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2020年04月16日
コロナ禍で 政府に中々伝わら無い国民の不安
コロナ禍で 政府に中々伝わら無い国民の不安
〜東洋経済オンライン 植田 統 4/16(木) 15:10配信〜
弁護士・名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授 植田 統氏
新型コロナウイルスの感染拡大には未だに収束の兆しが見え無い。政府のコロナ対策の遅れには国民から批判が集まったが、緊急事態宣言は小池百合子都知事や国民の声に押されて4月7日に発出された。政府は11日に為って基本的対処方針を変更し、全国的に飲食店等への外出自粛を強く促すとしたが、7都府県の知事との隔たりも生じて居る。
政府に対して新型コロナ対策に対する後ろ向きの態度を感じて居る読者も多いのではないだろうか。11日には安倍晋三首相から「出勤者が多過ぎる、7割の社員は在宅勤務にして欲しい」と云う要請も出て来た。更に12日には安倍首相に依る星野源とのコラボ動画のSNSへの投稿も炎上した。恐らく自宅で過ごそうと云う呼び掛けで在ったのであろうが、一部の国民からは・・・生活出来無い人が居るのに優雅過ぎると批判を招いた。
国民の多くが466億円も掛けて全世帯に配布をして欲しいとは思って居ないアベノマスクも、もう17日以降には家に届き始めてしまう。筆者も、こうした政府の遅過ぎる対応・一貫性の無い対応・的外れな対応を批判したいのは山々である。しかし、批判だけをして居ても、政府には国民が何を政府に期待して居るのかが伝わら無い。ソコで、本稿では「新型コロナ対応で政府に遣って欲しい事」と題して、具体的提言をしてみたいと思う。
医療機関への経済的支援
医療の現場では、通常の患者への対応に加えて、新型コロナの感染が疑われる患者・感染した患者が急増して来た。この事から、医師や看護師、その他医療従事者への仕事の負荷が高まり、最早現場は限界に近付いて居る。仕事が激務であるばかりでは無く、サージカルマスク・防護服・フェースシールド等の在庫も底を尽いて居る事から、医療従事者は最前線で感染の恐怖とも戦わざるを得ない。家族への感染を恐れて家に帰らず、病院に寝泊まりする医療従事者や車の中で一夜を明かす医療従事者が多く居ると云う。
こうした医療従事者を救う為に、彼等がホテルで休養を取れる様に宿泊費をサポートする事等を考えた方が好いのではないだろうか。
日本に在る特定感染症指定医療機関は4医療機関・第一種感染症指定医療機関は55医療機関・第二種感染症指定医療機関の内感染症病床を有する指定医療機関は351医療機関で有るから合計でも410医療機関。仮に1医療機関当たり1,000万円の支援を行ったとしても41億円の負担に留まる。2,000万円ずつ支援しても82億円だ。アベノマスクの466億円に比べれば、遥かに安く、且つ、効果的な支援で有る。政府は、早急に予算措置を講じて欲しい。
医療用品生産への投資と買い取り制度の創設
医療の現場では、サージカルマスク・防護服・フェースシールド等が大幅に不足して居る。厚生労働省の推計に依れば、当面必要な量は、サージカルマスクが2億7000万枚・防護服が180万枚・フェースシールドが900万枚との事であるが、厚生労働省が調達出来るのは、サージカルマスクで4月中に70万枚しか無く、防護服は月間の供給量が16万枚しか無いと云う状況である。
圧倒的な需要超過状態に有るのだから、異業種からの参入が在っても好さそうであるが、企業の動きは鈍い。サージカルマスク、特に高性能医療用マスクN95では1年程掛かる厚生労働省国家検定規格認証の壁が有る。防護服では安い輸入品と比較した場合、コストの壁が立ちハダカル。
更に、重症者の治療に必要と為る人工呼吸器も不足して居る。アメリカでは、GM・フォード・クライスラーの自動車メーカーが、医療機器メーカーと連携して生産を開始する。アメリカ政府が民間企業に協力を要請出来る「国防生産法」を発動した為だ。しかし、日本では、通常4カ月程度掛かる政府の承認が壁と為り、異業種からの参入は進んで居ない。
この様に必要な医療用資材・機材の国内生産の拡大が進ま無い理由のもう一つは、新型コロナの感染拡大が短期間で終わった場合に、大量の在庫を抱え、又、投資が回収出来無く為るリスクが有る。
こうして様々な壁を取り払う為には、政府が承認・認証制度を軽減する、政府が製品の買い取り制度を作る・投資を補助する仕組みを作る等・・・ビジネス上のリスクを低くする制度の早急な整備が必要である。
安倍首相は15日、医療用マスクや防護服を生産する企業の幹部・・・企業数は正確には判ら無いが10社程度と想定される・・・とテレビ電話方式の会議を持ち、余剰在庫を全量買い取る事を表明した様であるが、これを制度化する事が早急に望まれる。
保健所の機能拡充
新型コロナに感染したかも知れない患者が、最初にコンタクトする先が保健所である。現在保健所は、電話相談・PCR検査の検体採取の医療機関の紹介・検体の搬送と云う3つの業務を担って居る。
しかし、保健所のスタッフの数は少なく急増する電話対応にテンてこ舞い。スタッフは残業に次ぐ残業で有り、彼等も我慢の限界に近付いて居る。保健所は、都道府県・市町村に属する施設であるので、先ずは、各県・各市が、県庁・市役所の職員を応援に出すべきであるが、今や新型コロナ問題は全国的問題なのだから、政府・厚生労働省も保健所を支援する方策を考えるべきであろう。
特に、PCR検査の実施に付いては、今の様な医療機関の帰国者・接触者外来だけではキャパが足り無い。その上、院内感染リスクも有るのだから、医療機関の外でのドライブスルー検査・休業して居る公共施設や市役所等への検査場所の設置等を行うべきである。その時規制が壁に為ると云うなら、その撤廃を早急に進める事が政府の役割であろう。
