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2020年04月09日
江戸時代 どれだけ厳しい取り締まりでも無く為ら無かった或る職業
江戸時代 どれだけ厳しい取り締まりでも
無く為ら無かった 或る職業
〜プレジデントオンライン 河合敦 4/8(水) 11:16配信〜
※写真はイメージです 写真 iStock.com/rudiuks
〜江戸時代、女性の髪を扱う理美容師の仕事は禁止されて居た。歴史研究家の河合敦氏は「それでも庶民の間では大流行して居た。厳しい禁令も、美しい髪型で居たいと云う女性の願いには敵わ無かった」と云う〜
※本稿は、河合敦『禁断の江戸史 教科書に載らない江戸の事件簿』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
女性が髪を結う様に為ったのは江戸時代から
「女髪結(かみゆい)」の話をしたい。女性の髪を結う、今で云えば理容師・美容師の事だ。女性が皆髪を結う様に為ったのは江戸時代に入ってから。それ迄は、貴族や武士の間でも垂髪(すべらかし)が一般的だった。それが次第に髪の毛を束ね始める。
当初は自分で結髪したり友人や知人で結い合ったりして居たが、次第に金を出して他人の手でオシャレな髪型にして貰う様に為った。こうして女髪結と云う職業が成立して来る訳だ。
ちなみに私が子供の頃に通って居た近所の床屋は、行くと必ず天国か地獄か、ドチラかの気分を味わされた。ドチラかに為るかは順番が来る迄判らない。店は父と娘で営業して居たが、娘さんは超美人だった。襟足(えりあし)を剃って貰う時彼女の顔が間近に迫って来たり、散髪の途中、体が一瞬だけ私に触れたりする。増せガキだったので天にも昇る気持ちだった。一方父親の方は、平気でゲップやオナラをする嫌なオヤジだった。
だから女髪結と聞くと、私の脳裏には、アノ美人理容師の顔が思い浮かんで来る。只最初の女髪結は、山下金作と云う男性だったと云うのが定説に為って居る。山東京山が随筆『蜘蛛の糸巻』で語ったものだ。
歌舞伎役者のカツラのセットから始まった
京山は云う・・・安永年間(1772〜1781)、上方歌舞伎の女形で有る山下金作は江戸に下って深川に住み始めたのだが、自分が芝居で着けるカツラを美しく結い上げて居た。それを目にした深川の或る芸妓が感激し、「私の髪もヤットクレ?」と頼み込んだ。
そこで銭二百文で結い上げた処、何とも見事な仕上がり。これが噂(うわさ)に為って客が殺到、遂に金作は女性専門の髪結を渡世(とせい)とする様に為ったのである。
そんな金作に弟子入りしたのが甚吉と云う若者だった。彼はその技を修得すると、半額の百文で料理屋の仲居達の髪迄結い初め、以後「百」さんと呼ばれ、アチコチを回って大いに稼いだと云う。
弟子達も大勢出来たのだが、彼等の多くも自立して更に半額以下で仕事を請け負い、寛政年間(1789〜1801)に入ると、手頃な値段の女髪結は大流行。誰もが髪を髪結に任せたので、女性は自分で髪を結う事が出来無く為る程だった。
松平定信が「風俗を乱して居る」と禁止令
老中松平定信 寛政の改革
処が丁度この頃、老中松平定信が主導する幕府の寛政の改革が始まった。そして改革の一環として、何と女髪結を禁止したのである。寛政七年(1795)十月の事だ。その理由に着いて、禁令の内容を意訳して理解して頂こう。
「以前は女髪結は居なかったし、金を出して髪を結って貰う女も居なかった。処が近頃、女髪結がアチコチに現れ、遊女や歌舞伎の女形風に髪を結い立て、衣服も華美なものを着て風俗を乱して居る。飛んでも無い事だし、そんな娘を持つ両親は何と心得て居るのか。女は万事、分相応の身嗜みをすべきだ。
近年は、身分軽き者の妻や娘達迄もが髪を自分で結わ無いと云うではないか。ソコで女髪結は、今後は一切禁止する。それを生業(なりわい)とする娘達は職業を変え、仕立て屋や洗濯等をして生計を立てる様に」
質素倹約を改革の主眼として居た幕府は、近年の庶民女性の風俗は華美に流れて居り、その責任の一端は女髪結に有ると判断したのだ。尚、この文面から、当時の女髪結は既に女性中心の職業だった事が分かる。
ホトボリが冷めると平気で復活する
ちなみに『蜘蛛の糸巻』を著した山東京山は、コノ女髪結禁止令に賛成だった様で「彼(か)の百(金作の弟子・甚助)が妖風の毒を残しゝなり。然(し)かるに。維新の御時(寛政の改革)に遇(あ)ひて。此妖風一時に止まるは。忝かたじけなき事にぞ有りける」と述べて 。
しかしながら、この改革では京山の兄である京伝が、遊里の事を書いた洒落(しゃれ)本『仕懸(しかけ)文庫』を問題視され、手鎖(手錠をして生活する)五十日の刑に処せられて居る。
老中水野忠邦に依る天保の改革
さて、江戸時代の面白さは、ホトボリが冷めたら法令は平気で破られる事である。寛政の改革が終わり、将軍家斉の文化・文政時代(1804〜1830)に為ると、風俗は大いに緩んで庶民の暮らしは贅沢(ぜいたく)に為った。勿論、またぞろ女髪結も現れた。処が、である。
老中水野忠邦に依る天保の改革(1841〜1843年)が始まると、庶民の娯楽は徹底的に取り締まられ、再び女髪結も廃業を迫られた。天保十三年(1842)十月に出された禁令を見ると、
「髪を結渡世(とせい)同様ニいたし候(そうろう)女・・・(女髪結)は〔重敲(じゅうたたき)〕の罪に相当するとして〔百日過怠(かたい)牢舎〕(入牢)を申しつけ、その両親や夫も罰金〔三貫文〕相当の罪にあたるとして〔三十日手鎖〕更に家主も同様。又、髪を結って貰った客も三十日の手鎖とし、客の親や夫は〔過料三貫文〕とする」と書かれて居る。
再度禁止されても何故か髪結は増えるばかり
それにしてもお金を貰って女性の髪を結っただけで、百日間も牢獄にブチ込まれ、客のみ為らず女髪結の両親や家主迄処罰されると云うのは尋常では無い。天保の改革が二年間で失敗に終わると、庶民が水野忠邦の屋敷を取り囲み、石を投げたり屋敷の一部を破壊したのは心情として好く判る。ちなみにこの時は、アノ曲亭馬琴が『著作堂雑記』の中で、
「天保十二年春頃から女髪結を禁止され、今年十三年に為って、それでも止ま無いので、女髪結だけで無くその客も召し捕られ手鎖を掛けられる様に為った。又町中に『女髪ゆい入べからず』と云う札が貼られる様に為った。この女髪結と云うものは、文化年間から始まって次第に増え、貧しい裏長屋の女房や娘、或いは下女迄もが女髪結に髪を結わせる様に為った。今は自分で髪を結わ無い者ばかりだ。当初は客が髪を結う為の油を出し、百文の代金を取って居たが、最近は女髪結が増え、安いのに為ると二十四文で髪を結って呉れる」
と記し、最後に「是らの御停止は、恐れながら最も御善政にて有り難き御事なり」と讃(たた)えて居る。その認識は、寛政の改革時の山東京山と同様である。只、本当に女髪結を生業にしたからと云って、処罰された人が居たのだろうか?
「小遣い銭にも事欠く程生活が苦しく…」
実は、存在したのである。『長崎奉行所記録 口書集 上巻』(森永種夫編 犯科帳刊行会)にその事例が採録されて居る。長崎奉行所に残る裁判記録をマトメたもので、口書と云うのは江戸時代の供述調書であり、最後に嘘偽りが無い事を証明する為拇印を押した書類だ。弘化元年(1844)四月の記録に「女髪結」みつ(二十九歳)の口書があるので、その供述を意訳して紹介しよう。
「私は新橋町茂兵衛の娘です。先年、父が亡く為ったので困窮し、寄合町の遊女屋忠三郎方で家事手伝いをして居りました。東浜町七郎太方には好く出入りして居るのですが、同家の娘もん(二十歳)やその下女かや(二十四歳)から髪を結って欲しいと云われ、鼻紙代として銭二十文を受け取り結髪致しました。
女髪結が禁止されて居る事は重々承知して居りますが、小遣い銭にも事欠く程生活が苦しく、遂法を犯しました。逮捕されてお役人様から他所へも出入りして結髪で金を稼いで居るだろうと再三聞かれましたが、そんな事はございません。右の事に着いては一切、偽りはございません・・・クスン」
この様に貧窮の余り、結髪に手を出した様だ。なお、みつは手鎖の刑に処せられた。又、客と為った「もん」と「かや」も取り調べられて居る。
もんが云うには「両親が先年死去したので造り酒屋を継承したが、持病の癪(しゃく)が長引いて自分で髪を結え無く為ったので、元女髪結で在ったみつに仕事を依頼したが、それ以外、他の女髪結を用いた事は無い」と誓って居る。どうやら密告者が有った様で、みつがもんの髪を結って居る最中に長崎奉行所の役人が乗り込んで来て居る。
「髪結いの亭主」は明治時代に成立した慣用句
さて、この様な摘発を行ったにも関わらず、一向に女髪結は姿を消さ無かった。江戸の町奉行所は、嘉永六年(1853)五月三日、町の名主達に「女髪結之儀ニ付御教諭」と云う通達を発した。ソコには次の様な事が記されて居る。
「過つて女髪結は厳禁されて居たが、密(ひそか)に調べた処千四百人余りも居る事が分かった。そのママにして置け無いので直ぐに捕まえるべきだが、この度は特別な計らいで吟味の沙汰には及ば無い。とは家、そのママ放置出来ないし、女髪結が居ると女子の風儀が奢侈(しゃし)に流れてしまう。
只、貧しさ故に髪結渡世を営んで居るのだから、急に仕事を取り上げてしまうと困る者があるだろう。そこで今後は、毎月初旬に町の家主達を集め、町内に女髪結が居ないかを問い質し、もし居たら説諭を加えて商売替えをする様説得せよ。それでも云う事を聞か無ければ、捕まえて連れて来い。放置する事の無い様に」
如何であろうか。天保の改革の十年前と比べて、規制が驚く程甘く為って居る。それはそうだろう。だって千四百人も女髪結が居るのだから。詰り幕府の禁令も美しい髪型をして町を練り歩きたいと云う女性の願いには敵(かな)わ無かったのである。
尚、明治時代に為ると、女髪結は専ら芸妓達の髪を扱う様に為り、その稼ぎも男顔負けに為って行く。妻の稼ぎで生きて居る夫の事を「髪結いの亭主」と云うが、実はこれ、明治時代に為ってから成立した慣用句なのである。
イタリア版 髪結いの亭主
河合 敦(かわい・あつし) 歴史家 1965年 東京都生まれ 早稲田大学大学院卒業 高校教師として27年間教壇に立つ。著書に『もうすぐ変わる日本史の教科書』『逆転した日本史』など
歴史家 河合 敦 以上
「誰も聞か無いなら自分が質問する、それだけ」新聞記者・望月衣塑子さんの政治に立ち向かう勇気
「誰も聞か無いなら自分が質問する それだけ」
新聞記者・望月衣塑子さんの政治に立ち向かう勇気
〜ハルメクWEB 4/8(水) 19:00配信〜
望月衣塑子さん 写真 ハルメクWEB
日本アカデミー賞三冠映画「新聞記者」原案者
〜2020年、日本アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀主演男優賞・最優秀主演女優賞の三冠に輝いた映画「新聞記者」原案と為った著書を手掛けたのが新聞記者の望月衣塑子(もちづきいそこ)さんです。批判や圧力を受けても政治家に立ち向かう思いに触れます〜
小学生の時は演劇の世界に憧れる少女だった
「キチンとした回答を頂けて居るとは思わ無いので、繰り返し聞いて居ます」菅(すが)官房長官の会見で食い下がって質問をする女性。それが東京新聞記者・望月衣塑子(もちづき・いそこ)さんです。
想定通りの質問と回答が多く「台本通り」とも評される菅官房長官の会見で、望月さんの厳しい質問は注目を集める一方、昨年末には官邸が記者クラブに対し、記者の質問を制限する様な異例の申し入れを行いました。「政権の中枢に切り込む新聞記者」として賛否両論が絶え無い望月さんですが、意外な事に最初から記者を志して居た訳では無かったそう。
「小学校の卒業文集には、恥ずかし気も無く『私、女優に為ります!』と書いて有ります(笑)演劇が好きな母が、好く舞台に連れて行って呉れたんです」
演者も観客も一体に為る空想の世界に美しい歌やダンス。演劇が題材の漫画『ガラスの仮面』のヒットも有り、舞台に魅了された望月さんは女優を志し高校生迄劇団に所属しました。
母が呉れた本が 報道の道へ進む切っ掛けに
「報道の道に関心を持ったのも母の影響でした。中学生の時『南ア・アパルトヘイト共和国』と云う本を呉れたんです。肌の色に依って水を飲む場所も決められて居る世界は、平和な日本で暮らす私の想像を超えて居ました」
現実の世界を取材し、困って居る人の声を伝えたいと思った望月さんは、大学卒業後、東京・中日新聞に入社。社会部に配属されて事件を追い、警察幹部が住んで居る官舎を調べて通い詰める等、夜討ち朝駆けの毎日が続きました。
出産・育児を期に政治部へ 待って居たのは・・・
生活が変わる転機と為ったのが、2人の子供の出産・育児です。当時は夫が単身赴任。ホボ一人で子育てを行い取材もママ為ら無く為りました。ソコで、日々の取材に拘らずに一つのテーマを深掘りするスタイルに変えて行った矢先、森友学園問題(※1)加計学園問題(※2)が報じられます。
望月さんが気に為ったのが菅官房長官の会見です。 「菅さんが『ご指摘には当たら無い』と答えれば、納得出来無い様な内容でも誰もその先を追及しない。それなら自分が聞こうと、会見に出席する事を決めました」
そこで望月さんは、政治取材の問題点に気付きます。「社会部では自分で現場を取材し、相手にシツコク質問をブツけます。一方、政治部の記者は政治家とパイプを築き情報を貰って記事にして行く。政治家との関係を損ねると、話が聞けず記事が書け無く為る。だから余り厳しい質問や追求は正直遣り辛い。アメリカでは、記者は政治家から情報を貰いながらも会見は戦場です。厳しく質問し追求します」
質問を続ける望月さんは、脚光を浴びる半面、誹謗中傷の的にも為りました。同じ頃、突然の別れもありました。
「母が急激に痩せ細り、すい臓がんだと判明して1か月で亡く為りました。『介護で子供に迷惑を掛けるのは嫌なの』と言って居た母らしい、アッと云う間の最期でした。父が2010年に61歳で死去して居り、その後愛犬も死んで寂しかったんだと思います。でも私が看病に行くと『衣塑子が傍に居て呉れるだけで、ホッとするの』と話し、私の方が励まされました」
折しも、時は加計学園問題の最中。母を亡くし夫の単身赴任が続く中、望月さんは仕事のストレスと子育てで憩室炎(けいしつえん ※3)を患い倒れます。しかし、可笑しいと思う事は聞か無くてはと、その後も会見に臨み続けました。
「広報」では無く「報道」で無ければ
