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2020年04月04日
【解説】コロナ終息の鍵を握る〔ワクチン開発〕は今どんな状況なのか
【解説】コロナ終息の鍵を握る「ワクチン開発」は今どんな状況なのか
〜クーリエ・ジャポン 4/4(土) 18:00配信〜
モデルナ社でワクチン開発に従事する科学者 Photo David L. Ryan The Boston Globe Getty Images
〜新型コロナウイルスの終息が見え無い中、ワクチン開発に期待が寄せられて居る。多くの困難が立ちハダカル中、開発を急ぐ企業の幹部や研究者達を取材した英紙の記事をお届けする。又、ワクチン開発に関する理解を深められる様に、大阪大学免疫学フロンティアセンターの宮坂昌之招へい教授に、記事の解説を寄せて頂いた。記事と合わせてお読み頂きたい〜
記事の解説 宮坂昌之 招聘教授
ホアン・アンドレスは、配達用トラックの荷台に貴重なワクチンのバイアル瓶を入れた後、夜中に3度も目が覚めた。
2月下旬、ボストン郊外に拠点を置くバイオテクノロジー企業であるモデルナ社は、新型コロナウイルス・COVID-19を同定してワクチンを生成。ヒトを対象とした臨床試験を開始する迄の最短記録を樹立した。その期間は僅か42日だった。研究室内でチームは興奮して居たが、製造を担当して30年に為る製薬の専門家であるアンドレスは、ワクチン候補を目的地へと配送する大型トラックの状況を気にして、携帯電話を神経質そうに確認して居た。
ワクチン候補は米国国立衛生研究所・NIHへと運ばれ、その機能を確認する為の臨床試験が開始される。「この競争に誇りを持って居ます」と彼は言う。「ワクチンを為るべく早く開発する事は、我々の責務です」
ワクチン候補が安全に到着した事が確認されると、チームはアイスクリームで祝った。少なくとも100人のモデルナ社員が本プロジェクトに関わったが、アンドレスは、誰もが関与出来た事に興奮し、その興奮は家族にも及んで居ると話す。そして彼はこう笑った。「15歳の頃の私は、自分が将来こんなクールな事に携わるとは夢にも思わ無かったでしょうね」
モデルナ社は、新型コロナウイルスに対するワクチンを開発する為に戦う20以上の企業・公的機関の内の1つだ。新型コロナウイルスはこれ迄に世界中の約63万5000人が罹患し、約3万人が死亡して居る。(3月30日時点)
感染症流行対策イノベーション連合・CEPIは、世界の健康を脅かす新興疾患と戦う為に3年前に設立された政府・業界・慈善団体の連合組織であり、モデルナ社を含む複数の新型コロナウイルスのワクチン開発プロジェクトを既に支援して居る。
CEPIの最高経営責任者であるリチャード・ハチェットは、必要とされるスピードに合わせて新型コロナウイルスのワクチンを開発すると為ると、今後12〜18ヵ月で約20億ドル・約2100億円懸ると見積もる。モデルナ社は最速のスタートを切り、他社は少し遅れて居るとハチェットは考えて居る。彼は、1918年のスペインにおけるインフルエンザ大流行を引き合いに出しこう語った。
「2月に提案を募集した処、世界中から48の申請がありました。事態は切迫して居ます。我々が直面している脅威は、そのスピードと潜在的な重症度と云う観点から、過去100年に於いて前例の無いものだからです」
中国の科学者がゲノムを公開した日から
モデルナ社は、2009年にメキシコで発症した豚インフルエンザ・H1N1の大流行に携わった最高経営責任者のステファン・バンセルが、国立衛生研究所に電話を掛けた事を切っ掛けとして動き出した。この秋に両組織は、モデルナ社の製造工場でテストを実行し、大流行にどれだけ迅速に対応出来るかを確認する事で合意して居た。しかし、テストを行う前に、新型コロナウイルスの流行が起きたのだ。
ボストン郊外の丘に位置するモデルナ社のノーウッド工場は、標準的な医薬品工場よりも小さいが、パーソナライズ化されて居る医薬品候補等に素早く適応出来る様に構築されて居る。
1月10日に中国の科学者が新型コロナウイルスのゲノム・・・3万の遺伝子コードの全てをオンラインで公開するや否や、ワクチン開発競争が本格的に始まった。
「ゲノム配列を得て、開発競争に加わりました」と、米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は言う。 次に大流行するウイルスを、前以て予測することは不可能だ。「或る種の病原体・ウイルスのワクチン開発を試みるのでは無く、ワクチンが迅速に開発出来る様にする為のプラットフォーム技術の開発を試みる必要があります」とファウチは述べる。
そうしたプラットフォームの1つが、ウイルス遺伝学に基づいたモデルナ社によるワクチンの製造である。2月7日迄に、同社の科学者達は、4月に予定されて居る健康なボランティアを対象としたNIHの初期試験に充分な量の臨床投与可能なワクチンを製造した。
その後、研究者はバッチが無菌状態かどうかを確認する為、2週間掛けて菌の成長を確認した。スタッフは、再製造する必要が有る場合に備え、他の必要なテストを迅速に完了した。幸いな事に、全てが順調に進んだ。
ワクチンが普及する迄には1年〜1年半掛かる
ワクチンの専門家によると、開発を急いだとしても、ワクチンが広範囲に使用出来る様に為る迄に少なくとも1年から1年半掛かると云う。通常、ワクチン開発には数年掛かるものなのだ。安全性試験を実施した後、有効性を確認する為の大規模な臨床試験が必要だ。その一方で、流行が世界中に広がり、更に数千人又は数百万人もの人々が死亡する可能性がある。