こうして、PCR検査を拡大し、感染者の数・新型コロナの広がりを正確に掴む体制を早急に整える必要がある。
東京都医師会は、自ら都内20カ所にPCR検査所を設置する方針を発表した。恐らく20か所では、マダマダ数が足らず、50カ所・100カ所程度を設置しないと感染拡大には対応出来無いものと思われる。此処は政府・東京都も医師会の動きをバックアップし、補助金を出す・人を派遣して医療業務以外の事務作業を支援する・自衛隊を出動させて検査所の設置をスピードアップする・・・等の施策を早急に打って行くべきであろう。
植田 統 弁護士・名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授 以上
「新型コロナ経済政策」と「サラ金」
お粗末過ぎる共通点をご存知か
〜現代ビジネス 4/19(日) 7:01配信〜
東京財団政策研究所の 小林慶一郎研究主幹
経済学者10人が提言した「コロナ対策」
新型コロナウイルスの感染拡大で経済に深刻な影響が出る事が懸念される中、或る政策提言が話題を呼んでいる。その内容は、収入が一定以下に為った人が国から無審査・無担保で1年間、毎月15万円迄を借りられる制度を作ると云うものだ。マイナンバーで紐付けをし、納税と共に返済させる事で貸し倒れリスクを減らす事が出来ると云う。
この提言をまとめた中心メンバーは、東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹や一橋大学国際・公共政策研究部の佐藤主光教授等の経済学者10人だ。
一橋大学国際・公共政策研究部の佐藤主光教授
彼等の提言は世界から見れば「落第点以下」
「必要な所に速やかにおカネを配る事が出来るシステムを組む事が必要だ」と小林氏は語って居る。この学者達は他にもテレワークやオンライン診療の推進等を訴えて居るが、無収入者への貸与金に着いては、本当にコロナ対策なのかと笑ってしまう程だ。彼等の提言は、世界から見れば「落第点以下」である。それはどう云う事か。
コロナ対策では、G7各国は協調路線を取り、財政政策と金融政策を組み合わせ景気後退に依る失業防止を目標として居る。それは詰り、マクロ経済政策だ。
財政政策に於いては、当座の有効需要を作る為に、減税や給付金の形式の政策が選択される。その金額は、およそGDPの5%。日本で言えば、消費税減税や現金給付を含めて、最低でも25兆円規模の財政政策がG7の一員として求められて居る。
マクロ経済政策的な観点を一切持って居ない
同時に金融緩和も行われる。もし金融緩和無しで財政政策をすると、日本に於いて言えば、円高が進み、折角生まれた内需が外需の減少に依って相殺されてしまうからだ。これは「マンデル=フレミング・モデル」と呼ばれるもので、提唱者であるマンデル氏が、この功績でノーベル経済学賞を受賞した事からも、世界の経済の「常識」で在る事が判る。
冒頭の経済学者10人の提言がお粗末なのは、こうしたマクロ経済政策的な観点を一切持って居ない事だ。飽く迄カネを「貸す」形式に拘って居る事、肝心の減税に関して全く言及されて居ない事は、どう考えても可笑しい。
おカネが無い人にカネを貸し、返せ無く為ったら公的年金から天引きすると云うのだから、考えはサラ金と殆ど変わり無い。海外の大学でこんなレポートを出したら先ず落第が決定するだろう。提言に関わった10人の経済学者の顔ブレを見ると、仕方の無い事なのかとも思う。東日本大震災後の復興増税から、昨年10月の消費増税に至る迄、増税を訴え続けて来た人達だからだ。
ハッキリ言えば、こうした御用学者達の提言を政治家や財務官僚が聞き続けて来たから、日本経済は幾度と無くピンチを迎えて居るのだ。自分達の増税路線は間違って居たと言うのが先だろう。
「コロナ・ショック」は、最早リーマン・ショック級のインパクトが避けられ無い。各国の政策担当者は、そう認識して居るだろう。冒頭の政策の提唱者達は、リーマン・ショックの時も真面な提言をして居なかった。そうした人達が政府審議会等で実権を握り、財務省に緊縮財政を吹き込んデ居る・・・これが日本の現状だ。
週刊現代2020年4月4日号より ドクターZ 以上
コロナ危機で総理への道が見えた小池百合子「無能確定」の安倍晋三
コロナ危機で 総理への道が見えた小池百合子
「無能確定」の安倍晋三
〜プレジデントオンライン 4/16(木) 15:16配信〜
記者会見する東京都の小池百合子知事 2020年4月10日午後 東京都庁 写真 時事通信フォト
「これ程無能な人間を他に知りません」
〜新型コロナウイルスの感染拡大に伴う初の「緊急事態宣言」は、この国のリーダー達の手腕を浮き彫りにする事に繫がった。
政権奪還から7年半もの長期政権を築いて来た安倍晋三首相には、初動の遅れや国民の不安に寄り添わ無い政策に批判が集まり内閣支持率が低下。一方で、強力なリーダーシップと国民目線で「命を守る」と発信し続ける東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事には、インターネット上で賛美する声が相次いで居る。コロナ危機で現れた国民が求めるリーダー像・・・その違いを追った〜
「これ程無神経な人間を他に知りません」映画監督の白石和彌氏・「止められる気骨の有るスタッフは居なかったのかな」作家の辻仁成氏。
4月7日の緊急事態宣言後初めての週明けを迎えた13日、テレビでは朝の情報番組から昼のワイドショー迄安倍首相の公式ツイッターへの批判が相次いだ。歌手・星野源氏の曲「うちで踊ろう」と共に優雅に寛ぐ様子を投稿した首相のコラボ動画には芸能界も厳しく反応し「空気を読む事が出来無かったと云う事」落語家の立川志らく氏「一寸バカにされて居る気がする」お笑い芸人の加藤浩次氏等の批判が渦巻いた。.
