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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2016年12月31日

消えない夜


安全地帯IV』六曲目、「消えない夜」です。

雰囲気満点の歌詞!のっけから「星屑の名を呼ぶ」って何ですか!「……プレアデス……」とかですか(笑)。そんな訳はないので、これはもちろん比喩なんですが、冷静に考えるまで比喩だと気づかせないのがもの凄いところです。詞の力と歌の力、演奏の力が本気でこの世界を構築しに来てます。冷静に言葉を読みとるスキを全く与えるつもりがないんですね。

言葉を隠したって、何か言いにくいことがあるから黙ってごまかしたのでは?

「忘れかけた記憶の微かな痛み」を感じて、「指先の力が背中でこわれた」というのは、何か嫌なことを思い出して気分が萎えたということ?

あーーー!すべて野暮!安全地帯最高裁で銃殺刑を宣告されても仕方ないくらい野暮です。そうです。この曲は、安全地帯チームが全力で作り上げている世界に浸りきり、すべての感情の機微を美しいヴェールで包み、恋人たちのみにスポットライトをあて、外界はロマンチックなものしか視界に入らないように細心の注意をはらう義務を課しているのです。

ただ、実はそんな義務を意識するまでもないんですね。この世界には強力な魅力がありますので、わたくしもそうなんですが、大概のリスナーはあっさり陥落し、歌詞の内容を疑問に思うことすらほぼないでしょう。

この曲を流せば、たちまちあの世界に行けます。「ふっかつのじゅもん」でたちまちファンタジー世界の勇者になれたのと似ています。

音だけでこれだけの世界を創り出せるのですから、安全地帯はまさに超絶技巧の職人です。わたくし、やや古いタイプの人間ですもので、人間は自分の技巧の範囲内でしか物事を思いつかないと思っておりますから、技巧を高めることが同時に頭や心を耕して豊かにすることだと考えております。ですから、クニハラ派みたいに、武沢さんの目の前でスプーン持ってコップをチンチン叩いて、これが音楽だとおっしゃる方々には、爆笑しか差し上げられません。ああよかった、おれはマチイ派だなあ、とか思うんですが、実際にマチイ派のみなさんからは「あれ?オマエはあっち側じゃなかったっけ?」とか言われてうなだれてしまいそうなくらいにしか技巧がないような気がしないでもありません。

マチイ派、クニハラ派というのは、旭川で出入りする楽器屋によってなんとなく分かれていたアマチュアミュージシャンの派閥ですね。いまはもうなくなっちゃいましたけど、かつてこのエピソードを武沢さんのコラムで読むことができました。頑張ればインターネットアーカイブとかで今でも読めるかもしれません。

追記です。読みたくなって頑張ってみたら読めたので、アドレスを残しておきます。

http://web.archive.org/web/20031127030319/http://yutakatakezawa.sub.jp/

余談になりますが、わたくしも多少旭川にゆかりがありますもので、実は少しわかるんです。この頃の雰囲気。1980年か1981年に、松山千春の『空を飛ぶ鳥のように 野を駈ける風のように』を父が旭川のレコード屋さんで買ったのに付き合った記憶がありますから、おそらくマチイかクニハラか、どちらかだったのだと思います。思えばそのころ、メンバーは上京するかしないかの頃だったのでしょうね。

さて、この曲、アレンジは、シンセがうすーく流れてはいますが、基本的にギターのアルペジオで作られています。わたくしアコースティックギターだと思っていましたが、よくよく聴いたらこれはクリーントーンのエレキギターでしょうね。安全地帯のクリーントーンはほんとうにウットリさせてくれます。いったいどんなギターとアンプを使ったら……いやいや、機材の問題じゃないんですね、本質的には腕の問題です。ただ、安全地帯のこういう曲を聴くたびに、クリーントーンにももっと気を遣わないといけないなあ、と痛感させられます。

ただ、ギターソロだけは、ガットギターに聴こえますね……これも技術でエレキギターでもなんとかできるのでしょうか……不可能な気がしないでもないんですが、あの二人ですから、油断はできません(笑)。ライブでどうしてもギターを持ち替えられない時ならともかく、レコーディングでそんな無理をする理由もないでしょうから、おそらくガットギターをお使いになったと思われます。ただ、通常のガットギターですとかなり弾きづらいポジションになりますので、おそらくカッタウェイ(高音部まで弾けるようにボディが削られている形状)のあるものをお使いになったと考えられます。普通に考えれば、ですけど。なにしろあのお二人ですから(以下略)。