モデルナ社や競合他社のワクチン研究は、コロナウイルスが来年も又別の大流行を起こすか、季節性インフルエンザの様な風土病と為った場合にのみ有用なのだ。
商業的利益が不確実にも関わらず、感染症の流行に対して業界が反応するのは、企業の社会的責任と科学的な課題に対処すべきだと云う使命感に依るものである。但し、ウェルカム社や後のグラクソ・スミスクライン・GSK社が1980年代にエイズの画期的な治療薬〔ジドブジン〕を開発した様に、多額の利益を得る場合もある。
モデルナ社が人に対する臨床試験を開始した最初の会社だが、ジョンソン・エンド・ジョンソンや仏サノフィと云った大手製薬会社から、クイーンズランド大学等の研究機関迄、多くの組織がワクチンの開発に取り組んで居る。
遺伝子情報の解読と構造生物学の新技術により、ワクチン開発には変革が訪れて居る。科学者達は検体の入手を待た無くても、ウイルスを独自に合成する事が出来る様に為ったのだ。ピッツバーグ大学のワクチン研究センター所長であるポール・デュプレクスは、新しい分野への道が開かれたと説明する。「特定の研究室でウイルスを培養し無ければ為ら無いと云う制限が無く為り、様々な方法で問題を取り組む人が増えて居ます」と彼は言う。
大手企業でも公的資金無しでは開発に後ろ向き
カリフォルニア州のラホーヤ免疫研究所のシェーン・クロッティ教授は、既に病気に罹患した患者から最も好い免疫反応を探し出し、それを複製する事でより強固なワクチンを製造すると云ったアプローチも進んで居ると話す。
「これは過去5年間で最も大きく、期待出来る技術の進歩でした。人を対象とした臨床試験を開始し、良好な結果が得られそうなものもあります。ワクチン生成に於いて、遥かに洗練された方法です」
モデルナ社のバンセルCEOは、1月にダボスで開催された世界経済フォーラムで、同社のワクチン開発に資金提供するCEPIの契約に署名した。ダボスは2017年にCEPIが設立された場所でもある。彼はCEPIのハチェットCEOに、この場合の〔迅速に〕とは〔今すぐ〕を意味して居ると語った。そして、この契約は大流行に関して初めて議論した日から僅か2日後に署名された。
モデルナ社は、ワクチンや治療薬候補の臨床試験を実施するも発売に漕ぎ着けず、過去9年間は赤字企業だった。その為、新型コロナウイルスのワクチン開発に懸るコストを自社では賄い切れ無かったのだ。収益性の高い大手製薬会社でさえ、得られる利益の低さから公的資金無しでは大流行する病気のワクチン開発に投資する事を避け勝ちだ。
ワクチンが市場に出る前に収束したエボラ出血熱やSARS・重症急性呼吸器症候群等の、過去の大流行した病気に対するワクチン開発に依って多額の損失を計上した企業もある。
モデルナ社のバンセルCEO Photo Steven Ferdman Getty Images
開発出来ても、患者の元には何時届くのか…
モデルナ社はワクチン製造の最初のハードルを超えたが、量産する為の準備に取り掛かる必要があった。ノーウッドの工場では、次の試験の為にバッチを大量製造する事は出来るが、必要とする人々の為にワクチンを大量に製造するだけの能力は無い。
バンセルに依れば、何百万又は何十億ものワクチンを製造する方法に付いて、各国政府と話し合って居ると云うが、モデルナ社には製薬大手と提携する以外の選択肢は無いだろう。臨床試験で結果を得てライセンス製品を世に出す際に、生産能力は非常に重要だとGSK社のグローバル・ワクチン部門を率いるロジャー・コナーは言う。
「誰もが直ぐに供給される事を望みます。但し、供給体制を構築するには時間が懸る場合があります」と彼は警告する。世界最大のワクチンメーカーであるGSKは、中国最大のバイオ医薬品製造事業を自社展開する中国のクローバー・バイオファーマ社との提携を発表して居る。GSKは、2009年のH1N1・インフルエンザ大流行の際に効果的で有る事が証明された〔アジュバント〕技術も提供して居る。
ワクチンと同時に投与されると、アジュバント剤はより強い免疫応答を引き起こす可能性が有るのだ。コナーはこう説明する。「ワクチンの投与量は少なくても好く為ります。詰り、より多くの人にワクチンをより早く届けられる様に為るのです」
GSKは、技術を提供出来ると発表して以降、多くの連絡を受けて居り、提供する相手を決定する為に〔構造評価〕プロセスを実行中だと云う。
「全てのワクチンが技術的にアジュバントの恩恵が有る訳では無く、候補ワクチンに技術スキャンを行い、効き目が有るのかどうかの専門家の判断を待ちます。次に、候補ワクチンの力価と、それを実現する成功の可能性を評価したいと考えて居ます」
現時点では、治療法を見付ける事が先決であり、ワクチン生成が成功した事による商業的な利益は二の次だとコナーは言う。「現時点では、完全に科学面に注目し提携企業を探して居ます。全てはワクチンを早く世に出す為です」
ビジネスの取引に関する交渉は後からでも出来る。 「我々は、科学面でコラボレーションする事、無料でプロダクトを入手し、前臨床試験を実施しプロダクトが機能するかを確認する事が優先事項だと考えて居ます」とコナーは話す。
裕福な国が「独占」した前例も
政治家や患者達が薬の価格の高さに不満を抱いて居るアメリカでは、40人以上の議員が2月、ドナルド・トランプ大統領に、ワクチン開発や治療に対して政府の資金を投入し、全ての人がワクチン又は治療を受けられる様にする様書面で要求した。