安倍に置き去りにされた全国民
史上最長と為った安倍政権は「3本の矢」に代表される景気浮揚策や強硬な外交・安全保障政策等に依って保守層を中心に「安倍信者」を生み、高い支持率を維持して来た。
だが、コロナ危機到来後の言動には「信者」の失望感も強く、最早「大宰相」の姿はソコには無い。ウイルス拡大の震源地と為った中国や感染急拡大が見られた韓国からの入国制限は3月5日迄遅れ、欧米並みの強いリーダーシップを国民が求めて居たタイミングで首相が発信したのは「1世帯に布マスク2枚の配布」
緊急経済対策に盛り込まれた「1世帯当たり30万円給付」「中小企業200万円・個人事業主100万円を支給」も要件が厳格過ぎると批判され、殆どの国民は置き去りに為る「温度感」の違いが現実に表れて居る。
産経新聞社とFNNが4月11〜12両日に実施した世論調査では、新型コロナを巡る政府の対応を「評価しない」が一気に25.1ポイント増えて64.0%に上った。全国紙政治部記者が解説する。「首相は人と人との接触を『極力8割』抑制すると呼び掛け、接客を伴う飲食店への出入り自粛を強く要請したが、休業に伴う補償はし無いと繰り返して居る。しかし、出歩く人が少無く為れば飲食店の客も売り上げも減る訳で、閉店するかどうかの判断を店側に丸投げするのは無責任だ」共同通信社に依る世論調査(4月10〜13日)では国が損失補償すべきとの回答は8割を超えた。
株を上げた、小池都知事と吉村府知事
コロナ危機で安倍政権の脆弱性が露呈した一方で、国民が求めている強いリーダー像と重為って居るのが小池都知事と吉村府知事だ。
「都民の命に関わる問題であり、医療現場は逼迫して居る。待つ事は出来無い」「危機管理の要諦は最初に大きく構えて、状況が良く為れば緩和して行く。様子を見てから広げて行くべきでは無い」(小池氏)
「府民の命を守る為に、ガッと皆で自粛して抑え込むのが重要だ」「新型コロナウイルス対策特別措置法自体が欠陥だらけで、国会議員はチャンと仕事しろよと思って居る」 (吉村氏)
2人の知事が発信するメッセージは明快で、国が1カ月間の緊急事態宣言の期間(5月6日迄)の内、半分の2週間を使って「外出自粛の効果を見極める」とした点や、特措法に基づく知事の権限が不明瞭な点に疑問を投げ掛け「命ファースト」でスピード感のある対策を講じるべきと訴え続けた。
東京都と大阪府は、未だ国民のコロナウイルスへの危機感が余り無かった1月24日に一早く対策本部を設置し、海外からの帰国者対応や感染拡大防止策等の検討を重ねて来た。人口が多く、公共交通機関が張り巡らされ、近隣自治体から通勤・通学者等が集まる大都市の為感染者数は多いが「海外の様に医療崩壊させる事無く、時に国を牽引するリーダーに共感する人々は多い」(自民党中堅議員)
小池百合子総理、爆誕か
首相が記者会見等で国民にメッセージを発する頻度が少ない一方で、2人は連日の様にメディアを通じて外出自粛や医療体制の状況等を伝えて居り、その疲労感は誰の目にも明らかだ。ツイッターでは「#百合子がんばれ」「#吉村寝ろ」がトレンド入りして話題に為った。
そんな中、首都圏を中心に小池都知事のリーダーシップに注目が集まって居るのを背景に、或る自民党関係者は「コロナの終わり方次第では、小池百合子総理が現実に為るかも知れない」と危機感を募らせる。2017年の衆議院選挙で希望の党代表として大敗した小池都知事は当時、女性の活躍を阻む「ガラスの天井」よりも厚くて硬いで有ろう「鉄の天井を知った」等と発言。女性初の総理大臣への野望はこれ迄、常に持って来た。
サテ、小池都知事と吉村府知事は、世論調査で8割が求めて居た国の緊急事態宣言を政府が速やかに出す様要請し、小池都知事は特措法に基づく施設の使用制限の要請に難色を示して居た政府に何度も直談し、宣言対象の7都府県知事が休業要請出来る様牽引した。
知事の権限・責任の範囲に於いて国との調整等不要だ
「何故、小池都知事が違う事を遣るのか理解出来無い」と批判しながら、一転して東京都に足並みを揃えた神奈川県の黒岩祐治知事や、大阪・兵庫間の往来自粛を呼び掛けた吉村府知事に「大阪は何時も大袈裟」と不快感を示した兵庫県の井戸敏三知事とは、その「危機感」も「発信力」も雲泥の差が有る。
休業要請を巡っては、政府の対策本部が3月28日付の「基本的対処方針」で、蔓延防止策として都道府県が「地域での感染状況を踏まえて、的確に打ち出す」として居たものの、4月7日に急遽改正「都道府県は国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の効果を見極めた上で行う」と緊急事態下としては不可解な文言で自治体の権限を大幅に縛った事が現場の混乱に繋がった。
元大阪府知事の橋下徹氏は4月7日、ツイッターを更新し「緊急事態の時程、各組織の権限・責任の明確化、指揮命令系統の明確化が重要だ。だから法の適用が必要だった。東京都も大阪府も、知事の権限・責任の範囲に於いて国との調整等不要だ。緊急事態なのだから、各々権限と責任の範囲で行動すべきだ」と指摘して居る。
相変わらずの田崎史郎の ウルトラC安倍擁護に冷笑
安倍首相に依る緊急事態宣言には、日本経済への打撃を考慮した経済産業省や財務省から猛反対があり、発出が遅れる事に繋がった。休業要請に伴う「補償」に後ろ向きな経産省OBの著名人等は、休業要請とセットで「感染拡大防止協力金」を手当てすると発表した小池都知事を繰り返し批判。
