『劇場版TRICK ラストステージ (2014)』
<個人的な評価:10点中8.5点>
下記、個人的な感想。
ネタバレあり。
下記、個人的な感想。
ネタバレあり。
キャッチコピーは、「トリックシリーズ14年間の集大成!本当に最後です!」。にある通り、本当に集大成のように感じた。TRICK劇場版は全て観たわけじゃないが、ドラマはSeason 1〜Season 3 まで観たし、スペシャルも観た。個人的に、ドラマは凄く面白いというわけではないが、10点中7点ぐらいと、まあまあ面白い部類。だが、この映画はそれ以上!!だから評価は8.5 点。思った以上に良かった。
ドラマも全部観たので、もうここまでくると、妙な笑い方をする貧乏マジシャンの山田奈緒子と、日本科学技術大学の教授の自称天才物理学者の上田次郎のコンビを見るだけで安心感がある。
そして、奈緒子の母の山田里見は、毎回、面白さの中にも上品さがあるのが良い。
ドラマでも映画でも、間抜けで落ちこぼれで貧乳キャラの奈緒子だが、やはり、仲間由紀恵さんが演じているだけに、やっぱり美人で可愛い。映画の中で、まさかの仲間由紀恵さん本人ネタが出てくるとは笑。
この映画の舞台は珍しく海外!赤道スンガイ共和国にある村だ。
実際、リアルでは、ここはマレーシア。マレーシアのド田舎。
(私もマレーシアに住んだ事があるが、近代的な街にいたので、ここまでのド田舎には行った事がない。ただ呪術の類は本当にリアルでも存在していると聞く。特に、奥深い村とかでは。)
さて、この映画...
今まで観たTRICKの中でも一番切ない。
まず、殺された人たちは全員クズ。
殺された被害者としては観れないな。っていうより、そいつらが、そもそも加害者だろ!、てか人殺し集団じゃん!
犯人は、人殺したちを始末しただけ。
人の村にやってきて、現地の人を奴隷のように扱い、少しでも気に入らない事があると平気で、現地の人達を撃ち殺す。完全に悪魔じゃん。3人とも死んだけど、ぜったいこいつらの殺した数は、3人以上だなーと思うと、やるせない。こいつらが殺した人たちが可哀想。
TRICKは、犯人がクズの場合が多いが、この劇場版の犯人であった加賀美慎一は、可哀想な人だった。
現地の人にも優しいし、娘想いの良い父親だった。
そして、この現地の呪術師。
今までのTRICKに多いインチキというより、私は彼女にも不思議な力があると思うな。(ここは人によって感想は違うけど)
奈緒子のように、呪術師の女性も、不思議な力はあると思う。
彼女の呪術は、様々な薬草の知識によるものが多いが、それだけじゃなく、彼女自身の力もあるなと思う。
なにより、この女性は、人を騙して利益を得る系ではなく、本当に村人たちの事を想っているのが伝わる。
そして、意外と若くて、とても美人。
彼女が死んでしまったのは残念だ。
撃たれて手当がすぐにも必要なのに、奈緒子はそれを知ってたのに、誰にも言わないで!って説得されてるからって、それで、すんなりと、そのままスルーし、その夜も心配せず、熟睡する奈緒子は、やはり人として何かが欠けているのかなと思った。うーん。
ドラマも観てた時から思ってたけど、まともに笑えない部分とか、人間の友達が一人もいないとか、他にもギャグと思えばギャグだけど性格的にも問題がたくさんある。人の死や痛みに対する感情が、薄いかなーと。
奈緒子ってキャラは、過去の父の死によってか、または元々なのか、心の病を抱えていると思う。
それが、上田次郎と出会って、どんどん心を開いてったけど、やはりまだ何かが欠けているのかなと思う。ギャグ調の作品だから、変なキャラ!っ笑い飛ばせばいいけど、でも、この作品は意外とシリアスな部分もあるから、案外、奈緒子の変わった性格も、心の病なのかもと思う。
その心の病とは、“自分が何者なのかわからない”、という部分もあるかもしれない。
意外と可哀想なキャラなのかもしれない。
あと、この映画でもそうだけど、TRICKって主題歌が毎回良い。
ギャグ調の作品なのに、主題歌が毎回切ないし美しい。特に「月光」
いや、ギャグだけど、結構深い作品だ。
そして、このラストステージのエンディングは切なかった。そうきたかーーーーー!
奈緒子は、初めて、人に必要とされて(金儲けとか悪事の為じゃなく真面目に必要とされた)、崇められ、何か使命のものを感じたんだろうな。そして本気で、人の為に何かしたいと思ったのかもしれない。
金でも食べ物でもなく。
ただ人に必要とされたかったのでは。
そう考えると、ギャグとして今まで笑ってきた奈緒子の落ちこぼれ人生は、案外悲しかったのかもしれない。(マジシャンで客がいないとかバカにされるとか、落ちこぼれ生活を送っているとか、友達がいないとか)
でも、上田も素直になれないが、彼女を必要としている。不器用な奴だが、上田は自分でも気づかないうちに、奈緒子に惹かれていったのだろう。そして二人の間には、様々な経験で得た信頼と絆がある。
一目ぼれでもなければ、ありきたりな安っぽい恋愛なんかでもない。
二人だけの、唯一無二の絆。
なんか、洋画とかだと、ギャグ、シリアス、ホラーにかかわらず、男と女がいれば、相手をよく知らない癖に、すぐにキスだのS〇Xだの、濡れ場が始まるが、そういうのって、短い映画枠の中では時間の無駄だし、全く必要ない時もあるんだよね。なんで、いちいち、恋愛を絡めないといけないの?って、たまに他の映画を観てて思うけど。
そういう面では、日本の作品って、まあ色々あるし、そこまで観てないけど、そういうのを、あえて一切描かずに、さらに深い絆を書くのがうまいなと思う。(サスペンス系だと、ひと昔前の金田一少年の事件簿。一と美雪とか。まあ、あれは明らかにお互いに好意があるけど。)
このTRICKでも、洋画でありがちな、ありきたりな恋愛描写や濡れ場がない。
だからこそ、私は、上田次郎と山田奈緒子だけの、唯一無二の絆に惹かれたのだ。
最後は、複数解釈できると思う。
奈緒子は死んでしまって、幽霊として出てきて、上田が観たのは「幻」というとらえ方もできる。
貞子みたいになって出てきたし...
ただ、私は、あえて、生きているという希望と未来がある解釈をしている。
まず、矢部の温泉の下りで南の国で、記憶を失った女が発見されたと言う情報があるからだ。
これが、奈緒子ではなく全くの別人で一切関係ないかもしれない。
でも、映画の流れからして、私は希望をもって、これは奈緒子だと信じている。
彼女がどうやって助かったか。そのトリックは、映画の冒頭の、ドッキリ!と同じだろうと思っている。
そう奈緒子は奇跡的にも助かった。
でも記憶を失ってしまった...
感動の再会なのに。
それでも上田と山田はまた出会えた。
上田は言葉がでない。
彼は何を思ったのだろう。彼の表情が切ない。でも感動。
愛情、感動、安堵、記憶を失った事への悲しみ、全てが混ざっているような。
いや、奈緒子にまた出会えた。
それだけで上田は良かったのかもしれない。
記憶は戻るかどうか分からないまま物語は幕を閉じる。
二人は再会したから、もちろん、わずかな希望も残して。
人は生きてこそ希望があるのだ。
奈緒子の記憶は失ったかもしれないが、二人はまた関わった。縁は結ばれた。
そのあとは、みなさんのご想像にお任せします...で幕を閉じる。
良い映画だった。