2020年04月09日
コロナ禍で露呈した 日本と欧米「リーダー格差」の根本原因
コロナ禍で露呈した 日本と欧米「リーダー格差」の根本原因
〜現代ビジネス 4/8(水) 15:01配信〜
カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン代表の金子信義氏
日本人リーダーの消滅
今、世界が新型コロナウイルスと戦って居る。米国のトランプ大統領・中国の習近平国家主席・英国のジョンソン首相(本人が感染)・日本の安倍晋三首相と云った一国のリーダーが、その対応に苦慮する様子がニュースに出ない日は無い程だ。
人類に取って未知のウイルスへの対応に、多くの経営者も頭を抱えて居る。今回の事態を切っ掛けに、グローバル化の「逆回転」が始まり兼ねない状況だからだ。1989年の「ベルリンの壁崩壊」に依って東西冷戦が終結。それに依って世界市場が一つに為ると、それに合わせて企業のグローバル化も加速し、多くの日本企業も新たな市場を獲得してその恩恵を得て来た。
企業の活動がグローバル化すればする程、こうした世界中で蔓延する新型コロナウイルスの様なパンデミックに近い非常事態は、世界中に張り巡らせたサプライチェーンを分断し、生産活動に脅威と為るばかりか、消費マインドをも冷やしてしまう。危機は各企業に平等に襲い掛かって来る。此処から如何に立ち直れるか、経営者の力量が問われる処だ。
処で、最近の日本企業は元気が無いと言われる。所謂「GAFA」の台頭等、米国のプラットフォーム企業の勢力拡大に依ってビジネスモデルが大きく変化して行く中で、グローバル企業の「主役」が交代。国際社会に於ける日本企業の存在感が薄れつつ有る。延いては世界で日本自体の存在感が沈没し、注目される日本人リーダーも減った様に見える。
企業の時価総額の世界ランキングを見ると、バブル経済の始まった時期だった事も影響して居るが、1989年にはトップ5は全て日本勢が占めて居た。それから30年後の現在、トップ5に日本勢は1社も存在しない。日本企業のトップ、トヨタ自動車ですら世界では35位だ。
こうした日本企業の停滞・日本人リーダーの存在感の無さは何が原因なのだろうか。この点に付いて、これ迄約20年間、日米両国に於いて数百人のエグゼクティブをリクルーティングして来た経験を持つ、牧師出身の異色のヘッドハンター・・・カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパンの金子信義代表(58)に聞いた。
ヘッドハンターでカネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン代表の金子信義氏(筆者撮影)
勤勉で有能でも、勝て無い
・・・金子さんは、元々牧師だったと伺いました。
私の経歴を少しお話ししますと、米国の大学で宗教学を学び、カリフォルニア州でプロテスタントの牧師と為り、死刑反対や難民対策等人権に関わる運動に長らく関わり、ビジネスの世界とは程遠い所で仕事をして居ました。38歳の時の離婚を契機に、同じ牧師出身でヘッドハンターに転身して居た方に人生相談した事が、この道に入る切っ掛けと為りました。
・・・金子さんの会社のホームページを見ますと「危機か機会か」と題して、大学改革等の教育論を展開するEBOOKを掲げて居ます。一見、ヘッドハンターの会社の様には見えませんがこの狙いは何ですか。
私が生業として居るエグゼクティブリクルーティングを通して、勤勉で有能だと言われて来た日本人にグローバル企業を率いる人材が少ない理由は、教育に有ると明確に感じたのです。
私は日本の大学とエリートが置かれて居る現状を学ぶ為、又現場の意見を聞く為にも、多くの大学関係者にインタビューしました。大変貴重な意見を沢山頂きましたので、それを広く読んで貰いたいと思いEBOOKにまとめました。私は、日本の教育が抱える大きな課題の背景には、大学経営にマネジメントと云う概念が欠けて居る事が有ると思って居ます。
その一つの証左として、日本の大学程我々の様なヘッドハンターを使わ無い業界は有りません。多くの大学で経営者は、選挙に依って内部から選ばれます。経営者として誰が適任かを考え、内部に居ればその人を引き上げ、居なければ外から獲って来ると云う発想がソモソモ無い。
経営者に限らず、教授を採用する場合も、コンな教育をしたいから・この人が必要と云った考えが無い。公募と云う形式を執りながら結局は内輪の論理で決めて居る様に見えます。