イリノイ州選出で、イニシアチブを率いるジャン・シャコウスキー下院議員は「公的資金を使って、何かしらの治療法やワクチンが見付かれば、何処でも治療を受けられる様にする必要があります」と語り「民間の製薬会社に引き渡すべきではありません」と忠告する。
「我々は治療法が行き届くのかを非常に懸念して居ます」とCEPIのハチェットは言う。「2009年のH1N1・インフルエンザの際は、裕福な国々が契約を結びワクチンの供給を独占したのです」
CEPIは、来年に向けて新型コロナウイルスのワクチンが準備出来る場合、それが必要に為るかどうかも含め多くのシナリオを立てている。
「封じ込めが成功して病気が無く為る事は、最早有りそうも無いと考えて居ます」とハチェットは言う。 「ワクチンには長期的且つ、商業的なビジネスニーズが有るでしょう」
モデルナの本社に戻ったバンセルは、新型コロナウイルスに於いて自社の技術が最も進んで居る事が証明されたと話した。そして、更にスピードを上げられるとも考えて居る。しかし、死者数が増えるに連れ、同社の社長であり彼の同僚でもあるスティーブン・ホーゲは、開発スピードを幾ら早めても充分とは言え無い事を懸念して居る。
ワクチン候補の最初のバッチが出来上がり、一息着く間が出来るかと思われた丁度その時期に、韓国・ヨーロッパ・そして世界中に蔓延が広がって行ったからだ。
アンドレスの様に、彼は眠れ無い夜を過ごした彼は言う。
「私達は或る程度前進して居る、と自身に言い聞かせて眠りに着きます。そして毎朝、目が覚める度に未だ遅れて居ると感じるのです」
Hannah Kuchler Clive Cookson and Sarah Neville 以上
【管理人のひとこと】
医薬品の開発には莫大な資金を必要とする。それは、無論日本だけの事では無く世界が抱える問題であり、今回の様な新型コロナウィルスに対しても、ウィルスの特定・解析から始まり、それに対する治療薬の効果を判定する迄には時間と共に巨額な投資が必要だ。
それは、もしかしたら一製薬開発企業では覆い切れないリスクを抱える事に為り、一つの国の援助では足りないかも知れない。世界には各国が協力してそれを為す機関があるのだが、何れも直ぐに出来るものでは無い。今出来る事は、既存の薬品の効果を実験する位だろう。
何れにしても企業には利益が無ければ取り掛かれ無い・・・もし、治療薬の開発に成功したとしても、直ぐにウィルスの蔓延が収まってしまえば、資金を回収する処か多額な開発資金の垂れ流しで終わるリスクもある。矢張り、国家的、又は複数の国家群が協力してリスクを執ら無くては為ら無い・・・非常にリスキーな話なのだ。
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蓮舫氏 収入減世帯への30万円給付に 「何故、一律に30万円? 安倍総理、岸田自民党政調会長は、コンな当たり前の疑問さえも浮かば無かったのだろうか」
蓮舫氏 収入減世帯への30万円給付に
「何故、一律に30万円? 安倍総理、岸田自民党政調会長は、コンな当たり前の疑問さえも浮かば無かったのだろうか」
〜スポーツ報知 4/4(土) 7:51配信〜
蓮舫議員
立憲民主党の蓮舫参院議員が4日、自身のツイッターを更新した。蓮舫氏は、政府・与党が3日に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策で収入が減った世帯を対象に、1世帯当たり30万円を給付する方針を固めた事にツイッターで「1人で生活して居る世帯・夫婦2人の世帯・子供が複数居る世帯・・・何故、一律に30万円?」と疑問を投げ掛けた。
その上で「安倍総理、岸田自民党政調会長は、コンな当たり前の疑問さえも浮かば無かったのだろうか」と綴って居た。
報知新聞社 以上
コロナショック 日本の「経済対策」に決定的に足りて居ない事
〜現代ビジネス 飯田 泰之 4/4(土) 7:01配信〜
飯田 泰之 明治大学准教授
コロナショックの経済的影響、求められる経済政策の対応に関する議論は多い。これから求められる政策に付いての言及は今後更に増加するだろう。
本稿でも、フェーズ別に求められる施策・与党各党が提示する対策案の得失を論じる。但し「これから何をするか・すべきか」も重要であるが、その前に、正に今お困りの方の為にも「今何が行われて居るか」に注目して置きたい。
現在利用出来る主な制度
極短い期間に需要が半減又はそれ以上に悪化して居る事で、既存の措置・政府が急ぎ実施した措置の周知が不十分な状況に有る。例えば、SNS等では「ヨーロッパではコロナショックに依る休業に対して賃金の6割を補償して居るのに日本政府は何をして居るんだ」と云った批判は多い。
又、筆者が出演するラジオ番組でも観光関連企業で働くリスナーから「殆ど仕事が無く、休業が多い為給料が半減した」との声を頂いた。
しかし、我が国では以前より休業補償の仕組みとして雇用調整助成金制度が存在し、今次のショックを受けてその要件は大幅に緩和されて居る。これに依り、月の生産・売上が10%減少して居ても解雇等を実施して居ない為らば、大企業で休業手当の75%・中小企業で90%が助成される様に為った。(4月1日現在)
教育・訓練を指示する事で事実上の補助率は更に高める事が出来る。パート・非正規雇用等の雇用保険に加入して居ない労働者も対象と為って居る点も重要だ。制度詳細は厚生労働省web page等を参照頂きたい。
