『A Tale of Love and Darkness
(愛と闇の物語) (2021)』
(愛と闇の物語) (2021)』
<個人的な評価:10点中7点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり。
下記、個人的な感想。
ネタバレあり。
受けや感動や人気などを狙って作られた作品ではないからこそ深いし、淡々としている作品だが、イスラエル出身の監督兼女優ナタリー・ポートマンがどれだけエルサレムの悲劇や問題について考えているのか伝わってくる作品。
個人的には難解な作品だが、戦争や災害は人の命だけじゃなく、精神や魂までを蝕んでいく様が伝わった。そして、どんなに愛があっても闇に飲まれてしまう事もある。息子は母を救ってあげたかったが救えなかった。
始終、暗い映画だった。
「落下の王国」や「パンズラビリンス」を思い出させるかのような作品でもある。ただ、この作品は、その二つと比べて、ファンタジー世界の要素が少なめで、現実の暗い世界の方が表に出ている作品なので、ファンタジー要素や美しい映像を求めている人には、勧められない。
あくまでも、辛い環境の中、妄想の世界に逃避するという点で似ているのだ。
一応、全ての映画に個人的な評価つけてるので、これは10点中7点と評価したが、正直いうと、好きとか嫌いとか、そんなのでは表せない。でも私は、観て良かったと思った。
映画というよりドキュメンタリーや自伝のような内容だからだ。
実際に、主人公の少年アモスは実在した人物だし、これは、アモスの自伝小説を、ナタリー・ポートマンが監督、脚本、主演を務めて映画化したものだ。
この映画の中では少年だが、アモスは、のちに、有名な人になっていったのだ。
彼は、イスラエルの作家、ジャーナリスト、そして、ベングリオン大学文学部教授だ。
そして、1967年からパレスチナ問題の2国家解決の主な提唱者の一人であった。
アモスは、高齢まで生きて、2018年79歳で亡くなった。
だが、彼の母親はこの映画にあったように、本当に自殺したのだ....
そう、だから、この作品は、実際のストーリーに基づいた映画なのだ。
暗い作品だ。ユダヤ人、そしてイスラエルとアラブ。今も続くパレスチナ問題。
その暗い背景でいきるユダヤ人一家の物語。
貴族とかではないが、元々は、それなりに高学歴っぽくて、裕福な人達だった。
アメリカやイギリスのような裕福な国に住んでいたら、もっと裕福になっていった人達かもしれない。
ただ、そんな人達も、人によっては、戦争の中では、闇に飲まれていく。
その描写がリアルだった。
母ファニア(ナタリー・ポートマンが演じる)の姿を見ると悲しくなり無性に涙が出てしまう。
それほど暗い気持ちにさせてくれる。なんだかわからないけど、私は、うつ病になった事も戦争を経験した事もないけど、彼女の抱える闇もよくわからないけど、彼女を見てると、なんだか共感というか共鳴してしまうのは、ナタリーの真剣すぎるほどの演技が成せる魔法だろうか
フィクションではなく事実を基にして制作ってのもあるだろうけど。
それにしても、最後までわからなかった謎の若い男性(開拓者)。
彼は誰ですか?
ファニアの元恋人?愛人だった人?
それとも実は存在せず、何かの象徴?
なんだか、救世主であり死神でもあるような印象。
しかし、彼の存在こそが、この物語の鍵だと思う。
難解すぎて私には彼が何者かわからないけど。
ファニアは、浮気をしていた?相手はあの若い男性?ファニアが実母にすごい罵られてたけど、理由はなに?罵られてた理由も最後までわからなかった。
ファニアは常に自分を罰していたし。やっぱり、浮気してたのかな?でも描写はなし。
彼女の妄想の中で、若い開拓者の男が何度も出てくるけど。そもそも実在するのかも不明。(息子アモスの視点だからアモスが知らなかただけ?)
似たような男はリアル世界にもいた描写があったが、そもそもファニアと男が、リアル世界で、知り合いでさえかも不明。哲学的な物語を作るのが上手なファニアは妄想の世界で生きている時もあったから。
この映画の、うつ病の描写がリアルすぎる。
私の叔母が、元うつ病だったので...