そして、特徴有る大学を作って行こうと云う強い使命感を持った、優秀な経営者を探そうと云う意欲もノウハウも有りません。少子化に依って学生数は減少して居ますから、このママでは経営に窮する大学も出て来るでしょう。
まさに危機が迫って居る訳ですが、同時にコレはチャンス(機会)でも有ります。寧ろ時代の変化に合わせてマネジメントや教育内容を変え、進化出来る大学は学生を集められると思います。
コロナで明らかに為った「米国との格差」
・・・要は、企業に入って即戦力に為る様な学生を育てられる大学で有れば、生き残れると云う事でしょうか。
私がヘッドハンターの仕事をして居るので、そう思われたのかも知れませんが、そこは違うと強く否定したいと思います。ソモソモ日本の大学は、一流のサラリーマンを養成する事が、大きな存在理由に為って居ませんか。寧ろそうした点に問題が有ります。最近はMBA的な教育の強化に依って、ソコを更に強化して居る。しかし、果たしてそれが正しいのでしょうか。
日本の大学は、自らの存在意義を見失って居る様に感じます。何故、大学が存在するのかと云う目的を深く考え無いママ、単に海外の大学と競う事を考えて居る。目的意識が希薄な競争に何の意味が有るのでしょうか。
・・・米国の大学には明確な目的意識が有るのでしょうか。
例えば現在、米国では新型コロナウイルスの感染者を多く出して居ますが、ニューヨーク大学やコロンビア大学の医学部は、現状を踏まえて急遽学生の卒業を早めさせ、パンデミックとの戦いで疲弊するニューヨークの病院でインターンを開始して貰う事を決めました。何の為に医者に為る人材を教育して居るのか・・・明確な目的意識が有るから出来る事だと思います。
更に言えば、こうした事が出来るのは、大学が素早い判断が出来る体制に為って居るからです。米国の大学には独自の「経営判断」が有り、夫々が独自の動きを見せます。こうした事の積み重ねが特色有る教育を作り、そこから強いリーダーが生まれて来るのです。
大学は、教養を身に付け自身の考え方を構築して真のダイバーシティを理解し、創造性や品格を備え、社会に貢献出来る社会人を育てる為に存在して居ると思います。大学を出て皆が企業に入る訳では無く、教員に為る人も芸術の道を志す人も居れば、公務員に為る人も居る訳です。私自身、牧師に為りました。どの道でも、その世界を引っ張って行くリーダーが光と為る。一流のリーダーが増えれば、社会に光が多く灯ります。
これ迄各国の多くのリーダーと接して来て感じる事は、一流のリーダーの特徴の一つは、深く考える力を持って居る事です。そうした力を備えて行く為には、所謂教養が大切ですが、日本の大学教育は最近、専門教育を重視して、教養教育を疎かにして居る様に見受けられます。
又、日本ではダイバーシティと云えば、即ち外国人と女性の登用である様に理解され勝ちです。意識改革として、組織の幹部に女性を一定数登用する等の数値目標は当面必要かも知れませんが、国籍やジェンダーの先入観無く人を活用して行くと云う発想が「空気」の様に存在して居るのが真のダイバーシティなのです。
未来を予測するのでは無く、作り出す
・・・金子さんがイメージする一流のリーダーとはどの様な資質を持つ人か、もう少し具体的にお願い出来ますか。そして、政治家や経営者・官僚機構のトップ等日本から一流のリーダーが減って居る様に私も感じますが、それは何故でしょうか。
時代は遡りますが、幕末の頃に活躍した志士達の生き様を見て居ると、日本人に決してリーダーに為る素養が無いとは思えません。
一流のリーダーの特徴のもう一つは、絶対的な使命感が有る事だと思います。コンセンサスよりも、ミッションの為に壁を壊す意思決定が出来る人、自分が決断した事への強い責任感が有る人です。
正直、50代・60代に為ると、どの組織のリーダーでも変化に追い付く努力をせずに逃げ切りたいと思って居る人が少なくありません。強いリーダーシップを持った方は年齢に関係無く、自分のリーダーとしての進化を大切にして居る。そして、自分よりも能力の有る人を委縮する事無くチームに招き入れる。引き際も理解して居ます。
企業でもゴールポストは変わります。例えば、株主利益をアレ程大切にして来た米国企業の考えも変化し、サスティナビリティを強く意識し始め、会社は多くのステークホルダーを豊かにする為に存在して居る・・・と云った考え方に変わりつつあります。
