2019年03月15日
映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」の感想…不満なところはあるが観て良かったと思う映画。
今日は映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」の感想です。
間が空いてしまいましたが、
前回感想を書いた映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」の続きになります。
先に書きますが、今回は若干のネタバレというか物語に言及しますので、
まだ観てない、ネタバレしたくない人は読まないでください。
今回のdTVをChromecastを使ってテレビでの鑑賞です。
映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」は2015年公開の成島出監督作品。
映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」を観た印象では、
凄く丁寧に作られていて好感が持てる監督でした。
簡単なあらすじですが、
先生などの大人の反対を受けながらも涼子の提案により2年A組の生徒達で学校裁判を行なう事に。
しかし、三宅樹里、大出俊次は裁判に出席するのだろうか…そしてそれぞれの思いを抱え裁判が始まる。
…みたいな感じかな。
キャストは前篇と変わりありません。
新しい主要な登場人物もいませんでした。
さて、映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」の感想ですが、
決して悪い映画ではありませんでしたが、
前篇が「後篇に期待させるのに成功していた」だけに、
それを見事に受けたかと言うと…ちょっと物足りなさが残る。
先に悪いところから書きたいのですが、
大きいところで2つ。
まず1つめは尺。
前後篇の2部作で前篇だけで2時間近くの長さだったのが、
なんとこの後篇は2時間30分近くの長さがありました。
登場人物が多いし丁寧にそれぞれの登場人物を描写しているのは分かるのですが、
それでも約2時間30分は長く感じました。
もう少し編集でなんとかなったんじゃないかなって。
そして2つめですが物語の真実がどうなのかと。
「物語そのものが悪い訳じゃない」という事は言っておきたい。
クラスメイトの死、告発状が届くがそれを無視する形で自殺とする大人達。
事件の真相を知りたいと生徒達が奔走するという大枠の話は良かった。
ここからネタバレしますが、
ただこの後篇で明かされる事件の真相。
神原和彦によって明かされた柏木卓也が死んだ日の出来事。
これを観たら、
ほとんどの人が柏木卓也って死んでも仕方ないよって思うんじゃないだろうか。
詳しくは書かないけど、すげえ自分勝手じゃん。
確かに「今帰ったら俺は飛び降りるぞ」って言って、
フェンスを越えちゃったらなかなか戻れないだろうけどさ。
一番悪いのは死んだ柏木本人じゃねえかって、どれだけ迷惑かけんだよ。
で、それはそれで良いんだけど、
あの空間でいたたまれないのは柏木のご両親じゃないだろうか。
息子が死んでさすがに傷ついているだろうに、
さらに大勢の前で息子のクソ野郎ぶりを話されたら、
どういう気持ちになるのだろうか。
さらに酷いのは観てる人にそんな思いにさせておきながら、
柏木のご両親はほぼこの映画では空気という。
いや、そこはなにか描いてもいいだろと。
…この部分は結構大きいと思うんだけどなあ。
神原の「僕は裁かれません」って心の叫びですが、
そりゃ裁かれないよ…だって悪くないもん。
悪いのは勝手に飛び降りたアイツじゃんか〜って。
ただ、それでもこの映画が嫌いになれないのは、
物語への興味と丁寧に作られていることだと思う。
そして出演しちる俳優、特に子供達の演技はとても良かった。
藤野涼子の力強さももちろん良いのだが、
三宅樹理を演じた石井杏奈ね。
本当に私は聞いただけみたいな発言の時は、
どれだけクソ野郎なんだって思った。
大事だよね、あそこで観ている人が三宅樹理に嫌悪感を抱く事は。
あのムカツク顔は最高だった。
あれがあってこそ「告発状は命綱だった」という言葉が活きてきます。
そして樹理の母親を演じる永作博美も良いですよね。
うちのじゅりのせいとか口を滑らせるのも馬鹿っぽくて良いのですが、
全体的に漂うダメな感じが素晴らしかった。
そう前篇の時には詳しく書かなかったのですが、
「あのデブめっちゃ迷惑じゃん」って書きました。
それは、車に轢かれて死んでしまった事は可愛そうだが、