この曲の最初から鳴り響いている田中さんのドラムですけど、最初がそれなりに単調なリズムの繰り返しですから、なんだ楽勝……とか思っていたら、サビでちょっと面喰らうことになります。といっても、あんまり自信はないんですが、サビのドラム、毎小節の三拍めのバスドラ、直前に、ごくわずかにバスドラを鳴らして連打しているように聴こえるんです。これは、ペダルを踏んで、その跳ね返りをさらに押し返すという、わりと慣れが必要なテクニックで、わたくしなど「あっ間違えたちょっと早かった!それ!」とかいうときに偶然そうなりやすいのですが(笑)、毎小節聴こえるところをみると、明らかにわざとです。ああー、田中さん!こんな、こんなわずかな音を!こんなにも丁寧に……!これは感動ものです。皆様もぜひ耳を澄ませてお聴きになってみてください。こうしてわたくしの口車に乗せられて「おおー」とか思っているときに「あれはディレイだよ」とか田中さんがおっしゃったりしたら、わたくし切腹ものです(笑)。

さて、またまた余談ですが、わたくしかつて安物のフォーク・ギターを買って、最初に弾いてみた曲がこの曲でした。すぐにカポタストが必要だとわかりましたが、この曲、EmじゃなくてF♯mだったんですね。ギターで曲を作るとき、EmかAmで作って、そのあといろいろやってみて一番きれいに聴こえる、もしくは歌いやすい、演奏しやすいキーに変えるのがありがちなパターンだと思うんですが、これはきれいに聴こえることを優先したのではないかと思われます。「キツイ奴ら」に出てきた「コモエスタ赤坂」「ラブユー東京」「夜の銀狐」「さよならをするために」、弾いてみるとわかりますが、ぜんぶキーはAmです。だから玉置さんもEmかAmを基準にギターをつま弾くのではないかな〜と、考えるにはちょっと根拠が薄いでしょうか。

で、ですね。フォークギターで喜んでこの曲を弾いていたんですけど、本来の16分アルペジオでなくて、8分でジャンジャンージャジャ、ジャンジャラーンジャジャ、と、六土さんのベースのリズムで弾いていたんです。ああ、この曲でわたくしが一番印象に残っていたイメージは、六土さんのベースだったんだ!と気づかされた瞬間でした。わたくし、いつかはこんな誰かの脳裏に焼き付くベースを弾いてみたいものです。

いやはや、銃殺になったり切腹になったり、あまり穏やかな記事でなくて失礼しました。いつも以上に話が飛びまくっているのも承知しております。こんな年の瀬に大変失礼しました。かさねてお詫びいたします。

2016年中には『IV』が終わるくらいまではいけるかな〜と始めたころは思っていたんですけど、そうはいかずに持ち越しになってしまいました。こんなしょうもないブログですが、新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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2016年12月23日

こしゃくなTEL


安全地帯IV』五曲目、「こしゃくなTEL」です。

本ブログの常と違うのですが、いきなり歌詞から語ってみたいと思います。

わたくし東京に暮らしたことはないため、「感情線」が「環状線」すなわち山手線の比喩だろうという発想がそもそもございませんでした。手相のアレではないだろうから、「感情」が弛緩したり緊張したりする糸のように表現されたものだろう、とだけ考えていました。ああー、なるほどね、恋愛に悩んで、いろいろ思ったり感じたりしているつもりでも、実はグルグル同じところを回っているだけのあの状態ね、ついでにいうと「1000回」は「旋回」との掛詞になっているわけね、わかるわかる……わかるような気がしますよ松井さん!

ただ、そうなると、「左周り」は、山手線なら「内回り」ですよね。これは何を意味してるのか……?はやくも山手線の比喩だというセンは崩れそうです(笑)。これは東京の人なら生活感覚で何かわかるのかもしれません。わたくし、すでにくじけそうですが、このセンもまだ捨てずにとっておくくらいは冷静なつもりです。地方在住者の人生の謎というセンも、説の一つとしてここに記しておきます。