ワイドショーでは、安倍政権に近いとされる政治評論家の田崎史郎氏が「吉村知事、発言のブレが一寸激し過ぎる。それ位ブレる方に権限を与えたらどう為るのかと不安を持つ」と批判したり、首相に依る緊急事態宣言が遅れた理由を小池都知事に責任転嫁したりして「炎上」を招いて居るが、ポジショントークとも受け取れる主張への共感は広がっては居ない。
過つては、テレビや新聞等で評論家やジャーナリスト等が批判を集中すれば、牙を向けられたリーダーの好感度は大きく低下した。だが、SNS等ネットを情報の収集・発信ツールにする人が増えた今では、その影響も薄れて来て居る。今回のコロナ危機下で見られて居る変化を民放記者は自虐的に解説した。
「外出自粛や在宅勤務の急増で、首相や知事達に依る記者会見の生中継を家で見る人が多く為った。この『見える化』が自分自身で真贋を調べる時間の増加に繋がり、政治的スタンスから執拗に『政敵』を攻撃する発言が嫌われて居る一方で、不安を抱く国民の心理に寄り添う首長には共感が集まって居る」
第1次安倍政権時には「KY=空気が読め無い」と云う言葉が流行ったが、危機下のリーダー達には国民の「空気」を読む事も必要の様だ。
政経ジャーナリスト 麹町 文子 以上
新型コロナ恐慌が 「アベノミクスの化けの皮」を剥がす日
寺島実郎【週刊エコノミストOnline】
〜mainichibooks.com 寺島実郎 4/19(日) 10:10配信〜
(出所)経済協力開発機構 国際通貨基金
〜恐怖心が理性を超える時、社会心理は不安に駆り立てられる。その不安をテコに官邸主導の「国難政治」が、日本を奇妙な方向に引っ張って居る。正気を取り戻す時である〜
寺島実郎氏
「官邸主導」の限界
3月16日時点で、世界151カ国・地域で16万人を超す感染者が出て居り、WHO・世界保健機関は3月11日に「パンデミック(世界的流行)」を宣言した。これにより東京五輪にオレンジ信号が灯った。終息宣言が出無い限り、開催は危うく為り、遅くとも2カ月前の5月末迄に終息宣言が求められるが、当然、震源地の中国での終息宣言が不可欠で、皮肉にも中国が東京五輪の「引き金」を握る事態に為った。
安倍晋三首相は3月2日から全国の小中高の休校を要請した。この要請は、海外では日本政府による緊急事態宣言と受け止められ、日本への渡航・日本人の入国制限を加速させる結果と為った。文部科学省や厚生労働省の現場を信頼せず、少数の官邸官僚が主導する政策判断が事態を屈折させた。
未だ1件の学級閉鎖が起こって居る訳でも無く、ウイルス特性が高齢者に多くの発症者をもたらして居る現実を考えた為らば、学校現場の現実を踏まえた段階的積み上げに基づく意思決定が為されるべきで、議論の方向が「休校に伴う関係者への休業補償」に向かい、数千億円の公的負担が休業補償に投じられる事態と為った。
3月13日に米国は非常事態宣言を行ったが、目玉政策は500億ドルの国費を検査・医療体制の整備に投入すると云うもので、今最優先されるべきは、ウイルス検査・医療・研究への資金投入と体制整備であり、休業補償では無い。
「国難」と云う言葉は、先日迄は北朝鮮のミサイル発射に使われ、官邸主導で大騒ぎした揚げ句、米国からの防衛装備品購入拡大と云う結果に行き着き、本質的解決には為って居ない。政治主導・官邸主導と云うと「リーダーシップの発揮」として「遣って居る感」が印象付けられるが、所掌の現場から乖離(かいり)した偏狭な意思決定に堕す危険がある。
「株高」の幻想
「アベノミクス」と云われる異次元金融緩和を軸にしたインフレ誘導政策も対米過剰同調だけを際立たせる近隣緊張外交も「官邸レベルの国」に日本をしてしまった。新型コロナ対応も日本の英知を結集した展開にし無ければ為ら無い。
日本経済へのインパクトを視界に入れて置きたい。新型コロナ等無くとも、アベノミクスは愁嘆場に来て居た。出口無き異次元金融緩和を続けて来た為、此処で景気刺激策を打とうにも、政策手段が限られて居る。これ以上の金融緩和の深掘りも財政出動も限られて居る。
世界的株安連鎖の中で、日本株も乱高下を続けて居るが、日本は異様な対応を続けて居る。3月16日、日銀がETF・上場投資信託買いを年6兆円から12兆円へと拡大すると発表した。中央銀行が直接株式市場に資金を入れること自体異様な事だが、今や日本の上場株式の筆頭株主が日銀に為ってしまった。
日銀ETF買いの現在のポジションは約29兆円、GPIF・年金積立金管理運用独立行政法人の購入分と合わせて、約85兆円の公的資金が株価維持の為投入されて来た事に為る。日経平均が1万9,500円を割り込むと公的資金で購入した株は含み損と為る。産業の実力以上に景況感を引き上げて来た「株高」幻想が崩れた時が日本経済の本当の正念場である。
経済人は「マネーゲーム」では 、産業の実体を直視し無ければ為ら無い。2019年の日本の実質GDP・国内総生産成長率は0・7%で、日本の実体経済はアベノミクスの7年間、水面上ギリギリの水準で推移して来たのに、株価だけが「根拠無き熱狂」を続けて来た。
我々は、日本の産業現場を直視しデジタル・トランスフォーメーションDXと言われる時代の構造改革戦略を再設計し無ければ為ら無く為って居る。鉄鋼、エレクトロニクス、自動車と云う日本の基幹産業の実態を直視すべきだ。
「鉄は国家なり」と言われた日本製鉄は4基の高炉を止めると云う。「技術の日産」は強欲なグローバル経営者に依るマネーゲームに翻弄(ほんろう)され、モノ作り日本のシンボルだった東芝は原発事業で大きく躓き「ハゲタカ」投資家の犠牲に為って居る。
国際連帯税の導入を
気が付けば、創出付加価値の総和である日本のGDPの世界比重は、平成が始まる前年の1988年の16%から、2018年には6%に迄下落した(前図)