又、喫緊の資金需要・・・売上等が急減しても待って呉れない家賃・借入等の支払いに対応する為の融資制度が提供されて居る。例えば、日本政策金融公庫・商工中金等は月の売上等が5%以上減少して居る事業者を対象に数億円規模迄金利優遇措置付きの無担保貸付制度を提供して居る。
更に、フリーランスの場合には制限無く・小規模事業に付いては月売上の15%以上減少した場合には〔利子補給制度〕を利用出来る為3年間は事実上の無利子融資と為る。(何れも3月31日現在)制度の詳細は経済産業省web pageを参照頂きたい。
融資に限らず、税納付の猶予等に付いても同ページや国税庁web pageに記載されて居る。個人・家計向けの生活資金融資は20万円程度とマダマダ少額に過ぎるが、所得制限等が撤廃されて居る為検討に値すると云う家計もあるだろう。
この他にも、新設・条件緩和された支援プログラムは非常に多い。この多さ、細かさに依る判り難さのみ為らず、マダマダ改善の余地が有るが、既に提示されて居るメニューが多い事も心得て置きたい処だ。
「無形の資産」を維持する重要性
感染拡大が収束して居ない状況で何よりも優先されるのは〔広義のストック〕の毀損を防ぐ事にある。経済に於ける〔広義のストック・財産〕とは無意識的な業務効率化の工夫・取引相手との信頼・従業員同士のコミュニケーション等何れも形の無いものばかりだ。
大小を問わず、事業は無機的な存在では無い。或る企業が一時的なショックに依って倒産・廃業した時。後に実質的に同じオフィスや機械設備を準備出来たとしても・・・それ自体困難だろうが・・・同じ会社を作る事は出来無い。現在、顧客急減の最前線に足って居る飲食サービス業も同じだ。
小規模な居酒屋・スナック・クラブ等は店主・従業員・常連客の不思議な均衡に依って成立して居る。ひと度失われた生態系をそのママの形で回復する事は出来無い。個人事業・フリーランスに付いても取引先等との長期的関係が競争力や効率の源泉と為って居る例は多い。
これ等の・・・会計上の定義とは異なる・・・無形資産が維持されて居る為らば、その後の十分な景気対策次第で、危機の後には従前と変わり無い経済活動を復活させる事が出来る。自然災害とは異なり、今次のショックに依って物理的なストックが失われた訳では無い。
ソモソモ制度が知られて居ない
目に見え無い・会計的に捉えられ無いストックを守る必要性に付いて、政府・与党も意識的では有る様だ。一方で、冒頭紹介した様に制度自体の存在が知られて居ない、又は制度が利用されず実際に給与の大幅減が生じて居るのは何故であろう。更に、早廃業を決めた小規模事業の話を聞く事が増えて来た。制度が上手く機能して居ない理由に付いて、此処では3つのレベルに分けて説明したい。先に示して置けば、
@ 広報の拙さ
A 必ず存在する制度からの〔漏れ〕
B 将来の経済政策方針へのコミットメント不足 である。
第一が広報活動の問題だ。伝統的な中小事業とは異なり、新たな業態の企業・個人事業主には商工会や商店会等を通じた既存の周知手段に依る情報は届き難い。ソモソモ、現下で感染拡大防止の最前線でもある東京都では、これ等の組織・連合に所属しない企業・事業の割合が高い。
加えて、バー・クラブ等の料飲関連業種ではこれ迄様々な補助・支援制度と無縁なママ経営が行われて来た店が多い。その為、行政的な支援の窓口・利用方法に不案内なケースも有るだろう。これ等の問題を改善する為に、新聞・テレビ・ラジオ等の従来型のメディアを用いた広報の拡大は欠かせ無い。
それ程判って居る事が多い訳では無い・・・詰りは僅かな、医療・疫学的情報を繰り返し放送する事よりも、今、受ける事の出来る支援や経営継続の手法を周知する事にも報道・放送と云うリソースを割くべきだろう。又、各社が取引先の小事業主への情報提供・税理士会を通じた広報等を拡充する事も望まれる。
経営者だけでは無く従業員・その家族が制度の存在を知る事で、雇用関連の助成申請を従業員側から要求・提案出来る様に為ると云った流れが期待出来る。
必要な者全員をカバーする制度設計は不可能だからコソ
最も、問題の中心は広報に有る訳では無い。これ等の制度を知って居ても、利用しない企業・事業主も少なく無い。何故融資・猶予の制度が有るにも関わらず、休業よりも廃業や解雇・給与引き下げが選択されるのだろう。
特別融資や雇用調整助成金の給付には時間が掛かる。平常時であれば、これ等の融資実行には2ヵ月は必要である。その2ヵ月が待て無い・それ迄の賃金支払いを節約する必要が有ると云う事業主はこれ等の対策措置を利用し無い、又は出来無い。関連部署の努力に依り、その実施期間は徐々に短縮されつつ有る。仮払い・見込み払いを行い、1年後に過不足を調整する等より柔軟な対応が求められる。
加えて、如何に入念に制度を設計しても、如何に支援のプログラム数を増やしても、何れの制度支援の枠組みにも〔嵌らない〕家計・企業は残る。現在の急務はストックの毀損を防ぐ事、コレは時間との戦いだ。入念な制度設計よりも、素早いメニュー提示が求められる。だからコソ、猶更に〔どの制度でも救済され無い〕対象への支援方法を模索する必要がある。
コノ問題の解決策のひとつが〔一律給付金の支給〕である。コロナショックへの対応を巡って一律給付金の支給が議論に上ったが、少なからぬ議論が一律給付金の機能・役割を誤解して居る向きがある。典型的なものは麻生太郎財務大臣の、
