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2020年04月10日
一体何だったのか「緊急事態宣言」 対策失敗でも責任取る積り無い安倍首相
一体何だったのか「緊急事態宣言」
対策失敗でも 責任取る積り無い安倍首相
〜47NEWS 4/10(金) 7:32配信〜
緊急事態宣言後の安倍首相の記者会見がテレビに映し出される中、仕込みを続ける飲食店の店主 「今週一杯は営業を続けたい」と話した 7日午後7時3分 東京・新橋
〜新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、安倍晋三首相が7日に発令した緊急事態宣言。本来なら大きな局面転換の筈である。だが、結果として宣言の発令後も多くの人々が出勤等の為に外出し、多くの店も営業を続けざるを得無い状況に為って居る。
それ処か、宣言から3日を経た現在も、休業補償を要請する店舗や施設等の範囲すら分から無い。「決められ無い政治」も極まれりである〜
ジャーナリスト 尾中香尚里
衆院議運委で答弁する安倍首相 右端は西村経済再生相 7日午後
国民の痛み和らげる「補償」を否定
緊急事態宣言とは一体何だったのか。そんな疑問がわいて来る。感染拡大の防止に向け、本気で国民の行動変容が必要だと首相が云うなら、先ず「十分な補償に依って国民の生活を守り切る」事を確りと示した上で、外出自粛や休業を要請し無ければ為ら無かった。処が首相のした事は、逆に国会質疑や記者会見で「補償を行わ無い」方針を明確に伝える事だった。
コレで国民の行動変容を促せる訳が無い。それ処か、このママでは感染拡大を抑えられ無いママ、苛立つ首相が更なる強制力を求めて憲法改正等「不要不急」の政治案件に傾き、コロナ対策が更に置き去りにされる、と云う最悪の展開に為り兼ね無い。
今回の緊急事態宣言は、憲法改正のテーマに挙げられる「緊急事態条項」とは全く異なり、現行の日本国憲法に依る制約を受けて居る。その発令は、首相が国民に一方的に何かを求めるだけのもので有っては為ら無い。宣言発令の最大の意義は、感染拡大を食い止める為「全ての責任を持つ」と、首相が国民に誓う事だ。
緊急事態を宣言する安倍首相のテレビを見詰める居酒屋の店長 宣言を受け約1カ月間の休業を決めた 7日午後 福岡市中央区
痛みを伴う協力を国民に求め無ければ為ら無い。しかし、その痛みを可能な限り和らげる責任は、自らが引き受ける。首相はその事を誠心誠意・全身全霊を賭けて国民に訴え無ければ為ら無かった。痛みを和らげる為に最低限必要なのが「補償」である。補償に依って将来への安心感が得られれば、様々な私権制限に対する国民の協力が得易く為り、感染拡大の防止に繋がる筈だ。
処が、安倍首相は宣言発令に先立つ7日の衆参の議院運営委員会の質疑で「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償する事は現実的では無い」と答弁した。寧ろ「補償を行わ無い」メッセージを強く打ち出してしまったのだ。
「感染症対策」=「経済対策」なのか?
与野党問わず多くの質問者が補償に付いて尋ねたが、答弁は毎回、見事に同じ表現。官僚の答弁書を只読んで居るだけだった。補償が難しいなら難しい為りに、多少なりとも苦渋を滲ませる表現や表情の一つも有れば未だ良かったのだが、全く無機質な答弁が壊れたテープレコーダーの様に繰り返された。
此処で問題にしたいのは、補償を否定した事自体では無い。その「理由」である。答弁で首相はこう言って居た。
「直接の自粛要請の対象と為って居ない分野に於いても、売り上げや発注の減に依って甚大な影響が生じて居る事も勘案すると、政府として様々な事業活動の中で発生する民間事業者や個人の方々の個別の損失を直接補償する事は現実的で無い」
この答弁から伺えるのは、首相は「休業補償」を「経済への悪影響を防ぐ為の対策」と考えて居り「感染症対策として見て居ない」と云う事だ。
「経済対策と感染症対策」は明確に違う。東京電力福島第1原発事故で「原子力緊急事態宣言」を発令した経験を持つ菅直人元首相が、8日のブログでその点を指摘して居る。以下に引用したい。
・・・例えば夜、国民が盛り場で酒を飲む事を辞めさせる為には、国民に「店に行か無い様に」と訴えるより、店自身に一時休業して貰う方がより確実です。こうした店に、休業に伴う減収分の補償を確りと約束した上で休業を要請すれば、店側も安心して従う筈です。
総理は7日の国会質疑で「民間事業者や個人の方々の個別の損失を直接補償する事は現実的では無い」と繰り返し答弁しました。理由は、経済的な影響は休業を直接要請する店だけで無く、ソコに材料を卸して居る業者にも及ぶ為、店だけを休業補償する事は出来無い、と云う事のようです。
しかし、実際に人と人が接触する場所はお店です。お店に休業して貰えば、人と人の接触は確実に減り、感染を減らす事が出来る筈です。補償はその為に行うべきなのです・・・
居酒屋に休業要請と補償が必要な理由
首相は感染拡大の防止に向け「人と人との接触を8割削減する」必要が有る事を訴えた。そんな事を国民の努力だけに求めても無理だ。先ず国として「人と人とが接触する場を出来るだけ作らせ無い」事に全力を挙げ無ければ為ら無い。
例えば国民に「飲み会を避けて欲しい」のなら、国民に「飲み会は辞めて」と言うだけで無く、国として「飲み会を行う場所を塞ぐ」為に、居酒屋に一時休業を求めるべきなのだ。
もしそう為れば、それは居酒屋に対する大きな私権制限である。居酒屋の経営は壊滅的な打撃を受ける。だから、首相は十分に言葉を尽くして居酒屋側に休業への協力を求めつつ、同時に十分な補償を約束し、居酒屋が自発的に休業に協力し易い状況を作る事が肝要なのだ。
休業を求める期間を出来る限り短くし、その間に感染拡大を抑止出来る様最大限の力を尽くす事は言う迄も無い。居酒屋への休業補償が「経済対策」では無く「感染症対策」で有る事・・・即ち「人と人との接触の場を塞ぎ、感染拡大を防ぐ」と云う目的を達成する為に補償が必要なのだ、と云う事を明確に理解して居れば「居酒屋の関連業界に補償し無い事との不公平さ」を気にした答弁は出て来ないだろう。
勿論、苦境に立つ関連業界を救う為の経済対策は別途行うべきだ。しかし、アノ首相答弁は、政権が施策の目的とその優先順位を理解出来て居ない事を露呈したと云う点で、大きな不安を抱かせるものだった。
コノ問題に限ら無いが、首相は結局、今回のコロナ問題を経済問題としか考えて居ない気がして為ら無い。発想の起点がイチイチ「国民の生命と健康を守る」事では無く「景気の悪化を防ぐ」事に在るのだ。だから、事業規模108兆円の緊急経済対策に、コロナ収束後の観光や「イベントのキャンペーン費用」が盛り込まれ、その総額が国民への現金給付の規模より大きかったり「お魚券」「お肉券」等の消費喚起策が取り沙汰されたりする。
そう言えば、西村康稔経済再生担当相は8日、緊急事態宣言の対象7都府県知事とのテレビ会議で「休業要請の2週間程度見送り」を打診したとの報道も流れた。
この件に付いては菅義偉官房長官が9日の記者会見で「そうした事実は承知して居ない」と否定したが、こうした報道が流れる事自体、政権がコロナ対策を「景気対策」と考えて居る事の証左と言えるし、政府の発信の混乱は「政権の意思決定過程がどう為って居るのか」と云う別の不安を抱かせる。只でさえ不安な多くの業者を、更に混乱に陥れて居る。こんな事で、首相が唄う「2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせる」事が、本当に出来るのか。極めて心許無い。
この有事に、憲法改正の活発な議論?
今懸念して居るのは、こうした政権の対応の拙さに依って、結果として感染拡大を防げ無かった時、首相がどう云う態度に出るかである。
安倍政権がコロナ問題でコンなにも腰の曳けた対応しか出来無いので有れば、恐らく2週間で感染拡大を食い止めるのは難しいだろう。政治決断に依ってコレだけ国民に多くの負担を強いて置いて、感染拡大防止に失敗したので有れば、当然政治責任を負うべき筈である。だが、安倍首相は7日の記者会見で「私が責任を取れば好いと云うものでは無い」と言い放った。
この発言だけでも衝撃的だったが、筆者が危機感を抱くのはその後である。首相が自らの政治責任を取る事無くその座に居座った後に「緊急事態宣言には罰則規定が無いから国民の外出を止められ無かった」等と言って、自分達の無策に依る結果を法律に転嫁し、それを改憲に依る更なる「強権」獲得への理由付けにし兼ね無いと云う事だ。
その兆候は既に在る。記者会見に先立つ衆院議院運営委員会、安倍首相は、憲法改正による緊急事態条項の導入に付いて質問した日本維新の会の遠藤敬氏に対し「新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会の場で、与野党の枠を超えた活発な議論を期待したい」と答えたのだ。
少無くともこうした事は、感染拡大を防ぐ為に「もうこれ以上の手は無い」と自他共に認めるだけのアラユル手立てを尽くす迄、どんな事が有っても決して口にすべきでは無い。ソモソモ憲法改正と云った大きなテーマの議論は、最低でも「平時」に行うべき事だ。自ら緊急事態宣言を出して居る様な「有事」の今、ドサクサに紛れて議論すべき事では決して無い。
今は新型コロナウイルスの感染拡大防止に全力を注ぐべき時だ。緊急事態宣言を含め、現行法で政権が現在手にして居る「道具」を十分に使い切って、アラユル対策を行うべき時だ。それをし無い内に「道具が悪い」として更に強力な「武器」を求めるのは、単に政権の能力不足を棚に上げて居るだけだ。そのことを強く自覚して欲しい。
ジャーナリスト 尾中香尚里 以上
池田清彦氏 「悪魔の様な安倍政権」 今は夢では無くて現実
〜デイリースポーツ 4/10(金) 22:09配信〜
池田清彦氏
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」(水曜、後9・00)に出演する生物学者の池田清彦氏が9日、ツイッターに投稿。安倍晋三首相が過つて「悪夢の民主党政権」と、扱き下ろした事を引用する様に「悪魔の安倍政権」と皮肉った。
池田氏は「悪夢の様な民主党と、鬼の首を取った様に叫んで居ましたが、悪夢は未だ夢ですから可愛いもんです。今は夢では無くて現実ですからね。悪魔の様な安倍政権」とツイートした。
池田氏は10日のツイッターでは「中国と韓国は峠を越しました。欧州は今ピークでしょうか。アメリカはこれから暫く悲惨な日々が続くでしょう。それで日本はサッパリ読めません。感染者数・死者数のデータが全く信用出来無いので、予測のしようが有りません」と政府の対応が不足して居る事を指摘した。
以上
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「遅過ぎる緊急事態宣言・・・」一番恐ろしいのはコロナじゃ無くて安倍晋三
「遅過ぎる緊急事態宣言・・・」
一番恐ろしいのはコロナじゃ無くて安倍晋三
〜プレジデントオンライン 麹町 文子 4/10(金) 9:15配信〜
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を発令し、記者会見する安倍晋三首相 2020年4月7日 首相官邸 写真 時事通信フォト
安倍首相が発令に躊躇し捲くったのは何故なのか
新型コロナウイルスが世界中で猛威を奮い、主要国が迅速で大規模な危機対応策を講じる中、安倍晋三首相が要約4月7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく初の「緊急事態宣言」を発令した。
今年1月に国内で感染者が確認されてから3カ月後の「決断」は、国民の不安を充満させ、同盟国の米国からも「帰国警報」が出される始末と為った。感染拡大を受けて東京都や大阪府の知事等が要請しても、直近の世論調査で発令を求める人が8割近くに上っても、安倍政権が緊急事態宣言の発令を躊躇し続けた背景には何が有るのか。
「我々は戦争状態に在る」(フランスのマクロン大統領)「自分は戦時の大統領。戦争には打ち勝た無ければ為ら無い」(米国のトランプ大統領)
主要国トップが相次いで「戦時」に在る事を強調し、外出制限等強硬な対策を打ち出したのは3月中旬。大規模な経済対策や選挙の延期、産業の保護等を矢継ぎ早に決めて行ったのとは対照的に、日本政府の対応は余りに遅かった。
長らく「ギリギリ持ち応えて居る状況」だった
中国・武漢を震源とする感染者は国内で1月中旬から確認されて居たが、政府の専門家会議は2月16日迄開催されず・感染が拡大して居た中国と韓国からの入国制限強化は3月5日・特措法の施行は3月14日迄為され無かった。後手に回って来た政府の対応には首相の支持層で在る保守派の評価も厳しく、大阪府の吉村洋文知事らは「国が『瀬戸際』と云う認識で有れば(緊急事態宣言を)出すべきだ。増え始めてからでは遅い」と警鐘を鳴らして来た。
だが、安倍首相の危機意識は薄く、4月初めの段階でも「全国的且つ急速な蔓延と云う状況には至って居らず、ギリギリ持ち応えて居る状況」と変わら無かった。
各国のリーダーが「戦時」と捉えて国民に協力を呼び掛ける影響は大きく、それが感染拡大防止に有効なのは言うまでも無い。では、何故緊急事態宣言は遅かったのか。