三菱総研の「未来社会構想2050」報告に依れば、2050年には1・8%に迄埋没すると云う。金融の水膨れに依存し危機感無く迷走して居る処にコロナが襲って居る状況で、コロナは原因で無く、問題の本質を炙り出したと云う事だ。
コロナの問題も、政策科学のレベルで対応すべきである。感染症ウイルスの問題は、国境を越えた「移動と交流」の拡大の影の問題であり、言わば「グローバル・リスク」だ。昨年の日本への外国人来訪者は3,188万人、日本人出国者は2,008万人と5,000万人を超す人々が国境を越える。これに伴うリスクを制御する政策が必要なのである。
例えば、新型コロナウイルスの致死率は、3月16日時点で3・5%(日本は2・0%、WHO)であり、感染力は強いが弱毒性・バイオ・セーフティー・レベル〈BSL〉−2である。為すべきは致死率7割と云われるエボラ出血熱などの「BSL−4」に対応出来る体制を整える事である。
実は、BSL−4施設・高度安全実験施設は、世界24カ国に59カ所在るが、日本には国立感染症研究所(東京)の1カ所のみで、要約2カ所目が長崎大学に建設中だ。検査、臨床、研究、ワクチン開発、専門人材育成等不可欠の施設であり、少なくとも日本に後数カ所の建設を推進すべきであろう。
また、その財源確保の為、グローバル化の恩恵を受ける個人・企業に責任を共有させ「航空券連帯税」「金融取引税」等の欧州が先行して居る国際連帯税の導入に日本も参画すべきである。
人物略歴 寺島実郎(てらしま・じつろう)日本総合研究所会長 1947年生まれ 1973年早稲田大学大学院修了 同年三井物産入社 常務執行役員を経て2016年4月から現職
以上
※注・管理人 麹町 文子氏の肖像とプロフィールを探したのですが、上記のものしか入手出来ず、万が一違って居たら謝ります・・・ゴメンナサイ。無論、顔や経歴よりも文章の中身が大切なのは云う迄も有りません。氏の「コロナより安倍晋三が恐怖だ!」は素晴らしく的を得た表現でした。今年の流行語大賞の上位にランクされる事請け負います・・・
コロナで露呈した「日本経済の脆弱性」の根因
コロナで露呈した「日本経済の脆弱性」の根因
〜東洋経済オンライン デービッド・アトキンソン 4/16(木) 5:35配信〜
コロナ問題に対応する為の「テレワーク導入」も、小さい企業程進みが遅いと言います(撮影 尾形文繁)
〜オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名を馳せたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行って来た彼は、このママでは「@人口減少によって年金と医療は崩壊する」「A100万社単位の中小企業が破綻する」と云う危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で、日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析して居る。
日本企業の「生産性が低い」問題の根源は「規模が小さい企業が多過ぎる」産業構造に有ることを明らかにして来たこれ迄の連載に続き、今回はコロナ問題で露呈した日本の産業構造の脆弱性を解説して貰った〜
小さい企業程「テレワーク導入」が出来無い
コロナウイルスの蔓延に依り、多くの日本企業が窮地に陥って居ます。特に中小企業の経営は厳しく、今後多くの中小企業が経営破綻する事が危惧されて居ます。当然ですが、この様な危機への対応力は一般に企業規模が大きい程強く、小さい程弱く為ります。国全体で見ても同様に、企業の平均規模が大きい程危機に強く、小さい程危機に弱く為ります。
また、この様な有事の際には「企業さえ潰れ無ければ好い」と云う訳ではありません。そこで働く従業員の命や健康を守る事も大切です。実はこの面で見ても、規模が小さい企業程従業員を危険に晒し易い可能性があります。
東京商工会議所が2020年3月に実施した調査に依ると、テレワーク導入率は従業員数300人以上の企業が57.1%だったのに対して・50人以上300人未満の企業では28.2%・50人未満の企業では14.4%に留まって居ました。
50人未満の企業の経営者も、悪意を持って導入を先送りして居る訳では無いでしょう。規模が小さ過ぎて、時間的にも金銭的にも人員的にも余裕が無く、導入出来無いのだと推察出来ます。こう云った企業が多い国程、当然、テレワークの導入率は構造的に低下しますので「Stay at home」に悪影響を及ぼします。
更に、小規模事業者が増えれば増える程、その国の生産性が低く為るので財政が圧迫されます。すると、小規模事業者が多い分だけダメージが大きいのに、それに対応する為の予算が限られてしまうのです。
この様に見て行くと「中小企業は国の宝だ」と云う日本の「常識」が本当に正しいのか疑問に思えて来ます。私は、今回のコロナ危機で日本の産業構造の弱さが露呈したと考えて居り、その原因は中小企業に有ると見て居ます。今回は、過つて「日本の宝」だった中小企業が、何故産業構造の弱さの原因と云えるのかを解説して行きます。
中小企業の価値は「人をムダに使う」事に有る
日本では、中小企業が矢鱈と大事にされて居ます。「中小企業は国の宝だ」「日本の技術を守って居るのは中小企業だ」と云う声を聞く事も少なくありません。確かに、そう云う一面も無い事は無いでしょう。一般的に、中小企業は大企業より顧客との距離感が近く、又、意思決定が早く、身動きが取り易いのは確かです。