「一律(給付)で遣った場合、現金で遣った場合は、それが貯金に回らず投資に回る保証は? 例えば、マア色々な形で何か買ったら・・・一定割合や金額を引きますとか、商品券とか云うものは貯金にはお金が余り行か無いんだよね」(3月24日記者会見)
「緊急経済対策の現金給付は必要な処にマトメて給付すると云う方が、より効果がある」(4月1日参院決済委員会答弁)
・・・である。感染拡大防止時点で急ぎ行われる〔現金一律給付〕の目的は消費刺激では無い。現金一律給付の最大のメリットは、制度では把握し切れ無い多様な資金決済が滞る事が無い様にする事である。
20万円程度の最低限の金額であっても〔無差別一律〕に給付を行う事で、決済の停滞の差し当たっての問題を防ぐ事が可能に為る。例えば、低所得では無いが家庭等の事情で現時点で家賃滞納が有る家計も有るだろう。この様な家計が借家から退去を余儀無くされるケース等を想起されたい。
平時に於いてすら、ドンなに配慮・検討を重ねても制度ではカバー出来無い資金需要が有る。増してや、今はこの様な配慮・検討に賭ける時間が惜しい状況だ。兎に角現金を一律に配る事で満たされる資金需要が有る。ちなみに、現金では無く商品券の方が消費を喚起すると云った議論も見られたが、消費刺激策としても、商品券と現金給付で消費刺激の効果に違いが有ると云う研究は殆ど見掛けた事が無い。
過去の地域振興券とリーマンショック時の家計消費の増減を見ても両者に有意な違いは無い・・・その政策インプリケーションも含め、詳細は拙文参照。
〔全員一律での現金支給実施〕への批判として、一律支給が事務手続き上困難で有ると云う議論もある。しかし、これ等の技術論も又〔唯一の手法・経路で全員をカバーする必要がある〕と云う思い込み・・・詰り、一つの方法・経路で現金を配ら無ければ為ら無いと云う思い込みに囚われて居る。唯一の方法で全員に支給するのでは無く、複数の方法で事実上の全員支給が行われれば好いのだ。
住民基本台帳等に基づく小切手の郵送を初め、源泉徴収を行う企業を経由した手法・確定申告時の登録口座を使う方法等日本国民の殆どをカバー可能な手法は複数存在する。又、社会保険料の一定期間の免除で有れば家計・企業双方への直接給付にも為る。
これ等の制度に漏れた場合に〔自己申告で受け取る方法を用意〕すれば事実上の一律給付は困難なものでは無い。又、高所得者優遇で有ると云う批判が有る為らば、来年又は再来年の年末調整・確定申告時に調整すれば良いだろう。
将来への悲観
緊急プログラムの活用が進ま無い理由はこればかりでは無い。最大の問題は収束時期と収束後の日本経済・世界経済に関する悲観的な観測である。多くの無利子・無担保融資に代表される様に、現在示されて居る一種の〔緊急避難措置〕は多くが〔融資〕のスキームに為って居る。融資=借入は、何時か返済し無ければ為ら無い。
これだけ日本経済・世界経済が打撃を受けて居る様なイメージが広がる中、返済開始時点で十分な売上・収入が有るかに不安が有ると云う人は少無く無い筈だ。そうした場合、融資を中心とした支援策に二の足を踏むと云う反応は合理的なものであろう。
或る程度整備された融資型の支援策が十分な機能を発揮する為には、
1) 今後の経済状況次第では返済免除や返済猶予が検討される事
2) 一定の収束後には大幅な景気刺激策が執られる事を十分に伝える必要がある
それも、より具体的な方法・総額等を明示する事で「今を凌げば、又以前の様なビジネスが出来る」と云う予想・期待を強化して行か無ければ為ら無い。制度的な詳細を後回しにしてでも、その大枠を示す事を政治は優先すべきだ。
先週末に行われた〔緊急記者会見〕はどの様な意味で〔緊急〕なのかが訝られる程〔抽象的なもの〕であった。今こそ〔将来期待に働きかける〕事で〔現時点の施策の実効性を高める〕為の〔具体的なコミットメント〕が求められて居る。
飯田 泰之 明治大学准教授 出身地 東京都 1975年生まれ 東京大学経済学部卒業 同大学経済学研究科博士課程単位取得退学 駒澤大学経済学部准教授・財務省財務総合政策研究所上席客員研究員を経て、現在 明治大学政治経済学部准教授・内閣府規制改革推進会議委員・株式会社シノドス マネ−ジングディレクター等を兼任 専門は日本経済・ビジネスエコノミクス・経済政策・マクロ経済学
以上
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コロナ自粛で判った〔過剰消費大国・ニッポン〕の不都合な真実
コロナ自粛で判った 〔過剰消費大国・ニッポン〕の不都合な真実
〜現代ビジネス 4/4(土) 8:02配信〜
写真 現代ビジネス
コロナウイルス蔓延でロックダウン寸前迄追い詰められた危機的状況下、消費は生活維持に必要な〔ミニマル〕迄萎縮し、期せずして〔エシカル消費〕が実現して居るが、パンデミックが収まった後も消費が元に戻るとは思え無い。
エコミニマルで環境に優しい〔エシカル消費〕を謳うのがサスティナブルだと企業ブランディングのトレンドに為って居るが、このままエシカル消費が続けば経済循環が萎縮して現代文明が崩壊し兼ね無い。それは温室効果ガスが地球温暖化と環境破壊をもたらすと云う美しき〔世界的キャンペーン〕も同様で、人類活動が生み出す温室効果ガスが辛うじて食い止めて居る氷河期の再来を許し、人類が8,000年掛けて築いて来た文明を根底から崩壊させるリスクがある。
小島 健輔 流通・ファッションビジネスコンサルタント
エシカル消費が文明を滅ぼす…?