4月7日の記者会見で「判断のタイミングが遅過ぎる、遅いと云う批判が有る」と指摘された安倍首相はこの様に説明した。「私権を制限するから慎重に出すべきだと云う議論が随分在った。最大限の緊張感を持って事態を分析して来た」だが、与党内の議論も経無いまま、緊迫した状況でも唐突に「布マスク1世帯当たり2枚配布する」と発表した後のリーダーの言葉を額面通りに受け取る向きは少ない。
発令したらアベノミクスの果実が吹っ飛んでしまう
安倍政権が緊急事態宣言の発令を躊躇した理由の1つは、日本経済への打撃だ。感染拡大地域は人口や企業が集まる東京都や大阪府・福岡県等大都市であり、対象と為った7都府県の国内総生産・GDPは日本全体の半分近い約260兆円に上る。
麻生太郎財務相が率いる財務省・経済産業省等の慎重論は強く、ソコには政権に近い民間企業からの悲鳴も加わった。2012年末に政権奪還を果たし、円安・株高を誘引するアベノミクスで景気を浮揚させて来た安倍政権の果実が今回の事態で吹き飛んでしまうのではないか・・・そう逡巡した政権中枢の慎重論は4月に入るまで根強かった。
与野党から要望が相次いだ経済的打撃を受けて居る事業者への「補償」に付いても、政府内では「そんな事をしたら大変に為る。絶対にダメだ」と冷淡だった。
4月7日の記者会見で「日本経済は戦後最大の危機」に在ると数日前の慎重姿勢から一転した安倍首相だが、この日の議院運営委員会でも共産党の小池晃書記局長から自粛要請に伴い生じる損失への補償を一体で行う事の必要性を問われたものの「個別の損失を直接補償する事は現実的では無い」と述べるに留めて居る。
「過去最大の経済対策」は実態に合わず
その一方で、首相は同じ会見ではバーやナイトクラブ・カラオケ・ライブハウスを名指しで出入りを控える様要請した。厚生労働省のクラスター対策班の分析・進言を受けて、小池百合子都知事が出入り自粛を求めたものと同じだ。
この時、都知事に対しては「営業が出来無く為る」との批判が政府内やワイドショー等で噴出したが、東京都がこうした店舗に「感染拡大防止協力金」と云う形で支援する構えを見せて居るのに対して、頑なに補償を否定する安倍首相が同じ要請をすると云う矛盾も生じて居る。
ソモソモ、特措法は休業を求める事が出来るものの、それによる損害の「補償」に付いての記載が無い欠陥法と言える。「過去最大の経済対策」(麻生財務相)と云う緊急経済対策に盛り込まれた「1世帯当たり30万円の給付」や「中小企業に最大200万円・個人事業主に最大100万円」等の支援策は、休業等で大幅に収入や売り上げが減った世帯や事業者が対象で、その条件が実態に合って居ないとの声は多い。
自民党担当の全国紙記者はこう語る。「与党内からは『世帯では無く、一人一人に給付すべきだ』『非常事態だから支援策を欧米の様に大規模にすべきだ』との声が相次いだが、政府主導で反対論を押し切った。中途半端な支援策で国難を乗り越えられるか不安視する議員は少なく無い」
北海道の「前例」が、安倍に甘えを与えてしまった
緊急事態宣言の発令が遅れた2つ目の理由は、北海道の「前例」だ。北海道の鈴木直道知事は急速な感染拡大の兆候が有った2月28日、法的根拠に基づか無い「緊急事態宣言」を発表し、政府の専門家会議が「一定の効果が有った」と指摘した。鈴木知事は予定通り3月19日に終了宣言し、4月上旬迄は北海道内の感染者数の増加は1日数人程度に為って居る。
特措法に基づか無い「緊急事態宣言」で鈴木知事が呼び掛けたのは、週末の外出自粛や大規模イベントの開催自粛等だが「感染拡大のペースが北海道内で落ち着いた事を見た菅官房長官はこうした取り組みを全国で実施すれば『首相が特措法に基づく緊急事態宣言迄し無くても大丈夫だ』と高を括って居た」(民放記者)とされる。
だが「ヒト・モノ」が集積し、成田空港や羽田空港・関西国際空港を抱えて海外からの帰国者対応も余儀無くされて居る首都圏や関西圏と、北海道での対応を同一視出来るのかは疑問だ。
安倍首相は3月10日の政府対策本部で「全国の大規模イベント自粛を今後10日間程度継続」する様要請したが、3月19日の北海道による終了宣言と重なる「期限」設定は、3月20日からの3連休に「国民に緩みが生じ『もう期限は過ぎたから大丈夫だ』と外出した人々を生んだ」(前出の全国紙記者)との指摘がある。
国家としての責任も気概も感じ無い
3連休前に、感染拡大エリアの首長が外出自粛を呼び掛け無かった事を批判する評論家やテレビコメンテーターも居るが、大阪⇔兵庫間の往来自粛要請が出されて居た両府県も含め、3月末から4月初めの感染者が増加して居る事を考えれば、この時期に「緩み」が生じた傾向は全国的なものと言える。
「この緊急事態を1カ月で脱出する為には人と人との接触を7割から8割削減する事が前提だ」「極力8割削減する事が出来れば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせる事が出来る」
4月8日の記者会見でこう力説した安倍首相だが、緊急事態宣言発令と同時に出された国の方針では「外出自粛要請」を先に行い、その効果を見極めた上で「事業の休業要請」を行うと通知。
自治体に依っては5月6日迄の1カ月の内、半分の期間を「様子見」に充ててしまう処も有る。首相官邸担当の全国紙政治部記者はこう呆れる。 「『ショボくて遅い』対策ばかりで、全て国民や事業者・自治体任せ。欧米のリーダーの様に、国家としての責任も気概も感じ無い」
政経ジャーナリスト 麹町 文子 以上
「政府をリアルタイムで批判すべき」緊急事態と法律、憲法学者の木村草太さんに聞く
「政府をリアルタイムで批判すべき」
緊急事態と法律 憲法学者の木村草太さんに聞く
〜時事通信 2020年4月10日 発信〜
〜何故日本ではロックダウンが出来無いのか・「緊急事態宣言」に至る政府のプロセスの問題点は何だったのか・そして、憲法改正の「緊急事態条項」の議論を進め様とする事の危うさとは何なのか〜
憲法学者の木村草太氏
〜新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された。日本では現行法下で「ロックダウン」が出来無い一方で、そうした対処を求める声も少なくは無い。内閣に強い権限を与える憲法の「緊急事態条項」を求める声も、依然として挙がって居る。
こうした未曾有の危機と法律の問題を、私達はどう考えるべきなのか。憲法学者で都立大学教授の木村草太さんに話を聞いた〜
Q 緊急事態宣言が出されましたが、外出自粛や施設の使用制限は要請ベースに止まります。何故日本では「ロックダウン」が出来無いのでしょう?既存の法解釈では難しいのでしょうか。
今回、緊急事態宣言が出される根拠と為って居る新型インフルエンザ等対策特別措置法は、2009年の新型インフルエンザ流行を受けての措置法です。コレは、当時流行して居た新型インフルエンザウイルスの特性を前提に作られた法律です。
本来、新型コロナウイルスにも特措法はそのママ適用出来た筈です。しかし、政府は、今回の宣言に向けて、3月に、新型コロナウイルスが適用対象で有る事を明示する為に特措法を改正しました。只、改正内容は、適用対象で有る事を明確化しただけで、特措法の内容が新型コロナウイルスの特性に適したものに変更された訳ではありません。
新型コロナウイルスは、潜伏期間が長い・感染しても無症状で有る割合が極めて高い・症状の格差が大きい等・・・新型インフルエンザとは異なる特色を持って居ます。新型インフルエンザへの対応を想定した特措法の内容では、新型コロナウイルスに上手く対応出来るとは限りません。
現在の新型インフルエンザ等特措法に依る対応は、飽く迄応急措置の様なものです。早急に、新型コロナウイルスの特性を踏まえた特措法を整備し無ければ、感染拡大を防止するのに必要な規制も国民の生活を支える補償も十分には出来無いでしょう。
又、日本には感染症法・・・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律と云う法律も有りますが、これも、基本的に従来からある(コレラや結核等)有害な感染症への対応を想定して作られて居ます。その為、新型コロナウイルスへの対処では、上手く機能しない面があるのは当然でしょう。
そのほか、外出規制の根拠として警察法等を検討する人も居る様ですが、条文上、感染症拡大防止の目的に利用すると解釈するのは困難です。無理に条文を捻じ曲げて解釈すれば、市民や司法から、違法・無効と批判されます。ウイルスの特性を踏まえた特措法をキチンと作る必要があるのではないでしょうか。
「科学的根拠と人権の保障をセットで」
Q 私権を制限するロックダウンの様な措置を含んだ法体系が必要なのでしょうか。
強権的な措置を準備する事に付いて、法学者の間には、慎重な意見もあります。只、私の意見としては、感染症の専門家が十分な科学的根拠に基づき、今以上に強力な外出制限が必要だと判断した時に、それが出来る様に法律を整備する必要はあると思います。
今回のコロナウイルスに関して言うならば、武漢で都市封鎖が行われた時点で、日本でも同様の措置が必要に為る可能性を考慮して、法案を準備して置くべきだったと考えて居ます。その時点で、より強力な規制や、外出制限中の生活保障・事業補償を備えた特措法が出来て居たら、現局面での対応は、よりスムーズに為ったのではないでしょうか。
Q 仮に特措法を作るのであれば、どの様な法整備が必要だとお考えですか?
ポイントは私権を制限する措置の科学的根拠と人権の保障をセットで考える事です。
ハンセン病の隔離政策に対して違憲判決が相次いで居る事からも分かる通り、らい予防法(1996年廃止)に基づく日本の感染症対策措置は、科学的根拠を欠いた上人権への配慮が不足し差別的な隔離が長年に渡って行われました。こうした事が繰り返され無い様、強力な措置を執る場合には、人権を尊重するのは勿論、十分な科学的根拠を十分に検討する必要があります。
又、外出制限に伴う生活補償の方法への配慮も必要です。こうした事態では、弱い立場に有る人程、大きな打撃を受けてしまいます。子供の教育機会の担保・DVや虐待に対する充実した対応・ホームレスの方々が安心して住める場所等・・・弱い立場の人達への配慮が出来て居るかにも、注目する必要があるのではないでしょうか。
緊急事態条項議論は「火事場泥棒」
Q これ迄の政府の対応には、安倍首相に依る一斉休校要請等、法律に基づか無いものもありました。
2月に安倍首相が休校要請をしましたが、キチンとした法的根拠が無い事が批判されました。特措法では、休校の要請は、政府対策本部の緊急事態宣言を受けて、都道府県知事が行う事に為って居ます。休校措置をとるか否かは、飽く迄も各知事の判断すべき事です。
特措法上は、ソモソモ緊急事態宣言が出ないと、知事は要請が出せ無いと云う立て付けに為って居るので、法的根拠が無い宣言や要請が積み重なってしまったのだと思います。例えば、北海道では知事が独自に緊急事態宣言を出し、外出の自粛を要請しました。その後、東京都等でも、都知事が自ら自粛要請を出して居ます。これ等の要請の法的根拠は判然としません。そうすると、特措法条の緊急事態宣言を、政府がモッと早く出すべきだったと言えるでしょう。
Q 安倍首相は4月7日、衆院議会運営委員会で緊急事態宣言に付いて報告した際、憲法改正による緊急事態条項の導入に付いて国会の議論を改めて促しました。一方、改憲に反対しつつ新型コロナでは強い対応を求める事を批判する声もあります。
緊急事態と云う言葉で連想ゲームをするのは正しく無い。新型インフルエンザ等特措法の「緊急事態宣言」に乗じて、憲法上の「緊急事態条項」の議論を進め様とするのは火事場泥棒です。両者は全く別物です。
2012年の自民党改憲草案で示された緊急事態条項は、政府が緊急事態宣言を出すと、国会をㇲッ飛ばして立法権をも行使出来る「内閣独裁条項」です。諸外国と比べても、歴史的に見ても、余りにも強権的過ぎる内容に為って居ます。
一方で、新型コロナウイルスへの対応として、早期の緊急事態宣言やロックアウトの必要性を求める人も多かったですが、コレは憲法上の「内閣独裁条項」では有りません。新型コロナウイルスの感染拡大を防止する為に、罰則付きの外出制限等、強制措置を含む様な立法や対策を求めて居た訳です。
仮に、現在の特措法に比べ、より強い活動制限を掛けるとしても、感染拡大を防止する為には、それだけの規制が必要で有るとの十分な科学的根拠が有れば、それを違憲と批判する人は少ない筈です。特措法の「緊急事態宣言」と、憲法上の「緊急事態条項」とは、全く違う事柄ですから、憲法改正案に反対しつつ(コロナ対策では)より強い措置を求めると云う事は何ら矛盾しません。
「一斉休校」の問題点
Q とは云え、内閣に強い権限を与えれば、より感染症時の対策等もスムーズに為るのではないでしょうか?
今回の新型コロナウイルスに関する1〜3月迄の経緯は、感染症対策に内閣独裁権を与える事が不適切で有ると云う事を実証して来たと云うプロセスだったと考えて居ます。スピーディーな決定が出来る権限が与えられて居ても、専門家と政府の密接且つ適切なコミュニケーションや手続きが無ければ、ソレは独裁判断に過ぎず、市民を混乱させるだけで適切な効果を生みません。
現在、自民党と公明党の与党で国会の過半数を持って居る訳ですから、新型コロナウイルス対策の法律を立法する事は十分に出来た筈。しかし、実際にはそれをし無かった。緊急事態宣言も出さ無かった。今回の対応のスピードが遅かったとしたら、憲法や法律の所為では無く、政府・与党が、危機のレベルを低く見積もって居た事が原因です。
思い出して欲しいのですが、政府・与党は、3月半ば迄「東京五輪を予定通り出来る」と云う程度の危機認識だった訳です。
Q 一斉休校はどうでしょうか?