そうした中、官邸は2018年12月「東京新聞記者による質問」を「度重なる問題行為」とし、記者クラブに対応を求める文書を出しました。「確かに最初は質問が長かったと思います。でも、幾ら短くしても10秒程で『簡潔にお願いします』と注意され、真面に質問が出来無い状況でした」 文書は追い風と為ります。新聞労連(※4)は「記者の質問を制限する事は出来無い」と抗議し、一般の人々や他のメディアからも声援や官邸への批判が続きました。
それでも望月さんに対するバッシングは今も止みません。「最近は政府に批判的な事を言うと反日と呼ばれる風潮が有りますよね。でも、政府に都合が好い様に報じ続けた結果が戦時中の大本営発表です。言われるがママに記事にするのは、報道では無く広報です」
望月さんはこう続けました。
「昨年7歳の娘と途上国のドキュメンタリーを見て居たら『お風呂でお祈りする』と部屋を出て行ったんです。サンタさんにクリスマスのプレゼントでも頼んだのかと思いきや『戦争の無い世界に為る様にお願いしたの』と言うので驚いて。自分と同じ子供が命を落として居るのがショックだった様です。私は今43歳、次の世代を意識する様に為りました。少しでも好い社会にして子供達にバトンを渡したいです」
そう話して取材を終え、立ち上がった望月さんは、実はトテモ小柄。その華奢な体からは想像出来無いエネルギーと大きな声で今日も質問して居ます。
※1 学校法人森友学園に大阪府の国有地が異例の値下げを受けて払い下げられた問題。
※2 学校法人加計学園が国家戦略特区に選ばれ、その選定過程が問われた問題。
※3 大腸等の消化器官の粘膜にコブ状の突起が出来、排泄物が詰まって感染症を引き起こす疾患。
※4 日本新聞労働組合連合 全国紙・地方紙・専門紙等の新聞社の労働組合が加盟する。
望月衣塑子(もちづき・いそこ)1975(昭和50)年 東京都生まれ 東京新聞社会部記者 慶應義塾大学法学部卒業後 東京・中日新聞に入社 千葉等の県警や東京地検で事件を中心に取材 経済部・社会部遊軍記者を経て現在は取材をしながら菅義偉官房長官に会見で質問し続けて居る 著書に『新聞記者』(角川新書)共著に『権力と新聞の大問題』(集英社新書)等
映画「新聞記者」
官邸が主導する大学新設計画に迫る新聞記者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)と、理想に燃えて公務員の道を選んだ若手エリート官僚・杉原拓海(松坂桃李)二人は時に衝突し時に協力しながら夫々の正義を貫こうとするが・・・国家と報道の裏側を描いたサスペンス・エンターテインメント
監督 藤井道人
原案 望月衣塑子『新聞記者』(角川新書)河村光庸
配給 スターサンズ・イオンエンターテイメント出演/シム・ウンギョン、松坂桃李 他
取材・文 大矢詠美 ハルメク編集部 撮影 中川まり子
※この記事は2019年7月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
雑誌「ハルメク」 以上
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コロナ禍で露呈した 日本と欧米「リーダー格差」の根本原因
コロナ禍で露呈した 日本と欧米「リーダー格差」の根本原因
〜現代ビジネス 4/8(水) 15:01配信〜
カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン代表の金子信義氏
日本人リーダーの消滅
今、世界が新型コロナウイルスと戦って居る。米国のトランプ大統領・中国の習近平国家主席・英国のジョンソン首相(本人が感染)・日本の安倍晋三首相と云った一国のリーダーが、その対応に苦慮する様子がニュースに出ない日は無い程だ。
人類に取って未知のウイルスへの対応に、多くの経営者も頭を抱えて居る。今回の事態を切っ掛けに、グローバル化の「逆回転」が始まり兼ねない状況だからだ。1989年の「ベルリンの壁崩壊」に依って東西冷戦が終結。それに依って世界市場が一つに為ると、それに合わせて企業のグローバル化も加速し、多くの日本企業も新たな市場を獲得してその恩恵を得て来た。
企業の活動がグローバル化すればする程、こうした世界中で蔓延する新型コロナウイルスの様なパンデミックに近い非常事態は、世界中に張り巡らせたサプライチェーンを分断し、生産活動に脅威と為るばかりか、消費マインドをも冷やしてしまう。危機は各企業に平等に襲い掛かって来る。此処から如何に立ち直れるか、経営者の力量が問われる処だ。
処で、最近の日本企業は元気が無いと言われる。所謂「GAFA」の台頭等、米国のプラットフォーム企業の勢力拡大に依ってビジネスモデルが大きく変化して行く中で、グローバル企業の「主役」が交代。国際社会に於ける日本企業の存在感が薄れつつ有る。延いては世界で日本自体の存在感が沈没し、注目される日本人リーダーも減った様に見える。
企業の時価総額の世界ランキングを見ると、バブル経済の始まった時期だった事も影響して居るが、1989年にはトップ5は全て日本勢が占めて居た。それから30年後の現在、トップ5に日本勢は1社も存在しない。日本企業のトップ、トヨタ自動車ですら世界では35位だ。
こうした日本企業の停滞・日本人リーダーの存在感の無さは何が原因なのだろうか。この点に付いて、これ迄約20年間、日米両国に於いて数百人のエグゼクティブをリクルーティングして来た経験を持つ、牧師出身の異色のヘッドハンター・・・カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパンの金子信義代表(58)に聞いた。
ヘッドハンターでカネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン代表の金子信義氏(筆者撮影)
勤勉で有能でも、勝て無い
・・・金子さんは、元々牧師だったと伺いました。
私の経歴を少しお話ししますと、米国の大学で宗教学を学び、カリフォルニア州でプロテスタントの牧師と為り、死刑反対や難民対策等人権に関わる運動に長らく関わり、ビジネスの世界とは程遠い所で仕事をして居ました。38歳の時の離婚を契機に、同じ牧師出身でヘッドハンターに転身して居た方に人生相談した事が、この道に入る切っ掛けと為りました。
・・・金子さんの会社のホームページを見ますと「危機か機会か」と題して、大学改革等の教育論を展開するEBOOKを掲げて居ます。一見、ヘッドハンターの会社の様には見えませんがこの狙いは何ですか。
私が生業として居るエグゼクティブリクルーティングを通して、勤勉で有能だと言われて来た日本人にグローバル企業を率いる人材が少ない理由は、教育に有ると明確に感じたのです。
私は日本の大学とエリートが置かれて居る現状を学ぶ為、又現場の意見を聞く為にも、多くの大学関係者にインタビューしました。大変貴重な意見を沢山頂きましたので、それを広く読んで貰いたいと思いEBOOKにまとめました。私は、日本の教育が抱える大きな課題の背景には、大学経営にマネジメントと云う概念が欠けて居る事が有ると思って居ます。
その一つの証左として、日本の大学程我々の様なヘッドハンターを使わ無い業界は有りません。多くの大学で経営者は、選挙に依って内部から選ばれます。経営者として誰が適任かを考え、内部に居ればその人を引き上げ、居なければ外から獲って来ると云う発想がソモソモ無い。
経営者に限らず、教授を採用する場合も、コンな教育をしたいから・この人が必要と云った考えが無い。公募と云う形式を執りながら結局は内輪の論理で決めて居る様に見えます。
そして、特徴有る大学を作って行こうと云う強い使命感を持った、優秀な経営者を探そうと云う意欲もノウハウも有りません。少子化に依って学生数は減少して居ますから、このママでは経営に窮する大学も出て来るでしょう。
まさに危機が迫って居る訳ですが、同時にコレはチャンス(機会)でも有ります。寧ろ時代の変化に合わせてマネジメントや教育内容を変え、進化出来る大学は学生を集められると思います。
コロナで明らかに為った「米国との格差」
・・・要は、企業に入って即戦力に為る様な学生を育てられる大学で有れば、生き残れると云う事でしょうか。
私がヘッドハンターの仕事をして居るので、そう思われたのかも知れませんが、そこは違うと強く否定したいと思います。ソモソモ日本の大学は、一流のサラリーマンを養成する事が、大きな存在理由に為って居ませんか。寧ろそうした点に問題が有ります。最近はMBA的な教育の強化に依って、ソコを更に強化して居る。しかし、果たしてそれが正しいのでしょうか。
日本の大学は、自らの存在意義を見失って居る様に感じます。何故、大学が存在するのかと云う目的を深く考え無いママ、単に海外の大学と競う事を考えて居る。目的意識が希薄な競争に何の意味が有るのでしょうか。
・・・米国の大学には明確な目的意識が有るのでしょうか。
例えば現在、米国では新型コロナウイルスの感染者を多く出して居ますが、ニューヨーク大学やコロンビア大学の医学部は、現状を踏まえて急遽学生の卒業を早めさせ、パンデミックとの戦いで疲弊するニューヨークの病院でインターンを開始して貰う事を決めました。何の為に医者に為る人材を教育して居るのか・・・明確な目的意識が有るから出来る事だと思います。
更に言えば、こうした事が出来るのは、大学が素早い判断が出来る体制に為って居るからです。米国の大学には独自の「経営判断」が有り、夫々が独自の動きを見せます。こうした事の積み重ねが特色有る教育を作り、そこから強いリーダーが生まれて来るのです。
大学は、教養を身に付け自身の考え方を構築して真のダイバーシティを理解し、創造性や品格を備え、社会に貢献出来る社会人を育てる為に存在して居ると思います。大学を出て皆が企業に入る訳では無く、教員に為る人も芸術の道を志す人も居れば、公務員に為る人も居る訳です。私自身、牧師に為りました。どの道でも、その世界を引っ張って行くリーダーが光と為る。一流のリーダーが増えれば、社会に光が多く灯ります。
これ迄各国の多くのリーダーと接して来て感じる事は、一流のリーダーの特徴の一つは、深く考える力を持って居る事です。そうした力を備えて行く為には、所謂教養が大切ですが、日本の大学教育は最近、専門教育を重視して、教養教育を疎かにして居る様に見受けられます。
又、日本ではダイバーシティと云えば、即ち外国人と女性の登用である様に理解され勝ちです。意識改革として、組織の幹部に女性を一定数登用する等の数値目標は当面必要かも知れませんが、国籍やジェンダーの先入観無く人を活用して行くと云う発想が「空気」の様に存在して居るのが真のダイバーシティなのです。
未来を予測するのでは無く、作り出す
・・・金子さんがイメージする一流のリーダーとはどの様な資質を持つ人か、もう少し具体的にお願い出来ますか。そして、政治家や経営者・官僚機構のトップ等日本から一流のリーダーが減って居る様に私も感じますが、それは何故でしょうか。
時代は遡りますが、幕末の頃に活躍した志士達の生き様を見て居ると、日本人に決してリーダーに為る素養が無いとは思えません。
一流のリーダーの特徴のもう一つは、絶対的な使命感が有る事だと思います。コンセンサスよりも、ミッションの為に壁を壊す意思決定が出来る人、自分が決断した事への強い責任感が有る人です。
正直、50代・60代に為ると、どの組織のリーダーでも変化に追い付く努力をせずに逃げ切りたいと思って居る人が少なくありません。強いリーダーシップを持った方は年齢に関係無く、自分のリーダーとしての進化を大切にして居る。そして、自分よりも能力の有る人を委縮する事無くチームに招き入れる。引き際も理解して居ます。
企業でもゴールポストは変わります。例えば、株主利益をアレ程大切にして来た米国企業の考えも変化し、サスティナビリティを強く意識し始め、会社は多くのステークホルダーを豊かにする為に存在して居る・・・と云った考え方に変わりつつあります。
社会もこれから大きく変化します。30年後、ドンな社会に為って居るかを予測する事は余り意味が無い。真のリーダーは自らの力でドンな社会にするかと考えます。それに依って周囲に夢を与え、人々を引き付けて行くから真のリーダーに為れるのです。
今の日本では、将来への強い危機感が欠如し、時代の変化にワクワクもして居ないリーダーが多い様に見受けられます。そこが幕末の志士達との大きな違いでしょう。史実は彼等が失敗を恐れては居なかった殊を教えて呉れます。
しかし、今の日本では、有言実行の気概を持つ以前に失敗を恐れるリーダーが多い。ファシリテーター(進行役)も多い。リーダーとファシリテーターは全く違う。こうした人材が欠乏した結果、日本はポスト先進国と為ってしまった。
資源の無い日本は元々ソフトパワーで生きて来たので、国としての潜在能力は高い筈です。しかし、政治・経済・文化と云ったアラユル面で攻める事を忘れてしまった事も、ポスト先進国化を加速させて居ます。
「忖度」と云う言葉が流行語に為る程の日本では、ハイコンテクストな文化がグローバル化を阻んで居るとも言われますが、日本人がグローバルレベルの教養を備え、この忖度力をポジティブに活かす事が出来れば、ユニークで強いリーダーが育つと信じて居ます。
使命感が無ければ為ら無い
金子氏のインタビューを通じて、筆者が改めて思い出した言葉が有る。 「乱は兵戦にも非ず、平は豊曉にも非ず、君君たり 臣臣たり 父父たり 子子たり 天下平なり」これは、松下村塾を主宰した幕末の思想家・吉田松陰の言葉だとされる。意訳すれば、「世の中が乱れて居るのは戦争が起きて居るからでは無い。平和なのも豊作だからでは無い。主君が主君らしい仕事をし・家臣が家臣らしい仕事をし・父親が父親としての役目を果たし、その子供も子供として励んで居れば、世の中は収まる」と云う意味だ。
この考え方を現代社会に当て嵌めてみると、企業や大学・役所等組織を牽引するリーダーがリーダーらしく振る舞い・リーダーらしい仕事をし、リーダーを選んだ人達もリーダーを信じて献身的に支えて行けば、先行き不透明な時代で有っても必ず未来に光が灯ると云う事だ。
その「リーダーらしさ」とは、金子氏が言う所の「絶対的な使命感」であり、ミッション遂行の為には摩擦や苦難を恐れず、時には命をも惜しまず、全てを投げ出せると云う事だろう。そうした姿勢や行動に、皆は着いて行くのだ。