例え歩行者が飛び出してきても轢いてしまった車の運転手。
映画では全くふれられてないけど、
あのデブがわーんとか泣きながら走ってきたせいで、
あのトラックを運転していた人は人生を棒に振った訳ですよ。
あいつさえ飛び出してこなければ…。
前篇で見せた轢かれるシーンと後篇での実際のシーンでは違いがあるので、
サスペンス的に「こういう事では?」って考えて観ていた人にとっては、
ちょっと納得いかないかもしれない。
この映画に限らずですが、
たまに登場人物がトラックとか車に轢かれて死ぬことあるんですが、
登場人物を安易に交通事故死させすぎだと思う。
交通事故死って轢いた側にもドラマが生まれてしまうからノイズなんですよね。
だったら、どしゃぶりの中走っていてどこからか足を滑らせて死ぬ方がマシだと思う。
そう言えばこの映画は2部作だとよくある、
前篇のダイジェストみたいなのは全くありません。
桜咲く季節に校長と涼子が話をしてるシーンからですが、
前篇を観ていないと全く分かりません。
まあそれでも約2時間30分あるんで、
ダイジェストなんてあったらあったで困るんだけど。
やっぱりタイトルには「ソロモンの偽証」の上には「宮部みゆき」と表示。
すっごい違和感があるなあ。
あ、みゆきさん、タイトルにのせときましたんで…みたいな。
やっぱり丁寧に作られているのは良いなと思うのですが、
「1990年を感じる空気」が伝わるのは凄く良い。
そう言えば最近は「日射病」って言わなくなりましたよね。
裁判の初日の校庭のシーンが、
前篇のファーストカットとの対比になっていて、
スカイツリーを含め景色の変化に時間の流れを感じさせられます。
こういう演出は良いですね。
これはちょっといちゃもんレベルなのだけど、
学校の体育館で普通のトーンで話した言葉が、
後ろの方の傍聴席に座っている人に聞こえるはずがない。
小説だったら違和感がない事でも、
それを映像にすると違和感があるって事は結構多い。
まあ、マイクを使うのも画的にどうかと思うしなあ。
そんな感じかな。
不満な点はありますが観て良かったなとは思う作品でした。
本当のクソ野郎は誰なのか、分かって良かった気がします。
それと始まる前に出るロゴで松竹120年はやっぱり凄いなと。
いろいろ書きましたが奥は深いと思います。
自分は自殺した柏木がクソ野郎って思っていますが、
校長が言っていた言葉で、
「心の声にフタをすれば自分が見たいものしか見えなくなるし、
信じたいことしか信じられなくなる」って、
まあそういう事ですよね。
間が空いてしまいましたが、
前回感想を書いた映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」の続きになります。
先に書きますが、今回は若干のネタバレというか物語に言及しますので、
まだ観てない、ネタバレしたくない人は読まないでください。
今回のdTVをChromecastを使ってテレビでの鑑賞です。
映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」は2015年公開の成島出監督作品。
映画「ソロモンの偽証 前篇・事件」を観た印象では、
凄く丁寧に作られていて好感が持てる監督でした。
簡単なあらすじですが、
先生などの大人の反対を受けながらも涼子の提案により2年A組の生徒達で学校裁判を行なう事に。
しかし、三宅樹里、大出俊次は裁判に出席するのだろうか…そしてそれぞれの思いを抱え裁判が始まる。
…みたいな感じかな。
キャストは前篇と変わりありません。
新しい主要な登場人物もいませんでした。
さて、映画「ソロモンの偽証 後篇・裁判」の感想ですが、
決して悪い映画ではありませんでしたが、
前篇が「後篇に期待させるのに成功していた」だけに、
それを見事に受けたかと言うと…ちょっと物足りなさが残る。
先に悪いところから書きたいのですが、
大きいところで2つ。
まず1つめは尺。
前後篇の2部作で前篇だけで2時間近くの長さだったのが、
なんとこの後篇は2時間30分近くの長さがありました。
登場人物が多いし丁寧にそれぞれの登場人物を描写しているのは分かるのですが、
それでも約2時間30分は長く感じました。
もう少し編集でなんとかなったんじゃないかなって。
そして2つめですが物語の真実がどうなのかと。
「物語そのものが悪い訳じゃない」という事は言っておきたい。
クラスメイトの死、告発状が届くがそれを無視する形で自殺とする大人達。
事件の真相を知りたいと生徒達が奔走するという大枠の話は良かった。
ここからネタバレしますが、
ただこの後篇で明かされる事件の真相。