「女性関係を茶化した詞をいくつか書いた」という記述が、松井さんの『Friend』に残されています。

「ディープキッスは」と「チークダンスは」、「ハンドメイドな」と「ダイナマイトで」、「ミッドナイトの」、「嫉妬ばっかの」「フェイドアウトな」

お得意のことば遊びが効いていて、それでいて男女にありがちな事象を的確に表現しており、かつリズムに乗って歌いやすい、みごとな歌詞でほれぼれします。「ハンドメイドな」とか「ダイナマイトで」「フェイドアウトな」なんて、そもそも品詞がおかしいじゃないですか(笑)。こういう言葉をためらいなく使えるというのは、通常の日本語話者には、簡単にはできないでしょう。さすが言葉の職人!これを色気たっぷりの玉置さんがあの声で歌うのですから、これはたまりません。この時代、玉置・松井コンビは絶好調だったのでしょう。ツーと言えばカーという、阿吽の呼吸、以心伝心……は天才ならぬわたくしでも難しいと感じているのに、この二人の天才がツーカーになるというのは、傍から想像される以上に奇跡的なことに違いありません。

「こしゃくなTEL」だって、通常の日本語感覚じゃないですよね。思えばこのタイトルを思いついて、さらにそれが通る、ということが、いかに玉置・松井コンビの風通しがよかったかを示していたといえるのではないでしょうか。

さていつもとは逆に、ここでアレンジに言及したいと思います。

この曲、アマチュアでコピーしようと思ったら、まずドラマーが悲鳴をあげることでしょう。早くて手数が多いんです。最近のミュージシャンだと、アジアン・カンフー・ジェネレーションを思わせる手数の多さです。ひとつひとつは決して難しくないんですが、こう畳みかけられると、採譜している途中で放り投げたくなります。いや最近、アジアン・カンフー・ジェネレーションのコピーをしていて放り投げたもので(笑)。とくにBメロ以降のバスドラは、一小節ごとに若干違うんじゃないかってくらいバリエーション豊かで、田中さんマニアならぜひ挑戦してほしいものです。

この曲の、わたくしたちが聴いて感じるノリは、六土さんのベースと、Bメロ以降の武沢さんのギターが作っているように感じます。とくに、「なんだった」のあたりで聴ける「シャリーン」という武沢トーンは、そこで両手を突き上げてジャンプしたくなる爽快さです。ぜひ安全地帯のライブで、そこでジャンプしてるのは武沢マニアだけ、という光景を見てみたいものです(笑)。

しかし、「ビッグ・ジョーク」や「マスカレード」、「真夏のマリア」を思わせる、ひたすら細かいカッティング(おそらく単音でしょう)で曲を支え続ける矢萩さんは、もはや仙人か聖人かと思えるほどの職人気質を発揮しているというべきでしょう。曲の良さを絶対に最大限に引き出すぞ!それが俺のこの曲での役割なんだ!という、他のバンドのリードギタリストにはまず見られないほどの、滅私ぶりです。ムリだー、わたくしだったら絶対出しゃばって、ブルージーでメローなフレーズを入れてしまう!いやわたくしのスキルではそれは難しいからできないんですけど、もしわたくしに矢萩さんほどのスキルがあったら、出しゃばらずにいられない!いまのわたくしよりもずっと若いのに……ちょっといぶし銀すぎます。武沢マニアのわたくしではありますが、ここで武沢トーンにはしゃぐだけで終わるには、矢萩さんを尊敬しすぎているようです(笑)。

そんなわけで、「女性関係を茶化した」、しかしおそろしく真面目でハイスキルな音楽集団による、ちょっと簡単にこのノリが出せるとは思えないほどノリにノッていた時期の、愉快でありつつも威厳に満ちた曲、「こしゃくなTEL」でした。この名盤の、A面の終わりを飾るにふさわしい曲だと、わたくしは思います。

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2016年12月17日

合言葉


安全地帯IV』四曲目、「合言葉」です。

この曲は、すぐに気づくことではありますが、前奏〜Aメロが、二小節を単位としたリフで出来ています。

この「二小節を単位とした」というのは、一小節めに2.5回、二小節目に2.5回であわせて五回になるように作っている……一小節目の最後と二小節目の最初をくっつけて小節の切れ目を分かりにくくしている……すみません、分かりにくいですね。わたくしこの手法を昔から「ジミー・ペイジ風リフ」と呼んでいるのですが、どうしてそう呼んでいるのか、自分でも分かりません。きっと昔に聴いていたツェッペリンの曲にそんなのがあったのをたまたま発見して、通ぶってそう呼ぶことにしたのか、たんに立ち読みした教則本か何かにそう書いてあったから、ツェッペリンの音源を聴いて確かめることもせずにそのままそう呼んでいるのかのどっちかだと思います。どっちにしても、我ながら心がけが悪すぎて話になりません(笑)。