2月末の一斉休校要請は先述の通り、根拠と為る条文が存在しませんでした。アノ要請自体は、内閣独裁権の発動の様なものとして観られるでしょう。しかも、アノ要請は、専門家への諮問無しに行われました。当然の事ながら正しい結果を生ま無かった。
アノ要請は、過剰・過少の両方の問題が有ったと思います。感染が広がって居らず、必ずしも休校措置が必要無い地域も在った、と云う点では過剰でした。一方で、大規模イベントを除けば、学校以外の施設や企業には要請は出されず、その面では過小だったと言えるでしょう。
更に、法的にも科学的にも根拠無く要請をした為に、途中で解除せざるをえ無く為りました。事態が終息せず、寧ろ感染が拡大する中で要請が解除された事で、人々の間に解禁ムードを生んでしまった。
必要なのは「丁寧な手続き」
Q 矢張り科学的根拠が大切なのですね
独裁権さえ与えれば、自ずと何とかなる・適切なスピードに為ると云うものでは有りません。今回の例からも判る様に、感染症の様な緊急事態に於いては、正しい科学的根拠と適切な法的根拠に依拠して判断を行う事が何よりも重要です。ソモソモ、内閣は感染症の専門家ではありません。
又、休校要請をするので有れば、医学的な専門家だけで無く学校教育の専門家への相談も必要でしょう。適切に相談して居れば、子供の教育を受ける権利を守る為の対策をもっと講じられたかも知れません。或いは、外出制限をするなら、例えばDVや虐待・ホームレス支援の専門家の話を聞きながら、人々の権利が守られる形での制限プログラムを組み立てないといけ無い。
2月の休校要請も、首相が緊急事態宣言を出して、各都道府県知事に休校要請の権限を与えた上で、専門家から「どの様な地域で休校要請が必要なのか」の基準を説明して貰う手続を踏んで居れば、景色は違って居たでしょう。
今求められて居るのは、専門家や当事者の声をㇲッ飛ばして独裁する事ではありません。寧ろ、適切に専門家や当事者の声を汲み取った、丁寧な手続き・プロセスの枠組みが必要に為るのです。
Q こうした緊急事態に於いて、政府の対応に付いて「批判をするな」と云う様な声も聞かれます。
政府が常に批判的検証の対象と為るのは当たり前です。リアルタイムでドンドン批判をして行く必要が有ると思って居ます。政府の活動に不適切だったりサボったりして居る事が有れば、国民は確りと表現の自由を行使して、批判すべき点は批判すべきでしょう。
そうした批判に適切に耳を傾ける事で、政府は説明責任を果たしより良い政策判断をしたり、情報公開に依って国民の信頼を得る事が出来ます。批判を抑圧すれば、政府が誤った判断をする可能性が高まり、国民の不信感が高まるだけでしょう。今回で云えば、法的根拠や専門家への相談・教育現場へのサポート無しに行われた一斉休校要請や、専門家に聞けばより有効な予算の使い方が出て来ると想定されるマスク2枚配布等は、批判されるべきだと考えて居ます。
今後も、そうした思い付き、独裁的な判断がされ無い様、どう云う判断とプロセスが為されて居るか、確りと検証して行くべきでは無いでしょうか。
木村草太 東京都立大学教授(憲法学専攻) 著書に『平等なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准教授の法学入門』『憲法の創造力』『憲法学再入門』『未完の憲法』『テレビが伝えない憲法の話』『憲法の条件』『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』『憲法という希望』『子どもの人権をまもるために』『社会をつくる「物語」の力』『ほとんど憲法』など
以上
ネットで簡単、テレビで話題の安心マイカーリース
「自粛ポリスに任せれば好い」安倍首相が責任回避の言葉を繰り返すワケ
「自粛ポリスに任せれば好い」
安倍首相が 責任回避の言葉を繰り返すワケ
〜プレジデントオンライン 4/10(金) 13:15配信 〜
〜4月7日、安倍晋三首相は7都府県に「緊急事態宣言」を出し記者会見を開いた。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「外出自粛を強く要請する一方、欧米のロックダウンとは違うとも強調し、どっちつかずだった。結局『政府や自分は責任を取ら無い』と言ったも同然だった」と云う〜
コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏
「緊急事態宣言」の安倍首相会見の狙いは「国民よ、忖度せよ」
安倍晋三首相が4月7日「緊急事態宣言」を7都府県に発出し、その理由を国民に語った。これ迄の記者会見に比べ、安倍首相は「伝える努力」をして居た。だが、ヤッパリ腑に落ち無い。何故なら、鬼気迫る危機感は無く、国民を励ます訳でも無く、連帯感を喚起させる訳でも無いからだ。
結局、日本のリーダーのコミュニケーションとは「通達」でしか無く、国民はその言葉の行間を読み、意図を忖度(そんたく)して、緊急事態宣言の安倍首相会見を採点し無ければ為ら無い。改めて、そう気付き落胆した。 「忖度させる力」をフル活用する安倍劇場の「深謀遠慮」を読み解いてみよう。
安倍首相は国民に、安心も希望も恐怖も与え無かった
日本で初めての「緊急事態宣言」を発令するに当たり、安倍首相はこれ迄とは異なり、幾つも工夫して居る様子が伺えた。先ずは視線だ。左右交互にプロンプターを見やり、原稿を読むスタイルは変わら無いが、前回迄のロボットの様な不自然さは無く、正面を見る回数がグッと増えた。
又「医療従事者や物流を守るトラック運転手の皆さん」に言及する等、現場の頑張りに触れると云う欧米のリーダーの演説スタイルを踏襲して居た。違和感の有ったマスクは外して居り、ビジュアルの印象も好く為って居た。
更には、1930年代の世界恐慌当時のアメリカ大統領、フランクリン・ルーズベルトの就任演説での言葉「私達が最も恐れるべきは恐怖、それ自体」を引用し、リーダーシップを印象付けて居た。
只、違和感も残った。国や企業のトップに依るスピーチやコミュニケーションの要諦は、聞き終わった後、聞き手にドンな「感情」を喚起し、その脳裏にドンな「メッセージ」を残すかである。今回、筆者にはそのドチラも残ら無かった。
前者の「感情」では、海外のリーダーは、励ます・鼓舞する・勇気付ける・危機感を煽る・・・と云った事を意識して話す。例えば、イギリスのエリザベス女王やドイツのアンゲラ・メルケル首相の演説は、聞く人の心を揺さぶる。
コミュニケーションで人を動かそうとするので有れば、それだけの言葉と熱量を発さ無ければ為ら無い。しかし、安倍首相の会見では、安心も希望も恐怖も感じ無い。感情の心電図はフラットのままだ。
モッと劇的に演出出来れば切迫感を伝えられた筈だが・・・
後者の「メッセージ」では、国民の受け止め方は色々有るだろう。だが、筆者としては「結局、何?」と云う事しか残ら無かった。敢えて意図して居るのかも知れないが、総じて表現が曖昧で歯切れが悪い。だから事態の深刻さが伝わって来ないし、「もう大丈夫」と云う安心感も無い。
切迫感を伝えたいのであれば「緊急事態宣言」をモッと劇的に演出出来た筈だ。処が、長々と前置きをした後に「先ほど諮問委員会のご賛同も得ましたので、特別措置法第32条に基づき緊急事態宣言を発出する事と致します。対象となる・・・」と事務的に言うだけだった。
スライドやフリップ(ボード)等を背に、言葉の間(ま)を十分に捕り、威厳を以て宣言するシーンを作り出せば、メディアはキッとその部分を切り取り繰り返す為、国民に印象付ける事が出来ただろう。
マドロッコシイ「外出し無い様要請すべきと考えます」
言葉は相変わらずマドロッコシかった。例えばこんなフレーズがあった。「生活の維持に必要な場合を除き、妄りに外出し無い様要請すべきと考えます」「外出自粛をお願いします」「3つの密を避ける行動を徹底して頂く様、改めてお願い致します」 有事の際は、コンな遠慮勝な表現は避け、こうストレートに言うべきだ。「外出し無い様要請します」「外出を自粛してください」「3つの密を避ける行動を執って苦ださい」
外出自粛を強く呼び掛け、再三「都市封鎖では無い」はズルい
何より戸惑うのは、外出自粛を呼び掛けながらも、そこ迄厳密に遣ら無くても好いんだ・・・とも聞こえた事だ。特に「都市封鎖では無い」と云う事が強調されていた。
「今回の緊急事態宣言は、海外で見られる様な都市封鎖・ロックダウンを行うものでは全く有りません。その事は明確に申し上げます。今後も電車やバス等の公共交通機関は運行されます。道路を封鎖する事等決して有りませんし、そうした必要も全く無いと云うのが専門家の皆さんの意見です」
執拗な迄に、そこ迄深刻なものでは無いのだと強調する。法的に強制力は無いと云う事を印象付け、パニックを防ぎたかったのかも知れない。だが、ここ迄言われると、余り厳しく無くても大丈夫なんだ・・・と奇妙な安心感を与えてしまう。安倍首相はこうも言って居た。
「専門家の皆さんの見解では、東京や大阪での感染リスクは、現状でも不要不急の外出を自粛して普通の生活を送って居る限り決して高く無い。封鎖を行った海外の都市とは全く状況が異なります」
我々は日々、アメリカやヨーロッパの惨状を見聞きし恐怖に怯えて居る。それにも関わらず安倍首相は「状況が全く異なる。だから、そこ迄過敏に為る必要は無い」と断言して居る様にも聞こえる。もし、この断言が真実であれば、我々は安心出来るが、筆者の周囲に安心して居る人はひとりも居ない。
政府は補償はせず企業や店舗に「自主的休業」させれば補償は要らない
そして、安倍首相は「不要不急の外出を辞めれば『普通』の生活を送って好い」とも言い切って居る。そこで思う。ハテ「不要不急」「普通」って何だろう。友達にも会えず学校にも行けずジムにも行けず、会社に行けず仕事を失い、入学式も卒業式も無く為った・・・それを普通と言われても困るのだ。詰り「Stopサイン」と「Goサイン」が入り交じって居る。だから、受け止める国民は混乱するしか無い。
経済を止める訳にはいか無いから、表現が曖昧に為らざるを得ない。ソンな「大人の事情」は理解出来る。しかし「中途半端」はドチラも殺す事には為ら無いだろうか。
今、緊急事態宣言を受け、国と都でどの施設を休業扱いにするのかで揉めて居る。そう遣ってモタモタして居る間に、休業対象では無い飲食店が「この状態では、商売は出来ない」と自主休業して居る。これは日本企業が「自主的な退職で有れば、退職金は払わ無いで済む」と社員に圧力を掛けてリストラする常套手段を想起させる。
曖昧に伝える事で、人にも企業にも店舗にも「自主的」に決めさせる。その結果、どう為ろうと国の責任は問われ無い。責任は全て国民にある。コノ会見の安倍首相の文言に、筆者はそんな意図が隠されて居るのでは無いかと疑いたく為る。
責任と云えば、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は「全ての責任は私に在る」と言い切ったが、今回の会見の質疑で安倍首相は「例えば最悪の事態に為った場合、私達が責任を取れば好いと云うものでは有りません」と述べて居る。
安倍首相は「自粛ポリス」の市民が自主的に街を見張る事を期待
会見では「人と人との接触機会を最低7割・極力8割削減」と強調したが、高齢の両親を抱えズッと籠り続けて居る筆者は「これ以上、どう遣って減らせるのか」と途方に暮れるしか無い。仕事でどうしても外出し無ければいけ無い人達も同じだろう。要するに「全て忖度して、解釈しなさい」と云う事なのだ。
「ナンて国だ」と打ち拉(ひし)がれたがフト思った。嫌、コレで、日本は何とか為るのかも知れない。我々日本人は、そう云うコミュニケーションに慣れて居るのだ。空気を読み、周りに迷惑を掛け無い様と常に人目を気にする。
江戸時代に、お互いを監視させる為に作られた「五人組」の様に「最低7割・極力8割削減」と云う集団目標を守る為に、市民の中に「自粛ポリス」が現れ、周囲の行動を自主的に見張り出すかも知れない。
ソモソモ日本人は我慢強い。自粛と我慢と自己責任と同調圧力・・・この4種の神器が揃えば、法的拘束力が無くても、又休業補償をし無くても、何とか国民の自助努力に依り感染防止を実現出来るのかも知れない。それコソが安倍首相の究極の狙いなのか。そんな風に妄想した後、急に恐ろしく為った。
現政権がそこ迄深読みし、全てを曖昧にして責任をブン投げて来たのでは無いかと思ったのだ。だとすれば、計算され尽くした狡猾過ぎる戦略である。
補償はしないで、只管外出自粛を要請する安倍首相のハラ
未曽有の危機に在って、これ間で筆者は「リーダーシップが大事だ、コミュニケーションが重要だ」と説き「こうした方が好い」と云う提言もして来た。その事を読者から「ダメ出しは簡単」「揚げ足取りだ」と非難される事も有った。
しかし、こうした命令では無く「自粛」要請に依って人々の行動を変え感染を止め様とするなら、頼みの綱と為るのは「コミュニケーション」で在る筈だ。最後は、言葉の力に頼るしか無い。だから、トップは一言一句に細心の配慮をする必要がある・・・筆者には、そんな信念があるから「安倍会見」を何時も批評し続けて居るのだ。
幾ら筆者が気張ってみても、この国で、トップにリーダーシップを求めても仕方が無いのかも知れない。キッチリと行間を読み忖度し、自主的に動いて呉れる国民が居るのだから。その驚異的な「忖度させる力」を持つリーダーの下で、我々は、只管自粛し奇跡が起きるのを待つしか無いのである。
動画 記者会見
岡本 純子(おかもと・じゅんこ)コミュニケーション・ストラテジスト 早稲田大学政治経済学部卒 英ケンブリッジ大学大学院国際関係学修士 元・米マサチューセッツ工科大学比較メディア学客員研究員 大学卒業後 読売新聞経済部記者・電通パブリックリレーションコンサルタントを経て 現在 株式会社グローコム代表取締役社長(http://glocomm.co.jp/) 企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化を支援するスペシャリストとして、グローバルな最先端のノウハウやスキルをもとにしたリーダーシップ人材育成・研修、企業PRのコンサルティングを手がける 1000人近い社長・企業幹部のプレゼンテーション・スピーチなどのコミュニケーションコーチングを手がけ「オジサン」観察に励む その経験をもとに「オジサン」の「コミュ力」改善や「孤独にならない生き方」探求をライフワークとして居る
コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子 以上
2020年04月09日
危機対応 リーダーが陥り勝ちな三つの落とし穴 国のコロナ対策から学ぶ「最悪」招く組織の悪弊
危機対応 リーダーが陥り勝ちな三つの落とし穴
国のコロナ対策から学ぶ「最悪」招く組織の悪弊
〜47NEWS 4/9(木) 7:02配信〜
新型コロナウイルス感染症の脅威が拡大する中、日本政府の危機対応は失敗では無いかとの批判が高まって居る。突然の公立学校への休校要請や緊急事態宣言への対応・休業補償対策の遅れや深刻なマスク不足等、安倍晋三首相のリーダーシップが問われて居る。
発表の唐突さや説明不足も有り不安と混乱が広がって居る。危機対応を専門として来た経験を踏まえ、新型コロナを例に取り、組織のリーダーが失敗し勝ちな三つのポイントを解説したい。
危機管理広報会社・エイレックス社長 江良俊郎氏
バッシングされる組織の姿勢
失敗し勝ちな一つ目は、初期段階で最悪の事態を想定せず必要な対策が取られ無い事だ。新型コロナウイルスの感染が国内で確認された当初は情報も少なく、致死率は低いとされて居た。国内の専門家や有識者・メディアを含めやや甘く見てしまった面は否定出来無いだろう。しかし初期段階で最悪の事態を想定して置く事は、危機対応に於いて最も重要で有る事を強調して置きたい。
緊急事態宣言後の記者会見を終えた安倍首相 右は菅官房長官 4月7日夜 首相官邸
企業の危機対応でも同様だ。企業内で発熱した社員がPCR検査で陽性と為り、感染が確認されたと仮定し、想定し得る最悪の事態を考えてみよう。例えばコンな具合だ・・・社内調査の結果、
@ 感染した社員は自粛を求められて居たのにプライベートで海外旅行に行き
A 帰国後、症状が出て居たのにライブハウスを訪れ
B その後、クラスター感染が発生し自社の社員を含め多くの人が感染
C その内何人かが死亡
D ネット上では既に企業名が特定されて居たのに当該企業は公表せず 風評被害と批判が拡大
E ビジネスや採用活動にも影響が出る・・・
最悪の事態を考えず、若しくは「そんな事は起き無いだろう」と考え「保健所が公表する必要が無いと言って居るから自ら公表し無くても云い」と構えて居ると、イザ明るみに出た時に社会からバッシングを受ける事に為る。
自分の生活圏に感染者が居るのか、感染はどれだけ広がって居るのかに付いて社会の関心は極めて高いからだ。
様々な角度から想定出来るリスクを洗い出し、十分な準備をして居れば不測の事態にも対応出来る。「悲観的に考えて、楽観的に行動する」これが危機対応の要諦である。最悪の事態を想定せず準備も出来て居ないと、その都度方針を協議する事に為り対応の遅れが生じてしまう。
一般の生活者も同じだ。「私だけは感染しない」「都市封鎖迄は起き無いだろう」では無く、感染した場合や都市閉鎖に陥った場合を考えて準備して置きたい。
日本と海外で違うリスク想定シナリオの描き方
外資系企業と国内大手企業の緊急対策会議に出席すると「今後の想定シナリオ」の描き方の違いに屡々気付く。日本企業では今後の対応に付いて様々な検討が為されるが「最悪のシナリオ」に付いては十分検討され無い事が多い。