神原和彦によって明かされた柏木卓也が死んだ日の出来事。
これを観たら、
ほとんどの人が柏木卓也って死んでも仕方ないよって思うんじゃないだろうか。
詳しくは書かないけど、すげえ自分勝手じゃん。
確かに「今帰ったら俺は飛び降りるぞ」って言って、
フェンスを越えちゃったらなかなか戻れないだろうけどさ。
一番悪いのは死んだ柏木本人じゃねえかって、どれだけ迷惑かけんだよ。
で、それはそれで良いんだけど、
あの空間でいたたまれないのは柏木のご両親じゃないだろうか。
息子が死んでさすがに傷ついているだろうに、
さらに大勢の前で息子のクソ野郎ぶりを話されたら、
どういう気持ちになるのだろうか。
さらに酷いのは観てる人にそんな思いにさせておきながら、
柏木のご両親はほぼこの映画では空気という。
いや、そこはなにか描いてもいいだろと。
…この部分は結構大きいと思うんだけどなあ。
神原の「僕は裁かれません」って心の叫びですが、
そりゃ裁かれないよ…だって悪くないもん。
悪いのは勝手に飛び降りたアイツじゃんか〜って。
ただ、それでもこの映画が嫌いになれないのは、
物語への興味と丁寧に作られていることだと思う。
そして出演しちる俳優、特に子供達の演技はとても良かった。
藤野涼子の力強さももちろん良いのだが、
三宅樹理を演じた石井杏奈ね。
本当に私は聞いただけみたいな発言の時は、
どれだけクソ野郎なんだって思った。
大事だよね、あそこで観ている人が三宅樹理に嫌悪感を抱く事は。
あのムカツク顔は最高だった。
あれがあってこそ「告発状は命綱だった」という言葉が活きてきます。
そして樹理の母親を演じる永作博美も良いですよね。
うちのじゅりのせいとか口を滑らせるのも馬鹿っぽくて良いのですが、
全体的に漂うダメな感じが素晴らしかった。
そう前篇の時には詳しく書かなかったのですが、
「あのデブめっちゃ迷惑じゃん」って書きました。
それは、車に轢かれて死んでしまった事は可愛そうだが、
例え歩行者が飛び出してきても轢いてしまった車の運転手。
映画では全くふれられてないけど、
あのデブがわーんとか泣きながら走ってきたせいで、
あのトラックを運転していた人は人生を棒に振った訳ですよ。
あいつさえ飛び出してこなければ…。
前篇で見せた轢かれるシーンと後篇での実際のシーンでは違いがあるので、
サスペンス的に「こういう事では?」って考えて観ていた人にとっては、
ちょっと納得いかないかもしれない。
この映画に限らずですが、
たまに登場人物がトラックとか車に轢かれて死ぬことあるんですが、
登場人物を安易に交通事故死させすぎだと思う。
交通事故死って轢いた側にもドラマが生まれてしまうからノイズなんですよね。
だったら、どしゃぶりの中走っていてどこからか足を滑らせて死ぬ方がマシだと思う。
そう言えばこの映画は2部作だとよくある、
前篇のダイジェストみたいなのは全くありません。
桜咲く季節に校長と涼子が話をしてるシーンからですが、
前篇を観ていないと全く分かりません。
まあそれでも約2時間30分あるんで、
ダイジェストなんてあったらあったで困るんだけど。
やっぱりタイトルには「ソロモンの偽証」の上には「宮部みゆき」と表示。
すっごい違和感があるなあ。
あ、みゆきさん、タイトルにのせときましたんで…みたいな。
やっぱり丁寧に作られているのは良いなと思うのですが、
「1990年を感じる空気」が伝わるのは凄く良い。
そう言えば最近は「日射病」って言わなくなりましたよね。
裁判の初日の校庭のシーンが、
前篇のファーストカットとの対比になっていて、
スカイツリーを含め景色の変化に時間の流れを感じさせられます。
こういう演出は良いですね。
これはちょっといちゃもんレベルなのだけど、
学校の体育館で普通のトーンで話した言葉が、
後ろの方の傍聴席に座っている人に聞こえるはずがない。
小説だったら違和感がない事でも、
それを映像にすると違和感があるって事は結構多い。
まあ、マイクを使うのも画的にどうかと思うしなあ。
そんな感じかな。
不満な点はありますが観て良かったなとは思う作品でした。
本当のクソ野郎は誰なのか、分かって良かった気がします。
それと始まる前に出るロゴで松竹120年はやっぱり凄いなと。
いろいろ書きましたが奥は深いと思います。
自分は自殺した柏木がクソ野郎って思っていますが、
校長が言っていた言葉で、
「心の声にフタをすれば自分が見たいものしか見えなくなるし、
信じたいことしか信じられなくなる」って、
まあそういう事ですよね。
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