<個人的な評価:10点中8点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
下記、個人的な感想。
ネタバレあり
アクション少なめのSF。しっかり観るとけっこう面白かった。
物語は、dystopia 的に雰囲気から始まる。
世界各地に謎の宇宙船が現れ、言語学者のルイーズ、物理学者のイアン、アメリカ陸軍大佐のウェバーたちが調査を始める事になる。
主人公はルイーズで、どこか寂しそうな孤独な女性。彼女は過去に娘を亡くした事があったようだ。
さて、ルイーズとイアンはウェバーらが指揮する宿営地に加わる。そこでの任務は宇宙船の中にいる2体の宇宙人「ヘプタポッド」と交信して、飛来の目的を探ることだった。
試行錯誤の末、墨を吹き付けたようにして描かれるヘプタポッドの文字言語の解読がはじまる。並行して、ルイーズは母となった自分が、病で死んでいく娘を持つ光景のフラッシュバックに悩まされる。過去の記憶かと視聴者の私も思ったが、どうやら彼女は娘を持ったことがない!??
結論を急ぐ政府の要請を受け、ルイーズがヘプタポッドに飛来の目的を尋ねると、『人類に「武器=道具」を与えるため』と読み取れる返答があった。中国軍がこの情報を受け取り、ヘプタポッドを脅威と見なし、対ヘプタポッド戦争の準備に入る。
ルイーズとイアンは慌ててヘプタポッドと再度対面に向かうが、開戦派の一部将校が仕込んだ爆弾がそこで爆発する。二人はヘプタポッドにより助けられ、複雑で巨大なメッセージを受け取る。彼らは解読を始めるが、その頃世界では各国が中国に続く動きをして、全面戦争が始まる寸前になっていた。
ルイーズは一人円盤に乗り込み、そこでヘプタポッドが地球に来た理由を知らされる。彼らは3000年後に人類から助けられるため、贈り物をするのだという。ルイーズはヘプタポッドが時間を超越していること、フラッシュバックしていたのは自分の未来であることも知る。
ルイーズはヘプタポッドの言語を学ぶにつれ、ヘプタポッドのように未来を認識することができるようになっていた。開戦が迫る中、ルイーズは中国軍のシャン上将に電話して説得を試みる。誰も知らないはずの妻の死ぬ間際のメッセージを伝えられたシャン上将は説得に応じ、戦争は食い止められた。各地の宇宙船は次々と空に消える。ルイーズは後にパーティー会場でシャン上将と初対面し、彼を説得する決め手となった情報を受け取るのであった。
役目を終えて撤退する宿営地の脇でイアンがルイーズに結婚を申し込む。
将来娘とイアンを失う運命を避けられないと知りながらも、ルイーズはイアンと結ばれる。
この映画は非常に奥深いテーマを描いている。ルイーズは未来に訪れる悲劇、つまり娘が12歳で命を落とすことを知りながら、それでも娘を持つ決断を下す。この選択は、観る者に「悲しみを知っていても、その未来を選ぶことができるのか?」という究極の問いを投げかける。人によって感じ方は異なり、正解や不正解が存在しないという点が、この映画の魅力でもある。愛と運命に対する見方は十人十色であり、深い感情が交錯する瞬間を描いている。
ただし、この物語がフィクションであるからこそ受け入れられる部分も多い。現実世界であれば、ルイーズの行動には重大な危険が伴う。宇宙人に対してマスクを外して直接対話したり、単身で彼らの乗り物に乗り込んだりするのは、非常に無防備で、未知の病原体を持ち込まれる可能性を考えると全人類を危険に晒しかねない行為だ。危機感が欠如しているとさえ感じる。
実際、ルイーズ自身は問題なかったとしても、彼女の接触が原因で遺伝子に変異が起きたり、未知の病に感染してしまった可能性も考えられる。もしかすると、彼女の娘がその影響を受けて命を落としたのかもしれないと想像することもできる。
映画としては非常にスリリングで興味深いが、現実の世界では、このような無防備な行動を取る人物を探索チームに加えることは避けるべきだろう。映画は映画として楽しむべきものであり、現実との違いを認識することが大切だ。