玉置さんの歌でいえば「涙の深さに沈」までが二小節なんですが、「なみだの ふ」「か さにしず」といったように、「深さ」が分かれていて、小節のつなぎ目が分かりにくくなるよう工夫されている、ということですね。なんだ、最初からこう説明すればわかりやすかったんだ(笑)。

ともあれ、その「ジミー・ペイジ風」リフをバンド全体で演奏することによって、一瞬変拍子か何かなんじゃないか、と思わせるリズムを聴くものに感じさせます。

Bメロ〜サビは、ふつうの四拍子(Aメロもふつうの四拍子なんですが)ですので、迷うことなく聴くことができます、いや、意図的にそう構成されていて、サビの疾走感に快く身をゆだねることができるわけです。しかしここでニクイのは、毎小節同じギターのリフ(おそらく矢萩さん)と六土さんの八分のルート刻み組は一小節単位、ギターのカッティング(おそらく武沢さん)、ドラムは相変わらず二小節単位、といったように、ある意味二チームに分かれてフレーズを奏でていることによって、その疾走感を演出しているということです。

玉置さんは「といかけた」の「か」「け」「た」が全音符、その後の「甘く危なくあなたをふるわす合言」まで、八分音符、といったように、長短を巧みに組み合わせることによって、疾走感を最高度に高めています。いや、疾走感、なんて言葉の使い方は、ヘビメタ音楽雑誌のレビューに毒されすぎですね。「碧い瞳のエリス」で使った(ような気がする)言葉をもう一度使ってみれば、「どこまでも二人で堕ちてゆく」感覚です。いってみれば「落下感」「堕天感」といったところでしょうか。うん、われながら言葉のセンスが悪い(笑)。

これも、バンドでコピーするとしたら、かなりリハーサルしないとちゃんとコピーできそうもない曲ですね。バンドのなかで二チームに分かれてキチンと合わせるなんて、どんな神業だよ!中国雑技団かよ!こんど何かのはずみでバンドメンバーを募集するときは、この曲を課題曲にしたいくらいです。自分ではできる自信はないですが(笑)。でも、このくらいはできないと、安全地帯バンドなんてできません。

さて、歌詞の内容ですが、「合言葉」というのは、もちろん「山」「川」とかそういうのではないですね(笑)。きっと、ふたりだけにわかる、ふたりだけのエピソードにおいて重要なタームです。

出会ったダンスホールで飲んでいたカクテルがトムコリンズで、「何、飲んでいるの?」「これかい? トムコリンズっていうんだけど……飲んでみる?」「苦…い」「あっはっは、ジンだからね、無理しなくていいんだよ、あれ、この曲…?」「…ニジンスキーね」「わかるの?」「子どものころ踊っていたの」

……とかなんとか!歯の浮くような!そんなエピソードがあったら!「トムコリンズ」と「ニジンスキー」が「合言葉」になるってわけですよ!

すみません、無理してるのが丸わかりです(笑)。トムコリンズなんて気取って飲むやついないよ!それになんだよニジンスキーって、アングラ舞踊かよ!女の子がそんなの「むかし踊ってた」わけないだろ!ニジンスキーなんてダービースタリオンに出てくるノーザンダンサー系の種牡馬としか思わないよ!

そんなこんなで、ブログ執筆者がない経験を雑巾を絞るように捏造してまで解説してみたわけですが、その「合言葉」を「熱い痛み」とか「迷い」とか「嘆き」のあるとき、簡単にいえば痴情のもつれがあって修羅場になっているときに(笑)言ってみる、それに相手が反応してその頃のことを思い出してくれるかどうかを試す、というのが「問いかけた」「あなたをふるわす」という歌詞の意味なのだと、わたくしは思うわけです、はい。

「このままで時をかさねて……何になる」「遠くへ流れてく…遠くへ…」というのが、この修羅場でどうにでもなってしまえという気分になりがちなときでも、それでも「合言葉」に反応してくれる相手への愛おしさをくるおしいほどに表現していますね。ここを乗り越えられるかどうか、乗り越えたほうがいいのかどうかは、この「ふたり」にしかわからないですが、ちょっと遠く離れたところから優しい気持ちで見守るようなポジションにいたいものです(笑)。いや、ちょっとはこういう思いに身も心も焦がしてみたいなあ〜という思いも、一ピコグラムくらいはないではないのですが、やっぱ、いいです(笑)。