現場担当者から「最悪の場合は・・」と云った意見が挙がっても「そんな事態に迄為ら無いだろう」「悲観的な事を考えて居ると思われたく無い」「何とか為る」と云う暗黙の了解が大勢を占める。東京電力福島第1原発事故を巡る国会事故調査委員会(国会事故調)は、事故は「明らかに人災」で有ると指摘し、上述した様な日本企業や組織の特性を問題視して居る。
一方、外資系企業の場合は、外国人を中心に最悪のシナリオを遠慮無く話題にし、緊急事態対応プランとしてマトメられる。
埋め込まれた言霊信仰
私はこの国民性から来る考え方・判断の違いの背景に、日本人特有の言霊信仰が有ると考える。日本人組織の特性をリーダーは理解して置きたい。不吉な事・悪い事は為るべく考え無い・・・言ったら本当にそう為ってしまいそうだから口にしない。実際、或る組織の対策会議で、経営幹部が「縁起でも無い事を口にするな。根拠は有るのか」と部下をイナス場面に出くわした事がある。
当事者同士では、言霊信仰はより強化されてしまう・・・同調圧力と言われるものだ。この様な中ではリーダーは思い切った策を決断出来無く為ってしまう。二つ目の好く有る失敗のポイントだ。
今回の感染症対応を巡り「大規模な策を取れば、社会や組織が大混乱する。ソンな事態に陥っても好いのか!」と云った議論が、貴方の属する組織で起き無かっただろうか。初期に大都市圏だけでも強力な感染症対策を始めて居たら、現在の様な大規模な感染拡大には至ら無かったとの指摘も有る。
平常時は「調整型」のリーダーでも、非常時は「大胆な決断・実行」が求められる。組織のトップには、どの様な結果に為っても結果責任を引き受ける覚悟が求められる。
求められる第三者の視点
前述の様に、福島の原発事故の背景として「日本の文化」「国民性」が指摘されて居る。同調圧力を排除し最悪の事態を想定するには、利害関係の少ない外部の専門家を交えて議論し、提言して貰う事はとても有効だと感じる。
処で、今回の新型コロナウイルスに対する政府の対応では「専門家会議」が設けられ、クラスター感染・オーバーシュート・爆発的な患者急増の可能性等の点でリスクシナリオを予測し何度も丁寧に説明して居た印象だ。求められて居た役割に対して大きな効果が在ったのだろう。
しかしながら「専門家会議」は感染症の専門家が多く、例えば、都市閉鎖の場合の社会の混乱と云った議論は余り為されて居ない様だ。日々の暮らしをどう維持するかと云った社会政策の専門家や教育現場の人達も入れるべきだったのではないか。
最悪のシナリオの議論に加え、社会・経済機能への影響を最小限に留める施策の準備が同時に必要と為って来るからだ。
軽視されるリスク・コミュニケーション
危機管理に於いてコミュニケーションは大変重要だ。しかし疎かにして失敗するケースが後を絶た無い。これが、三つ目のポイントだ。
組織のリーダーの間では、事件・事故、不祥事発覚等有事の際に必要と為るクライシス・コミュニケーション・危機管理広報の重要性は好く知られて居る。危機発生後にメディアを含むステークホルダーに対して情報提供し説明責任を果たさ無ければ存続さえ脅かされるからだ。非常時のコミュニケーションにはもう一つ「リスク・コミュニケーション」と云う考え方がある。一般生活者がリスクを正しく認識し、行政機関或いは企業等と情報共有する事が目的だ。
リスクとは不確実性である。従ってリスク・コミュニケーションでは、想定した「最悪のシナリオ」に至った場合、そのシナリオをコントロールする施策・準備の状況も伝え無ければ為ら無い。東京都は4月3日、政府が7日に緊急事態宣言を出すのに先立ち、宣言された場合の対応方針を説明した。
この様に事態が悪化したり、新たな問題が発生したりした際、どの様な対応を取る事に為って居るかを丁寧に伝える事で、市民の備えや安心感に繋がる。
政府発表に欠けて居たもの
政府の場合はどうだっただろうか。危機的状況に為る前に「危険情報」を国民と広く共有する事が出来て居ただろうか。一斉休校要請を例に振り返ってみたい。
2月27日、安倍首相は突然、全国全ての小中学校・高等学校・特別支援学校に付いて、春休み迄の臨時休校を要請し大きな波紋を広げた。国民の危機意識がより一層高まったのは間違い無く、この点は評価出来るだろう。一方で、この件で好く聞かれたのが「急に子供が休校に為っても家庭で対応出来無い」と云う親の声だ。
共働き家庭の多い昨今、子供に留守番をさせる訳にも行かず、祖父母や知人に無理を言って面倒を見て貰ったり、無理して仕事を休んだりと云った対応に追われた家庭が多い。仕事を休む事で得られ無く為った報酬はどうするのか、今後の見通しが立た無い中で対応に走った人々の不安は計り知れ無い。
時間的な猶予が無かったとしても、2月27日の要請の段階で、安倍首相は一斉休校に依る家庭や社会への影響を果たして何処迄見据えて居ただろうか。推測に為るが、この時点では具体的な保障の方針が定まって居なかった為明示出来無かったのだろう。
厚労省は3月2日に為って、臨時休校に伴い保護者が仕事を休んだ場合に賃金を補償する制度の概要を発表。3月10日には企業に属さ無いフリーランス労働者向けの支援策も打ち出された。
「リスク・コミュニケーション」の観点から云うと、2月27日の要請や同29日の首相会見の時点で、これ等対応策に付いて概要だけでも説明して置くべきだった。子供の居る労働者の心理的負担は大きく軽減されて居ただろう。
リーダーに求められること
この様に危機の際の情報開示には、スピードだけで無く、正確性や具体性を求められる場面も多い。情報開示に消極的だと受け止められると、返って不信と不安を広げる事に為る。企業に於ける危機発生時も同様だ。情報開示のスピードと正確性(具体性)のドチラを優先するかは状況に依って異なる。そこでリーダーの決断力が求められるのである。
一般的には危機発生時の最終的なゴールは、最短期間でダメージを最小に抑える事である。その為に、危機発生時に必要なのは、
@ 最悪の事態の想定
A リーダーシップを発揮すること
B 「リスク・コミュニケーション」と「クライシス・コミュニケーション」の実践と云える。
平時から危機管理の重要性を認識し「最悪の想定」をする事、その上で担当部署や外部の専門家と連携・協力し、強力なリーダーシップを執る事が重要だ。 新型コロナウイルスに関する対応は依然続いて居り、対応の是非を評価出来る段階では無い。
安倍首相を初めとする国のトップには、引き続きリスク・コミュニケーションとクライシス・コミュニケーションの両面でリーダーシップを発揮する事が求められる。
以上
新型コロナ禍が暴き出した 首相と記者クラブの「蜜月」
新型コロナ禍が暴き出した 首相と記者クラブの「蜜月」
〜アーバン ライフ メトロ 4/9(木) 18:30配信〜
2020年4月7日の記者会見は、コロナ対応の為に官邸会見室では無く大ホールで実施 安倍首相もマスク姿で登場(画像 小川裕夫)
記者の質問は 予め官邸に伝えられて居た
内閣記者会(首相官邸に常駐する新聞・テレビ・通信社等の記者らで作る記者クラブ)と首相とは、長らく馴れ合いの関係に有ると指摘されて来ましたが、確固たる証拠が無い為に、その「蜜月」は公然の秘密として語られて来ました。
しかし、記者の質問する内容が、記者クラブを通じて首相官邸側に予め伝えられて居た事が、最近に為って判明したのです。
記者からの質問を事前に知って居れば、首相は答弁内容を事前に用意する事が出来ます。詰り、首相会見は作成した原稿を読み上げるだけの場に為って居たのです。入試に例えれば、事前に正解を教えて貰って居たと云う事に為ります。入試なら、不正に依って合格取り消しの措置で終わりますが、国家・政権運営はそれだけでは済まされません。
首相会見を見た国民は、ソコから首相が何を考え、どう云った政策を進めようとして居るのかを知る事に為ります。国民の知る権利を果たす最大の場なのです。首相会見は単なる儀式ではありません。
内閣記者会と首相の「茶番劇」が判明したのは、2020年3月2日(月)の参議院予算委員会の事でした。この日、質問に立った蓮舫参議院議員が首相会見の質問に付いて質して居ます。2日前の2月29日(土)安倍晋三首相は記者会見を実施。新型コロナウイルスへの対応や、自身の考えを述べました。その後、内閣記者会の記者達からの質問にも回答して居ます。
官邸会見室での会見を終えて退出準備を始める安倍首相 手にした原稿には付箋が貼って有り、事前に質問を知り答えを準備して居た事が伺える(画像 小川裕夫)
「次の予定がある」打ち切られた会見
新型コロナウイルスと云う未知なる病気との戦いには、国民の誰もが不安を抱えて居ます。アレコレ聞きたいと云うのが当然です。首相は、政府はどう云う対応をして居るのか? 知りたい事聞きたい事は山ほど有ります。その為、2月29日の記者会見では、その場に居た記者達から質問を求める挙手が相次ぎました。
しかし、首相会見は40分足らずで強制的に終了。冒頭の首相発言を含めると記者達の質問時間は極僅かしか有りませんでした。その内の半分は首相の答弁に充てられる訳ですから、質問出来る時間は実質的にその半分に限られます。
コンな短時間では、満足の行く質問は出来ません。それにも関わらず「次の予定が有る」と云う理由で首相会見は打ち切られました。
会見を終えた首相は壇上から降り、会見室から退出します。その際、挙手をして居ながらも質問する事が出来無かったジャーナリストの江川紹子さんが「未だ、質問が有ります」と食い下がりました。しかし、江川さんの声は会見室に空しく響くばかりで、安倍首相はそのママ退出して居ます。
新聞各紙が伝えた首相動静に依ると、安倍首相のその後の予定は特に無く「私邸へと帰り、来客も無く過ごした」と為って居ます。首相会見を強制的に終了する必然性は無く、時間的にも首相会見の延長は十分に可能だったのです。
こうした消化不良が、2日後の国会でも取り上げられたのです。蓮舫議員の質問に対して、安倍晋三首相は「何時も総理会見に於いては、或る程度の遣り取りに付いて、予め質問を頂いて居る処で御座いますが、その中で、誰にお答えさせて頂くかと云う事に付いては、司会を務める広報官の方で、責任を持って対応して居る処であります」と答弁。
安倍首相の答弁は、首相と内閣記者会とが事前に遣り取りした結果の内容で有る事を暴露するものでした。これ迄は公然の秘密だった内閣記者会と首相の「茶番劇」を認めてしまったのです。
少しずつ是正された「馴れ合い」
内閣記者会と首相の「茶番劇」は、国民から大きな反感を買いました。国民の知る権利に応えるべく開かれて居た首相会見は、事前に打ち合わせされた内容を読み上げる、単なるショーで或ると言われたのに等しいからです。
コレでは、首相の危機対応能力にも疑問が付いてしまいますし、国民の知る権利の代行者として内閣記者会に与えられて居た特権も無意味に為ってしまいます。
首相会見を巡る一連の流れから、官邸側も内閣記者会も「事前に質問を通告しない」と云う従来のルールを守る様な機運が高まりました。又、それ迄の首相会見は特定の記者しか指名されず、多くの記者が質問出来無い状態に為って居ましたが、3月に入って以降の首相会見では、状況は少しずつ改善する傾向が見られます。
それ迄の馴れ合いを排し、色々な記者が質問の機会を得て居るからです。又、官邸側から「ソロソロ時間です」と終了の合図が出されても、記者側が粘る様に為りました。終了の合図から、追加で数問の質問が認められる「延長戦」も見られます。
首相会見は、官邸会見室と云う大きな部屋で開催されます。官邸会見室には、記事を書く「ペン記者」の席だけで300近く用意されて居ます。ペン記者は、挙手して質問する権利を有しますが、会見時に席から写真を撮る事は出来ません。
一方「カメラ記者」は写真を撮る事は出来ますが、質問する権限を与えられて居ません。私はカメラ記者として首相会見に参加をして居る記者の一人ですが、フリーランスのカメラマンは私一人しか居ません。その他のカメラ記者は、全て新聞社・通信社・雑誌社・インターネットニュース社と云った社員記者です。
2020年4月7日の首相会見 ソーシャルディスタンシングを意識して記者席の間隔が空けられて居る(画像 小川裕夫)
それは、記者個人に与えられるものでは無い
2020年4月7日(火)緊急事態宣言の発令を表明する為の記者会見は、新型コロナウイルス感染拡大防止の為、何時もの官邸会見室では無く官邸大ホールと云う場所で実施されました。記者席同士の間隔を約2m開けた「ソーシャルディスタンシング」の状態が取られ、その影響に依り席の数が限られ、会見に参加出来る記者の数は減らされました。
本来なら申し込みをすれば自由に参加出来る首相会見ですが、今回は抽選制と為り多数の記者が選から漏れました。抽選制と云っても、その場でクジを引く訳ではありません。官邸報道室と云う部署が「厳正為る抽選で決めて居る」だけです。その抽選の様子は公開されて居らず、本当に「厳正為る抽選」で決めて居るのかは怪しい処です。
官邸に取って目障りな記者・耳障りな記者・口煩い記者を排除する為の口実として使われて居る可能性が否定出来無いからです。こうした状態が続けば、国民の知る権利が脅かされる危険性があります。2月29日の会見の反省もあり、3月・4月の会見は首相と記者達のガチンコバトルに近い形へと変化して居ます。
ガチンコの記者会見は首相と記者の間に緊張感を生み、首相に取っては下手な答弁は出来無く為ります。逆に、記者側も稚拙な質問は出来無く為ります。厳しいシチュエーションで行われる記者会見は、国民の「知る権利」に応えるものです。首相会見で得られる情報は、記者のものでは有りません国民の財産です。
官邸内に常駐する内閣記者会は権力と距離的に近い為、知らず知らずの内に権力者と一体化してしまう事も珍しく無く、故に国民目線を忘れてしまう事も起こり得ます。それだけに、記者と首相に依る「出来レース」は国民を愚弄(ぐろう)する行為と云えます。記者会見は、国民の利益に資するもので無ければ為ら無いのです。
小川裕夫 フリーランスライター 1977年 静岡市生まれ 行政誌編集者を経てフリーランスに 都市計画や鉄道等を専門分野として取材執筆 著書に『私鉄特急の謎』『ライバル駅格差』(共にイースト新書Q)『封印された東京の謎』(彩図社)『東京王』(ぶんか社)等
以上
コロナ問題でも「安倍政権批判」展開
朝日新聞にコソ当て嵌まる?「国家意識・民族意識」の喪失
〜夕刊フジ 酒井信彦 4/9(木) 16:56配信〜
【朝日新聞研究】酒井信彦 元東京大学教授
朝日新聞は、新型コロナウイルス問題に関して多くの社説を出して居るが、その中心は安倍晋三政権に対する批判で有ると云える。中でも代表的なものが3月2日の「安倍政権の日本 不信の広がりを恐れる」と題する長文の社説で、安倍首相に依る学校の一斉休校の要望に際して書かれたものである。
先ず冒頭で「今、この国の政治の現場では、驚くべき事が立て続けに起きて居る」と打ち出す。次いで、東京高検検事長の定年延長問題と「桜を見る会」を持ち出し「何れの問題でも、政権は適正な手続きをへて行われた事を裏打ちする確かな文書を示せずに居る」「こうした光景を見せ着けられるに付け、この7年余りの安倍政権の下、日本の統治の秩序は無残な迄に破壊されたと言わざるを得無い」と述べる。
そして「通算在任で憲政史上最長と為った安倍政権は、統治の秩序を遣り放題に壊して来た。その傷口から流れ続ける『うみ』が、今の政治には満ちて居る」「政権中枢が法治国家では当然の手続きを無視するから、その意を忖度する公務員等が後始末に翻弄される。まさに『組織は頭から腐る』を地で行って居るのでは無いか」と、野党議員の表現を借用する。
以上、安倍政治への批判を展開した上で「そうした中で突然、発せられたのが全国一斉の休校要請だ」「目に見え無い未知のウイルスへの不安に加え、自らの生活に関わる具体的な不安が一気に全国へと広がった」「安倍政権が破壊して来たのは、統治の秩序だけでは無い。国民の政治への信頼も又、大きく損なわれた」と決め着けるのである。
処で、3月24日オピニオン欄に、小説家の真山仁氏の長文コラムが有り、見出しに「脆弱な危機管理 曝け出した安倍政権」と有る。朝日新聞の社説と同様の安倍批判かと思ったが中身はそうでも無い。文中で「私が問題にしたいのは、安倍政権の失政を論う事では無い」と述べられて居る。長文の中で、真山氏の発言の核心は次の部分であろう。
「私は以前から日本では、国家の意味が正しく理解出来て居ないのでは無いかと懸念して居た。そして、今、それは現実に起きてしまった」
この発言は大賛成である。私もズッと以前から、日本人は当然持って居なければ為ら無い「国家意識・民族意識」を完全に喪失して居り、それが日本没落の根本原因だと考えて来た。詰り、真山氏の批判は、安倍首相に対するよりも憲法9条を妄信する朝日新聞にコソ、驚く程当て嵌まるのである。
酒井信彦(さかい・のぶひこ)元東京大学教授 1943年 神奈川県生まれ。1970年3月 東大大学院人文科学研究科修士課程修了 同年4月 東大史料編纂所に勤務し「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方 アジアの民族問題等を中心に研究する。2006年3月 定年退職 現在、新聞や月刊誌で記事やコラムを執筆する 著書に『虐日偽善に狂う朝日新聞』(日新報道)等
以上
【管理人のひとこと】コロナ禍の現在、日本人なら安倍政権を批判しては為ら無い・・・これが社会常識なのだ。新聞・雑誌・TV・・・その他ネットを含め皆さんはヨークと自戒せねば為ら無い。朝日新聞を出汁にしてヤンワリと御叱りを受けた。
何故 「森友スクープ」は若者に読まれるのか?