金子信義 カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン 代表 1961年4月生まれ テキサスクリスチャン大学 神学学士・神学修士 サンフランシスコ神学大学院博士課程終了 1989年から1998年迄テキサス・アリゾナ・カリフォルニアの各州にて牧師活動に従事 その後22年間に渉り、南カリフォルニアと東京を拠点に 主に北米とアジア地域のグローバル・エグゼクティブ・サーチに従事して居る 顧客の企業文化を尊重した人材戦略と採用を実行する他、近年では企業に対するコンサルティングやアドバイザリー・M&Aの提案も行う
約70カ国1200社のエグゼクティブサーチコンサルティングファームのメンバーを有する業界団体AESC ・Global Association of Executive Search Consultantsの役員を2017年から務める 又同団体のアジアパシフィック&中東地域の代表も兼任している
聞き手 井上 久男 ジャーナリスト 1964年生まれ 1988年九州大卒 朝日新聞社の名古屋・東京・大阪の経済部で主に自動車と電機を担当 2004年朝日新聞社を選択定年 2005年大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了 主な著書は『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)『トヨタ・ショック』(講談社、共編著)『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)『自動車会社が消える日』(文春新書) 近著にカルロス・ゴーン氏の功罪を振り返りながら今回の事件の背景と本質に迫った企業ノンフィクション『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)
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2020年04月08日
笑い無し奇抜さ無し・・・真顔の江頭2:50が渋谷の街頭ビジョンから外出自粛呼び掛け 「うちで過ごそう」
笑い無し奇抜さ無し・・・真顔の江頭2:50が
渋谷の街頭ビジョンから外出自粛呼び掛け「うちで過ごそう」
〜中日スポーツ 4/8(水) 16:00配信〜
動画
お笑い芸人の江頭2:50が8日、東京・渋谷の街頭ビジョンを“ジャック”し、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて若者にもの申した。「もう他人事じゃないぜ!一人一人の行動に懸かって居る」「皆でこの危機を乗り越えようぜ Stay Home!」と絶叫し、若者の外出自粛を呼び掛けた。
渋谷駅前の大型ビジョンに映し出される江頭2:50
江頭が若者の聖地で感染拡大防止活動をスタートさせた。登録者数200万人に迫るユーチューバーとして活躍中。今月1日に公式チャンネル「エガちゃんねる」でアップし、20万回以上再生された動画を1分に再編集した。
奇抜な笑いや過激なチャレンジは封印。真顔で「一人一人の行動に懸かっている」「家で過ごそう」等と大型ビジョンから叫んだ。
渋谷交差点などのビジョンを運営する企業が「若者たちに外出を控えるメッセージを伝えたい」と人気ユーチューバーの江頭にオファー。本来は数百万円懸かる広告枠を無料提供した。江頭やスタッフたちは「微力ですが、コロナ収束に少しでも役に立てれば僕らも本望です」と急遽再編集したという。8カ所の街頭ビジョンで午前9時から深夜0時まで1時間に8回放送される。
以上
安倍政権の対策に 「国民を守れ無い首相なら直ぐ辞めるべき!」
党内からも批判の声
〜AERA dot.〈週刊朝日〉4/8(水) 8:00配信 〜
4月1日の参院決算委員会。安倍首相は気色ばんだ様子でこう答弁した。
「感染症対策を全力で遣って居る。此処で私が職を放り投げる事は毛頭考えて居ない!!」
野党議員が、本誌先週号(4月10日号)で掲載した小泉純一郎元首相のインタビューの内容を示し、認識を尋ねた事に対する反論だった。小泉氏のインタビューの内容は、森友学園への国有地売却を巡る公文書改ざん問題で近畿財務局職員が自殺した事に付いて、安倍首相の責任は「有るよ、十分に」と断言。「何れ責任を取って辞めざるを得無い」と最後通告したものだ。
安倍首相は、自らを今の座に引き上げた政治の師匠の忠告を全否定した。だが、安倍首相が「追い詰められて居る」と感じて居るのは、小泉氏だけでは無い。自民党幹部は言う。
「今、新聞もテレビも新型コロナのニュースで一色だが、本来で有れば河井克行前法務大臣や河井案里参議院議員(自民党)の選挙違反事件が連日トップですよ。現職の国会議員が地方議員に現金を配ったと云う疑惑を掛けられ、2人とも逮捕されるかも知れないと云う事態なんですから」
安倍首相は、日本の全世帯に布マスクを2枚配布し、新型コロナで収入が減った世帯に30万円を給付する事をブチ上げた。それでも、国民の不満は消えて居ない。
「対策が『遅い』と批判される中で、2人が逮捕されたらどう防戦するか。そのタイミングで、追加の大型経済対策の発表を考えて居るのでは」(自民党幹部)
河井夫妻の疑惑は、自民党本部が出した計1億5千万円の選挙資金にも及んで居る。森友問題は、安倍首相の妻・昭恵夫人の関与も取り沙汰されて来た。党内では何れも安倍首相の関与の疑いが有る為に、新型コロナ対策が遅れて居るのではとの疑念も広がって居る。官邸関係者は言う。
「元々安倍さんは消費増税に消極的で、8%から10%に引き上げる時は2度も延期した。それが、今では与野党の議員から国会で消費減税を迫られても減税には言及しない。『森友問題で借りが有るから財務省に強く言え無いのでは無いか』と思われて居る」
自らの疑惑で新型コロナ対策が遅れて居るので有れば、それが日本に取って最大のリスクと為る。或る与党議員は吐き捨てる様に言った。
「経済対策が遅れたら、日本では此れから自殺者が相次ぐ。国民の命を守れ無い首相なら、今直ぐ辞めるべきだ」
朝日新聞 本誌 取材班 以上
新型コロナウイルスの感染拡大に対して
強大な権力を持つ筈の安倍政権が これ程迄に無能で有る理由
〜HARBOR BUSINESS Online 4/8(水) 8:34配信〜
全く無能・・・安倍晋三氏の疲れ切った姿
コロナ新法成立で緊急事態宣言が可能に
3月13日、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正した・・・所謂コロナ新法が成立した。野党が同法の援用で事足りると主張したのに対して、安倍晋三首相は飽く迄新法制定・法改正に拘った。コロナ新法では内閣総理大臣による緊急事態宣言を可能として居る。
宣言が発せられた場合、外出制限・施設や商店の休業・医療品や食料の確保等に付いて実質的な強制力を伴う「要請」「指示」「収用」が出来る。2月末に全国の学校の休業を超法規的な形で要請し、又、元来、憲法を改正して緊急事態条項を盛り込む事を政治的な悲願として居る安倍首相は、このコロナ危機に際して緊急事態宣言の発動を行いたがって居るのだと目されて居た。
非常勤講師 北守 藤崎剛人(ほくしゅう ふじさきまさと)氏
引き延ばされた緊急事態宣言
しかし予想に反して、新法成立以来、緊急事態宣言は3週間以上行われ無かった。4月6日現在の報道に依れば7日にも地域を限定した緊急事態宣言が行われるとして居る。ソモソモ同法に基づく政府対策本部が設置されたのが3月26日と遅い。同日には、既に東京を中心に感染者数の爆発的な増加の兆候が見え始めて居た。
4月6日現在で、国内感染者数は4,000人を超え、しかも1日の感染者数は日に日に増加して居る。諸外国の例に倣うなら、此処で思い切った市民生活への支援策と引き換えに東京や大阪等の主要な都市をロックダウンする事に為る。又、今後不足し得る医療資源・・・特に人工呼吸器や集中治療室の確保の為、民間企業の協力を得る等して全力を注ぐ必要も有るだろう。
処が、こうした目下の問題に対する安倍政権の対応は遅々として進ま無い。彼等はコロナウイルスの危機から全力で目を逸らそうとして居る様に見える。緊急事態宣言が発動したとしても、行動制限に付いては引き続き自粛要請をする事しか出来無いのである。
更に、3月24日迄は安倍政権はオリンピックを通常通り開催しようとして居り、延期が決まった後はその日程決定や予算確保に注力して居る。又、現在苦境に立たされて居る旅行業や外食産業に対して直接給付するのでは無く、何時収束するのか分から無いコロナ後の経済政策としてクーポンを配布しようとして居る。
旅行業・外食産業、芸能・芸術関係者・・・その他イベント業者を初めとして自粛による影響は多大だ。既に収入の殆どを絶たれ失業状態に陥ってしまった人も居る。こうした人々は、当面は既存の貸付制度等を利用するしか無いが、今後の見通しも無く借金を増やさせるのは愚策であり、本来は迅速なる生活保障が為されて然るべきである。
3月初めから休校して居る子供達の、新学期からの学習をどうするのかも見通しは立って居ない。欧米諸国では次々とオンライン授業が実施されて居るが、ソモソモIT化に遅れを取って居た日本に於いて急速な転換は難しい。
口先だけの自粛要請がつづく
幅広い市民層に対する政府の手厚い支援が見込め無い中での口先だけの自粛要請は、一部の業種を除いて徹底化はされて居ない。都内の大きなターミナル駅では、確かに普段よりは人手は少ない印象は有るものの、尚スーツ姿の会社員や買い物に訪れる人々で賑やかだ。
法律上の緊急事態宣言が為されたとしても、政府は通勤に関しては行動制限しないとして居り、直ぐに変化する事は無いだろう。人々には夫々の生活が有り、個別のニーズを無視した精神論を唱えるだけでは、その活動を止める事は出来無い。
人々の接触を感染拡大の阻止の為に必要な通常の2割に迄落とし込みたいなら要請するのでは無く、夫々の生活を保障する事を政府が責任を以て約束し、行動の変容を促すしか無い。
以上の様に、一刻を争う事態に対して安倍政権は、他国に観られる様な素早い政策決定が行えて居るとは言い難い。日本はヨーロッパ等に比べてコロナウイルスの感染スピードは遅く為って居る。従って政府は生活保障に関してリソースを傾ける余裕が在る筈なのだが、それはホボ行われて居ない。
お肉券やお魚券・マスク二枚配布や、収入が減少した住民税非課税世帯のみ自己申告制(!)で給付金を支給する等・・・およそ諸外国では検討すらされ無い様な案が飛び交うばかりである。
以前の記事「新型コロナウイルスによる緊急事態の宣言。起こり得る人権の停止に抗う為に」で、筆者は安倍政権に付いて「自己拘束無き行政権力」と定義し、緊急事態宣言がもたらす人権の宙吊り状態に対して警告を行った。
命の問題を前面に押し出した例外状態ムードの中で、人権の議論が等閑(なおざり)にされる懸念は益々高まって居ると云える。緊急事態宣言を控える中、人々の事情に関わらず、アラユル日本人は団結して自粛し無ければ為らぬ・・・と云う同調圧力が高まって居る。しかし、当の安倍政権はと為ると、これ迄権力を政府に集中させて置きながら、緊急事態に対して〔寧ろ決断を回避〕しようとして居る様に見える。
確かに安倍政権は、これ迄も何もし無い事に依って〔消極的に市民を死ぬがママにさせて置く〕権力であった。それは2018年、台風被害の最中であるのに「赤坂自民亭」を開催した事からも解かる。しかし今回は流石に例えパフォーマンスとしてで有っても、積極的に緊急事態を宣言しコロナ対策を一気に遣りたかった・・・筈の専制的権力の行使を実行すると思って居た。
まさか、諸外国が最低限行って居る様なコロナ対応を遣ってる感すら出さ無いのは筆者に取っても予想外であった。過つて宇宙ステーションより上空を飛び太平洋の彼方へと落下したDPRKのロケットに対して、けたたましくアラームを鳴り響かせた政権とは思え無い。
此処迄政権が、緊急事態宣言も含めアラユル決断を遅延させて居る点に付いては考察を深める必要が有る。
決断力無き「君主」
戦間期ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンは、バロック悲劇に付いて論じた『ドイツ悲劇の根源』に於いて、17世紀ドイツに於けるバロック悲劇の形式を君主劇と定義した。ベンヤミンは、カール・シュミットの「例外状態」理論(前掲記事参照)の影響を受けて居り《バロックの王侯が持つ強い君主権は、例外事態を排除し安定をもたらす為に措定されたものだ》と理解する。
処が、実際に君主に与えられた権能の大きさに比べて一人の人間としての君主の能力は小さい。バロック劇に於いて《君主は歴史的な運命の波に毅然として立ち向かうのでは無く、運命に操られ、殉教者の如く破滅する》ベンヤミンはシュミットを参照しつつ、シュミットに対して大きな提起を投げ掛けて居る。詰り《例外状態に於いて決断する権限を一手に握って居る主権者・君主は、実は決断する能力を持た無い・・・》と云う事である。
《支配者に認められた権力と支配の座に就いた者の支配能力との相反的関係は、バロック悲劇にひとつの、一見日常風俗的では有るものの、しかしその実、固有の特徴を与える事に為ったのだが、この特徴は(中略)専制君主の決断力の無さと云う事である》《彼等の内部で突き上げて来て居るのは(中略)君主権の絶対性では無く、寧ろ、何時豹変するやも知れぬ激情の嵐の予期し得ぬ恣意なのである》(※)
ベンヤミンは此処で、或る特定の時代の演劇形式に付いて述べて居るだけでは無く、主権概念に付いての普遍的な理念を述べて居ると言え様。それはシュミットの決断主義モデルに対するアンチテーゼと為る《主権者とは例外状態に於いて決断を下す者の事である》とシュミットは言った。
しかし《主権者は例外状態に付いて決断する権能を持って居たとしても例外状態に於いて決断する事は、彼の人間的弱さ・優柔不断さが故に出来無い。従って、決断に依る原状復帰は行われず、唯々破滅を待つのみ》なのだ。
安倍政権が緊急事態宣言を出せ無い事実を、安倍政権が独裁政権では無い=コントロールが効いて居る理由として持ち出す論調がある。しかし実際はそれは逆で有ると考えるべきだろう。権力が集中して居りコントロールが効か無い政権だからコソ、安倍政権は決断力を欠いて居るのだ。