社会もこれから大きく変化します。30年後、ドンな社会に為って居るかを予測する事は余り意味が無い。真のリーダーは自らの力でドンな社会にするかと考えます。それに依って周囲に夢を与え、人々を引き付けて行くから真のリーダーに為れるのです。
今の日本では、将来への強い危機感が欠如し、時代の変化にワクワクもして居ないリーダーが多い様に見受けられます。そこが幕末の志士達との大きな違いでしょう。史実は彼等が失敗を恐れては居なかった殊を教えて呉れます。
しかし、今の日本では、有言実行の気概を持つ以前に失敗を恐れるリーダーが多い。ファシリテーター(進行役)も多い。リーダーとファシリテーターは全く違う。こうした人材が欠乏した結果、日本はポスト先進国と為ってしまった。
資源の無い日本は元々ソフトパワーで生きて来たので、国としての潜在能力は高い筈です。しかし、政治・経済・文化と云ったアラユル面で攻める事を忘れてしまった事も、ポスト先進国化を加速させて居ます。
「忖度」と云う言葉が流行語に為る程の日本では、ハイコンテクストな文化がグローバル化を阻んで居るとも言われますが、日本人がグローバルレベルの教養を備え、この忖度力をポジティブに活かす事が出来れば、ユニークで強いリーダーが育つと信じて居ます。
使命感が無ければ為ら無い
金子氏のインタビューを通じて、筆者が改めて思い出した言葉が有る。 「乱は兵戦にも非ず、平は豊曉にも非ず、君君たり 臣臣たり 父父たり 子子たり 天下平なり」これは、松下村塾を主宰した幕末の思想家・吉田松陰の言葉だとされる。意訳すれば、「世の中が乱れて居るのは戦争が起きて居るからでは無い。平和なのも豊作だからでは無い。主君が主君らしい仕事をし・家臣が家臣らしい仕事をし・父親が父親としての役目を果たし、その子供も子供として励んで居れば、世の中は収まる」と云う意味だ。
この考え方を現代社会に当て嵌めてみると、企業や大学・役所等組織を牽引するリーダーがリーダーらしく振る舞い・リーダーらしい仕事をし、リーダーを選んだ人達もリーダーを信じて献身的に支えて行けば、先行き不透明な時代で有っても必ず未来に光が灯ると云う事だ。
その「リーダーらしさ」とは、金子氏が言う所の「絶対的な使命感」であり、ミッション遂行の為には摩擦や苦難を恐れず、時には命をも惜しまず、全てを投げ出せると云う事だろう。そうした姿勢や行動に、皆は着いて行くのだ。
金子信義 カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン 代表 1961年4月生まれ テキサスクリスチャン大学 神学学士・神学修士 サンフランシスコ神学大学院博士課程終了 1989年から1998年迄テキサス・アリゾナ・カリフォルニアの各州にて牧師活動に従事 その後22年間に渉り、南カリフォルニアと東京を拠点に 主に北米とアジア地域のグローバル・エグゼクティブ・サーチに従事して居る 顧客の企業文化を尊重した人材戦略と採用を実行する他、近年では企業に対するコンサルティングやアドバイザリー・M&Aの提案も行う
約70カ国1200社のエグゼクティブサーチコンサルティングファームのメンバーを有する業界団体AESC ・Global Association of Executive Search Consultantsの役員を2017年から務める 又同団体のアジアパシフィック&中東地域の代表も兼任している
聞き手 井上 久男 ジャーナリスト 1964年生まれ 1988年九州大卒 朝日新聞社の名古屋・東京・大阪の経済部で主に自動車と電機を担当 2004年朝日新聞社を選択定年 2005年大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了 主な著書は『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)『トヨタ・ショック』(講談社、共編著)『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)『自動車会社が消える日』(文春新書) 近著にカルロス・ゴーン氏の功罪を振り返りながら今回の事件の背景と本質に迫った企業ノンフィクション『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)
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