一方、中小企業は規模が小さく為る程、人力に頼る傾向が強く為ります。従業員が少なく分業が出来無いので、専門性が高まらず機械化もナカナカ進みません。その結果、効率化が進ま無いので、その分、余計に労働力が必要に為るのです。だからコソ生産性が低いのです。
人口が増加し労働力が溢れて居る時代には、中小企業の存在は貴重です。何故為らば、中小企業は人間に依り多く依存する「労働集約型」で、或る意味、人をムダに沢山使って呉れるからです。
中小企業自体の労働生産性が低くても、これ等の企業が雇用を増やし就業率が高まれば、国の全体の生産性も高まります。その意味では、中小企業の存在も生産性の向上に貢献して居たと言えるのです。生産性とは、GDPを総人口で割ったものです。(生産性=GDP/総人口)
又、労働生産性とはGDPを就労人数で割ったものです。 (労働生産性=GDP/就労人数) 此処から、生産性は労働生産性に労働参加率をかけた値である事が判ります。
生産性 = GDP/総人口
= (GDP/就労人数)×(就労人数/総人口)
= 労働生産性×労働参加率
・・・この式からは、生産性を高める為には「労働生産性」を高めるか「労働参加率」を高めれば好い事が判ります。例えば或る国の労働生産性が1,000万円で、労働参加率が50%で有れば、国全体の生産性は500万円です。この国で中小企業が沢山生まれ、それ等の企業が雇用を増やした結果、労働参加率が60%迄高まったとしましょう。すると、労働生産性が全く伸び無かったとしても、生産性は500万円から600万円に上がるのです。
人口が増加して居た時代に於いては、中小企業は「労働参加率」を高める役割を果たして居ました。その意味で「国の宝」と言え無い事も有りませんでした。しかし、日本は既に人口減少の時代に突入し、この傾向は今後数十年に渉って続きます。人をムダに多く雇う中小企業の存在は、強みでは無く為り逆に弱みに変わります。
何故為らば、企業と云うものは規模が小さければ小さい程、労働生産性が低いからです。日本企業の99.7%は中小企業ですから、日本の生産性が低いと云う事実は、日本の中小企業の労働生産性が低い事をそのママ反映して居るのです。
日本の中小企業の真の姿
中小企業庁に依ると、2016年時点で日本には357万社の中小企業が在ります。先程も述べた通り、全企業の99.7%を中小企業が占めて居ます。この様に数多在る中小企業を一括りにして「中小企業は日本の宝だ」と考えるのはそもそも乱暴過ぎます。
勿論357万社も在れば、玉石混淆なのは当たり前です。中には「玉=宝」も在るでしょうが、そうでは無い「石」も沢山混じって居る筈です。確かに、日本の中小企業の中にも、宝と云って好い企業も含まれて居るかも知れません。しかし、平均値で見ると日本の中小企業は余りにも生産性が低く、払って居る給料も極端に低いのです。仮に宝が含まれて居るとしても、全体としては、中小企業はトテモ宝だと評価するには当たら無いのです。
「嫌々、私の知って居る町工場は凄い技術を持って居るんだよ。マサに宝だよ」
こう云う、自分の知って居る特殊事例を取り上げ一般化して、それが恰も日本の中小企業全体に当て嵌る様な物言いをする声も耳にしますが、先ずは日本の中小企業全体の実態・エビデンスを直視すべきです。
先程も紹介した様に、日本には357万社の中小企業が在ります。日本の中小企業の内、中堅企業は53万社で・小規模事業者は305万社でした・・・平均従業員数は中堅企業が41.1人だったのに対し、小規模事業者は足ったの3.4人です。驚くべき事に、1000万人もの労働者がこの豆粒の様な小規模事業者で働いて居るのです。
実は、50%強の日本企業の売上は1億円にも達して居ません。こう云った企業は当然、経営に余裕が有りませんから、有事の時には直ぐ経営が困難に為ります。中小企業を「日本の宝」と言う人が想像して居るのは、今紹介した様な企業群とは異なる会社では無いかと推察します。恐らくは中堅企業を想定して居るのではないでしょうか。
小さい企業が多いと様々な弊害が起こる
従業員が3.4人しか居ない小規模事業者では、到底輸出等出来ません。ドイツの学者の調査に依ると、継続的に海外に輸出をするには、従業員数158人の規模が必要であるとされて居ます。
従業員数が3.4人の会社には、最先端技術もキャッシュレス化もビッグデータもイノベーションも、殆ど無縁です。小さい企業程緊急時のテレワーク導入率が低いのは、この記事の冒頭で見た通りです。日本だけでは無く世界的に見ても、企業の規模が小さく為る程、最先端技術の普及率が低下する事が報告されて居ます。
又、企業の平均従業員数が少なく為る程、有給休暇取得率が低下します。企業の規模が小さい程、1人ひとりの社員に掛かる負荷が重く休みを取る余裕が無く為るからです。同じ理由で、中小企業の占める割合が大きく、企業の平均規模が小さい国程、女性の活躍も進んで居ません。これは世界中で確認出来る傾向です。
人口減少と高齢化に依って増加する現役世代の負担を緩和する為には、女性活躍の推進が極めて大切です。しかし、日本では女性活躍を進めたくても、小さい企業ばかりの産業構造に為ってしまって居る為、ナカナカ進める事が出来無いのです。
企業の規模が小さく為ると、労働者の専門性が低下します。企業数が増えれば増える程、国全体の設備投資の重複が増えて生産性が低下します。結果として、支払える給料も減ってしまうのです。小規模事業者が多い国程財政が悪化して、少子化が進んでしまう事も判って居ます。この点に付いては、この連載の中で改めてご説明します。