優柔不断な政権の控えの間に於いて、様々な陰謀は蠢(うごめ)く・・・お肉券やお魚券・オリンピックに旅行券・・・アラユル団体が自分の利権を通す為、非公開の世界で跋扈(ばっこ)する。シュミットはコレを「弱い全体国家」と呼んだ。
「弱い全体国家」とは、本来はシュミットに依れば「永遠の討論」の場と化した決断不能な議会制民主主義の中で生じる筈の現象で在った。シュミットは「弱い全体国家」を、国民を代表する決断可能な指導者を「憲法の番人」として設置する事で克服しようとした。
しかし、ベンヤミンのモデルに依れば《権力の集中は、寧ろ決断不能な指導者を誕生させてしまう》のである。彼は「憲法の番人」である処か寧ろ法破壊的である。従って、私利私欲に塗れた利権政治家・利権団体が跋扈する「弱い全体国家」は続いてしまう。
例外状態を目の前にして全くの決断力を欠き、現実逃避する首相を持つ我々は、現在、バロック的な破綻した物語の中に居るのだ。世間のマスク不足が明らかに為ってからおよそ2か月後「安心感を与える為」と称し全世帯に布マスクを2枚ずつ配ると云う方針を決定する首相・コロナ終息後に配布する予定の商品券の名称に悩む首相を映画やドラマの中に登場させたとする為らば、それは余りにもリアリティを欠いて居るものとして酷評されてしまうのでは無いだろうか・・・しかし今やそれが現実なのである。
「緊急事態」に対する人権と法の優越
カール・シュミットは、こうしたベンヤミンの提起に対して応答を行って居る。ベンヤミンの悲劇論文に直接言及したのは、1956年に出版された『ハムレットもしくはヘカベ』が初めてなのであるが、間接的な応答だと思われるのは、1942年に出版された『陸と海と』の中に有る。
シュミットは、バロック悲劇の継承者と目されて居る劇作家フランツ・グリルパルツァーの『ハプルブルク家の兄弟げんか』の主人公・神聖ローマ皇帝ルドルフ2世に付いて、恐らくベンヤミンを念頭に《決断能力を欠いた主人公で有った》と評価した上で、彼の事を《カテコン・・・抑止する者で在った》と見做して居る。
カテコンとは聖書に出て来る概念で・・・終末を遅らせる者の意である。シュミットはルドルフ2世に付いて、当時のドイツが宗派対立に依って引き裂かれる中で、消極的な行動を執り続けるしか無かったが、三十年戦争の勃発を少なくとも10年遅らせた功績は有ったと述べて居る。
「抑止する者」の形象は、皮肉な意味で安倍政権にも当て嵌るだろう。安倍政権は検査数を絞り、潜在的な市中感染者を数字の上では出さ無い方針を取って居る。首相が休校要請の際に述べた「正念場たる1〜2週間」は永遠に引き延ばされ、収束が最早絶望的に為り、感染者が指数関数的に増加して居ても「未だ持ち応えて居る」のである。
もしかすると破局は既に訪れて居るのかも知れ無い。しかし少なくともコノ政権は、その破局を認識する事を遅らせ続けて居る。
1940年代にはシュミットは、既に単純な決断主義モデルの採用を辞めて居る。その代わりに彼が採用するのはノモスと呼ばれる・・・主権者が決断を行う際の基準と為り得る法的な空間秩序である。ナチス政権の枢密顧問官で在ったこの法学者から何かヒントを得様とする為らば、我々は《通常状態や緊急事態と云った区別に優越する空間秩序を措定して置く事が出来る》と云う事だろう。
思想史的な正確さで云えば「暴力批判論」に依って掛かる秩序の措定をベンヤミンが批判して居る以上、これはベンヤミンに対する解答には為り得ない。だが、これを中国や韓国等の東アジア諸国、或いはドイツ等のヨーロッパ諸国と日本との比較で考える為らば、問題の本質を説明する思考モデルとしては分かり易く為る。
自ら法を軽視する 弱い全体的国家を作った責任
詰り〔緊急事態〕に効果的に対応出来て居るか否かの違いは〔緊急事態〕に於いて柔軟に対応し得る強力な主権者を準備して居るかでは無く〔通常状態に於いて、如何に規範的な思考をクリアに出来て居るか〕の違いで有ると云う事だ。
中国やシンガポールの様な権威主義体制であれ、ドイツを初めとするヨーロッパの民主国家であれ、何れにせよ何等かの法的理念の下で危機に対応して居る事は判る。勿論、法的理念は民主主義的であり人権を擁護するもので有る方が望ましいのは言う迄も無い。
人権や法が緊急事態に優越する処では物事の優先順位はクリアに為り、最悪の状況の中でも市民の生命と生活を守ろうとする合理的な政治が成立する。〔人権を欠いて居る権威主義体制では、その合理性は市民に対して過酷なものと為ってしまう〕かも知れ無い。
日本は、安倍政権下の此処数年間で、人権を守らねば為らぬと云う意識も、権力は法に従わ無ければ為らぬと云う意識も両方が失われた。そして権力者と従順な臣民しか居なく為った処では、決断能力を欠き右往左往し、或いは「遅らせる者」として、只管現実逃避するだけの無能な政府が残る。
緊急事態宣言は出されるのかも知れない。しかし、例え宣言が出されたとしても、それに依って我々の生が権力に従属する訳では無いし、政府が信頼に足るものに為る訳では無い。我々は如何に迂遠な道だと思われたとしても、人権や法の理念を再び取り戻さ無ければ行けない。そうで無ければ、コロナウイルスに罹って死ぬより、政治に依って殺される確率の方が高いからだ。
(※)ヴァルター・ベンヤミン 浅井健二郎訳『ドイツ悲劇の根源 上』筑摩書房、1999年 131頁
文 北守(ほくしゅ) 藤崎剛人(ふじさきまさと) 非常勤講師&ブロガー ドイツ思想史 公法学 note hokusyu Twitter ID:@hokusyu1982
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遅過ぎた緊急事態宣言 元官僚の作家が語る「国会と云う茶番劇」の裏側
遅過ぎた緊急事態宣言
元官僚の作家が語る 「国会と云う茶番劇」の裏側
〜現代ビジネス 4/8(水) 11:01配信〜
写真 現代ビジネス
〜安倍晋三首相が4月7日の夕方、緊急事態宣言を行った。休校要請から1ヵ月以上後、東京での感染が拡大してからの宣言は何故だったのか。ソモソモ国会が議論の場として成立して居ない事を指摘するのが、元労働省(現在の厚生労働省)官僚で小説家の西村健さんだ。西村さんの実体験と現在の情報を踏まえて伝える「国会の無意味さ」とは〜
小説家の西村健氏
マスクでは飲食店は救え無い
「全世帯に布マスク2枚送付」で世界の失笑を買った安倍晋三政権が、ようやっと4月7日「緊急事態宣言」を出した。が、如何せん遅過ぎる。医師会や吉原洋文大阪知事等から「早く出して呉れ」の要望が上がって居たにも関わらず「未だその状況じゃ無い」と逃げ回って居た。
小池百合子東京都知事が「外出自粛要請」をしてから既に2週間。こう云う決断と云うものは早め早めにした方が傷が浅くて済むと云うのは常識である。今まで一体、何を遣って居たのか。我が家の近所の飲食店主が憤る。
「外へ出るな会食をするな・・・と営業妨害みたいな事を国民に要請して、では何の補償をして呉れるのかと思ったら『マスク2枚』ですからね。冗談にしか聞こえ無いですよ」
緊急経済対策では打撃を被った飲食業界に対し、感染収束後に「ゴートゥーイート」(仮称)キャンペーンを張ると云う。しかしそれも遅過ぎるであろう。収束が何時の事に為るか誰にも分から無いし、その前に店が潰れてしまったら「ゴートゥー」して貰っても何にも為ら無いのである。
「コッチは客商売なんだから、来て貰え無かったら収入ゼロ。なのに家賃と云ったランニングコストは常に掛かる訳ですからね。だから現金給付なんかより『飲食店の家賃はタダにしろ』『その代わり大家の固定資産税も免除する』と云う様な政策を打ち出して呉れませんかね。そうで無いととても安心して生活ナンて出来ません」
「安倍政権だから」だけでは無い
「飲食店の家賃をタダにした大家の固定資産税は免除する」位、財務省さえその気に為れば直ぐに実行出来るのでは無いだろうか。国民が真に望んで居る政策が有るのに、打ち出されるのは的外れなものばかり。どうしてこの国は、危急の時に限って対応が後手後手に回るのか。
そこには「お友達を周りに侍らせて、その意見ばかり聞く安倍政権故の弊害」と云う点は多々有ると思う。ただ、過つて霞が関に勤めて居た経験から言わせて貰うなら、ソモソモ国会と云う場は到底真面な議論が出来る様な処では無いのだ。
持論を蕩々と述べるばかりで、何を訊きたいのか好く判ら無い質問者。問われた事をハグラカスばかりで、真面に答えようとしない答弁者・・・国会中継を見た方ならコンなシーンに見覚えが有る事だろう。勿論、切れ味鋭い野党の質問が大臣を追い込む事だって無いでは無い。
だが一方「桜を見る会」で首相とホテルの言い分が違う事を指摘し「ホテル側に確認して書面で答えて欲しい」と迫る議員に対し、総理が「一々それに答えて居たのでは予算が成立しない」等と答えて平然として居る。これが会議と呼べる代物だろうか。
出席者が夫々の意見を述べ合い、議長が落とし処を探って案を出し多数決を執る。賛成多数であれば「それでは、そう云う事で」と結論に至る。会議と言われて想定するイメージはそう云うものだろう。国会の実態とは余りに駆け離れて居る。一体、アレは何なのか!?
今では広く一般にも知られる様に為ったが、ソモソモ国会の質問は前日迄に役所に伝えられ、答弁は役人が作成する。以前、その事を冗談めかして発言し袋叩きに遭った大臣が居たが、本当に彼等は役人の書いたものを読むだけなのだ。
内閣人事で割り振られ赴任して来るだけの人達だから、基本的に各省の政策に付いて素人同然。役人が書か無ければ、答弁等出来る訳も無いのである。
「大臣が答弁を読む」迄の流れ
私は何も知らずに入省したので、こうした国会答弁の実態に直面した時には大いに驚いた。これじゃ茶番、以外の何物でも無いじゃないか。痛烈に感じたものである。もう30年も前の話だが、私の体験した国会答弁作成の流れを示すと、以下の様な感じだった。
1) 質問予定者からの聞き取り
政府委員室(各省庁の国会内に於ける出張所の様なもの。今では国会連絡室とか云うらしい)や本省の職員が議員会館等を回り、質問予定者から「明日の委員会では何の質問をするか」を聞き出して来る。(これを「問取り=もんとり」と称す)
与党議員は2日前等早めに伝えて呉れるので助かるが、野党だと嫌がらせの為もあってギリギリに伝えて来る為、質問が出揃うだけで時間を要す。とある調査によると全省庁平均で、全部の質問通告が揃うのは前日21時近くだとか。私の経験では日付が変わってから出して来るイジワル議員も居た。
2)「答弁を書く局」を決める
質問が出揃うと大臣官房の総務課が「この答弁はコノ局」「こちらはアノ局」と云う風に書かせる局は何処かを決める。質問の降りて来た局は更に担当する課へと割り振る。
3)若手が答弁を書いて上司にお伺い
自分の課に質問が振られて来たら、主に若手が答弁を書き、課の上層部や、質問内容に関係する部署を回って決裁を取る(コノ場合、幹部が外の呑み会に出てしまったりして居て、ナカナカ決裁に回れ無い事も多かった。現在では余り遅く迄飲んで居る上司は居ない様である。
途中、答弁案に細かい訂正を入れたがる人も居る。しかも、そこを変えたからと云って何か本質が変わりますか? と云う様な、余り意味の無い訂正も多い為、文書案が書き込みで見にくく為ると自席に戻ってワープロの打ち直し。この為、決裁を取り終えるだけで結構な時間が掛かって居た。又、他省庁にも関わる質問もある為、その場合はソチラの了解も取り着ける必要があり大変である。
4)答弁書の清書
決裁を取り終えると答弁案を清書し、必要部数だけコピーする。私の頃は大臣答弁と局長答弁では清書のレイアウト迄違って居たので、間違え無い様注意が必要だった。この段階で既に日付は変わって居り、終電は過ぎて居るので帰宅は困難である。又翌朝も早い為、帰って居ると睡眠時間が削られる・・・と基本的には泊まりが当たり前だった。
5)国会前に大臣に答弁内容をレクチャー
翌日、国会の始まる前の朝イチで大臣に答弁書を渡し、内容に付いてレクチャー・・・説明をする。
6)突然質問が変わった尻拭い
不意に質問が変わったり予定外の質問が飛び出したり、大臣が答弁に詰まる等の突発事が有り得る為、国会委員会室の後部に控え不測の事態に備える。膝には大量の資料を包んだ風呂敷包み。何か有ったらサッと大臣に駆け寄りメモを渡す等助け舟を出す。国会中継でこのシーンを見た事の有る方も多いのではないか。委員会の、自分の担当部分が終われば要約お役御免。本省に帰ってヤッと本来の仕事に戻る事が出来る。
30年前から変わって無い
細かく書き始めたらキリが無いし、その場その場で様々な対処が有って臨機応変に望ま無ければ為ら無いが、基本的にはこの様な感じであった。
現役官僚の友人に確認してみたが、今も本質的にはこのママの様である。30年も経過して何も改善はされて居ない訳だ。又大臣が答弁書に無い事を言ってしまったり、失言したりすると炎上は必至なので、コチラは又走り回らされる。
こうして演出される質疑なのだから、真面な議論に為る訳も無い。質問者は、中継で自分の顔を売ろうとして世間受けのする質問をしようとする。コチラはそれをいかにハグラカスかに腐心する。答弁は曖昧を以て好しとするのだ。私も文書案を持って決裁する際「コレじゃ明言し過ぎてるよ。モッと曖昧にボカさ無きゃ」と書き直しを命じられた事が何度も有った。ハッキリ答え過ぎると、そこを質問者に更に突っ込まれてしまう。コチラの仕事が更に増えてしまうからである。
この様に役人は、国会答弁の黒子として膨大な雑務を強いられる。肉体的にも精神的にも疲れ果てる。この上に、前向きな政策を議論しよう何て意欲が湧きようも無いのだ。オマケに建設的な政策案を打ち出しても、政治家に嫌われれば終わり。為らば最初から彼等にウケの好い政策だけ挙げて置こう・・・と為るのは自然な流れであろう。
迅速に最善策を探る場所では無い
国会とは制度上の最高意志決定機関だが、この様に、議論を深める場でも迅速に最善策を探る処でも無いのだ。かてて加えて今では、安倍内閣の「お友達体質」が有る。お気に入りの側近の意見しか聞か無い為、好いアイディアがあっても「進言したってムダ」の虚無感に包まれる。
今井尚哉秘書官等首相お気に入りの側近には、経済産業省の官僚が多いと云う。医療の専門家が集う厚生労働省の言い分より経済の停滞を嫌う経産官僚の声が通って「緊急事態宣言」の発令が遅れた、と云うのは邪推に過ぎるだろうか。有っても可笑しく無いと私は密かに思って居るのだが。