〜文春オンライン 4/9(木) 17:00配信〜
佐川宣寿氏 AFLO
「元は、すべて、佐川理財局長の指示です」「これが財務官僚機構の実態なのです」
『週刊文春』に掲載された、大阪日日新聞・相澤冬樹記者による「 森友自殺〈財務省〉職員遺書全文公開『すべて佐川局長の指示です』 」が、大きな話題を呼んで居る。所謂森友問題に於ける「公文書改ざん事件」に関与し、2年前に自ら命を絶った近畿財務局職員・赤木俊夫さん(享年54)が残した「手記」
その中では、当時の財務省、及び近畿財務局幹部等の言動が実名で事細かに明かされ、一人の真面目な公務員が公文書改ざん、そして自殺へと追い込まれて行く経緯が痛切な迄に綴られて居る。
20代以下が「森友スクープ」に反応して居る
同記事を掲載した『週刊文春』3月26日号(発行部数53万部)は、発売から僅か2日で完売と為った。『週刊文春』の完売は、実に2年8ヶ月振りの事だと云う(同号は4月9日現在 Amazon では購入可能)しかし、今回の「森友スクープ」に関しては、或る特徴的な現象が見られた。
それは、20代以下と見られる若い読者が「コノ記事を読む為に、初めて週刊誌を買った」と云った趣旨の投稿をSNS上に相次いでアップした事である。
ソモソモ週刊誌の購読者層は、40代以上が中心と言われて居る。新聞や雑誌の発行部数を公査して居る日本ABC協会に依ると、2019年1月〜6月期に於ける『週刊文春』は、8割を超える読者が40代以上だった。そうした中で、20代以下の若い世代が次々と「森友スクープ」に反応して居ると云う現象は注目に値するだろう。
「まじで、こんなの、ない」
《文春読んだ。初めて週刊誌読んだ。正直、政策とかよくわかんないけど、人として何が良くないかは有権者の高校生にもわかる。まじめな人が守られる世の中であってほしい。ほんとびっくりしたこんなのないよ、まじで、こんなの、ない》( Kaoさん 高校生 Twitter )
《先日、人生で初めて週刊文春を買った。(中略)赤木さんが書いた震える文字には、改ざんの責任を押し付けられ逮捕されるかもしれない恐怖が表れていた。死を選ぶまで追いつめられた絶望は一体どれほどのものだったのだろう》( ヨリーさん 20代 note ) ※名前、肩書きはプロフィールから引用 読みやすさを考慮して改行部分を詰めて居ます
一方で、若者の反応に驚く、中年世代と見られる人達の投稿も目立った。
《今日バイトの子から「人生で初めて週刊誌を買いました」と報告を受ける。「週刊文春」を買ったという。「なんで?」と聞いたら「今、若い人の間で、これだけは読んだ方がいいって話がかなり回ってるんですよ」とのこと》( 語夢万里文庫 チーム〈でがらし〉さん Twitter )
《昨日、帰りの電車でも若いサラリーマンが文春を読んでいたな。今見たら完売御礼だとか。この問題に無関心でいられない人が多いことに少し安堵している》( 菊地みつさん、Twitter )
この現象を書店員はどう見ているか?
それでは一体何故、今回の「森友スクープ」は若い世代に迄届いて居るのか。都内の書店員(30代・男性)はこう語る。
「私の周りにも、今回の『週刊文春』で初めて週刊誌を買った、と云う若い女性が居ます。ソモソモ『週刊少年ジャンプ』でサエ、最近は中年のサラリーマンが中心で、若い人が買って居るのは余り見無いので、矢張り印象的な現象です」
実際に「森友スクープ」を読む為に初めて週刊誌を買ったのは、どんな若者なのか。
「初めて『週刊文春』を読んだと云うその女性に『伊藤詩織さんって知ってる?』と聞いたんです。そうしたら『知らない』と。それは結構驚きました。日本だけじゃ無く、世界でも話題に為った方ですし、しかも若い女性だったら知って居ても好い様な話じゃないですか。そうした情報サエ、これ迄何処からも入ら無かった様な人が、今回は読もうと言って居る。それは凄いな、って思いますね」(同書店員)
今回の記事は只の「情報」では無い
詰り、これ迄ニュースへの関心や政治的な意識が決して高く無かった若者が、今回は反応して居るのだと云う。
「若い世代はそもそもモノを持つ、と云う事に抵抗があります。どうせ捨ててしまうものを持つのは無駄だ、と云う感覚が有るんでしょうね。でも今回の記事は、繰り返し手元に置いて、何時でも読み返せる様にしたい、と云う思いが有るのではないでしょうか。立ち読みや回し読みでは無く、実際に買うと云う行為に至ったのは、今回の記事は只の情報では無いと云う、重みを感じ取ったからではないかと私は理解して居ます」(同書店員)
Instagramを見て「何かが起きて居る」と思った
今回の「森友スクープ」を読む為に初めて週刊誌を買ったと云う女性(20代・学生)は、アカウントをフォローして居るが、実際には面識の無い複数の女性が、Instagramで相次いで「今回の『週刊文春』は読んだ方が好い」と発信して居るのを見て「自分も読んでみなきゃ」と思ったと云う。
「誰か特定の人の投稿が拡散されて居た、と云う訳では無くて、何人もの人が別々に『週刊文春』の写真をアップして居たんです。30代の女性が多かったと思いますが、そうした投稿が次々と流れて来たので『これは何かが起きて居る』と思ったんです」
確かにInstagramで「#週刊文春」と検索すると、赤木さんの手記が掲載された3月26日号の表紙写真が幾つもヒットする。
「私は今迄こう云う事から目を背けて来たんですが、これは絶対に読ま無ければ行け無いと思いました。実際に読んでみたら、余りに辛くて信じられ無い様な事実が綴られて居て、涙が止まりませんでした。コンな重大な事に無関心だった自分が恥ずかしく為ったし、これから日本の政治に対して、チャンと関心を持って行動して行こうと思いました」(同女子学生).
再調査に応じようとしない安倍政権
今回の手記の公表後、麻生太郎財務相は「新たな事実が判明したとは考えられ無い」と再調査を否定。安倍首相も一連の問題に対して「行政府の長として責任を痛感して居る」としながらも、矢張り再調査には応じ無い姿勢を示して居る。
一方、国と佐川氏を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした赤木さんの妻・昌子さんは、3月27日からキャンペーンサイト「 Change.org 」で再調査への賛同者を募り始めた。すると、5日後の4月1日には賛同者が26万人を突破。これは同サイトでは過去最多・最速の動きだと云う。
「なんて世の中だ、手がふるえる、恐い」
赤木さんは死の直前、震える様な文字で、そんな一文をノートに走り書きしたと云う。その最期の声に耳を傾けた若い世代は、無関心だった自らを恥じながら、赤木さんが絶望した「世の中」を変える為、動き出そうとして居る。
本来であれば、赤木さんの思いに最も真摯に向き合わ無ければ為ら無いのは、安倍政権と財務省の筈だ。しかし、彼等だけが、この問題から目を背けて居る様に思えて為ら無い。そんな大人達の姿を「今迄こう云う事から目を背けて来た」若者達も又、注視して居る。
「文春オンライン」編集部 以上
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安倍首相 緊急事態会見での「場違いな笑顔」に見える想像力の欠如
安倍首相 緊急事態会見での「場違いな笑顔」
・・・に見える想像力の欠如
〜ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 4/9(木) 6:01配信〜
危機対応に欠かせ無いのは「想像力」安倍首相は記者会見で、図らずもこの想像力の欠如を露呈してしまった Photo:JIJI
緊急事態宣言発令を受けて実施された首相官邸での記者会見。安倍首相は時折、緊張感溢れるシーンに似つかわしく無い笑みを一瞬浮かべた。時間にしてホンの数秒。しかし、この「不自然な笑い」の背景を考えて行くと、安倍政権の「危機対応能力の欠如」が透けて見える。
ノンフィクションライター 窪田順生氏
記者会見で安倍首相が 一瞬見せた不思議な笑顔
4月7日、首相官邸で開催された会見は、これ迄に無い重苦しい空気に包まれて居た。日本で初めてと為る「緊急事態宣言」が発令され、内閣総理大臣が国民に対して「戦後最大の危機」を呼び掛けると云う会見なのでそれも当たり前である。
感染し無い様に間隔を空けて椅子が並べられた記者席からは、様々な質問が飛ぶ。何時解除されるのか・モッと早くに決断すべきだったのではないか・休業を要請する業種の人達の補償はどうするのか・・・そんなシビアな遣り取りが続く中で、安倍首相が場違いの様な笑顔を見せるシーンがあった。と云っても、時間にして2〜3秒の事で、直ぐ神妙な顔着きに戻ったので「思わず笑ってしまった」と云う方が正確かも知れ無い。
国民にモッと緊張感を持って欲しいと訴え無くてはいけ無い立場であり、日本中の人々が注目をして居るこのタイミングで有るにも関わらず、何故安倍首相の緊張の糸はプツンと切れてしまったのか。その答えは、笑った直前に投げ掛けられた質問にある。
ジャーナリストの江川紹子氏
オウム真理教の報道でも知られる著名なジャーナリストの江川紹子さんが、外出自粛要請と云っても結局、強制では無いので1週間位したら、ダレて来るのでは無いかと云う懸念を口にして、続く形でコンな質問を投げ掛けて居た。
「そう為った時に引き締めの為、警察に要請して・・・例えば、職務質問等を活発化させると云う事は有り得るのか、有り得ないのか」
神妙な顔で聞いて居た首相の表情が緩んだのは、丁度江川さんの口から「職務質問」と云うワードが飛び出した時である。では、何故首相はこの「職務質問」と云う響きに思わず笑みを溢してしまったのか。
一般庶民の目線からすれば、史上初の緊急事態宣言が出され、お上から極力外出をするなと云うお触れが出て居るのだから、もしそれに従わ無い者はドンな目に遭うのかと云うのは当然知りたい処だ。他所の国の様に、警察がパトロールで取り締まって違反者に罰金を課す等と云う事は、日本では法律的に不可能だと云う事は我々も何と無く判って居る。しかし「お願い」だけでは不要不急の外出をする人達を抑える事も難しい。
為らば、現行の「職務質問」等を拡大させて、繁華街に出歩いて居る人間を「不審人物」扱いする等の一種の嫌がらせを強化して、外出の自粛を促して行くのでは無いかと云うのは、権力の監視をするジャーナリスト為らば当然行き着く。その様な意味では、江川さんが投げ掛けた「職務質問」と云う質問は真っ当なものなのだ。
江川さんの質問への 笑いは「呆れ笑い」ではないか
しかし、首相は笑ってしまった。何故なのかと云うのは、ご本人にしか判ら無い事なので、此処からは飽く迄筆者の勝手な想像でしか無いが、恐らく「この大変な時にピントのズレた質問し無いで呉れよ」と云う感じの呆れ笑いだったのではないか。
何故そう思うのかと云うと、謝罪会見等社会の厳しい目に晒される絶対に笑ってはいけ無い会見で、思わず笑みが零れてしまうスポークスパーソンと云うのは、往々にしてその様なパターンが多いからだ。
筆者は報道対策アドバイザーとしてこれ迄、企業の経営者や官僚、更には政治家迄、様々な方達の記者会見を裏方としてサポートをして来た。ソコで気付いたのは、世間の常識と掛け離れた暴言や失言をしてしまう人達と同じ位、会見中にヘラヘラしてしまう人が多いと云う事だ。
例えば、社会から大ヒンシュクを買って居る不正が発覚して、その背景を説明する為に会見を開催した。責任者として真摯にお詫びを伝え無くてはいけ無いのに、記者の質問を受けて居る最中に、半笑いで答えてしまい「反省して居るとは思え無い」等と叩かれてしまうのだ。
では、この原因は何か。実際に笑ってしまった人に理由を聞いたり、その様な会見を分析して観た処、大きく分けると以下の3つのパータンに分類される。
(1)信頼関係が出来て居る記者からの質問で、遂何時ものノリで笑う「親しみ笑い」
(2)触れて欲しく無い都合の悪い話題に斬り込まれたので、動揺を隠す為に笑う「愛想笑い」
(3)コチラが想定して居た方向と余りにズレた質問に拍子抜けして笑う「小馬鹿にした笑い」
その中でもダントツに多いのが(3)の「小馬鹿にした笑い」だ。コレは特に不祥事企業の会見等で多い。こう云う問題が起きた企業の会見には、その企業を担当する記者や業界紙の記者以外にも社会部の記者やフリーランスのジャーナリスト、ワイドショー等のレポーターなどが押し掛ける。
彼等は、それ迄この企業やこの業界の取材をした事が無い様な「一見さん」なので、その会社の基本的なビジネスモデルやその業界の常識を知ら無い。詰り、日々取材をして居る経済部の記者や業界紙記者が絶対にし無い様な、ピントのズレた質問が飛んで来るのだ。
勿論、会見を開催してメディアを集めて居るのは企業側なので、ドンな質問にも真摯な姿勢で丁寧に答えて無くてはいけ無い。が、中にはソコで呆れて笑ってしまう経営者等も多いのだ。
江川さんの質問を 「揚げ足取り」としか思え無いのか
実際、筆者もこれ迄、この手の質問を受けた経営者等から「何でマスコミの質問ってアンナ低レベルなんですか?」とか「会見来る前に責めてもう一寸、コッチの事を勉強して欲しいですよ」何て愚痴を聞かされたのは1度や2度では亡い。
今回、首相のアノ笑いに関しては(1)の「親しみ笑い」の可能性は可成り低い。江川さんは政権に厳しいスタンスで知られて居り、何処かのマスコミ幹部の様に、チョイチョイ一緒に首相とメシを食うとか、そういう話は聞いた事が無いからだ。
(2)の「愛想笑い」もややビミョーで「外出自粛に強制力が無い」と云う事は首相も再三繰り返して居るので、行き成り夜警国家の様に為るとは考え難い。職質頻度が高まるにしても、ハロウィンやサッカーW杯のバカ騒ぎで出動したDJポリスの様な「お願いベース」を経て尚、厳しいと云う状況に為ってから後の話なので、この時点で首相がそこ迄アワワと取り乱すとは考え辛いのだ。
そう為ると、矢張り(3)の「小馬鹿にした笑い」で有る可能性が高い。そして、筆者がそう考えるもうひとつの理由は、最近の安倍首相には、自分を批判する相手に対して「小馬鹿にした笑い」をする様なクセが強いからだ。
判り易いのが今年2月、辻本清美議員が定番のモリカケ・桜を見る会等を引き合いに首相に退陣を求める様な質問をした事を受けて、安倍首相が「意味の無い質問だよ」とヤジった時だ。この時の映像を見ると、安倍首相の顔は怒りで歪んで居ると云う感じでは無く半笑い・・・要するに小馬鹿にして居るのだ。
こう云う首相の強めのクセを見る限り、江川さんの「職務質問」と云う言葉に対して笑ってしまったのは、辻本議員の時と同様に「意味の無い質問だよ」と思ったからなのではないか。
実際、首相がその様に受け取って居たのでは無いかと思われる様なシーンが有った。江川さんは会見で2つの質問をした。「職務質問」に付いて聞いたのは2番目の質問だったのだが、安倍首相は最初の質問に回答をして、この2番目の質問をコロッと忘れて居た。周囲に促されて「アッ、警察ですね」と慌てて回答をした。要するに「職務質問」と云うのは首相に取って、ウッカリスルーしてしまう程、取るに足らぬ「些細な問題」だったのだ。
と言うと「ソレの何処が悪い!日本人が一丸と為ら無きゃいけ無い時に、警察がどうしたとか揚げ足取りの様な批判は何の意味も無い。首相が呆れるのは当然だ!」と云う愛国心溢れる方達も多いと思うが、もし本当に首相がこう云うスタンスで「職務質問」を考えて居るのだとしたら可成りマズい。