〔環境に優しい〕は好ましいが〔リサイクル〕や〔ミニマル消費〕が広がり過ぎると不要不急な新品の消費が萎縮し・所得や雇用も萎縮して経済が縮小スパイラルに陥り・過剰消費が支えて来た現代文明を崩壊させるリスクが指摘される。
エシカル消費を極めれば産業革命以前の農耕経済に戻って経済規模も人口も劇的に萎縮し、現代文明は滅んでしまう。そんな極端な事は有り得無いと思うかも知れないが、この一ヶ月程、我等はエコミニマルなエシカル消費を実体験して居る。
所得も資産も脅かされて明日の生計が見えず、マスク等衛生用品は勿論生活必需品の入手さえ細る実情下では、エコミニマルに徹するしか無い。それがどれ程消費と経済を連鎖的に萎縮させ、世界恐慌さえ危ぶまれる程深刻な状況を招いて居るか、誰もが実感して居る筈だ。
〔過剰消費〕と〔莫大な無駄〕で成り立つ現代社会
産業革命以降の経済拡大は、エシカルに考えれば壮大な無駄の相乗効果の上に成り立って来た。それが環境を汚染し経済格差を広げ様々な軋轢を招いて来たとしても、人類を7億人(1750年)から77億人に増やした事実を無視しては為るまい。
もしも産業革命以前の環境に優しいエシカル社会に戻るなら、世界人口は十分の一に戻ってしまう。その過程でどれ程阿鼻叫喚な悲劇が繰り返されるか想像に難く無い。
現代文明は〔過剰消費〕と〔莫大な無駄〕に依って規模と循環を保って居るのが現実であり、美しきエシカル消費が蔓延すれば崩壊してしまう。百貨店やファッション業界等過剰消費と無駄を否定しては存在さえ危うい。流通の無駄は不毛だが、消費の無駄は文明を支える〔美徳〕だ。
美しき〔エシカルトレンド〕に便乗するのも程々にして、パンデミックが収まったら、現代文明が崩壊し無い様各業界が総力を挙げて過剰消費を煽るべきだろう。
温暖化より寒冷化の方が恐ろしい…?
《化石燃料由来の温室効果ガスで、地球の温暖化が進み環境が脅かされて居る》と云うキャンペーンは、近年の異常気象も加わって殆ど脅迫的な域に達して居るが《文明活動が生み出す温室効果ガスが無ければ間近に迫る氷河期入りを止められ無い》と云う不都合な真実(?)を無視した危険思想と云う見方も有る。
確かに1970年代以降、取り分け今世紀に入っての温暖化は急ピッチで、我が国の西日本や中部の太平洋側は亜熱帯化し、100年で3度近くも年間平均気温が上昇して居る。しかし温暖化したのはコノ50年間で、1940〜1960年代は寒冷化が危ぶまれて居たし、17〜19世紀前半の小氷期には、世界中が飢饉に見舞われて数千万人の餓死者を出し、農業が破綻して農民が都市労働者化し産業革命の契機と為った。更に時間の物差しを伸ばせば、過去6,000年間の寒冷化をコノ100年で帳消しにしたと云う見方も出来る。
地質学的レンジで見れば、最終氷河期のピークは2万2,000〜2万3,000年前で、今日より年間平均気温は7度程低く、北日本の山岳部と北海道は永久凍土に覆われ海面は120メーターも低かった。
1万7,000年前頃から暖かく為り始めたが幾度か寒冷に戻る時期を繰り返し、1万1,600年前に急速に温暖化して・・・1〜3年で7度・・・8,000年前に温暖化のピークを迎え、6,000年前から寒冷化に転じて居る。日本でも縄文期は今以上に温暖で年間平均気温で2度程高かった。海水面も地域に依って今日より10メートル前後も高く、関東では大宮台地迄海岸線が迫って居た。
2万3,000年サイクルのミランコビッチ理論・・・地軸の歳差運動と公転軌道運動から見ても太陽黒点活動から見ても、トックに次の氷河期に入っても可笑しくないが、それを食い止めて居るのが人類の文明活動が生み出す温室効果ガスだと様々な分野の学者が指摘して居る。
それも産業革命以降では無く、CO2濃度は人類が焼畑農耕を始めた8,000年前から、メタン濃度は水稲耕作が始まった5,000年前から顕著に増加して居る。(中川毅 人類と気候の10万年史)
先ず食料が消える…!