更にコレも好く指摘される事だが、内閣人事局の問題がある。省庁の幹部人事を内閣が掌握して居る為、彼等に嫌われると出世出来無い。人事が全ての官僚からすれば、生殺与奪の権を握られて居るに等しい。政権に対し耳の痛い事を言って嫌われれば、出世の階段から外される。コレでは何か意見が有っても口にする事は無く、息を潜めて置いた方が好いと云う判断にも為ろう。
そんな国会辞めちまえ
過つては「族議員」と云う強力な存在が在った。自民党政務調査会には各省庁に対応した各政策部会があり(コレは、現在も存在する)、此処に属する重鎮議員だった役人のOBも多く、役所の内部に精通して居る。実質的にはこの政策部会で各省の政策は決定されると言って好く、官僚は頭が上がら無い。逆に族議員に気に入られれば出世は間違い無しで、持ちつ持たれつの関係に在った。
勿論、こうした一部の議員と役所とが一体と為って実質行政を動かして居たのでは歪みも大きい。問題視され現在の体制に変更された。幹部人事権も内閣に一任された。
「族議員」には確かに問題も在った。だが彼等が政策に精通し優秀だったのも事実である。担当する省庁に関して知らぬ事等無い。一方、選挙区の地元の声も好く聞いて居る。この様な議員が居れば、政策論議も活発に出来る。より好い政策はドレか知恵を絞る事も出来る。歪んだ構図で問題はあったが、殊、政策立案能力と云う意味では有効に働いても居たのだ。
処が今はそうでは無い。安倍一強支配が行き渡り、官僚は善意の発言すら出来無い。これでは先鋭的で、効果的な政策等打ち出せよう筈も無い。
だから私はここに言いたい。時間と金をムダにするばかりの国会ナンてそれこそサッサと閉鎖して優秀で情報も十分に有する筈の官僚に本領を発揮させろと。不幸なコロナ禍だが、国民がこの根源的な問題を考える切っ掛けと為り、少しでも体制改善の方向に向いて呉れればと切に願う。
西村 健 作家 東京大学工学部土木工学科卒 旧労働省(現厚生労働省)勤務を4年で辞め講談社Views誌の記者に フリーライターを経て『ビンゴ』(講談社ノベルス1996年刊)でデビュー
代表作 デビュー作『ビンゴ』で第15回日本冒険小説協会優秀賞 『劫火』(講談社ノベルス)で第24回日本冒険小説協会大賞受賞 2012年『地の底のヤマ』にて第33回吉川英治文学新人賞を受賞 2014年『ヤマの疾風』にて第16回大藪春彦賞を受賞 他に小説に『脱出』(講談社文庫)『あぶく銭』(角川書店)等 ノンフィクションに『霞が関残酷物語』(中公新書ラクレ)等
趣味・特技等 趣味は飲酒・読書・映画鑑賞・鈍行列車乗り歩き 特技は何時でも何処でも一人でも呑ンでいられる事位でしょうか・・・日本推理作家協会賞・江戸川乱歩賞データ 候補作・受賞作 第65回日本推理作家協会賞 長編及び連作短編集部門『地の底のヤマ』 候補作 第61回日本推理作家協会賞 短編部門『点と円』 候補作
以上
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【襲来!新型コロナウイルス】「金を出して恨みを買う気か!」自民議員まで怒り沸騰の「1世帯30万円給付」のハードルの高さ
【襲来!新型コロナウイルス】 「金を出して恨みを買う気か!」
自民議員迄怒り沸騰の「1世帯30万円給付」のハードルの高さ
〜J-CAST会社ウォッチ 4/8(水) 17:50配信〜
「がっかり...」と失望を買って居る安倍晋三首相
1世帯当たり現金30万円給付!「オッと、全世帯マスク2枚配布のセコさに比べたら、思い切った大盤振る舞いに出たな」と評判に為ったのも束の間、安倍政権が2020年4月7日に発表した新型コロナ感染拡大を受けた緊急経済対策では、こと「現金30万円給付」問題に関する限り、激しい怒りと失望の声がネット上に巻き起こった。
住民税が非課税に為る水準に迄減収した世帯を対象にして居り「国民皆が苦しんで居るのに不公平だ」と云う批判が圧倒的に多い。処で、アナタは貰えるのだろうか? 大手新聞各紙の分析とネット上の声を拾うと・・・。
独身者だと月収が8万円に減るとヤッと貰える
政府が発表した減収世帯への30万円の現金給付の対象は、次の通りだ。感染の拡大が広がった今年2月から6月までの月収がポイントとなり、
(1)今年2〜6月の何れかの月で収入が減り、年間ベースの所得が住民税非課税の水準に為る世帯
(2)その月の収入が半分以上も大幅に減り、かつ年間ベースの所得が住民税非課税の水準の2倍以下に迄落ち込む世帯
と為って居る。何だか好く判らない基準だ。自分は一体貰えるのか貰え無いのか。日本経済新聞(4月8日付)も「給付金は基準が難しい。家族構成に依っても変わって来る。会計に詳しく無い一般の人が1人で理解するのはハードルが高い」としてファイナンシャルプランナーの助言を元に一般論としてコンな例を出した。
「単身の会社員の場合、収入が年収換算で100万円以下の水準(月8.3万円)迄落ち込むか、半減した上で年200万円(月16.6万円)迄減った場合が対象に為りそう。
会社員と専業主婦、子供1人の家庭では、年205万円(月17万円)に減るか、収入が半分以下に減って年410万円(月34万円)を下回る場合が当て嵌まる模様だ」
と云うから可成り複雑。毎日新聞(4月6日付オンライン版)は、アッサリこう書いた。
「東京都23区内で専業主婦と2人暮らしのサラリーマンの場合、非課税に為るのは年収が156万円以下の人に限られる。年収700万円の人は350万円に半減しても対象に為ら無い。又、共働き世帯で一方が解雇されても、世帯主で無ければ対象外だ」
時事通信(4月7日付オンライン)は、自治体に依って住民税非課税の基準が違う為、東京23区のケースの複雑な表を掲載した。東京23区の会社員の場合は、独身者では年収100万円以下、4人世帯では年収255万円以下が非課税対象に為るが、当て嵌るケースとして以下の4例を紹介した。
(1)独身者A 年収ベース125万円が90万円に減少(編集部注 冒頭の条件の1に該当)
(2)独身者B 3月の月収がコロナ以前は25万円(年収ベース300万円)だったのにコロナ後に10万円に減少。しかし年収ベースでは120万円と非課税水準を上回る(条件の2に該当)
(3)4人世帯A 年収ベースで300万円から250万円に減少(条件の1に該当)
(4)4人世帯B 3月の月収がコロナ以前は50万円(年収ベース600万円)だったのにコロナ後に25万円に減少。しかし年収ベースでは300万円と非課税水準を上回る(条件の2に該当)
日刊スポーツ紙(4月8日)は「このレベルに減るとホボ貰える」とばかりに、もっと判り易くする為東京23区の非課税世帯の家族数・年収・月収の目安の表を掲載した。
(1)単身 年収 100万円 月収 8万3000円
(2)2 人 年収 156万円 月収 13万円
(3)3 人 年収 205万円 月収 17万円
(4)4 人 年収 255万円 月収 21万円
(5)5 人 年収 305万円 月収 25万4000円
安倍首相曰く「国会議員も30万円貰って好いの?」
何れにしろ各紙とも、自己申告で源泉徴収票や給与明細書等収入を証明出来るものを添付して自治体の窓口に申請する必要があり、支給条件が複雑な為問い合わせが殺到し、窓口が大混乱に為るのは必至だと指摘している。毎日新聞(4月8日付)は自民党議員の怒りと悲鳴の声をこう書いて居る。
「首相が対策決定前に『マグニチュードに見合うだけの対策を実施して行く』と繰り返して居ただけに、地元有権者から『うちは対象者では無いのか』等と突き上げられる議員も続出。中堅議員は『コレでは、カネを出して恨みを買うと云う最悪のパターンに為る』と苦り切った表情を見せた」
ネット上でも怒りの声が殺到して居る。
「過去に前例の無い、大々的な、間髪を入れず思い切って・・・とか言って置きながら、蓋を開けたら住民税非課税水準迄落ち込んだ人だけって、ハードル高過ぎでしょ。単身だと年収100万円、8万円ナンだから手取りだと6万円位。今時家賃払って6万円で暮らせますか。だからドケチ政権と言われるのです」
「一番公平でスピーディーな対策は、国民一人ひとりへの一律の給付だが、何故それを遣ら無いのか記者会見で問われて、安倍さん曰く、一律給付をすると自分を含めた大臣や国会議員、そしてコロナでは減収して居ない公務員にも給付されるからと・・・この際、大臣や議員は報酬の何割かを返上すべきだとサエ思って居た私は目が点に為った。全く理由にも言い訳にも為って居ない。公務員を除外すれば済む話でしょう」
実際に収入が減って居る人からこんな声が。
「私は東京のタクシーの運転手です。3月の給料が手取り12万5000円でした。2月迄は20万円を切る事は無かった。4月モッと下がると思います。完全歩合制の仕事です。対象外に為りそうです。1世帯給付金の見直しをお願いします。もう限界です」
「私も東京のタクシーの運転手です。3月は手取り17万円位。4月は多分12万円予想。これでも単身だから対象外。5月は想像出来無い。緊急事態宣言が出たエリアのタクシードライバーは、どうしようも無い。貯金崩しながら耐えるしか無いのが辛過ぎます。底辺の我々が支給対象じゃ無いナンて、この政府終わって居ます」
「詐欺師や闇金業者が必ず暗躍する」
世帯主の収入を基本とする給付の仕組みが可笑しい、と云う声も多かった。
「最近残業がホボゼロに為って、この調子で行けば今月の収入は3人世帯の対象の『17万円』をクリアするかもとか思って居たけど、世帯主は親(年金)だから関係無かった」
「自己申告」と云う方法に関しても批判の声が多かった。所得を把握し難い自営業者と所得が丸裸で把握されて居るサラリーマンとでは、不公平が有ると云うのだ。しかも、減収した自営業やフリーランスの人には、別途、最大100万円の現金給付があるから猶更だ。
「絶対不正受給する人が出て来る。自営業やフリーランスの人は、自己申告の際、色々なものを経費として押さえて居る筈で非常に得だと思う。言いたくは無いが、売り上げ減収なんて簡単に操作で出来る。馬鹿を見るのは、収入を押さえられてキッチリ税金を納めて居るサラリーマンばかりだ」
「会計士です。今朝から給付金申請の電話相談が増えて居ます。今回の現金給付案は多くの国民は納得されて居ないと思います。税金を配る以上、国民平等に一律に払う事が大事です。何故なら真面目に納税して居る方も勿論居ますが、多くの人が過少申告をして居るからです。本当に収益減か真偽が不明の者に迄税金を使って欲しくありません」
「書類操作に長けた目ざとい闇金業者や詐欺師がココゾとばかりに暗躍しそうだ。数か月後には家庭裁判所の前は、自己破産の申請で長蛇の列が出来るのではないか。そして、市区町村の申請受付窓口は『なぜもらえないのだ!』『書類はあるぞ!』と云う怒号が飛び交う阿鼻叫喚のクラスターと化す事は、容易に想像出来る」
「安倍さん、トランプ氏は2度目の現金支給始めるよ」
そんな折り、米国のトランプ大統領が国民への2回目の現金給付を検討して居ると云うニュースが飛び込んで来た。既に一定の所得制限を設けた上で、大人に1200ドル・13万円、子供に500ドル・5万5000円を給付する事を決めて居るが、トランプ氏は4月6日、2回目の現金給付に付いて「真剣に議論して居る」と語ったと云う。米国在住の日本人からこんな投稿が。
《カンザス州在住の者です。嫌々、米国では現金給付の基準は全然厳しく無いですよ。結婚して居る家庭では2019年の収入が2000万円超え無い限り貰えます。明後日位にはお金の支給が始まる様です。ちなみにコロナの所為で仕事を無くした人達は7月下旬迄毎週、通常の失業手当プラス600ドル・6万5000円が支給されます。私の知り合いの中には、失業したけど失業手当だけで月30万円位貰えるので助かる、と安心して居る人も居ます》
当然ながら、この投稿にはこんな羨望の声が相次いだ。
「安倍さん麻生さん!トランプさんは2回目の現金支給だそうですよ。ホント、貴方達の決断力の無さにガッカリ。国民一律はマスク2枚のみ。それも未だ来ていないよ!」
福田和郎 以上
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「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁
「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁
〜日経BizGate 4/8(水) 8:05配信〜
オフィスにテレワーク中を示す張り紙をする人も居る
新型コロナウイルス感染の急拡大で政府は4月7日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を表明する。
首都圏などの企業の活動は、8日から5月上旬迄は在宅勤務が中心と為る。しかし、2・3月にテレワークを経験した上場企業等の経理・財務部門幹部の4割は、在宅勤務では業務が完結せず途中出社して居た事が明らかに為った。
営業とは違い、比較的在宅勤務に馴染み易いとされる財務関連でもペーパーレス化が進まず、完全なテレワーク態勢は難しい様だ。各企業とも社内デジタル化の遅れを補いつつ、今回の「緊急事態」に臨む事に為りそうだ。
紙のデジタル化 テレワーク実施の36%
日本CFO協会(東京・千代田)は3月18日から4月3日迄、上場企業の財務最高責任者ら経理・財務幹部577人にオンライン上で「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」を実施した。
従業員規模は5万人以上が11%・5万人未満5000人以上が22%等500人以上の企業が71%。回答者の役職は役員16%・部長24%・課長29%と課長以上で69%を占めた。新型コロナの感染拡大が始まった2・3月には約7割がテレワーク勤務を実施したと云う。しかしその中で41%が「テレワーク実施中に出社する必要が発生と回答した」と日本CFO協会の谷口宏・専務理事は説明する。
出社の理由は「請求書や押印手続き、印刷等紙データの処理」が1位を占めた。更に「会議への参加」「銀行への対応」等が続いたと云う。テレワーク態勢に入った企業は、社内システムのアクセスやパソコンの持ち帰り、オンライン会議のツール整備等の状況を判断して実施を決めたと云う。それでも「紙の書類のデジタル化に対応出来て居る企業は36%に留まる」と谷口氏。.