この様に「中小企業は国の宝」と云うには、中小企業が多い事の弊害が多過ぎます。失業者が増え無い様に統合・合併を促進し、企業規模を拡大させる政策に舵を切る事が求められます。
デービッド・アトキンソン David Atkinson 小西美術工藝社社長 元ゴールドマン・サックスアナリスト 裏千家茶名「宗真」拝受 1965年イギリス生まれ オックスフォード大学「日本学」専攻 1992年にゴールドマン・サックス入社 日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる 1998年に同社managing director(取締役)2006年にpartner(共同出資者)と為るが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社 1999年に裏千家入門 2006年茶名「宗真」を拝受 2009年 創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社入社 取締役就任 2010年代表取締役会長・2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財を巡る行政や業界の改革への提言を続けて居る
以上
ドイツの市民が「コロナ対策」に、こんなに満足しているワケ 河内 秀子
ドイツの市民が 「コロナ対策」に
こんなに満足して居るワケ
〜現代ビジネス 河内 秀子 4/15(水) 6:31配信〜
写真 現代ビジネス
「満足して居る」が72%
世界中を揺るがす新型コロナウイルス感染症。緊急事態を前に各国のトップは前例の無い中での素早い決断を迫られて居る。危機的な状況下、各国が抱える様々な問題が露わに為り、国や政府とソコに住む人々との関係性迄もが剥き出しに為って行く様に思える。そんな中、政府に対する満足度が急上昇して居る国がドイツである。
ベルリン在住 フリーライター 河内 秀子氏
ドイツ公共放送連盟・ARDが4月2日に実施した世論調査に依れば、メルケル首相率いる連立政権に対する満足度は、2017年10月に発足した今期の政権では最高の63%と為った。又、コロナ禍の危機管理に対しては、満足して居る・非常に満足して居ると云う答えが72%と云う結果に為って居る。先月行われた同様のアンケートでは、連立政権への不満度が65%と云う結果だったが逆転した形だ。
ドイツでは新型コロナウイルスは、2月迄は感染経路もハッキリして居て飽く迄も「外から来たウイルス」のイメージだった。しかし、イタリアに程近い南ドイツでは、3月頭から連日報道されるニュースにも「もう、直ぐそこ迄近付いて居る」と云う焦燥感が見られる様に為った。
南ドイツ、バイエルン州の州首相マルクス・ゼーダー氏は3月2日、連邦政府にこのウイルスの危険を警告し景気対策を呼び掛けて居る。学校の閉鎖・外出制限も真っ先に提案・実行した。
しかし、ベルリンを含む北ドイツでは、感染者数が圧倒的に少なかった事もあって温度差が有り「パニックを煽るべきでは無い」と云う論調で、ドイツ全土では足並みが揃わ無かった。
ドイツで初めて新型コロナウイルスに依る死者が出たのは3月10日。感染者数も瞬く間に1,500人を超え、感染者数が2日で倍増する事も有った。この頃から強い危機感がドイツ全国で共有され、3月13日から大半の国立博物館・美術館や劇場は閉館・イベントは中止に為った。
食料品や日用品を売る店以外は閉店を余儀無くされ、3月16日から学校や保育園も閉鎖・3月23日からは外出制限と接触禁止に依って仕事の形態も急激に変わった。誰もが日常生活に大きな制約を強いられ、今後の経済状況への不安も有る筈だ。
ドイツの経済対策の規模は7500億ユーロ・約90兆円だ。国内総生産に対する割合で見ると日本と余り変わら無いと云う。しかし、ドイツの政府への信頼・満足度は前述の通り急激な右肩上がりを見せて居る・・・その理由は、一体何処に在るのだろうか。
市民と同じ目線で語り掛けるメルケル
先ずドイツの政府やメディアが取り組んだのが、場所や年代等に依って違いが大きい危機感を国民で共有する事だ。メディアは、正確なデータや詳細な情報の視覚的に判り易く、且つ素早い発信に努めて居る。これはフェイクニュースを封じる為にも重要な取り組みだ。
ベルリンの新聞Berliner Morgenpost紙等のメディアは、インタラクティブなインフォグラフィックを次々と出して居り、集中治療ベッド数の空き状況が判る図等も公開して居る。
又北ドイツ放送は、2月26日から、欧州最大級の大学病院・シャリテのウイルス学研究所所長・クリスティアン・ドロステン氏によるPodcast「コロナ・アップデート」をスタート。
ウイルスの専門家であり、政府のアドバイザ−でも有る人物・・・日本で言う「専門家会議」のメンバーに当たるだろうか?が、現状を伝え、現時点で判って居るデータを元に何を注意すべきかを語る。「前のデータを元に以前私はコウ発言したが、間違った見解だった」とアップデートする事も忘れ無い。視聴者からの質問にも答えて呉れる。3月からドイツ中で最も人気のPodcastだ。
アンゲラ・メルケル首相は、そう云った数字や情報を伝えるだけで無く人々の「気持ち」に訴え掛けた。3月18日、メルケル首相が行ったテレビ演説だ。ソモソモ、首相は15年間に及ぶ任期の中で、新年以外に国民に向けてのスピーチを行った事は無い。テレビ演説が行われると云うだけで、今回の事態の緊迫度が国民に伝わる。