「もう、松井さんたら、イジワル!」な、若い恋人たちの心を見透かすような歌詞が、この頃の安全地帯のカラーを決定づけていたのがよくわかる曲ですね。わたくし、『安全地帯IV』ではこの曲が一番好きかもしれません。リズムと歌詞によって演出されるこのイジワルな感じがスリルを味わわせてくれます。

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2016年12月10日

碧い瞳のエリス


安全地帯IV』三曲目、「碧い瞳のエリス」です。

「またね…。」が「夢のつづき」の再来だとしたら、この「碧い瞳のエリス」の再来は「オレンジ」なのかもしれません。単に曲順が同じで、シングル曲だという共通点があるにすぎませんが(追記:あとから間違いに気づきましたが、曲順は同じではありませんでした。お詫びいたします)。ちなみにこの「碧い瞳のエリス」のカップリングは、「彼女は何かを知っている」でした。

さてこの曲、グランドピアノとアコースティック・ギターをユニゾンで弾くという荒業によって、独特の音色を初っ端から放っています。うーむ、ピアノとユニゾンで弾くのは難しいんですよ、安全地帯はさらっとこなしてますけど。それにエレキギターのクリーン・トーンで、アルペジオの一番高い音によって構成されたフレーズをなぞっている……んだと思います。思いますというのは、そう聴こえるだけで、演奏シーンを見たことがないからです。唯一映像で見られるのが『ONE NIGHT THEATER』なんですが、なんと玉置さんだけにピンスポットが当たり、ほかのメンバーはほぼ暗闇の中です。ひどい話です。いったいどうやって演奏したんでしょう。

こんな有様ですから推測するしかありませんが、『ONE NIGHT THEATER』は、オープニングで横浜スタジアムの照明が消され、二台のギターがギタースタンドにセッティングされたシーンから始まります。この二台のうち、手前のギターがどうみてもアコースティック・ギターなんです。ちなみに奥のギターは、おそらくギターシンセ用でしょう。

ですから、武沢さんが、ターナーを肩に下げたまま、ギタースタンドのアコースティック・ギターを弾いたのではないか?と思われます。あの暗闇の中でよくぞ!ワタクシなら転んでギターを倒してしまうでしょう(笑)。武沢さん、ステージアクションも神業なんですね……。

さてこの曲は、そのアコギ・ピアノユニゾン音色を基調に、AメロBメロと、わざとそうなるように書いたとしか思えない、石原真理子さんのふわっとした透明感(当時)によく似合うリリカルな歌詞に導かれ、やがて大げさにストリングスの入ったサビへと突入します。

徳永さんの「風のエオリア」なみに、商品名が露骨に出た歌詞のサビなんですけど(笑)、そんなこと知らぬわたくし(もう当時はあまりテレビをみなかったので、「エリス」が商品名だとわかりませんでした)、きっと『舞姫』の「エリス」みたいな悲しい運命を背負った少女の名前なんだろう、その少女の面影を「あなたの瞳」のなかに見たのだ……!よくわからないけど、なんて悲しいんだ!とかなんとか、すっかりこの美しい旋律、アレンジ、歌詞に圧倒されました。「エリス」という商品を知らないで、本当によかった!ついでにいうと、「風のエオリア」も「エオリア」がエアコンだと知りませんでしたので、ずいぶん楽しめました(笑)。徳永さんは嫌いだそうですね、「風のエオリア」。綺麗でいい曲だと思うんですけど。

二番、間奏、半音上がって三番と、メンバー的にはあまり変わりのない演奏を繰り返すんですが、ストリングスによる演出がだんだん大仰になっていくことによって、なんだか二人だけの世界にどこまでも堕ちてゆく、といった感覚を生み出しているように思えます。そう、この曲は、もう五人だけではできないのです。後になって玉置さんがシンプル路線をしばらく歩み続けたのは、この時代の、五人だけではできない感が辛かったからなのでしょう。自分が生み出す音楽の世界と、期待される音像の大きさと、強力な周囲の音楽家たちによる惜しみない好意と助力、どこまでも一緒に並走してくれるメンバーたちのゆるぎない友情と確固たる実力、こういったものを調整すると、どうしてもこのような大仰な音楽になるのでしょう。この「碧い瞳のエリス」は、玉置さんの、そしてメンバーの望みや思惑と、結果として作り出される音楽との違いが大きくなりはじめた時期の、しかしそれゆえの、おそらくはもうないであろう輝きのなかで生まれた曲なのだと思います。