財務関連はテレワークに最も適した業務の一つと見做されて居た。営業担当者の様に、頻繁に外部の取引先との商談を交わす機会は少ない。しかし企業社会に根付いた紙の文化のシブトサが普及への障壁として浮き彫りに為った。
「デジタル化対応出来ず」でテレワーク断念77%
一方テレワークを実施し無かった残り3割の企業では、理由として「請求書や契約書等紙の書類がデジタル化に対応出来て居ない」が77%(複数回答)を占めた。続いて「テレワークを想定した社内ルールや試験を経験して居ない」は66%「銀行や監査法人・税理士等とのリモート対応が出来無い」が59%と続いたと云う。
取引先から紙の請求書等が送られれば対応せざるを得無いと云う答えが目立ったと云う。同協会の中田清穂・主任研究委員は「押印のデジタル化が必要と感じて居ても、具体的にどの程度のコスト削減に繋がるか経営幹部に説明出来無いとするケースも少なく無い」と分析する。
その一方で、自然災害等緊急時に於けるテレワーク態勢の必要性を96%が感じて居り、特に69%は「非常に必要」と回答して居る。平常時でもテレワークの導入・促進に付いても75%が「遣るべき」として居る。
日本CFO協会は「財務業務に関しては、テレワークを進める上での課題が個々の企業に明らかに為った」(中田氏)と分析して居る。同協会は生産性向上為の経理・財務業務のデジタル化を促して行きたいとして居る。
只、今回の非常事態に対するには時間的な限界がある。外出の自粛は要請するものの強制では無く、交通機関も通常通りに機能する。各社はテレワークと社員の出社をどう組み合わせるか、感染状況をきめ細かく見ながら対応する事に為りそうだ。
同協会では新型コロナの決算・財務業務への影響に付いても調査した。決算で75%・財務で71%が「影響あり」と回答した。決算関連では「海外拠点・子会社からのデータ収集の遅延」「連結決算、監査対応の遅れ」「業績悪化や将来予測が困難」等が挙げられたと云う。
大手でもTDKやコマツ等が相次ぎ決算発表延期を決めて居る。財務面への影響では「有価証券の評価減」「資金計画や調達」が上位を占めた。
松本治人 以上
中小のテレワーク26%止まり
労務管理 機器の不備が壁 東商調べ
〜時事通信 4/8(水) 16:38配信〜
新型コロナウイルス感染拡大を受け、東京商工会議所が8日発表した東京23区の中小企業のテレワーク実施状況調査に依ると「実施して居る」との回答は26.0%に留まった。
未実施の理由では「テレワーク可能な業務が無い」を除くと、労務管理等社内体制の不備やノートパソコンを初めとした機器が不十分と云った指摘が多く「迅速な普及には、これ等の課題を解決する支援が必要」(東商)と云う。
規模別に見ると、テレワークを実施して居る企業は、従業員300人以上で57.1%に上って居るのに対し、50人未満では14.4%に大きく低下。業種別では、交通運輸・物流・倉庫と、建設・不動産が何れも16%台で、工業・製造業も25.2%と低い。一方、貿易業では6割・情報通信業では5割強が実施して居る。
以上
安倍政権が「経済重視」なら
即刻条件無しの現金給付 をすべきこれだけの理由
〜HARBOR BUSINESS Online 4/8(水) 8:33配信〜
黒田東彦日銀総裁(右)は「必要が有れば、躊躇無く追加的な金融緩和措置を講じる」と強調するが「期間は不確実」と煮え切ら無い
世界が迅速に国民生活を支援する経済対策を打って居るのに・・・
迅速な経済対策が各国で行われる中、我が国の施策は遅々として進ま無い。長年のデフレを直撃した形に為った為、新型コロナウイルス(以下 コロナ)の猛威は既に日本人の生活を脅かし始めて居る。感染の恐怖もさる事ながら、外出自粛要請による経済の落ち込みが深刻だ。
このコロナ不況は、既に世界中を襲って居り、諸外国の政府は国民生活を下支えすべく「緊急経済対策」を打ち出して居る。アメリカは総額でGDP比1割の220兆円、ドイツに至っては同2割に達する90兆円の巨額のパッケージを3月中に発表した程だ。
スピードと経済対策を打つポイントこそが重要なのに・・・
一方、日本では4月1日に安倍晋三総理が「過つて無い規模の緊急経済対策を取り纏める」と表明。3日には「所得減を条件に一世帯当たり30万円の支給」を決めた。
当初、この対策の柱として検討されて居たのは、企業への資金繰り支援として40兆円超を充当し、現金給付やクーポン券の発行を組み合わせた約10兆円に達する給付措置。実現すれば、これ等を含めた総額は60兆円に及ぶ。
駒澤大学経済学部准教授 井上智洋氏
リーマンショック後の経済の大混乱を受けて、麻生太郎政権が’2009年4月に発動した緊急経済対策56.8兆円を超える規模と為る。だが、マクロ経済学の研究者である井上智洋氏によれば「今回の危機では、スピードと対策を打つポイントこそが重要であり、この点で与党の方針は落第点」井上氏が最優先とするのは「国民全員への早急な現金給付」だ。
「政府は、コロナの影響で収入が減った世帯を対象に30万円の給付を検討して居ますが、その際に所得の減少を示す資料を提出させる様です。こんな遣り方をすれば、当然給付迄に時間が掛かります。その間に、人々の暮らしはドンドン苦しく為って行くし、消費が減る事に依って景気も更に落ち込んで行きます。国民生活の安定と景気刺激の両面に於いて、時間との勝負なんです」
各国政府に於ける国民への給付方針は、記事最後で表に纏めて居るが、韓国やアメリカの様に、前年度に申告した所得で対象者を絞るのも問題が残る。例えば年収500万円でラインを引けば、501万円の人は貰え無い事に為ってしまう。足った1万円の差で天国と地獄なのである。
「金持ちに配る事に難色を示す人が居ますが、給付金を課税所得に含める事にすれば、所得税の最高税率は45%なので、富裕層からはその分返金して貰う事が出来ます。給付金は要ら無いから、減税だけで好いと云う人も居ますが、そう云う人達は失業して収入が無い人の事が頭に無い。今遣るべきは、より迅速に国民全員に現金を配る事です」
コロナ禍に抗え!
此処で問題に為るのが、カネの出処だろう。仮に国民全員に10万円を配るとしても、約12兆6000億円が必要に為る。国債や借入金を合計した国の借金が1000兆円を超えて居る状況で、果たしてそんなカネを用意出来るのだろうか。
「又国債を発行すれば好いだけです。どうせその国債を日銀が買い入れるので、日銀がお金を刷って国民に配って居るのと同じ事に為ります。こう云う政策は、空からヘリコプターでお金を降らせる事を想起する為〔ヘリコプターマネー〕とも言われますが、日本では前例が有ります。2009年にリーマンショックの緊急経済対策として『定額給付金』が国民1人当たり1万2000円配られて居ますから」
この定額給付金は、当時首相だった麻生太郎財務相自らが「二度と同じ失敗はしたく無い」と泣き言を漏らす程効果を上げられ無かった曰く付きの政策だ。
「アレが景気刺激策に為ら無かったと云うのは、金額の少なさコソが問題。30万円だったらその内の何割かは消費に回るでしょう。詰り、給付をして消費が十分増え無かったら、モッと給付すれば好いだけの事です」
20万円をバラ撒いてもインフレの心配は無し
只、世の中に出回るお金の量が増えれば、モノやサービスの値段が暴騰するインフレが懸念される。ヘリコプターマネーとインフレの関係に付いて長らく研究を進めて居る、経済評論家の小野盛司氏に話を聞いた。
経済評論家の小野盛司氏
今回のコロナ危機に及んで「20万円の給付を主張」して居る小野氏は、日本経済新聞社が提供して居る経済分析ツールである「NEEDS日本経済モデル」を使い、国民1人当たり20万円・総額25.2兆円を配る事に依る経済効果をこう試算して居る。
「1年後には名目GDPが12兆円・実質GDPが14兆円増えますが、消費者物価指数の伸びは僅か0.1ポイント、長期金利も足った0.03ポイントしか増加しません。好く批判されるハイパーインフレや国債の暴落のリスクはホボ無い事が実証出来ました」
纏まったお金を配る事で、GDP増加と云う直接的な影響に加えて、国民の精神的な部分へのプラスも期待出来ると小野氏は言う。
「将来を不安に思い、節約や貯蓄に励むデフレマインドからの脱却コソが、今の日本人には必要なんです。日本経済は此処20年以上に渉ってデフレが続く「病気」の状態でしたが、医者である日本政府は、ソンな患者さんを放ったらかしにして居たんです。医者なら薬を出して様子を見ますよね。その最初の「薬」に当たるのが、この20万円なんですよ」
又、この実験が成果を収めれば、行く行くは毎月国民全員に所得保証として一定額の現金を支給する制度「ベーシックインカム」に繋がる可能性も有ると云う。
「仕事は嫌だけれども、生活の為に止む無く働くのでは無く、国民夫々が本当に遣りたい仕事を遣って貰う。その為に、生活費を国家が配る社会が理想でしょう。勿論少子化問題にもプラスに働く。若者が結婚しない理由は経済的な将来不安。非正規職の人は結婚したくても出来ませんからね。有る程度、生活が保証される様に為れば、婚姻が増え子供も生まれると思いますよ」
小野氏によると、野党議員時代の菅義偉氏と安倍晋三氏は「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」を発足させて居た。菅氏に至っては、2009年2月1日のフジテレビの政治討論番組『報道2001』で「政府紙幣を発行し、国民一人当たり20万円を配る」と発言して居たと云う。総理と官房長官の要職に就いて居る今、有言実行を果たして頂きたい。
線引きが曖昧な日本の限定的給付
▼主な国の新型コロナ経済対策(2020年4月3日現在)
⊡ 韓国 生活支援 8.5万円を給付 月収712万ウォン・63.2万円以下の1400万世帯が対象。1人世帯は40万ウォン・3.5万円、4人以上世帯に100万ウォン・8.5万円給付
⊡ アメリカ 生活支援 13万円を給付 年収7.5万ドル・818万円以下の大人1人に最大1200ドル・13万円、子供1人に付き500ドル・5.4万円を給付
⊡ 香港 生活支援 14万円を給付 18歳以上の永住権を持つ住民全員に1万香港ドル・14万円を給付
⊡ シンガポール 生活支援 6.8万円を給付 21歳以上の国民に、所得に応じて最大900シンガポールドル・6.8万円、子供1人に付き300シンガポールドル・2.3万円給付
⊡ イタリア 休業補償 7万円を給付 自営業者、観光関連の季節労働者、観劇関連の労働者、農業従事者などに対し、600ユーロ・7万円の給付金を最長で3か月付与
⊡ イギリス 休業補償 所得の80%を給付 休業を余儀無くされる個人事業主380万人を対象に、月額2500ポンド・33.4万円を上限にして所得の8割迄給付
⊡ カナダ 休業補償 15万円給付 コロナの影響を受けて仕事や収入を失った人全てに対して、月額2000カナダドル・15.2万円を最大4か月に渉って給付
⊡ ドイツ 休業補償 最大105万円を給付 個人事業主約300万人及び、個人のアーティストを対象として、最大9000ユーロ・105万円を給付
⊡ 日本 生活支援? 30万円?所得が大きく減少し日常生活に支障を来して居る世帯への限定的現金給付30万円、個人事業主に対する数兆円規模の助成金を検討中
※各国の経済対策は多岐に渉って居るが、その中から特に個人に対する現金給付策等の状況をピックアップした(SPA!調べ)
【井上智洋氏】 駒澤大学経済学部准教授 専門はマクロ経済学・貨幣経済理論 著書に『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版社)など多数
【小野盛司氏】「日本経済復活の会」会長 理学博士 著書に『「資本主義社会」から「解放主義社会」へ』(創英社 三省堂書店)など
取材・文 福田晃広・野中ツトム(清談社) 写真 時事通信社 PIXTA ※週刊SPA!4月7日発売号より
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「私の様な国会議員の収入に影響は有りません」安倍首相 現金一律給付巡るの発言に批判も
「私の様な国会議員の収入に影響は有りません」
安倍首相 現金一律給付巡るの発言に批判も
〜BUZZFEED NEWS 時事通信 2020 04 08〜
政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一定の水準迄所得が減少した世帯に対し、世帯当たり最大30万円支給すると決定。「住民税の非課税世帯」や「月収が半減した世帯」が条件とする報道も有り〔ハードルの高さ〕を指摘する声は少なく無い。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を発令した安倍晋三首相は4月7日、会見を開いた。宣言を巡っては〔要請と補償はセットに〕という声は大きく〔全世帯への現金一律給付〕を求める声も上がって居た。しかし、安倍首相は改めてそうした施策の実施を否定。
「本当に厳しく収入が減少した人に直接給付をして行きたい」と強調したが、その発言内容には一部で批判も上がって居る。
新型コロナウイルスの感染拡大を巡っては、その経済的影響が広範に及ぶ事から、全国民一律の給付金を求める声が当初から多く上がって居た。野党だけでは無く、与党からもそうした指摘は有った。緊急事態宣言により、更に広範囲な層が経済的なダメージを受け、業種に依っては影響が時間差を伴って広がる恐れがある。
しかし、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一定の水準迄所得が減少した世帯に対し、世帯当たり最大30万円支給すると決定。具体的な基準は明らかでは無いが、範囲は全世帯の5分の1程度に留まると観られて居る。
「住民税の非課税世帯」や「月収が半減し、住民税非課税世帯の2倍以下に落ち込んだ世帯」が条件とする報道もあり「ハードルの高さ」を指摘する声は少なく無い。
この日の会見で、安倍首相は補償に付いて記者に問われ、先ず、以下の様に述べた。
「自粛を或る特定の業界にお願いをしても、損失はその業界に止まる訳ではありません。ソコと取引をして居る様々な人達にも影響が出て来る。と云う事を鑑みれば、個別に補償して行く訳では無く、困難な状況に有る皆さんに、現金給付を行いたい」
その上で、様々な補償が有る事を強調した。例えば、厳しい状況に在る個人事業主に対する最大100万円・中小企業には200万円の給付・無利子無担保の融資や、税・社会保障の猶予措置等だ。
一律給付は検討したが…
また「世帯への給付金」に付いて「一律給付を検討した」とした上で、結果として限定的に為った理由に付いてこう述べた。
「自民党でも一律給付の議論が有りました。私達も検討した。例えば、例えばですね、私達国会議員や国家公務員は、今、この状況でも全然影響を受けて居ない。収入に影響を受けて居ない訳であります。ソコに果たして、5万円とか10万円の給付をする事は如何ナンだと云う点を考え無ければ為ら無い。
本当に厳しく、収入が減少した人達に直接給付が行く様にして行きたいと考えました。又、為るべくスピーディーに行いたい。ですから我々は5月、為るべく早く補正予算を通して頂いて、5月に直ちに出て行く様にして行きたい。
全員に給付すると云う事に為ると、麻生政権でも(リーマンショック時に)遣りましたが、大体、手に届く迄に3ヶ月位はどうしても時間が掛かってしまう。今回はスピードも重視した、と云う事であります」
記者は「線引きで零れ落ちてしまう家庭や企業をどう救済するか」と云う点に付いても問うて居たが、その点に付いてはこう述べるに止まった。
「何処かで我々も線引きをし無ければ行け無い。それは辛い事ではありますが、今回お示しをした形で、給付をさせて頂きたい。この事態を何とか皆で協力して乗り越えて行きたいと考えて居ります」
この発言の内、中でも「国会議員は影響を受けて居ない」と云う点に付いて、SNS上では一部で批判が噴出。「誰目線で考えてるのか」「もっと視野広げて」「コッチは収入減って居るのに」等との声も挙がって居る。
「開店する俺の店はどう為る?」安倍首相の
個人事業主に100万円給付 に賛否両論
「中堅・中小企業に(最大で)200万円、個人事業主に(最大で)100万円支給する」
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って「緊急事態宣言」が発令され、安倍晋三首相が4月7日夜、記者会見を開いた。外出自粛を改めて要請し「冷静な行動をお願いしたい」と呼び掛けた。その会見で、安倍首相は「売り上げが多く減った中堅・中小企業に(最大で)200万円、個人事業主に(最大で)100万円給付する」と改めて触れた。
安倍首相は、報道陣から「その条件は?」と問われると「多くの分野に於いて、収入が7・8割・ゼロに為った方々が沢山居らっしゃいます」と語り、条件としてこう挙げた。「年末迄の間に、収入が昨年に比べて半減して居れば、出すと云う形で考えて居る。自粛分野に入って居る人達は入って来ると思う。収入が半減した月が何処かに当たれば、その対象にして行くと云う設計を考えて居る」
電子申請を導入して簡易的な申請手続きがで切る様にすると云う。
賛否両論の声
これに対し、ネットでは賛否両論の声が挙がって居る。
「今年からフリーランス、個人事業主に為った人は野垂れ死にOKって事だね」
「フリーランス、個人事業主への補償は一寸安心」
「何れかの月でと言っても5割以上の減収は厳し過ぎる条件」
「暫くは可成りの人が救われる。簡便な手続きで迅速に実行して貰いたい」
「これから開店する俺の店はどう為るの?最初から大赤字決定だけど??」
政権側が経済対策の手厚さをPRする一方、国民への一律給付を求める声は根強い。しかし、安倍首相は、「本当に厳しく収入が減少した人に直接給付をして行きたい」と強調し、一律給付の実施に付いて改めて否定した。又、会見では固定資産税の減免・社会保険料の猶予等も行うと語った。
以上
「緊急事態宣言」発令
小池百合子都知事は 何故急に騒ぎ出した?