太陽活動も、過去4,000年続いた活動期が終わって2019年には黒点出現が2008〜09年と並ぶ極小値を記録し、2025年頃からダルトン極小期・・・1800年代前半の40年間の様な寒冷期に入る可能性が指摘されて居る。ロシア科学アカデミーも、2030年迄に小氷期入りする確率は97%と発表して居る。
IPCC・気候変動に関する国連政府間パネルは、今後の100年で最大5度の温暖化を予測して居るが、小氷期に入れば数年でそれ以上の寒冷化が進んで17〜19世紀前半の小氷期を上回る飢饉に見舞われ、農業も畜産業も破綻して現代文明は壊滅的打撃を受ける。近年の異常気象は安定した温暖期から小氷期へ転ずる前兆と見るべきかも知れない。
温暖化は環境を損ない海水面を数十センチ・・・IPCCは2100年迄に26〜82センチと推計・・・上昇させるかも知れないが、それに依って多数の犠牲者が出る訳でも現代文明が破綻する訳でも無い。飢饉に依って数千万人が餓死し現代文明を破綻させるかも知れ無い寒冷化の方が桁違いに恐ろしいのだ。
寒冷期入りが現実と為れば、先ず打撃を受けるのが農業・次いで畜産業であり、工業化と消費依存が進んだ現代文明の薄い食料生産剰余と備蓄は1〜2年で尽き飢餓が世界を蹂躙する。
1993年の冷夏では米の作況指数が74に急落して100万トンの政府備蓄が一瞬で吹き飛び、緊急輸入に頼る結果と為ったが、世界的な飢饉と為ったら、輸入には頼れず政府の備蓄は一年で潰える。主食用米の消費は当時の1026万トンから2019年は726万トンに減って居るが、その分が小麦(主にパン食)にシフトして居り、世界的飢饉と為れば小麦の輸入も途絶える。
「効率化」より「安定化」へ
2018年の主食用米の自給率は98%だったが小麦は12%しか無く即蒸発してしまう。自給率が高い主食用米にしても、民間の流通在庫は2〜3週間分程しか無いから、パニック的な買い溜めが起きれば一時的には店頭から在庫が消えてしまう。
生産・出荷段階には十分な在庫があるから一時的な買い溜めには対応出来るが、トイレットペーパーやマスクの様に短期に増産出来るものでは無く翌年の収穫を待たねば為ら無いから、飢饉が翌年も続くと政府の備蓄も尽きてしまう。
そんな事態に陥らぬ為には、食料の備蓄率を高め流通在庫を厚くし、抜本的には自給率を高めるべきだが、効率化と付加価値化ばかりが追われ、安定供給が軽視されては居ないか。コロナパニックでソレを実感したら、遠く無い将来の飢饉に備え抜本的な対策を講じるべきだろう。
小島 健輔 流通・ファッションビジネスコンサルタント 慶應義塾大学卒 大手婦人服専門店チェーンに勤務した後 (株)小島ファッションマーケティングを設立 2016年には経済産業省のアパレル・サプライチェーン研究会委員も務めた マーケティング&リテイリングからマーチャンダイジング&ロジスティクスまでデジタル/アナログの両面から一貫して捉え 中長期視点の経営戦略と現場の技術革新を表裏一体に提言している
以上
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新型コロナウイルスの緊急経済対策「30万円支給の自己申告制」が抱える3つの問題点
新型コロナウイルスの緊急経済対策
〔30万円支給の自己申告制〕が抱える 3つの問題点
〜ハフポスト日本版 4/4(土) 11:42配信〜
経済対策で発言する安倍首相
〜新型コロナウイルスに依る所得の減少対策として政府は〔自己申告制〕で1世帯当たり30万円の支給する事で一致した。しかし〔自己申告制〕は感染拡大のリスク以外にも問題が多い・・・と、労働問題に付いて発信するNPO法人POSSE事務局長で社会福祉士の渡辺寛人氏は指摘する。
諸外国の対策との比較等から見る、日本の緊急経済対策の問題点と課題とは? 渡辺氏がハフポスト日本版に寄稿した〜
NPO法人POSSE事務局長・社会福祉士の渡辺寛人氏
政府は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を発表。新型コロナウイルスに依る所得の減少が生じて居る場合には、1世帯当たり30万円を支給する事で一致した。とは言え、一律に現金が支給される訳では無い。現金を受け取る為には、自ら新型コロナの影響依って収入が減った事を〔自己申告〕し無ければ為ら無い。
未だ具体的な方法が確定して居る訳では無いが、現段階で示されて居る情報から〔自己申告制〕の問題点を整理しながら、この案が〔新型コロナ禍対策〕と云う観点から目的を見失って居る事を指摘したいと思う。そして日本で求められる対策も考えて行きたい。
「自己申告制」により起きる問題点
新型コロナウイルスに依る所得の減少対策として、1世帯当たり30万円の支給を自己申告制にする事に依って、具体的にどの様な問題が生じる事に為るだろうか。同じく、自己申告に依って運用されて居る生活保護行政の窓口で起きて居る事を参考に問題点を整理して行こう。
現在想定されて居る新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策としての〔現金支給〕と同様に、生活保護制度の利用は自己申告制を執って居る。申請に基づいて資産調査(収入・資産)が行われ、条件を満たして居れば受給が決定される。
生活保護では〔不正受給〕を排する為に、世帯の収入・資産の状況が判る書類提出・預金通帳のチェック・親族への扶養照会・家庭訪問による調査等が行われて居る。尚、生活保護の〔不正受給〕の割合は金額ベースで0.4%程度であり、一般的なイメージに比べて極めて少ない。
今回の現金支給が自己申告制の場合は、生活保護制度程厳格な調査には為ら無いと予想されるが〔虚偽申告〕を排する為に或る程度の調査は行われる事に為るだろう。
問題点1 行政の窓口業務負担が増大
行政側から見れば、こうした調査を行う為には大変な労力を割かれる事に為る。仮に扶養照会や自宅訪問は行われ無いとしても、資料を精査する業務だけでも労力は膨大に為る事が予想される。又家計状況と云うセンシティブな内容に踏み込む為、申請者との軋轢が生じ易く、職員に掛かるストレスも大きい。