さて、この曲は、他の人と感想を話したことのある数少ない曲の一つでもあります。まあ有名な曲ですしね。話しやすい曲であることに間違いはありません。

話した内容は、この曲の主人公は男か女か?というものです。「少女でいれば叱られない」のところを、「私は」この「宝石箱」を開いているいまだけは「少女」に戻っているんだから、誰かに咎められるなんてことはないのよ、だから辛いことなんてない、泣かなくていいの……と読むならば主人公は女性だろう、いやいや、その様子を見守って、キミはその「宝石箱」を開いて思い出に浸っているいまだけは、誰にも咎められることのない少女なんだよ、だから安心していいんだ、泣くことなんてないんだよ……とかなんとか、「私」が歯の浮くようなことを思っているのだとすれば主人公は男性だろう、という、興味のない人には非常にどっちでもいい話をしました(笑)。しかし、わたしは嬉しかったのです。そのような話をすることができて。ある程度以上聴き込んでいないと、そもそもこういう話ができるくらいには歌詞が頭に浮かんできませんから。ああ、仲間だ、という安堵感を感じていました。その人とは、結局それだけしか話しませんでしたけども。いいですね、底が知れなくて。奥ゆかしいとはこういうことなのでしょう。少なくとも、ワタクシみたいに話したりなくてブログでガンガン書いちゃうような人種とはわけが違います(笑)。

これは、わたくしが家にあったガットギターで一生懸命に似た雰囲気を出そうとしてボロンボロン弾いていた曲でもあります。安全地帯初コピー曲といえるかもしれません。結局あまり似ませんでしたけど。のちの90年代に、手に入る値段でシーケンサーが出回り始めたころに、シーケンサー、ギター、ベース、ボーカルを四トラックのマルチレコーダーに録音して、一人コピーをしました。自分の歌が酷くて聴いていられないのですぐ聴かなくなりましたけど、録音中は、夢見心地でした。たぶん、100時間くらいはかけたんじゃないでしょうか。それなのに、歌が下手なだけですべて台無しです。いや、この曲で歌がダメなら全部ダメなのは当然なんですけど(笑)。

そんなわけで、かなり久しぶりに出版された安全地帯のスコアにはとても注目しておりました。昔もなくはなかったんですけど、買い逃しているうちに市場からなくなり(これは予想してませんでした。だってBOOWYのスコアとかいつまでも新品で売ってますし)、いつのまにかヤフオクでは高価で取引されている有様でした。そんな高いの買えないよ!皆様も、安全地帯のスコアはいつなくなるかわかりませんので、少しでも心に引っかかるのであれば迷わず買い!がおススメです。ジェイル大橋さんが聖飢魔IIのスコアを見るとヒドイものでガッカリした、というエピソードもあるくらい、市販のスコアには精度の低いものが含まれているのは事実なのですが、このスコアは…メンバーからみたらどんな評価になるんでしょう?とりあえず私は、「ああ、なるほど!」と、知りたかったことが知れたから満足いたしました(笑)。

さらなる余談で、しかも、また変換ネタで恐縮なのですが、わたくしのPCは「あおい」と打つと「碧い」が最初に出てきてしまいます。これは「みどり」って読むんだよ!とか怒っても仕方ありません。わたくしが辞書に追加したのをPCは忠実に履行しているだけですから。

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2016年12月03日

デリカシー


安全地帯IV』二曲目、「デリカシー」です。

必ずしもメロディーが綺麗でなくとも、いい歌だなあ……と思わされる曲があります。わたくしにとってこの「デリカシー」は、まさにそうした曲です。

いやー、白状すると、子どもの頃は、そんなにいい曲だとは思ってなかったんです。「夢のつづき」「碧い瞳のエリス」の間にはさまっている、なんだか変わった曲、という印象でした。これがCDだったら跳ばすのかもしれませんけど、最初はカセットですから(笑)、面倒でそのまま聴いていたんですよ。そしたらそのうちに「パンシュポンシュポン〜」とか「Fu!Fu!」と口ずさむようになってしまったというわけです。すっかりハマったんですね。はっはっは。