先程も申し上げた様に、国民に取っては「外出自粛に従わ無かったらどう為るんだろう」と云うのは、極自然な疑問だ。こう云う事をまさか聞いて来るとは思わ無かった・揚げ足取りの様な質問だ・・・と首相を初め政府の人間が考えて居るとしたら、それは彼等が国民の不安をそれ程イメージ出来て居ないと云う事である。要するに「想像力が欠如」して居るのだ。
想像力が欠けたトップは 危機対応で失敗をする
緊急事態下で「想像力の欠如」が恐ろしい事態を招くと云うのは、1万人を越す死者が出て居るアメリカを見れば好く判る。ご存じの様にトランプ大統領は当初、新型コロナを「風邪の様なもの」として、この様な事態に為る事を全く想像して居なかったのだ。希望的観測に引き摺られる事無く、最悪の事態をイメージして迅速に決断・行動をする・・・詰り、危機管理とは「想像力」の勝負でもあるのだ。
では、どうすれば安倍首相、そして政府に「想像力」を持って貰えるのか。色々なご意見は有るだろうか、筆者は江川さんの様なフリーランスの記者をモッと沢山会見場に入れて、今回の様に首相を呆れ笑いさせる様な質問をドシドシして貰うべきだと思う。それに依って「世の中にはこう云う考え方をする人達も居るんだな」と気付いて頂くのだ。
先程、不祥事企業の会見で、社会部記者やフリーランスが、その会社や業界の常識と掛け離れたレベルの低い質問をすると述べた。が、その一方で、その様な常識を知らぬが故、問題の本質を突いた様な質問をすることも少なからず有る。
何故かと云うと、経済部の担当記者や業界紙の記者と云うのは、その会社との距離が余りに近かったり、その世界の常識を好く知って居るだけに、何処か「仲間」の様に為ってしまう。要するに「ムラ社会」の一員に為るので、プロレスラーがロープに投げられたら、戻って相手の技を受け無くてはいけ無い様に、相手がスラスラと答えられる予定調和的な追及しか出来無く為ってしまうのだ。
この辺りの構造的欠陥が特に顕著なのが政治取材だ。テレビで矢鱈と政権擁護をする、政界取材歴ウン十年みたいなジャーナリストがイラッシャる様に、政治取材の極意とは、権力者と如何にズブズブ・・・では無く「親密」に為るかと云う勝負である。
親しく為れば政権中枢の情報が貰えて特ダネが書ける。しかし、その反面で情報を貰う為には、余り辛辣な批判は出来無く為る。その様な「依存」が強く為って行くと、何時の間にやら「仲間」に為る。政治ジャーナリストが、或る日突然、政治プレイヤーに為って選挙に出馬したりするのはその為だ。
「ムラ社会」化を防ぐ為に フリー記者の参加を増やすべきだ
当たり前だが、こう云う「ムラ社会」では自浄作用が働か無い。だからコソ、江川さんの様な「ムラ」の外の人間が必要なのだ。勿論、時には政府からして見れば「何でそんな捻くれた質問ばっかりするんだ!」とキレたく為る様な質問も飛んで来るだろう。それに対応する為に余計な仕事も増えるかも知れない。
だが、そのデメリットを遥かに超える「外の世界の考え方を知る」「世の中にはこう云う考え方をする人間も居るのだ」と云う事を知るメリットが有るのだ。P・H・ドラッカーは、組織がファシズムに陥って暴走をし無い為にはフィードバックが必要だと説いて居る。フィードバックとは「組織の外から情報を得てそれを学習する」と云う事である。
そう考えてみると、実は記者会見と云うのは最高のフィードバックの場なのだ。組織の外に居る多種多様な人々の考えを「質問」と云う事で得られるからだ。
緊急事態下では組織がファシズムに走り易いと云うのは、先の戦争で我々は身を以て体験して居る。「鬼畜米英を打ち負かす為」「戦地で戦う兵隊さんの為」と云う言葉の下で体制批判が許されぬ空気が醸成され「ムラ社会」の同調圧力の中で生きて来た学歴エリートや政治家を暴走させてしまった。
実は今もその空気が生まれつつ有る。「国民が一丸と為ってウイルスとの戦いに勝つ為」「治療現場で頑張る医療関係者の為」と云う言葉の下「頑張って居る政府の批判は控えるべき」と云う声が高まって居るのだ。
確かにこのタイミングで、モリカケだアッキーだと云う話をするのは頂け無い。だが、国民の安全・自由・人権・経済的な補償等に関しては可笑しな事が有れば、矢張り可笑しいと叫ば無いと、過つての日本の様に批判を許さぬファシズムが台頭する可能性がある。
過去の教訓を真摯に受け止め、安倍首相や日本政府は「戦後最大の危機」の今だからコソ、記者会見と云うフィードバックを重視して頂きたい。
窪田順生(くぼた・まさき)ノンフィクションライター テレビ情報番組制作・週刊誌記者・新聞記者・月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら 報道対策アドバイザーとしても活動 これ迄200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など 『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞
以上
【管理人のひとこと】
窪田順生氏は、可成り抑えトーンダウンして文章を綴って居る様だ・・・確かにこのタイミングで、モリカケだアッキーだと云う話をするのは頂け無い・・・と仰るが果たしてそうだろうか。管理人としては、全てコロナ禍を理由にして他の安倍批判を抑える・政府批判を忖度し制御する事の方が恐ろしいと感ずるのだが。お陰でアッキーの徒な口出しが基で起きた「森友自殺事件」が又や有耶無耶にされそうな気配である。
未曽有宇のコロナ危機を理由に全ての言論を自ら抑え込む風潮コソ、戦前の自己抑制的な報道姿勢へと通ずる恐ろしさを孕んで居ると思う。他国と比較して余りにも姑息なコロナ対策にも「批判を抑える」事が有っては為ら無い筈で、無能な政府にはドンドン批判するべきだろう・・・
いち早い「戦時経済対策」既に「戦後復興」も「仏コロナ対策」の充実度
いち早い「戦時経済対策」既に「戦後復興」も
「仏コロナ対策」の充実度
〜新潮社 フォーサイト 4/9(木) 6:00配信〜
エマニュエル・マクロン仏大統領
4月7日、安倍晋三首相は「緊急事態宣言」を発令し、同時に史上最大規模と為る108兆円規模の「緊急経済対策」も発表した。が、規模は兎も角、時期に付いては海外からも「遅過ぎる」との批判が出た。
日本と対照的にフランスの対応は早かった。3月12日「新型コロナウイルス」禍が始まって初のテレビ演説で、エマニュエル・マクロン仏大統領は「総力戦」を訴えた。更に、外出規制を発表した3月16日のテレビ演説では 「私達は戦時下に在る。コレは保健衛生戦争です。確かに軍隊とも他国とも戦っては居ません。しかし、敵はソコに居ます。見えず捉え処が無く前進して居ます。私達の総力を必要とします」と述べた。
ブリュノ・ルメール経済財務相
これを請けてブリュノ・ルメール経済財務相は「経済金融戦争」で在ると表明した。此処で言う「戦争」は、米中貿易戦争等と云った比喩では無い。新型コロナ禍の経済への影響に着いて、ルメール経済財務相は 「コノ世界経済と実体経済に関わる危機は、1929年の危機としか比較出来無い」と断定する。
2008年のリーマンショックや2010〜12年のユーロ危機は、金融危機が経済全体に波及したものだった。だが、新型コロナは「人とモノの動き社会活動」そのものを直撃して居る。しかも、その原因は金融市場等では無く、人の命を現実に大量に奪う厄介なウイルスである。
「景気対策」では無く「戦時政策」
3月12日のテレビ演説でマクロン大統領は、新型コロナの蔓延を 「此処1世紀で最大の保健衛生危機である」とした。1世紀前と云うとスペイン風邪の大流行である。この時は第1次世界大戦の為に十分な対策が出来ず、フランス国内で24万人の死者が出た。もし今、伝染病対策以外の事を優先すれば、スペイン風邪同様の死者が出る。これを「人口の足った0.4%だ、しかもその大部分は高齢者や病気持ちだ」と云って無視すると云う道も有るだろう。しかし、フランスはその道を執ら無かった。
この厄介な敵に対しては、総力で戦わ無ければ為ら無い。ソコで、経済も又長く激しい総力戦の一部とすると割り切った。即ち、最早「景気対策」では無い。それは平時の話であって今は戦争中なのである。当然、経済は犠牲に為る。
仏国立統計経済研究所・INSEEの発表では、1週間の外出規制で、フランスの産業は通常の能力の65%に迄落ち込んで居る。一方経済財務省は、観光・ホテル・レストラン・イベントと云った分野の活動は、通常の0から10%・自動車製造販売は15から 20%・家具・化粧品・機械・プラスチック・繊維ファッション業界も20%の稼働で、建設現場も8割が停止して居るとした。INSEEは、更に1カ月の外出規制はGDP・国内総生産を年率マイナス3%にすると予測する。
外出規制が始まった5日後に成立した補正予算では、GDPのマイナス成長を1%と仮定して居るが、これは、飽く迄も予測の幅の上の方に過ぎないと経済財務省も認めて居る。財政赤字も、本年度予算ではGDPの2.2%を予測して居たが、補正予算ではGDP比3.9%とした。これも又更に増える可能性はある。
ジェラルド・ダルマナン行動公会計相
しかし 「家が火事の時、火を消すのに水が何リットルかは計算しません。今日、労働者が保健衛生危機の後で経済社会危機を経験し無い様に全ての手段を出します」(ジェラルド・ダルマナン行動公会計相)
この方針には、各界とも賛同して居る。ニコラ・サルコジ大統領時代の首相付経済分析委員だった経済学者のエリー・コーエン氏も云う。
経済学者のエリー・コーエン氏
「第2次世界大戦の時には国家債務が200%を超えましたが、それは戦争が終わってから改めて見た結果に過ぎません。今は戦争に勝つ為に全力を尽くすだけです。戦争が終わってから経済回復を考えれば好い」france info
EU・欧州連合も又ユーロの基準値・・・財政赤字GDP比3%・政府債務GDP比60%の枠には拘ら無いと決めた。
実行され始めた様々な支援策
3月12日の大統領演説で経済支援策も示唆されたが、外出規制が始まった17日に公式発表、20日には補正予算が成立・実行に移された。
その内容は、450億ユーロ・約5兆4000億円の支援と3000億ユーロ・約36兆円の政府保証である。先に政府保証に着いて説明すると、企業の流動性支援の為に、民間銀行からの新規融資を公的金融機関である「Bpifrance」が90%保証すると云うもの。融資限度はフランス国内で雇用して居る従業員の給与2年分又は年間売上高の25%の何れか多い方である。その他の支援策は、以下の通りだ。
⊡ 企業の直接税・社会保険料の納付猶予
⊡ 直接税の減免
⊡ 一時帰休の条件緩和 法定最低賃金の者は100%・4.5倍迄の賃金は84%国家が肩代わり・派遣社員にも適用
⊡ スタートアップ企業向け措置 企業が転換社債を発行しBpiFranceと民間投資家が同額引き受ける・付加価値税の還付と法人税=会社税=研究開発投資の税還付の前倒し
⊡ 「連帯基金」を創設し、打撃の大きな業種の零細企業個人事業主等に1500ユーロ・約18万円助成
⊡ 困難に陥った零細企業の水道・ガス・電気料金・事務所賃貸料等の支払いの猶予
⊡ 銀行融資の返済済条件変更に着いての国とフランス銀行による仲裁
⊡ 「企業仲裁者」 既存の公共機関による顧客や納入業者とのトラブル処理支援
⊡ 公共調達に於いて新型コロナを不可抗力と認め遅延ペナルティの対象としない
尚、経済対策では無いが、この緊急対策費の内、20億ユーロ・2400億円は病気に依る欠勤手当・マスク・医療関係者報酬に宛てられて居る。一時帰休に着いては、通常の給料日に企業が支払い、その後で企業に助成が出る。不正受給は総額の返済、5年間のアラユル助成金受給禁止、2年以下の禁錮と3万ユーロ・約360万円以下の罰金と為る。但し、従業員は給料を返還する必要は無い。
「連帯基金」は、3月現在12億ユーロ・1440億円で、その内63%は国・21%は州・17%は保険会社からの拠出である。
対象は、給与従業員10人以下の企業・非営利社団・個人事業主・アーチスト・作家等で、前期の年収が100万ユーロ・1億2000万円未満で売上が減ったものである。更に一定条件の下で2000ユーロ・約24万円が追加される。売上減は当初、前年比70%とされて居たが、ハードルが高過ぎると云うので、改めて50%に下げた。
3月前半は普通に開店して居たが、昨年の「黄色いベスト運動」の為に既に売上が減って居た為、大部分の売上減少は30%から60%だ、と云う抗議の声に応えたものである。この他、元々従業員に1000ユーロ・約12万円の追加手当を無課税・社会保障費免除で支払える制度があったが、使用条件を緩和して中小零細企業でも使える様にし、更に2000ユーロ迄に上げた。
休校の子供の世話の為会社を休ま無ければ為ら無い時には、有給休暇とは別扱いで健康保険から給与の50%が日割りで出される。隔離や入院の時も同様である。
フランス金融市場庁・AMFは、3月18日から4月16日迄792銘柄に付いて新規の空売り及び空売りを現在のポジションよりも増やす事を禁止して居る。一時帰休助成の対象者を、政府は360万人と見込んで居たが、4月7日現在で580万人を数える。
又、零細企業等を支援する連帯基金からの助成も基準が変わった。当然、450億ユーロから更に膨れ上がり、医療関係費も増えて居る。今後改めて第2次補正予算が組まれる予定である。
「戦後復興」はどうする
日本の「緊急経済対策」にはコロナ禍終息後の経済回復の予算も入って居るが、今迄述べた経済対策は、飽く迄「戦時中」のものである。一度新型コロナ禍を克服したら今度は戦後復興だ。その時にはEUと協調して現代版マーシャルプランを実行する。
だが、只公共投資やバラ撒きをしても駄目だ。その段階で、産業が大企業から裾野の中小零細企業迄残って居るのか、雇用は守られて居るのかがカギと為る。ルメール経済財務相は、補正予算案の議決を前に『フィガロ』紙にこう語って居る。
「フランスは、解雇の安易さでは無くスキルを保持する事を選びました。それには費用が掛かります。しかしこの費用は私達がより速くより強く再出発する事を助ける投資なのです」(3月21日)
挙国一致を求め、国民に忍耐を強いながら、一部だけを優遇する事は出来な無い。それ故一連の政策は、大企業の経営者や正社員は勿論、中小企業・零細企業・派遣社員・フリーランスにも一様に配慮して居る。勿論、理念だけでコノ選択と為った訳では無い。経済財務省の補佐官は言う。
「中小企業の織り為す組織を崩壊させる方が高く着く。彼等が現在の乱気流を乗り越えるのを手伝う方が良い」(『フィガロ』3月28日)
ちなみに、マクロン大統領が総力戦を語り、経済の方針も明らかにした3月12日、フランスの感染者数は累計2876人・検査数は約3,500件で陽性判定は700人と地域的にも偏りがあり、未だ感染爆発では無いとされて居たのだ・・・
ジャーナリスト 広岡裕児 1954年川崎市生まれ 大阪外国語大学フランス語科卒 パリ第三大学(ソルボンヌ・ヌーベル)留学後フランス在住 フリージャーナリストおよびシンクタンクの一員としてパリ郊外の自治体プロジェクトを初め様々な業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる 代表作に『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書)『エコノミストには絶対分からないEU危機』(文藝春秋社)『皇族』(中央公論新社)他