住民福祉を担うべき行政職員のリソースが不毛に磨耗させられてしまう事で、本来の業務が圧迫され、二次的な被害が生じる可能性も有るだろう。
問題点2 申請に掛かる労力が排除を生む
申請者から見れば、書類を用意するだけでも大変だ。自らの所得の低下を証明する為の資料を得る為に、雇用先や契約先への問い合わせをし無ければ為ら無いだろう。企業にも証明の事務作業が生じる。そして、本当に困って居るのかを調査する為に、行政に依って申請資料を精査され、家計状況に付いて質問される。こうした遣り取りは屡々屈辱を伴う事がある。
申請に必要な書類を沢山書かされる事が面倒で、現金支給資格が有る世帯・実際に支給が必要な世帯が申請する事を諦めてしまう可能性も出て来るだろう。又、高齢者や障害者・外国人・子供の世話をし無ければ為ら無いシングルマザー等は書類を用意する事自体大変な作業である。サポートして呉れる人が身近に居なければ、申請自体を諦めてしまう可能性も高い。この様に〔不正を排除〕しようとすれば、必要な人に届か無い仕組みに為ってしまうのである。
問題点3 感染拡大のリスク
更に、新型コロナの感染拡大が生じて居るにも関わらず、自己申告制にする事で、申請者が窓口に殺到すると云う事態が容易に想像出来る。コレが今回の対策の最も不合理な点である。窓口業務を担う職員は元より、申請会場全体がクラスターに為り兼ねず、本末転倒と云う他無い。
ソモソモ何の為の現金支給なのだろうか? 政府の現行案は〔本当に必要な人〕を選別し〔虚偽申告〕を防止する事に重点を置き過ぎて、本来の目的を見失ってしまって居る様に思える。
諸外国では新型コロナに伴う緊急経済対策として 一律給付や休業補償を行って居る
1 一律〔現金支給〕を行って居る国 韓国・香港・アメリカ
韓国・香港・アメリカでは日本と同様〔現金支給〕を対策として打ち出して居る。韓国では全世帯の内所得下位70%に対して、世帯数に応じて一律で最大約9万円が支給される。香港では18歳以上の永住権を持つ住民1人当たりを対象に約14万円が支給される。
アメリカでは年収7万5000ドル・約825万円以下の大人1人に付き現金1200ドル・約13万円、子供1人に付き500ドル・約5万5000円を直接支給する・・・この様に〔現金支給〕を行う国では、出来るだけ迅速に支給を開始する為に、高所得者への制限は有るものの、対象を選別せず〔一律〕に実施する事を決めて居る。
コロナによる経済的な影響を緩和しようとするものであるから、現金支給に依る効果はさて置き、可能な限り迅速に支給すると云う観点からは合理的と言えよう。少なくとも日本の様に〔選別〕によって生じる無駄は生じ辛い。
2 休業補償と云う形での対応 ヨーロッパ
ヨーロッパでは、休業補償を行う事に依って労働者が家に留まり、感染拡大を防ぐと云う戦略が執られている。
例えばイギリスでは、全てのレストランやパブ・スポーツジム等を閉鎖する事を決定し、企業の規模を問わず休業せざるを得無く為った従業員の賃金の8割を保障する・・・最大約33万円。
フランスでも休業する労働者の賃金を100%補償し、小規模事業者やフリーランスにも第1弾として1500ユーロ・約18万円を支出する。ドイツも自営業者等に3カ月で最大9000ユーロ・約108万円を保障するとして居る。不要不急の労働を停止させ感染リスクを抑えつつ、コロナ危機後を見据えて雇用を継続して行こうと云う狙いが明確だ。
今後日本で求められる対応とは?
以上を踏まえれば、日本で行おうとして居る〔自己申告制〕に依る支給世帯の選別は何のメリットも無いと云えるだろう。それ処か行政、及び申告者の大量の手間を生み出し、感染リスクを高める可能性すらある。
〔現金支給〕を行うのであれば、或る程度の所得制限は設けるにしても〔一律に支給〕するべきだろうと私個人は考えて居る。感染拡大が危ぶまれ外出自粛の要請を呼び掛けて居る最中で、窓口へ申請をする等余りにも不合理だ。支給対象世帯の選別に依って生じるコストは出来るだけ無くすべきである。
但し〔一律現金支給〕を行ったアメリカでは、リーマンショックを超える大量の失業者が発生して居る。一時的に現金支給を行ったとしても、失業して収入の見通しが無く為ってしまえば貧困は拡大して行く事に為る。こうした現状を踏まえれば、ヨーロッパの様に休業補償をして雇用を守って行く事の方が、今の日本に執って合理的で有る様に思える。又現金支給がどの程度の効果が有るかに付いてもモッと検討が必要だ。
又、新型コロナによる影響から生活を守って行くと云う観点から考えると、一時的な現金支給だけでは不十分だろう。生活の基礎的な支出を減らして行く仕組みも考えて行く必要がある。
何より重要なのは住宅だ。スペインでは家賃滞納者に対する立ち退き要求を禁止する事が発表された。イグレシアス副首相は「住居は人々がウイルスと戦う塹壕(ざんごう)だ」と表明して居る。
生活を守り、新型コロナの脅威から身を守る為には、安心して過ごせる〔家〕が必要だ。そしてソコで生活を送り続ける為にも水道・電気・ガス等のライフラインを維持する事が求められる。こうした費用の支払いを猶予・減免・免除して行く為の仕組みを整えて行く事も有効だろう。
この危機的状況の中で不毛な〔不正者〕探しをして居る猶予は無い。危機は平時から弱い立場に有る人達に最も苛烈に襲い罹って来る。黙って居ても真面な対応は行われ無い。生活を保障する為の対策を要求して行か無ければ為ら無い。
文・渡辺寛人 @Hiroto_1988 NPO法人POSSE事務局長 社会福祉士として労働・生活相談に関わって居ます 雑誌POSSE編集長もVol.37~ 東京大学大学院総合文化研究科在籍 専門は社会政策/福祉社会学 共著『闘わなければ社会は壊れる』(岩波書店)1988年生まれ 発信媒体 ハフポスト日本版 東京wilog.org/Hiroto_1988
ハフポスト日本版 編集 榊原すずみ 以上