〜文春オンライン4/7(火) 16:00配信〜
「緊急事態 7都府県 首相『1か月程度』 今日にも宣言」(読売新聞)
緊急事態宣言、何故「今」だったのか・・・本日の新聞各紙を読んでみた。
「経済政策がマトマッタから、宣言を出すと云う事だ」
これ迄首相が宣言に慎重だったのは国内経済に与える影響を懸念した為と各紙書いて居た。しかし感染経路が不明の患者が増加した事に加え、専門家や首長等の不満が広がって発令せざるを得無く為った(毎日新聞)その見出しは「外堀埋まった政権」であった。
与党内からも「出すのが遅い」(自民若手議員・朝日)と対応の遅れが出て居る事もあってか、
「経済政策が纏まったから、宣言を出すと云う事だ」(自民党関係者)
「只宣言すれば好いのでは無く、チャンとした経済対策を練り上げる時間が必要だった」(首相周辺)
と云う解説も毎日新聞には載って居た。私はテッキリ宣言に慎重なのは〔私権制限の論議〕が起きて居るからなのかと思ったが、各紙を読むと経済中心だった。
小池都知事の「ロックダウン」強調に官邸は「迷惑だ」
見逃せ無いのは、小池百合子都知事の「影響」である。首相は 「日本では緊急事態宣言を出しても、海外の様な都市の封鎖を行う事はしないし、その様な事をする必要も無い」(6日)と述べた。
その背景には、都知事が3月23日の会見でロックダウンを強調した事が「首相らを困惑させた」と云う(朝日)「緊急事態宣言」と「ロックダウン」を同一視する見方が広がり、スーパー等で買い占めが起きたからだ。
《こうした事態に、官邸からは「迷惑だ」(首相周辺)との声が上がり、政府関係者は「ロックダウンのイメージを払拭し無ければ、パニックが起きる。経済へのダメージも計り知れ無い」と懸念を口にした》(朝日)
「緊急事態宣言」発令 小池百合子都知事はなぜ急に騒ぎ出した?
小池都知事は何故急に騒ぎ出した? 迷惑と言われた都知事のアノ発言。それにしても小池都知事は急に騒ぎ出した気がする。その印象は私だけでは無い様で3月27日の毎日社説は、
・ソモソモ、都の対応はこれ迄出遅れて居た。
・他の都市部の様にトップが強いメッセージを発する場面は乏しかった。姿勢が変わったのは、東京五輪延期の流れが強まった時期とも重なる。
・3連休には、都内の花見の名所に多くの客が訪れて居た。本来であれば、モッと早く注意喚起すべきだった。
と指摘して居る。東京で感染者が増えて居るのは3連休の結果が出て居る事を考えれば同感だ。詰り、小池都知事は自らの出遅れを取り戻す為に強い言葉を発して居る様に見える。「オイ、小池」とはこの事である。
布マスク2枚配布 に安倍推しの「夕刊フジ」が激おこ
こうして緊急事態宣言は出される事に為ったが、新聞読み比べ的には既に先週の時点で「緊急事態」だった。例の布マスク2枚配布の件。4月2日発行の「夕刊フジ」は一面で「マスク2枚ふざけるな!!」と激おこ。「日刊ゲンダイ」と間違えた人が多数!
※タブロイド紙は、安倍推しの夕刊フジ・安倍批判の日刊ゲンダイと云う売りがある。
ツイッターの「日刊ゲンダイ ニュース記者」のアカウントは「マルでウチみたい…今日の夕刊フジさんの一面が日刊ゲンダイ化して居て、ビックリしました」と呟いた。するとその2時間半後に「こちら夕刊フジ編集局」のアカウントが「日刊ゲンダイさん、有難うございます! お互いコロナに負けず、頑張りましょう。お手柔らかに」と返した。何だこの緊急事態は。200億円掛けて布マスク2枚配布と云う「対策」の衝撃の大きさが判る。
「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」
一般紙でも緊急事態だった。産経新聞の一面コラム「産経抄」(4月3日)は 《政府の発表には耳を疑った。(略)優先すべき政策は山の様に有る。首相の決断を押し留めるブレーンは居なかったのか》と驚き、呆れた。アノ産経師匠が! 産経の「ブレーンは居なかったのか」は大きなポイントだった。と云うのも《「全国民に布マスクを配れば、不安はパッと消えますから」首相にそう発案したのは、経済官庁出身の官邸官僚だった》と云う内幕記事が出て来たからだ(朝日新聞4月3日)
ブレーンが止める処か「不安はパッと消えますから」今年の流行語大賞候補である。読売新聞は3週間程前にこんな「答え」を素手に書いていた。
「『知恵袋』は腹心2人、首相がトップダウンの決断繰り返す・・・菅長官との間に隙間風」(読売新聞オンライン3月15日)
この記事には《首相が今、政治決断を下す際に知恵袋として頼りとするのが、今井尚哉首相補佐官と北村滋国家安全保障局長だ》とあり、
・一斉休校の科学的根拠を専門家には諮問せず、検討は今井氏に委ねた。
・3月5日に首相が表明した中国・韓国からの入国制限強化は今井氏に加え北村氏が調整を切り盛りした。
・今井、北村両氏が下支えする「首相主導」の政治決断には根回し不足も目立ち、省庁との軋轢が生じている。
と具体的に書いて居た。
布マスク2枚問題で「今の政権内の意思決定」が見えた
「経済産業省出身の今井氏と警察庁出身の北村氏」と有るので、今回布マスク配布を発案した「経済官庁出身の官邸官僚」は今井氏の事ではないだろうか。更にこの読売の記事の読み処は、首相は「令和おじさん」として注目を浴びた菅官房長官に距離を置き初め、その為今井&北村氏が 《官邸内で重みを増したのは、昨年9月だ。今井氏は政策全般を担当する首相補佐官の兼務と為り、北村氏は外交・安全保障政策の司令塔と為る国家安保局長に昇格し、前面に出易い立場と為った》と有る。布マスク2枚問題はその是非とは別に「今の政権内の意思決定」が見えた案件だった事が分かる。
ではその意思決定はどの様に判断されて居るのか。此処で改めて注目したい記事がある。
「ネット上に批判、政府二転三転 前例なき対応、首相見切り発車」(朝日新聞2月19日)
1月末の武漢へのチャーター機派遣を検証した記事だが、こんな気になる「証言」がある。《ネットでこう批判されて居るぞ。テレビの全チャンネルで言われて居る・・・こんな官邸幹部の反応が、政府の新型肺炎への対応に影響して居ると官邸関係者は証言する》
首相官邸がSNSに力を入れて居るのはこれ迄も言われて来たが、今回のコロナ対策では別の意味でネットを気にして居たのだ。詰りブレーンの判断の「源」が、政策論よりネットの反応が大と云う可能性すら考えられる。支持率重視と云う姿勢が。
しかし布マスク2枚はネットでもウケ無かった。マスク不足のサプライズとして発表したのだろうけどスベった。なら、此処から見える事は一連のコロナ対応の「意思決定」の過程や可視化はヤッパリ大事だと云う事だ。.
謎の2020年にしてはいけない
政府の対応を「一生懸命遣って居るのだから」と云う人も居る。しかしこれは警戒したい論理だ。例えば、
「新型コロナ『歴史的緊急事態』で記録は消されるのか 見え隠れする『桜』の手法」(毎日新聞WEB3月22日)と云う記事はコロナ対応で、安倍政権が「記録」と「議事録」を巧妙に使い分けて居ると指摘して居る。
意思決定のプロセスが曖昧だと、同じ様な状況を迎えた後世の人々が参考にし辛い。アノ時誰が決めたのか、何故そう云う判断をしたのか、何か説明されて居ないものは無いか。謎の2020年にしてはいけ無い。未来の日本人に迷惑を掛ける事に為る。
プチ鹿島 以上
2020年04月07日
「緊急事態宣言」で知って置くべき12のこと
「緊急事態宣言」で知って置くべき12のこと
〜BUSINESS INSIDER JAPAN 4/7(火) 8:10配信〜
〜〔緊急事態宣言〕は〔ロックダウン〕と何が違うのか
私達の経済活動や日常生活にドンな影響を与えるのか〜
首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大して居る事を受けて、安倍晋三首相は4月7日午後5時43分、法律に基づく「緊急事態」を宣言した。対象地域は東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県。宣言の効力は5月6日迄の1カ月。
この〔緊急事態宣言〕とはどういうもので〔ロックダウン〕とどう違うのか。私達の経済活動や日常生活にどの様な影響を与え、どの様な課題があるのか・・・特措法の条文を基にまとめた。
Q.〔緊急事態宣言〕とは?
内閣総理大臣は、新型インフルエンザ等国民の大部分が免疫を獲得して居ない感染症が発生した場合、緊急の措置を講ずる為に〔緊急事態〕を宣言する事が出来る。これを〔新型インフルエンザ等緊急事態宣言 以下 緊急事態宣言〕と云う。
根拠と為る法律は〔新型インフルエンザ等対策特別措置法 以下特措法〕だ。元々は新型インフルエンザ等新感染症の対応策を定める為に2012年5月に公布されたが、この3月に新型コロナウイルスにも適用出来る様に改正された〔新型コロナウイルス特措法〕
Q.〔緊急事態宣言〕で何が出来るの?
内閣総理大臣が〔緊急事態〕を宣言すると、対象地域の都道府県知事が法律に基づき、感染防止に必要な協力を要請・指示が出来る。実際の〔要請〕や〔指示〕を発するのは、内閣総理大臣では無く都道府県知事と為る。
Q.〔緊急事態宣言〕発令迄のプロセスは?
内閣総理大臣が緊急事態を宣言する為には、特措法32条に基づき、以下の条件を満たす必要がある。
1)国内で発生した新型インフルエンザ等が、次の2要件を満たすこと。 「国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合」 「全国的かつ急速なまん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合」
2)事前に感染症に関する専門家ら「諮問委員会」に図り、その意見を踏まえて緊急措置を実施すべき期間(2年を超え無い期間。但し1年延長可能)区域・緊急事態の概要(患者が確認された地域・患者数等・ウイルスの病原性・症状・感染拡大を防ぐ為に必要な情報等)を定める。
3)緊急事態宣言の発令を国会に報告し、公示し無ければ為ら無い。
Q.〔緊急事態宣言〕は〔ロックダウン〕と同じ?
日本では〔緊急事態宣言〕と共に〔ロックダウン・都市封鎖〕と云う強い言葉が独り歩きして居るが、ヨーロッパ等で見られる戒厳令の様な〔ロックダウン〕とは異なる。内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、以下のような見解を示している。
・・・欧米に於けるロックダウンの様に強制的に罰則を伴う都市の閉鎖は生じません。特措法に基づき、都道府県知事により外出自粛要請・施設の使用制限に係る要請・指示・公表等が出来る様に為ります。ソモソモ、日本の現行法では〔ロックダウン〕の定義に付いて定められて居ない。日本の〔緊急事態宣言〕には罰則を伴う外出禁止命令や強制力を以て交通機関をストップさせる様な都市封鎖を実施出来る規定は無い。
一方、諸外国を見ると、例えばイギリスやフランスでは買い出しや散歩・医療上の理由・必要不可欠な出勤以外の外出が原則禁止され、ドイツでも連邦政府が外出自粛等のガイドラインを発表。ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州など一部の州では違反者に罰金が課せられる。イタリアでは鉄道の運行停止・移動制限や必要不可欠な部門以外の生産活動を停止して居り、こうした措置を4月13日迄実施する。公共の場所での2人以上の集会を禁止し違反者には罰則を設ける州もある。
アメリカでは連邦政府が3月13日に〔非常事態宣言〕を発出。10人以上の会合やレストラン等での食事・不要不急の旅行を避ける等の大統領ガイドラインが出された。ニューヨーク州では一部を除き出勤禁止と為った。只、こうした国々では行動制限が課される一方〔ロックダウン〕に伴う損失の補償・給付・休業補償等の公的支援等が施されて居る。
Q.〔緊急事態宣言〕で、お店はどう為るの?
病院・薬局・コンビニやスーパーマーケット・食料品店等生活必需品を販売する施設が強制的に閉鎖される事は無い。緊急事態宣言が出された以降も買い物は出来る。JR・私鉄、バス・タクシー等の公共交通機関の運行を制限するものでは無い。電気・ガス・水道・電話・通信等のライフラインは平常通り維持され、銀行もメガバンクは全店で営業を続ける方針だ。
〔緊急事態宣言〕が出たからと云って、対象地域から別の地域に移動すれば感染を広げたり、移動先の医療体制を逼迫させたりする恐れがある、冷静な対応が必要だ。
Q.〔緊急事態宣言〕の対象と為った自治体で外出は出来るの?