以上
30万円給付コロナ補償 実際にどんな人が受け取れるのか
〜花輪陽子 ファイナンシャル・プランナー CFPⓇ・1級FP 技能士 4/9(木) 12:50 〜
花輪陽子 ファイナンシャル・プランナー
新型肺炎が世界中で爆発的に増大し、各国が金融政策と共に大幅な財政政策を出して居ます。安倍首相は108兆円規模の緊急対策を実施すると表明しましたが、その詳細が分かり難いと云う声が出て居ます。又、海外では既に給付金を受け取って居る国も多い中で、対応が遅いのでは無いかと云う意見もあります。この日本のコロナ補償ですが、実際ドンな人が受け取る事が出来るのでしょうか。
アメリカでは大人1人当たり最大13万円の現金給付が、シンガポールでは21歳以上の国民に約4万5000円が支給される事に為って居ます。日本では1世帯当たり30万円の現金給付に付いては、感染症が発生する前に比べて月収が5割程度下がった世帯(所得制限あり)や住民税非課税世帯迄収入が下がった世帯に対象を限定しています。
子育て世帯を支援する為、児童手当の受給世帯に対し、臨時特別給付金として児童1人当たり1万円を上乗せする予定です。詰り、全ての国民が現金給付を受け取れる訳ではありません。
30万円給付の対象世帯とは
30万円の対象に為る住民税非課税世帯の水準とは実際にどの様な世帯なのでしょうか。例えば、東京23区在住の給与所得者の場合、単身会社員では年収100万円以下・2人家族(会社員と子供1人)では156万円以下・3人家族(会社員・専業主婦・子供1人)では205万円以下・4人家族(会社員・専業主婦・子供2人)では255万円以下に為ります。
又、感染症が発生する前に比べて月収が5割程度下がった世帯の所得制限は住民税非課税世帯水準の2倍以下と為って居ます。詰り、先程の単身会社員では年収200万円以下・2人家族(会社員と子供1人)では312万円以下・3人家族(会社員・専業主婦・子供1人)では410万円以下・4人家族(会社員・専業主婦・子供2人)では510万円以下と云う所得制限が付きます。
2〜6月の何れかの月収をそれ以前と比べて、年収換算で住民税の非課税水準まで減少するか、収入が50%以上減って年収換算で住民税非課税水準の2倍以下と為る世帯が対象と為るのです。又、世帯主の収入しか対象として居ない為に、共働き夫婦で世帯主では無いもう一方の収入が激減した場合は考慮されて居ません。例えば、夫が世帯主でパートの主婦の収入が無く為ったとしても対象外と云う事です。
例えば、4人家族(扶養家族3人)で世帯主の夫の月収が35万円から20万円に減る場合、年収ベースで240万円と為るので住民税非課税世帯の条件を満たす事に為ります。収入が急減したパターンとして、4人家族(扶養家族3人)で世帯主の夫の月収が55万円から25万円に為った場合も月収が5割程度下がり且つ所得制限の範囲内なので対象と云う事です。
しかし、夫が会社員(扶養の子供が2人)で月収が30万円(世帯主)妻も会社員で月収が30万円のケースの場合。妻の月収が無く為っても世帯主では無いので貰え無いと云う事に為ります。個人では無く、世帯単位だからです。
給付を希望する世帯は支給条件に合う事を証明する為に給与明細や源泉徴収票等を準備し、市区町村の窓口に行って書類を提出し、審査に通って給付を貰えると云う流れです。
又、海外では簡単な申請をしたら1週間以内に振り込まれたと云う声を聞きますが、複雑な上にスピードも遅れて居ます。日本は解雇規制が厳しいので雇用主による従業員の救済が前提に為って居る事もあります。大企業に雇用をされて居る人の多くは30万円の現金給付の対象には為ら無いでしょう。
事業向けの支援は
事業者向けには感染拡大の収束後、観光業やイベント事業等を支援する為、消費者にクーポン券等を付与するキャンペーンの実施も検討されて居ます。
又従業員の一時的な帰休等を進める雇用調整を進める企業を支援する「雇用調整助成金」に特例を設け、拡充します。助成率を上げ、非正規社員も対象です。客室乗務員の8割を一時帰休する事を決定した航空会社・ANAホールディングスもこの制度を利用する様です。
中小企業等を対象にした給付金に付いては、売り上げが半減する等して事業の継続が難しい場合、中小・小規模事業者等に200万円を、フリーランスを含む個人事業主には100万円を、夫々上限に給付する予定です。
事業を営んでいる場合は、事業主向けの支援も合わせて確認をしたいものです。今回の補償は資金繰りに困っている中小・小規模事業者、個人事業主、相対的貧困世帯等への救済と為ります。日本は公的医療保険などが世界的にも恵まれて居り、各国と比べるとロックダウンは緩やかと云う事もあり、個人向けへの補償は十分と言え無いかも知れません。その為、当面の現金を各家庭が確りと準備をして、固定費等をカットし、耐え忍ぶ必要が有りそうです。
花輪陽子 ファイナンシャル・プランナー CFPⓇ・1級FP 技能士 外資系投資銀を経てFPとして独立 『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数 花輪陽子のシンガポール富裕層の教え https://www.mag2.com/m/0001687882.html 海外に住んでいる日本人のお金に関する悩みを解消するサイトを運営 https://100mylifeplan.com/
【自然派わんこの厳選ごはん】
過去最大108兆円 コロナ経済対策 の評判が悪い「これだけの理由」
過去最大108兆円 コロナ経済対策
の評判が悪い「これだけの理由」
〜現代ビジネス 4/9(木) 6:46配信〜
自粛を要請されても・・・
過去最大の緊急経済対策の評判
4月7日、安倍総理は東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡の7都府県を対象とした緊急事態宣言発令に踏み切った。108兆円・GDP国内総生産の2割に及ぶ過去最大の経済対策の発表をセットにして。
しかし、安倍総理が「GDPの2割に当たる事業規模108兆円・世界的にも最大級の経済対策」と自画自賛した経済対策に対する評判が頗(すこぶ)る悪い。
事業規模108兆円と云っても、所謂、真水と云われる国が実際に出す財政支出は39兆円に過ぎ無い事・自粛要請と休業補償がセットに為って居なかった事・中堅・中小企業には200万円・フリーランスを含む個人事業主には100万円を上限とした給付金の給付基準や手続きが分かり難い等の理由からである。
とは云え、今回の緊急経済対策が不十分なものだった訳では無い。リーマン・ショック後の2009年4月に当時の麻生内閣が打ち出した事業規模56.8兆円・真水が15.4兆円と云う経済対策と比較しても、今回の緊急経済対策の事業規模108兆円・真水39兆円と云うものは、決して小さなものでは無く寧ろ大規模なものだ。それでも評判が頗る悪いのは、安倍総理の情報の出し方に問題が有るからだ。
文 経済評論家 コラムニスト 近藤 駿介氏
規模の使い方を間違えて居る
基本的な問題は、規模の使い方を間違えて居る事だ。経済対策に関しては事前に過去最大と云った威勢の良い修飾語に加え、国民一人ひとりに10万円の現金給付を行う・・・かの様な大きな期待を持たせた後に、尻すぼみする格好の中身のショボい対策を打ち出す事で、過去最大の経済対策が「張子の虎」で有る様な印象を与えてしまって居る。
経済対策の中身がショボい内容に為った裏には財務省との駆け引きが在ったのでは無いかと云う疑念を抱かせる上に、緊急事態宣言を発令した後迄営業自粛要請をする業種範囲に関して、東京都を始めとした地方自治体と揉めて居る状況を見せられる・・・過去最大の「108」兆円と云う経済規模が人間の煩悩を積み上げた結果の様に見えて来てしまう。
その一方で、諸悪の根源である新型コロナウイルス感染対策に関しては、現状を小さく見せて、状況に依っては「躊躇無く」次の対策を打ち出すと云う「出し見惜しみ型」に為って居る。
7日の記者会見で安倍総理は緊急事態宣言を期間1ヵ月としたのは、外出自粛要請に依って人と人との接触機会を最低7割・極力8割削減する事で2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、その効果を見極める期間を含めた為だと云う見解を示して居る。
勿論法的な限界や財政的な現実的な制約が有る事は十分に理解出来るが、補償とセットでは無い実効性の高く無い「自粛要請」で感染者の増加を2週間でピークアウトさせる事が出来ると信じる人は可成り少ない筈である。
それは、法的措置を伴ったロックダウンに踏み切った欧米でも感染拡大を止めるのに1ヵ月・中国武漢でも2ヵ月半も掛かって居る事が知られて居るからだ。
本来であれば、経済対策は規模だけで無く中身も期待を上回るものにし、感染防止策に関しては、出来る限りの厳し目な措置を執って、効果を見ながら徐々に措置を軽減して行くべきであるが、今回の緊急事態宣言発令と緊急経済対策はコレが真逆に為って居る。この点が過去最大の経済対策で有りながら評判が頗る悪い大きな要因に為って居ると思われる。
自粛要請と補償がセットに為って居ない
もう一つ緊急経済対策の評判を落として居る大きな要因は「自粛要請と補償がセット」に為って居無かった事だ。緊急事態宣言に依って営業自粛を迫られた多くの中小零細事業者に取って、最低1ヵ月続く営業自粛は死活問題である。
それ故に新型コロナウイルス感染拡大防止の為には営業自粛が必要だと云う事が分かって居ても「新型コロナウイルスで死ぬか、飢え死にするか」と云う究極の選択を迫られた結果、営業を継続すると云う決断をせざるを得無い事業者が出て来る事に為る。
そしてそれが新型コロナウイルス感染のピークアウトを遅らせ、緊急事態宣言の延長・営業自粛期間の延長と云う負のスパイラルを招く要因と為る。こうした負のスパイラルを回避する為にも「営業自粛に伴う補償をセット」にする事は必要性不可欠である。
安倍総理は「或る特定の業界にお願いをしても、損失は、その業界に留まるものではありません。ソコと、様々な取引をして居る皆さんにも大きな影響が出て行くと云う事を鑑みれば、個別に補償して行くと云う事はバランスを欠く」と云う理由で休業補償では無く給付金で対応する事にした事を明らかにして居る。
確かに総理の考え方も最もなものだが、こうした考えは総理が強調して来た「前例に囚われ無い思い切った措置」から遠いもの、詰り「前例に囚われた措置」である。
だから店舗は休業出来無い・・・
緊急事態宣言発令の効果を上げる為には、出来る限り多くの国民に休業補償をする必要がある。店舗等が休業出来無い大きな理由は、店を閉めて売上が無く為っても、家賃や借入金の返済が猶予され無いからである。換言すれば、家賃と借入金の返済を例えば3ヵ月と云った決められた期間猶予出来る様にすれば、営業自粛をする事業者を増やす事が出来ると云う事である。
日本の金融機関の貸付残高は、2月時点で544兆6850億円であり、平均貸付金利は約0.6%である。詰り、借入金の元利金返済免除に伴う金融機関の逸失利益は年間約3兆2000億円〜3兆3000億円程度である。仮に借入金の元利金返済免除期間を3ヵ月だとしたら、金融機関の逸失利息収入は8000億円程度・半年に延長されたとしても1兆6000億円程度に過ぎ無い。
この金融機関の逸失利益を政府が肩代わりする様にしても、その財政負担は108兆円と云う事業規模から比べたら微々たるものなのである。
一方家賃支払いを猶予した場合、家賃収入で暮らして居る人達に大きな打撃を与えると云う意見もある。確かにその通りだが、それは家賃免除に応じた家主に対しては例えば100万円給付する様な形で十分対処出来る筈である。
又、借入金でアパート・マンション経営をして居る人にトッテモ、ローン返済免除と給付金とのセットであれば家賃免除は致命的な痛手には為る事は無い筈である。家賃と借入金返済の猶予は、特定の業種に偏る事無く、全ての業種の人達に広く行き渡るものであると同時に、収入を奪われた人達から住む場所の心配を取り除くものでもある。
国民が経済的に生き残る事が重要
今の様な緊急時には、収入サイドを守るよりも生活コストを下げる事で社会の延命を図る事が時間的にコストパフォーマンスの高い政策の筈である。政府が打ち出した真水39兆円と云う緊急経済対策は、一定の時間が経過すれば効果が表れる筈である。
重要な事は、経済対策の効果が表れる為の必要条件は、日本社会が・国民が経済的に生き残って居る事である。経済対策の効果が表れる前に日本経済や国民が致命的な打撃を受けてしまったら、過去最大の経済対策も絵に描いた餅に終わってしまう筈である。
無人島にお金をバラ撒いても何の効果も得られ無い。安倍総理には「先入観は罪、固定観念は悪」と云う故・野村克也氏の名言を今一度噛みしめて頂き、日本経済と国民が今迄通りの状態を保てると云う先入観と、経済対策の規模を拡大すれば問題を解決出来る・・・と云う固定観念を捨てて国難に立ち向かって貰いたい。
近藤 駿介 経済評論家 コラムニスト 1957年東京生まれ 早稲田大学理工学部土木工学科卒業後 総合建設会社勤務を経て 31歳で野村投信(現野村アセットマネジメント)に入社 株式・債券・先物・オプション取引等を担当した後 野村総合研究所に出向しストラテジストとして活躍 再び野村アセットに戻ってからは担当ファンドが東洋経済の年間運用成績第2位に選出される等ファンドマネージャーとして活躍 その他運用責任者として日本初の上場投資信託・ETFである「日経300上場投信」の設定・上場を成功させ 1996年に野村アセット初のプロフェッショナル・ファンドマネージャーと為る
現在は金融や資産運用に関する客観的な知識を広めるべく 合同会社アナザーステージを立ち上げ会長兼CEOとして一般向けの金融セミナーや投資セミナー等専門家向けセミナー等も開催中 自身が手掛けるメルマガ『マーケット・オピニオン』は個人投資家から圧倒的な支持を得る
以上
【管理人のひとこと】
コロナ禍に依る、安倍氏の国民に向けた数々の発言を思い返せば「嘘と虚言・虚栄に塗れた・・・」とする「嘘」を冠する言葉が前提と為る・・・全ての印象がそうだろう。彼から発する全ての数字・情報・経過を含めて「彼の一体何を信じるか・・・?」が真っ先に頭を過る。ハッキリ言って嘘に塗れ口籠る彼の姿を見るのは、嫌悪感が先に経ち辛く為って来る。詰り、彼が何をどの様に見繕い言い訳を繰り返すのか・・・それだけが繰り返される。
その虚言の上に成り立つ安倍政治には、国民に訴える力は限りなくゼロに近い。この様なリーダーを持つ事は多くの国民の不幸なのだが、彼を選んだのも多数の国民の筈・・・この矛盾は全てコロナ禍に苦しむ我々国民に向かって居る。私達は自らこの様な事態を迎えたのだと深く反省して事に臨むべき。安倍氏が為した数々の所業を私達は「ニヤニヤ」しながら見過ごして来た。その報いが今我々を苦境に突き落として居る。
新型コロナ危機 何故フィンランドでは感染者が少ないのか?
