ひょんなことから山奥にある秘宝館でアルバイトすることになった女子大生が、館長のおじさんに恋をする乙女ゲーム…
…ひとことでいえばそんなストーリーだが、そう一筋縄ではいかず、館長には普通の女性ならば到底受け入れられないであろう、秘密がある
主人公と館長の歪んだ価値観は、思春期の痛みと苦悶が抜けきらない
本来ならこのような価値観をとっくに卒業しているはずの中年男性と、まさにその悩みの最中にいる女子大生の、恋愛とも似つかない不思議な関係が、ゲームに、コメディでありながら退廃的な空気を漂わせているんだよな
テーマが性であり、BGMがクラシックの名曲なのも、不思議な雰囲気を演出している
「青い欠如」「肘が微笑む日」に、キャラクターの思想や雰囲気が、少し似ているかもしれない
ただし、あくまで雰囲気だけ。これらの作品のような、キャッチボールにならない、投げっぱなしな不明瞭さはなく(それがこの2作の売り)、ストーリーは明確化されている
主人公は、友人はいるが人付き合いが面倒くさい。ひとりのほうが好きで、ネットに小説を書くことが趣味
館長もまた山奥に住む酔狂な小説家だったり、現代は、このような本来ならいそうにない一風変わった人物像をリアルに感じる時代だよね
そんな奇妙な交流の中、館長にシンパシーを覚え急激に惹かれていくのだが、彼の部屋に恋人と思われる女性の姿を見つける…
ここからストーリーは一気に動き出し、乙女ゲー(?)としての恋愛描写(!?)も色を帯びるのだが、展開もエンディングも、テーマがテーマだけに、通常の乙女ゲームではまずありえないものとなっている
このようなパターンはフリゲでは珍しいので、怖いもの見たさで是非プレイしてみてはいかがでしょうか
ネタバレ感想
まあ舞台が舞台だけに、それがいわゆる空気嫁であることは、あっ…(察し)と分かるのだが、演劇のような台詞回しが秀逸で、ぐいぐいと読み進めてしまった
狂気に塗れたエンディングまではとても良かった…
それだけに、館長目線の2つのエピローグは、蛇足じゃないかなぁ…
館長が実際にはただのヘタレであることは察するのだが、本作はあくまで男を知らない女性の目線なので、ちゃんとミステリアスで風変わりな年上男性のまま終わった方がよかったんじゃないかと
カジュアルな変態趣味じゃなくて、深い闇を感じさせたまま終わればよかったのだが、どうも最後の最後で陳腐になってしまった感が、拭えなかった
未練たらたらじゃねーか!とつっこまれた彼は、余りにもダサい、ただのおじさんだった…
それでいて主人公も本性を知らず美化したまま終わってしまったので、消化不良な感じ。
この流れなら、大人になった主人公が、館長を陳腐な男だと見抜いて捨てる、あっさり忘れる…
そのほうが館長の「初めての男」に関する台詞への皮肉になってて、面白かったと思う
評価C+
65点
エピローグはともかく、絵も好みだし、面白かったです。オリジナリティも高い。
…ところで館長と幕田って、何歳だろうね…
幕田は学生時代の自分を知ってると言ってるが、どう見ても15は年齢差がある…
館長はおじさんに見えて、実はまだ若いんだろうか?
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