都道府県知事は、生活維持に必要な場合を除き、妄りに外出し無い様「要請」出来る。医療機関への通院・生活必需品の買い物・必要不可欠な職場への出勤・健康維持の為の散歩やジョギング等〔生活の維持に必要な場合〕には外出出来る。只〔要請〕に応じ無かった場合の罰則は無い。
特措法45条 特定都道府県知事は(中略)当該特定都道府県知事が定める期間及び区域に於いて、生活の維持に必要な場合を除き妄りに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出し無い事(中略)を要請する事が出来る。
Q.使え無く為る可能性が在る施設は?
都道府県知事は、学校・デイサービスセンター等の社会福祉施設・映画館や劇場等娯楽施設・一定規模以上の遊技場・百貨店・美術館・キャバレー・ナイトクラブ・ボーリング場等の遊興施設・理髪店・学習塾等〔多数の者が利用する施設〕の使用制限を〔要請〕する事が出来る。但し〔要請〕に応じ無かった場合の罰則は無い。
〔緊急事態宣言〕が発出された場合も、百貨店やスーパーマーケットの中の食品・薬等生活必需品の売り場は営業出来る。
特措法45条の2 特定都道府県知事は(中略)学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る)興行場・その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずる様要請する事が出来る。
Q.イベントはどう為るの?
特措法45条の2に基づき 都道府県知事はイベント開催の中止等を〔要請〕する事が出来る。又、正当な理由が無いのに施設管理者やイベント主催者が〔要請〕に応じ無い時は、都道府県知事が必要が有ると認める時に限り、中止を〔指示〕する事が出来る。〔要請〕や〔指示〕をした場合、都道府県知事はその旨を公表し無ければ為ら無い。只、この場合〔要請〕〔指示〕に応じ無かった場合の罰則は無い。
特措法45条の3 施設管理者等が正当な理由が無いのに前項の規定による要請に応じ無い時は、特定都道府県知事は(中略)特に必要が有ると認める時に限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべき事を指示する事が出来る。
Q.学校や保育園はどう為るの?
特措法45条の2に基づき 都道府県立の学校は知事の判断で休校出来る。私立学校や市町村立の小・中学校、保育園や学童保育等は知事が休校・休業を「要請」する事が出来る。
〔要請〕に応じ無い場合は、休業を〔指示〕出来るが応じ無かった場合の罰則は無い。
Q.他にどんな事が出来るの?
臨時の医療施設を開設する為に土地・建物を使用や医薬品・食品等の物資の売渡しを要請出来る。
特措法49条に基づき 都道府県知事は臨時の医療施設を開設する為に土地・建物を使用出来る。所有者の同意が得られ無い場合は強制的に〔収用〕出来る。
特措法55条に基づき 企業等に医薬品や食品等物資の売り渡しを〔要請〕出来る。所有者の同意が得られ無い場合は強制的に〔収用〕出来る。又、物資の保管を〔命令〕する事が出来る。
Q.「要請」「指示」に応じ無かった場合、罰則は無いの?
特措法の中で罰則が定められて居るのは、以下の2つだけだ。
⊡ 命令に従わず物資を隠したり、廃棄・搬出等をした場合。
特措法76条 第55条第3項の規定による特定都道府県知事の命令又は同条第4項の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長の命令に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
⊡ 物資の保管場所の立ち入り検査を拒否したり、妨害、虚偽報告などをした場合
特措法77条 第72条第1項若しくは第2項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は30万円以下の罰金に処する。
Q.「緊急事態宣言」で強制的な休業は有り得るの?収入は補償されるの?
特措法では、民間企業の経済活動を強制的に止める措置に付いての直接的な規定は無い。〔緊急事態宣言〕による〔要請〕〔指示〕を受けて企業が休業したりイベントが中止に為った場合の補償に付いても定められて居ない。営業停止を求められた事業者等への損失補てんに付いて、安倍首相は7日の衆院議院運営委員会で「現実的で無い」と否定。
飲食店に物品を納入する業者と飲食店を例に挙げて「自粛養成して居る人(飲食店)に限って補てんするのはバランスを欠く」との見解を述べた。
労働者の場合はどうか。労働基準法26条では会社が労働者に仕事を休ませる措置を執る等、会社の責任・判断で労働者を休ませる場合は、休業期間中に休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わ無ければ為ら無い。只、緊急事態宣言に基づく休業が〔使用者の責任〕に為るかどうか不透明だと云う声がある。
労働者の権利擁護に取り組む弁護士団体〔日本労働弁護団〕は〔国や地方自治体から自粛の要請を受けたと云う事を理由にしたとしても、 会社が労働者に労務を提供させる事が可能であるのに、自らの判断に依って休みにする場合には『使用者の責めに帰すべき事由』(民法条項)が有るものと考えられます」と指摘する。
その上で「労働者としては、会社に対して就労させる様求め、賃金全額の支払いを求めましょう」と呼び掛けて居る。日本労働弁護団の東京本部では、毎週月・火・木の 15〜 18時、土の13時〜16時に電話による無料の労働相談に応じて居る。 電話番号は03-3251-5363
文・吉川慧 ※編集部より:安倍首相が緊急事態宣言を発出した事を受けて記事を更新しました(2020/04/07 17:49)
吉川慧 以上
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何故私達は「一斉休校」を批判しながら 「緊急事態宣言」を待ち望んでしまったのか
何故私達は「一斉休校」を批判しながら
「緊急事態宣言」を待ち望んでしまったのか
〜文春オンライン 4/7(火) 18:30配信〜
緊急事態宣言を発令した安倍首相 時事通信社
〜新型コロナウイルス感染者の急速な増加を受け、安倍晋三首相は4月7日、東京等7都府県を対象に〔緊急事態宣言〕を出した。この〔緊急事態宣言〕をどう受け止めて生活するべきなのか。公共政策・情報社会論が専門で、東京工業大学准教授の西田亮介氏に聞いた〜
今「緊急事態宣言」が出される意味
安倍晋三首相が4月7日〔緊急事態宣言〕を出しました。政府から緊急事態宣言が出されると、都道府県知事に強い権限が与えられ、外出自粛や休校・人が多く集まる娯楽施設の利用制限等を要請・指示出来る様に為ります。期間は今の処5月6日迄とされ、法律の上では最長3年間継続可能です。
今回の宣言が出た事で、各都道府県知事が病床不足に対応する為に医療法等の規制を緩和して施設を迅速に設置で切る様に為る他、施設の休業要請や医薬品を都道府県に優先的に売る様に要請する事等が出来る様に為ります。
又鉄道各社に交通の規制を要請する事も出来、運用に依っては日常生活にも大きな影響が生じて来るかも知れませんが、今回は政府としては要請しないと云う発言が繰り返されて居ます。
東京工業大学准教授の西田亮介氏
現状でも、既に3月2日から全国一斉に公立の小中高校の休校が要請されて居ます。3月19日には、大阪府の吉村洋文知事が翌日からの3連休に向けて大阪府と兵庫県の間の不要不急の往来を控える様求めました。東京都でも、3月25日に小池百合子知事が会見し、週末に向けて不要不急の外出の自粛を要請して居ます。
詰り、市民生活に関わる様な要請は、法的な根拠が弱いママ既に出されて来ました。その意味で、このタイミングでの政府の緊急事態宣言は〔これ迄の要請に後付けで理屈付けるもの〕とも言えそうです。
欧米の強権的な宣言とは全く違う
では、知事達が外出自粛の要請等に動く中、何故政府は緊急事態宣言の発令を此処迄遅らせたのでしょうか。〔緊急事態宣言〕と云う強い表現に依る、買い占め・区域や地域からの脱出等の予期し難いパニックの発生を懸念したのでは無いでしょうか。
又〔緊急事態宣言〕は現状に於いては、特措法上、政府として出来る〔最後のカード〕に為る訳ですから、出来れば宣言せずに乗り切りたかったのかも知れません。政府対策本部が設置された時点で、可成りの事が出来る様に為って居た訳ですから。
更に野党やメディア等から「緊急事態宣言によって国民の主権が制限される」との強い懸念の声が挙がった事も大きかったかも知れません。何れにせよ、結果的にはアメリカに於ける〔国家緊急事態〕の宣言と比べても約1カ月遅れの宣言と為りました。
諸外国と比べて注意すべきは、日本の場合は飽く迄も〔改正新型インフルエンザ等対策特別措置法〕と云う個別の法律に基づいた枠組みの中での緊急事態の宣言である事です。
アメリカ等、既に非常事態宣言を出して居る国では、市民の行動を制限するだけで無く、この宣言に依って、大きな権力が政府や大統領・軍隊に集約され勝ちです。イタリアやフランスでは、外出禁止令に反した市民に罰金や禁固刑が科される等、強権的な対応も執られて居ます。 日本の〔緊急事態宣言〕は、欧米のそれとは全くの別物です。
飽く迄、個別の法律に基づいた〔緊急事態〕ですから、警察や軍隊の権利が拡張されたり、新たに罰金が科される様な強硬措置は有りません。飽く迄〔要請〕や〔指示〕が出来るだけ。従わ無い事業者の名前を公表出来ますが罰則規定は有りません。戦争へと突き進んだ〔翼賛体制や国家総動員体制〕に付いての反省や旧伝染病予防法の反省から、自由や基本的人権の制限に慎重な建付けと運用が念頭に置かれて居る為です。
「欧米並みのロックダウン」は日本で可能か
私が懸念して居るのは、今回の〔緊急事態宣言〕の影響そのものよりも、この宣言の効果が薄かった場合「政府は更に強権的な対応を執るべきだ」と世論が盛り上がる事です。
SNS等ネットでの議論を見ていても、罰金等の規定を科す欧州の様な厳重な都市封鎖・ロックダウンや、一般市民の管理・監視を強化する様求める声も挙がっても可笑しくありません。医療の専門家からも医学・公衆衛生上の観点から悪意無く強力な都市封鎖コソが重要だと云う声も聞こえて来ます。
〔欧米並みのロックダウン〕を実際に行う場合、政府としてどう云う対応が執れるかは不明確ですが、思い着くシナリオは2つ考えられます。
ひとつは、自衛隊の活用・・・自衛隊法に基づいて自衛隊の〔治安出動〕が発令される事です。東京都が4月6日に自衛隊の派遣要請を行いましたが、これは飽く迄も〔災害派遣〕治安出動は更に強力な全くの別物です。これ迄も学生運動が過激化した時代やオウム真理教事件に際して検討されましたが、その影響力の大きさや日本に於ける過去の歴史的経緯もあり、過去に発令された例はありません。
発令された場合には、東京都・・・特に23区を封鎖すべく武装した自衛隊が街を囲む様な事態も想定されるでしょう。勿論治安出動の念頭に有るのは内乱の様な事態ですし、国民を統制する為に自衛隊が出動すると為れば、自衛隊のイメージダウンは免れず〔国民に寄り添い、共に汗をかく〕事を積み上げて来た実績が一気にリセットされてしまうでしょうから、実際に起こる可能性は極めて低いシナリオです。
それよりもハードルが低いのが2つ目のシナリオです。警察法・・・と云う、特措法とは別の法律に基づく〔緊急事態〕が宣言されるケースです。
諸外国に於ける〔非常事態宣言やロックダウン〕と似た封鎖を実現しようとする場合、感染症対策をベースにした特措法に立脚するより、元々治安維持を担って居る警察組織を使って実行する方が自然かも知れません。
県警と自衛隊が治安出動訓練
警察法に基づいて〔緊急事態〕が宣言されると、総理大臣が警察を直接指揮出来る様に為ります。詰り、安倍首相が全国の警察を直接、指揮出来る様に為るのです。すると、理屈上は街を出歩く市民を見付ける度に警察が取り締まる様な事も起こり得ます。
〔国家公安委員会の勧告と常時の助言〕が必要とされますが、国会には事後の報告でも好意図されて居ます。現在の警察法の下では前例が有りませんが、そんな案が持ち出される可能性もゼロでは有りません。
〔緊急事態宣言〕では物足り無く為る日
何れも極端なシナリオで、長年に渉って用いて来なかった劇薬の様な手段ですから、政府も簡単には踏み切れ無い筈です。只、私が懸念して居るのは、新型コロナウイルスの感染拡大への恐怖心から、国民が自ら過激な政策を政府や与党に求めて行く事です。
1カ月程前、日本ではどう云う意見が有ったのか思い出してください。急遽決まった全国一斉の小中高校の休校に際して「余りに急過ぎる」「過剰な対応だ」と批判が噴出しました。処が今では、海外で先行する強権的で強制的な〔国家緊急事態〕や〔都市封鎖〕と比較して〔日本の対応は生温い〕〔危機意識が足り無い〕〔外出禁止を徹底するべきだ〕との声が強く為って居る。
日に日に日本国内での感染が拡大して居るとは家、短期間の内に、余りに大きく揺れて居るのです。更に、これ等の世論には、言わば〔原理原則〕が有りません。「私権の制限を含む緊急事態宣言は危ない」と言って居た人が、1カ月後には「早く宣言を出して置けば良かった」と手のひらを返す。野党批判や政権擁護をしたいのでは有りません。イメージばかりが先行し政策の根底に有るべき〔原理原則〕が顧みられる事も無い状況が問題なのです。
隣の芝生は青く見えてしまう
これ迄も緊急事態に於ける危機管理に付いては、長年議論がされて来ました。2003年には、当時の民主党が〔緊急事態基本法案〕を公開して居ますし、2012年には自民党の改憲草案に組み込まれた〔緊急事態条項〕を巡り議論が起こりました。
緊急事態に内閣に強大な権限が集約される事に対して「国家権力が国民の権利を制限する危険性がある」との批判が出たのです。そんな議論が続いて居た筈なのに、新型コロナウイルスに対応する中で、一気に極端な方向に振れ兼ね無い状況が生まれて居ます。
隣の芝生は青く見え勝ちです。他国で現金給付の報道が有ると〔日本でも即、実施すべきだ〕と云う議論が噴出します。でもそれらも申告制だったりする訳です。中小企業者が400万弱在る日本の事情を思うと、雇用も含めて使途が柔軟な無利子・無担保・信用保証料が支援される貸付の仕組みは、過去の震災等の有事でも事業者から評価を受けて来ました。
隣の青い芝生は無いので、日本式の有効な支援を確り政治・経済・社会で構想する事が重要です。勿論、感染し無い事は大切です。疫学的には人との接触を出来るだけ避ける事が求められて居ると思います。一方で、新型コロナウイルスに依って生じる問題の影響は経済や生活の広範囲に渉る複合的な問題です。緊急事態宣言が解除された後にも続いて行く日常の為にも、多角的且つ慎重に考えて行く必要があります。
東京工業大学准教授 西田亮介 日本の社会学者 専門は公共政策・情報社会論 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員 北海道大学大学院公共政策学連携研究部附属公共政策学研究センター研究員
「文春オンライン」特集班 Webオリジナル 特集班 以上
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