あんな感じなんだよね。
ある日、急に凄く元気になったりとか。
急に何も喉を通らなくなったりとか。
みてる方も辛いから、一緒に住む家族も辛いよね。
ナタリー・ポートマンって、凄く美人で、その上、才女で知的な人だけど、若い頃から、どことなく儚いし、悲愁が漂っている人。役柄もあるかもしれないが、こういう映画を作るぐらいだし、彼女自身がユダヤ系として生またのもあるからか、彼女の高すぎる知性&感受性が、逆にこの世の残酷さを嘆いていて彼女自身を悲しませている。
そして、高い知性の人にありがちだけど、ナタリー・ポートマンは、かなり哲学的な人。
地球の環境にも深く悲しみを感じているようで彼女自身はベーガンだし、ベーガンどころかベジタリアンが少ない日本では馴染みがないだろうけど、実際にナタリーは、ベーガンとして、多々の真剣な活動をしているのだ。欧米のセレブ達は慈善(という名の偽善)行動をよくやるけど、ナタリーの場合はそこら辺のセレブと違って、ガチなんだよね。ほんとガチな人。
感受性が高く、心優しく、哲学的で、しかも頭が良すぎるから、常に考えまくって世の中を憂いている感じ。だから自分が出来ることを!!って感じで、いろんな慈善業に真檄に打ち込んでるんだろう。
ナタリー・ポートマンは、私の最も好きな女優の1人。
エマ・ワトソンも、私は大好きだ。
私は、知性が高い美女が好きな傾向にある。
私自身は能天気な部分もあるから、哲学的な事や、難解なものは、よく理解できない時もあるけど。
この映画の母ファニアが病んでしまう理由は多々ある。
うつ病に明確な理由がある場合もない場合もあるし、人それぞれ。
だが、ファニアの場合は、戦争、そして、それによって、おかれた環境、姑関係、家族関係、色々と悩んでしまう種があった。それもこれも、全部、どうしようもないものばかり。
妄想の世界にも逃げたくなるよ。
そして、親友の突然の死。戦争の本当の残酷さを思い知らされた瞬間だった。洗濯物を干してただけの主婦が、あっけなく死んでしまう。リアルすぎて辛い描写。それが戦争なのだ。
ファニアが、闇に引き込まれてしまうのも無理はない。
夫の事も嫌いではないはずだし、息子の事もとっても愛している人だった。
良い主婦でいようと凄く頑張ってた人だ。
ファニアは、元々は、頑張り屋で真面目そうな人だった。
だからこそ、頑張りすぎて、病んでしまったのかなーとも思える。
うつ病になった自分を気遣う夫と息子。
ファニアも彼らの事を無視してたわけじゃないし、気遣っていたと思う。
夫に、外で遊んできていい(女を作ってもいいという意味だろう)というのも、彼女なりの愛と思いやり。
「気をつけて。全ての女が優しくて正直だとは限らない」
私は、これに全文同意だし、私でさえも、即わかるのに、それでも、そんな女に騙される男がリアルでも多くて、そのたびに呆れるよ。ちなみに、美人=優しくて正直で善良な女性、とはならないのに、幼稚園児だった私でも知ってたのに、大人でもわからない男性がいる笑。ちなみに、私の場合は別に、イケメン=優しくて善良で正直...とも思った事は一度もない。むしろ警戒するわ。なのに何故、人は、見た目&表向きの優しさに騙されるんだろうね。もちろん、全ての男がそうってわけじゃないけど!
まあ、でも、ファニアの発言は、もっと哲学的で、彼女は自分の事を罰しているようでもあったから、ファニア自身の事も含んでいるのかも...と私はそういう印象をもった。
さて、個人的に観て良かった映画だが、パレスチナ問題が絡んではいるが、その歴史について詳しく知りたい人は、特に得るものはないと思う。国際的政治的な話がメインではない。あくまでも、フォーカスは、特定の人間。この場合は、アモスの家族。そういう暗い世界で生きている家族と闇に飲まれていく母親を、息子である少年の目線からみた物語。ただ、この映画をキッカケに、今でも続くパレスチナ問題に興味が湧いてきた。
ナタリー・ポートマン、素晴らしいリアルな演出と演技、そして素晴らしく川のように流れるヘブライ語でした。
下記は、映画の中のとある描写。
下記は、本物のアモスの家族。
似ている。