このゲームはねえ…
…このゲームは…
こういう感想というか「後始末」をクリア後に持つことは稀なんだが……
「なんかもうこれでいいや」って思ったな、一回クリアして。
選択肢や背景クリックの要素があるのでマルチエンドだろうけど(説明にもそうある)、「A-line」をこれ以上攻略するのは、野暮なんだよ…
だって主人公である「僕」の初恋は当然たった1回のもので、そんな初恋を殺したんだから、「僕」に憑依した「俺」の初恋だって、ここで終わるべきだよなあ…?
俺は初恋を殺したよなあ…?
▼…今回レビューする「A-line」はマルチエンド型ADVなのだが、
1つのエンディングを見た状態でのレビューということを、最初に言っておく
グッドエンド的なものかは謎だが、少年が1つ成長する、良いエンディングだった
…この世界観で主人公がミナちゃんと結ばれるエンディングとか、寧ろ見たくもないんだが…(ないよな…?そんなエンディングは)
▼まあこのゲーム……
非常に面白かったね
ストーリー、言葉、音楽、演出、グラフィックと5拍子揃った傑作でしょ
特に言葉と演出は相当良いな。
まず演出。
ゲームを起動すると、ウィーーーーーーーーン!カシャーーーーーーーン!というような、聞き慣れない音がするんだよ。
なんだ?と思うが、その謎は数秒後に解ける。
これ、カセットテープが巻き戻される音なんだよね。(サークルロゴも巻き戻ってる)
グラフィックもおしゃれだが、昭和レトロ感もおしゃれだ
この「巻き戻した」カセットテープが布石になってるし、主人公のボイスつきの独白(これも意味ありげ。見てないエンディングに関係してるかも)といい、面白い演出だわな
まだストーリーは1文字も始まってないのに、一気に引き込まれた
▼次に言葉が良い
「わたしの素敵なおうじさま」レビュー感想にも書いたが、台詞や言葉が好きなフリゲというのは、めったにない。「シナリオが面白い」はあるが、「言葉が好き」はない
「A-line」は主人公が17年間片思いしている10歳年上の従姉妹「ミナちゃん」に対する言葉(正確には地の文……「いえない言葉」)が、とても切ない。
ミナちゃんが主人公を男性とは意識していないので(距離感すらある)、尚更もの悲しい
印象的な言葉は色々あるが、その1つを紹介しよう。
それは幼き日の主人公がなけなしの勇気を振り絞り「ギターを弾いてるミナちゃんが好き」と言ったことを、ミナちゃんが全く覚えていないとわかるシーンにある
もしかしてミナちゃんは、 少しだけ申し訳なさそうな顔をしてくれるんじゃないかと期待していた。
昔僕が「ギターを弾いてるミナちゃんが好き」と言ったことを覚えていれば
「好きだって言ってくれたのに、ごめんね」なんて眉を下げてくれるんじゃないかと思った。
けれど幼い僕の決死の告白は、ミナちゃんの中でホコリを被って錆びついてしまっているのだろう。
いや、はるか昔に捨てられてしまっているのかもしれない。
ミナちゃんはデスクに置かれたハンディータイプの使い捨てワイパーでギターのホコリをさっと拭うと、 ストラップに肩を通した。
…なんかリアルじゃね?
誰でもこんな経験があると思う。
相手も、誰でもいい。
幼き日に母にあてた手紙を母が覚えていなかったり、祖母と交わした約束を祖母が覚えていなかったり、なんでもいい
ただ"自分の中では大事な出来事だったのに、相手の中ではそうではなかった"という、もの悲しさ…
そのような誰もが1度は経験したであろう実体験を抉るのが、このゲームはとてもうまいんだよな
そしてそんな悲しさは、エンディングまで続く。
クリア後にわかるタイトルの意味も、是非味わってほしい
評価B+
75点
見た目や音楽がおしゃれとか
色彩感覚が良いとかだけでは評価できない、傑作だね
プレイヤーの心に踏み込んでくるよ
是非やって欲しい
そしてもしよければ、俺とは違った初恋を殺してほしい
…最後に1つ余談だが…
従姉がヒロインのゲームといえば、「学園フラット2」だね
レビューにも書いたが、私の身内にいとこ同士で結婚したカップルがいて、子供4人も作っててね…
恋人や夫婦といえど、「所詮は他人」だなんて失敗した時に言うけれど、「いとこ同士は鴨の味」という言葉もあるように、いとこは他人どころか、きょうだいに近いからね。
しかも相当気心知れている…
そんな関係で夫婦になれば、確かに、上手くいきそうではある
DNA的に(?)、体の相性もいいだろうし…
【このカテゴリーの最新記事】
えええ〜〜ぇっっっ???
見るのぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜???
まあ式部さんが…どうしても…っていうんなら…?ねえ?
見てもいいけどねえ…?
別に「やべえ、イキり尽くしたものの……露骨に残された伏線が気になってきたな…」と前々から思ってたとか、
再プレイのチャンスをうかがってたとか、そんなんじゃないんですけどね…。
まあボカぁ別に…どっちだっていいんですけどね…?
しかしほかならぬ式部さんがそこまで仰るならやぶさかではない、というだけで…。
まあしかたない。式部さんに免じて、この苦い初恋を、初恋の痛みを、追体験しましょう。
いやあ残念だなー。ボカぁずっとこの初恋の痛みを胸に生きたかったのになー。