイナスエミッション」や、長時間の「外部給電機能」(特に災害時など)は「新型ミライ」ならではの機能ですし、モーター駆動ならではの、現在のハイブリッドカーにはない先進的な乗り味や静粛性、走りのスムーズさ、安定感に加え、これらの「付加機能」はアーリーアダプター層である「新型ミライ」をご購入されるオーナーの所有欲を満たす力があると感じます。
また「新型ミライ」には、レクサスLS500hと同様、自動駐車機能の「Advanced Park」を備えますし、そして2021年には「Advanced Drive」搭載モデルを投入予定ということですし、先進安全装備のレベルもほとんど違いがありません。
前述のとおり、特に内装のクオリティに関しては確かに大きな差があるところですが、補助金を考慮すると「600万円程度」の新型ミライと、かたや「1200万円台」のLS500h(I Package)では価格が「倍」も違いますので、インフラ環境さえ整っているのであえば、なおさら「新型ミライ」の魅力が増すのではないでしょうか。
その他、高精細化した「デジタルインナーミラー」、「大型ヘッドアップディスプレイ」、「後席シートベンチレーション」など、現在のレクサスではLSのみが備える装備を「新型ミライ」は装備する点も魅力と言えるでしょう。この点からも、単にクラウンの後継車としての位置づけではなく、ボディが大きく(長い)レクサスLS500h "I Package"の「ショートボディ版」としての位置づけも担っているのは・・・と感じました。