この曲は、リズムの力が強くて、そのほかの要素がリズムに負けないように……リズムを引き立てるように、かもしれませんが、リズムを中心に作られているように思われます。「肌を甘やかす」とか「後先のないデリカシー」とか、強烈な言葉の載った歌を聴いていても、のちの「チャイナ・ドレスでおいで」を思わせる風変わりな音色のギターソロ、ツインのハモリ速弾きを聴いていても、六土さん田中さんの奏でるリズムを一瞬でも忘れる、ということがありません。

さぞかし完璧にシンクロしているんだろうな〜六土さん、田中さん、と思っていたのです。ところが、よくよく聴いてみると、……思ったほどシンクロしてません。ズレてます。え?ウソだろ?と思ってもう一回聴いてみても、ベースとドラムのリズムは意図的にズラしてあるとしか思えないくらいズレています。

よーく聴いてくださるとわかるのですが、いや、わたくしごときだからよーく聴かないとわからないのですが、最初の二小節からしてズレています。一小節目こそはほぼシンクロですが、二小節目は田中さんがバスドラを半拍遅く踏んでいるにもかかわらず、六土さんは一小節目と同じリズムです。サビに至っては、まるで別のリズムを奏でているに近いです。こ、これは……数十年にわたって、とんだ思い違いをしていました。

それにしてもこの二人は……達人だ! こんなにズレているのに、どうして「一つのリズム」を奏でることができるのですか?ドラムとベースの役割分担は、同じリズムを、音程あり(ベース)、音程なし(ドラム)で奏でることだと、わたくしは思っていたのです。ベースが流麗なメロディーを奏でることがあっても、それはあくまで曲の演出上ギターのほうの役割に近づくだけで、その間リズムはドラムだけが担っているだけのことだと思っていたのです。違ったのです。二人とも違うリズムを奏でて、それがアンサンブルで「一つのリズム」になる、ということがありうるのです。そうじゃない、お前はまだロックがわかっていない、出直してこいと、このお二人に演奏で教えられたのです、まさに、いま。

これはムリです。わたくしには絶対演奏できません。一つひとつのパートをコピーすることはできても、アンサンブルに加われません。この曲はギターがえらくシンプルで技術的には簡単なのですが、それだってこのリズム隊に載せてギターを弾くなんて、できっこないとしり込みしてしまいます。

さて、リズムにばかり驚嘆していてはいけません、曲全体を聴くのがわたくしの使命です(思い込み)。そうですね、当然のことですが、おそらく川島さんによるものと思われるシンセサイザーが、曲の序盤でかなり効いていますね……。この音、わたくしシンセサイザーには(も?)疎いものでして、なんという音色か知りませんが、80年代にはよく耳にしましたね、この透明感のある鍵盤の音は。この音が、サビ前までずーっと単純な八分のリズムでアルペジオを奏でていてくれますので、六土さん田中さんの強烈なリズムと、中和されているようにさえ思われます。この音色とリズムの調整機能によって洗練度が上がり、安全地帯の楽曲がワンランクアップしたように聴こえるのです。

志田歩さんの『幸せになるために生まれてきたんだから』には、この『安全地帯IV』で、ある意味それまでのスタイルが完成した、『安全地帯V』からは、一度壊して再構築していった、という印象・手ごたえが、メンバー間にあったように書かれています。

たしかに、怒涛の三枚組『安全地帯V』の前に区切りを感じるのは、当然のことです。何より、メンバーがそういう印象をもっているのだから、間違いありません。

しかし、しかし……なのです。わたくしにはどうしても、この『安全地帯IV』ですでに『安全地帯V』や『安全地帯VI 月に濡れたふたり』の領域に入っているように思われるのです。これはわたくしの感じ方がズレているのであって、なにより致命的なことにメンバーともズレている(笑)ので、妄想どころか完全に戯言です。わたくしがこのように感じる原因は、きっと、この(おそらく)川島さんのシンセなのだと思います。サポートメンバーの音に惑わされているんじゃないよ、もっと本質を見ろよ、聴けよ、そう、そう……なんですが……。(おそらく)川島さんの力は、松井さんなみか、それに次ぐくらい、安全地帯と一体化していって、大きな安全地帯の世界を作っているように思えてならないのです。それがこの『安全地帯IV』から、最初の活動休止までの、わたしが聴いてきた「安全地帯」の像だったのではないか……と思えるのです。

その安全地帯の「像」を、時系列的に最初に感じられた曲が、この「デリカシー」だったのです。

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