新型コロナ危機 何故 フィンランドでは感染者が少ないのか?
〜現代ビジネス 岩竹 美加子 4/8(水) 6:31配信〜
岩竹 美加子 ヘルシンキ大学非常勤教授
フィンランドの感染者が少ない理由
フィンランドの「国立保健福祉研究所」は 、予想されて居た指数関数的な新型コロナ感染の急増は抑えられて居ると云う見解を4月1日に示した。その週は、感染者数が急カーブで増えて行くと予想されて居り、応急処置等の為に病院前のテント設置・集中治療の設備と医療スタッフ増強・死体保管の為のコンテナ設置等様々な医療体制が急ピッチで準備されて居た。感染者の急増が抑えられて居る理由として、これ迄の諸対策の効果が出て居る可能性が在ると云う。
10人以上集まら無い・人とは最低1メートルの距離を捕る・祖父母等高齢者に会いに行か無い・家でテレワークをする・不要不急の外出をし無い他、小中高校と大学・図書館・映画館・美術館・レストランやカフェ等の閉鎖、更に国境とウーシマー県(首都ヘルシンキを含む南フィンランド)閉鎖等の対策で有る。
人の接触と移動を減らす事で感染の広がりを抑え、スピードを遅らせる為の対策だが、これ等の多くは、緊急事態法の部分的な発令を要した。
フィンランドでの感染は未だ初期段階であり、増大を前提にした対策は続けて行くが、政府は4週間に及ぶ懸命の対応を経て、ホッと一息ついた形に為った。
政府の具体的な対応
フィンランドでは1月末、ラップランドを旅行中の外国人が新型コロナに感染して居る事が報じられたが、当初政府は様子見をして居た。しかし、中国と韓国で感染の急増が有り、フィンランドでの拡大にも準備はして居た。
2月26日、イタリアからの帰国者1人が感染して居た事が報じられると、翌27日、マリン首相は国会で、次の様なスピーチを行った。
フィンランドのマリン首相
「政府は、社会保険省と国立保健福祉研究所を中心に各省庁が協力する体制を作り、今後の様々な状況に備えて周到で計画的な準備をして居る。最もシンプルな予防は手を好く洗う事。フィンランドの医療の質とスキルは高い。WHO・世界保健機関等国際的な機関とも連携し、以前の感染症から得た知識と経験も有る。過剰な反応や行動は避ける事が重要・・・」
・・・と云った内容だった。このスピーチの時点では未だ余裕を持って居たのだが、その直後からイタリアで感染の急増が始まると対応が激変した。3月中旬以降、平日はホボ毎日、首相や大臣・医療関係者等の会見が続けられて居て、テレビやパソコンで中継を見る事が出来る。会見は、1日に2度行われる事もある。
この一連の会見に至る間、又その後も、首相や大臣・その他関係者の多くは、土日も返上し1日16時間労働も在ったと云う・・・フィンランドでは通常在り得無い様な働き方だった。
会見は経済・医療・教育・社会等領域毎に行われ、夫々の現状・見通し・対策等が発表される。社会的距離を置く為記者は同席せず質問は遠隔で行う。質問内容は前以て通知されて居ないが、的確に即答するのは当然の事だ。又、視聴者がチャットの機能を使って質問出来る会見もある。
会見の内容は、その時々の状況に即して具体的だ。子供や学生・支援を必要とする人・貧しい人・小規模事業者等様々な人達の生活に着いても配慮して居る事が分かる。これ等の会見では、現在、生活に制約が増えて居るが、それは極めて例外的な状況で有る事が強調される。又、不自由に為って行く現状を理解し、協力する市民に対する感謝の意が示される。
フィンランド国営放送は在住外国人の為にアラビア語・ソマリ語・クルド語・ペルシャ語で新型コロナに関するニュースを放映して居る。2018年の統計で、外国語を母語とする人口は約39万人。その内アラビア語3万人・ソマリ語2.1万人・クルド語 1.4万人・ペルシャ語1.3万人である。
経済的打撃をどう支援するか
新型コロナが及ぼす経済的な打撃は計り切れ無い。既に航空業・旅行業・飲食業・農業を初め各業種業界に大きな影響が出て居る。倒産や休業・解雇・失業等に依って、経済は5〜6%縮小すると云う予想もある。
政府が出した経済対策の一つは、50億ユーロ・約5880億円の「支援パッケージ」だ。企業の倒産防止・個人事業者への支援等を目的としたもので、その後、500万ユーロ・約5億8800円が追加された。現在は、社会保険庁への失業手当・住宅手当・収入補填手当等への申請が倍増して居る。その為、多少の遅れは有るが支払われるので心配し無い様にと報道されて居る。
フィンランドの社会保障は、選別主義では無く普遍主義だ。職種に関わらず、又永住権を持つ外国人にも同じ保障を受ける権利がある。
戦後初めて備蓄庫が使われた
確認感染者数と集中治療を受けて居る人の数・死亡者数は毎日報じられて居る。但し、全ての人の検査は出来無いので、実際の感染者数はその20〜30倍と言われて居る。フィンランドでは、3月下旬迄1日の検査数は500〜1,000件程度に抑えられて居た。リソースが限られて居る事、感染者の80%は症状が軽く自宅療養に為る事等が理由である。
しかし、検査数が少ない事に批判が有る事・検査を徹底した韓国で感染拡大を抑えられた事等から、最近は検査を増やして居り、1日最大2,500件の検査がされて居る。症状が軽い人は検査しない・医療関係者を優先的に検査する等の基準は変わら無いが、今後はモッと増やして行く方向に有る様だ。
感染に関しては、様々なシミュレーションがされて居る。例えば人口の20%・40%・60%が感染した場合の入院患者・集中治療を要する患者・必要な医療物資や医療従業者の数等である。3月下旬には、非常事態の為の備蓄庫から医療物資が病院に運ばれた。
戦後初めての歴史的な出来事で有る。何百万と云う医療用マスクや防衛服・人口呼吸器等の備蓄が有ると云う。場所と数は秘密だが、こうした備蓄庫はフィンランド全土に複数有るそうだ。
現在は、感染のパターンが予想とは異なって来た為、感染のピークが何時頃に為るかが明言し難い状況にある。しかし今後、感染者数が医療キャパシティを超えた場合、誰を優先的に集中治療するのか選ば無ければ為ら無く為る可能性がある。
当初は、70歳以上の高齢者と基礎疾患の有る人を優先すると言われて居たが、最近は回復の見込みの有る人を優先すると云う考え方が出て来て居る。
緊急事態法発令
フィンランドで、非常事態宣言が出されたのは3月16日。続いて18日から30日迄3回に分けて、期限着きで緊急事態法が部分的に発令された。緊急事態法発令の目的は、感染者が爆発的に増えて医療崩壊が起きる事を防ぐ為に、増加のスピードを遅らせる事。
最初は小中高校・大学・図書館・美術館等の公共機関と国境が・2度目はウーシマー県が・3度目はレストランやカフェ・バー等が閉鎖された。国境封鎖に着いては、野党の右翼政党「基本フィンランド人」は乗り気だが、政府与党内で慎重意見が出て居た。又当初は市民の反対が強かった。
首都ヘルシンキが在るウーシマー県が封鎖されたのは、ソコで感染が最も多くソコからの人の移動に依って感染が無かった地方に感染が広がって居る為。仕事や避けられ無い理由が有る場合以外、ウーシマー県からの出入りが禁止に為り、警察が道路で監視する様に為った。
これ等の措置は、市民の行動を大きく制限するもので民主主義の原則に反する。又、疫病に対する不安を利用して、政治的な原則が変えられて行く危険性は有り得る。この危機に乗じて、3月末に首相の権限を限り無く拡大したハンガリーの例が示すように。
フィンランド政府は、緊急事態法の発令は防疫を目的とし、飽く迄も危機的状況への例外的な対処で有る事・法治国家の原則を変えるものでは無い事を強調して市民の同意を得る事が出来た。
スウェーデンの状況
フィンランドでの新型コロナ感染のスピードは、3月半ば迄は隣国スウェーデンとノルウェーより早かった。しかし、 3月下旬には状況は逆転、集中治療の数と死者数でフィンランドは2つの隣国に7日〜10日遅れが出て居る事が報じられた。
4月1日現在、フィンランド・人口約550万人の感染者は約1500人・死者17人。スウェーデン・人口約1,020万人では感染者約4900人・死者239人。ノルウェー・人口約530万人では、感染者約4600人・死者43人。デンマーク・人口約560万人では感染者約3,000人・死者90人である。
フィンランドが緊張感を持って対処して居るのに、隣のスウェーデンの対応が緩やかな事・死者が大きく増加して居るのにレストランやカフェ・街が普通に賑わって居る事は、驚きや当惑を持って屡々報じられた。スウェーデンの緩やかな対応には、次のような理由がある。
1 スウェーデンには、政治家が市民の行動を制限する権利が無い。政府では無く役所が指示では無く奨励を出す。
2 規制の無い日常生活を保つ。危険性に着いて充分な情報を出し、市民の良識有る任意行動を信頼する。
3 感染の全てを把握する事・拡大を止める事は出来無い。感染のスピードを遅らせる努力をし、確実に感染を減らせる対策は執る。国境閉鎖より協力が必要と考える。
4 経済への大きな打撃を避ける。経済的・社会的活動を止めず、倒産や失業を減らす。
緊急事態に際しても、市民の自由を制限し無いと云う原則を重んじるスウェーデン。ドチラが「良い」とは言い難い。しかし、フィンランドでは市民の自由は制限されて居るが、真剣に市民を守ろうとして居るのはフィンランドだと云う感じ方が強い様だ。
信頼出来る政治と社会のシステム
日本の首相は、新型コロナに関する信頼出来る統計や現在の立ち位置・今後の予測・対策等は示す事無く「ギリギリで持ち応えて居る」「思い切った手を打つ」等と発言するに留まって居る。「お肉券」「お魚券」「一世帯に布マスク2枚」等の案が出されたが、新型コロナに依って生活が困窮して行く国民を分け隔て無く守る積りは無い様だ。
フィンランドの首相は、常に明確に現状と対策を語りブレ無い。その対策は幅広い支持を得て居る。防疫と自由の関係に着いての問い・又感染者数が医療キャパシティを超えた場合・誰に集中治療を受ける権利が有るのかと云う難しい問いは残る。
しかし、フィンランドで政府は市民と共に在る。この危機の時代、信頼出来る政治と社会のシステムが在るのは幸いな事だと実感して居る。
岩竹 美加子 ヘルシンキ大学非常勤教授 1955年 東京都生まれ 明治大学文学部卒業 ペンシルベニア大学大学院 民俗学部博士課程修了 早稲田大学客員准教授 ヘルシンキ大学レンヴァル・インスティチュート研究員 ヘルシンキ大学教授等を経て 現在ヘルシンキ大学非常勤教授・Dosentti (青弓社HPより)
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