「戦争」「見え無い敵」等の言葉で煽る事も無く「Mutti・おかん」の愛称を持つ彼女らしさを強調し大きな信頼感を得た。「沢山の人が仕事に行けず、子供達は学校に行けず、劇場や映画、お店も閉まって居ます。何よりも辛いのは、これ迄当たり前だった人との出会いが無い事かも知れませんね。そんな中で誰もが、今後どう為るんだろうと沢山の疑問や悩みを抱えて居ると思います」と、先ず問題を共有した。
その上で、何故様々な制限をする必要が有るのか、全ての人を保護して、経済的・社会的・文化的な被害を少しでも減らす為に、今必要な事は何かを説明する。
「医療崩壊が起こってしまったら何が起こるか。コレは単なる統計上の抽象的な数字の話では無く、お父さんやお爺さん・お母さんや御婆さん、パートナー等・・・人の話なのです。大企業だけで無く、中小企業・レストラン・フリーランスに取って既に厳しい状況で、来週は更に大変に為るでしょう。しかし、私は断言します。連邦政府は、経済的な影響を緩和する為、そして何よりも職を維持する為に出来る事は全てします。私達は、企業や働く人達がコノ大変な試練を乗り越える為に必要なものは全てを投入出来ますし、又そうするでしょう」
この言葉に続いて「滅多に感謝され無い人達にも、お礼を言わせて下さい」と、スーパーマーケットのレジで働く人にも心を配るのも忘れ無い。
通り一片の演説とは違う、首相の心からの言葉だと感じさせる。「メルケル首相は、そして連邦政府は、この国に住む全ての人を助ける!」と云う力強いメッセージが伝わって来た。
メルケル首相の15年間の任期の中で、最大の人気を集めたこの演説は、具体的な経済支援対策の提案が行われる前に、アラユル職種の人に大きな信頼感を与えたと言えるのではないだろうか。
前述のアンケートに依れば、ドイツ全体の経済状況の悪化に対する不安は75%で・自らの経済状況への不安を感じて居ると云う人は34%・自らの職を失うのでは・・・と云う不安を持つ人は18%だ。しかし、そんな中に在って、保健・医療機関や医師への信頼度は77%と高い。そして実に93%が、3月23日からの「接触制限」措置を支持して居る。
ベルリン「即時支援金」の背景
では、経済政策の方はどうだろう。3月末、ベルリン州政府が行った・・・ドイツが国として行ったのとは又違う新型コロナ経済対策が話題を呼んだ。日本のSNSやメディアでも数多くのニュース?が飛び交ったので、覚えて居る方も多いかも知れない。
ベルリンに住むフリーランス達に、申請から2〜3日で5000ユーロ・約60万円が口座に振り込まれたと云うものだ。申請から振り込み迄平均2日と云うその対応の早さ、金額・納税者番号を持って居て、フリーランスでコロナ危機に依って困窮状態に陥った状況で有れば誰でもと云う「無差別性」が注目を浴びたのだろう。
この即時支援・Soforthilfeには、数多くの受給者からの感謝の声が集まり、又ベルリン芸術家職業組合等からも「ベルリンの政治家が、街の芸術家達の窮状を理解して居ると云う事を証明した」と高く評価されて居る。
筆者自身、実際に受給したこの補助金の内容や背景から、その満足度の理由を考察してみたい。先ず、筆者が住むベルリンは、ドイツの首都で有りながら「ドイツでは無い」と言われる事が多い街だと云う事を理解して置いて欲しい。
連邦制を執って居るドイツでは、16有る州の権限が大きく、教育制度や文化政策等に付いては州にも立法権が有る。地方色も豊かだが、それ以上に「ベルリンは、典型的なドイツと違う」点が多く、又それを誇りにして居る節がある。
東西ドイツの再統一から今年で30年。未だ首都に為って・・・返り咲いてから日が浅い。第二次世界大戦の前から自由と芸術の街であり、東西が分断されて居た時代も反体制的でパンクな気風が有った。現在もそうした雰囲気が残って居る。
現在は、政府・行政の機能は置かれて居るものの、ベルリンの連邦議事堂で話し合われて居る事が、実際に強い影響力を持ってその外で反映されて居るかは微妙な処だ。市内に大企業は少なく、経済的な中心は他州・特に南側に在る。
ドイツは現在、アンゲラ・メルケル首相が属するキリスト教民主同盟・CDUと、ドイツ社会民主党・SPDの連立政権だが、ベルリンの州政府は2016年から、ドイツ社民党・SPDと左翼党・LINK、同盟90/緑の党・Bündnis 90/DIE GRÜNENが率いて居る。こうした特徴を頭に入れた上で、連邦政府とベルリンの経済政策を見てみよう。
ドイツ全体での経済対策の規模は、前述の通り7500億ユーロ・約90兆円だ。事業者・企業向けには、融資や救済基金等が準備されて居り、又「操業短縮手当」休業を余儀無くされた労働者の給与を国が助成する・・・の支給要件が緩和された。家賃や、様々な条件は在るものの、電気・ガス・水道・電話やネット・所得税の前払い等の月々の支払いも7月迄一時的に停止する事も出来る。
社員5人迄の零細企業や自営業、筆者の様に一人で仕事をして居る様なフリーランスには、ドイツの連邦による「即時支援金」として、3ヶ月分の運転資金に使える9000ユーロ・約107万円の申請が可能と為った。これも申請から数日で支払われる。この支援プログラムに対しては、ドイツは3月30日から500億ユーロ・約5.92兆円を確保して居る。
州のプログラム
このドイツ連邦による「即時支援金」に加え、各州が独自の「即時支援金」のプログラムを提案・実行した。ベルリンでは、3月27日から、社員5人迄の零細企業や自営業・個人フリーランスに対して、5000ユーロ・約59万円の補助金の申請がスタートした・・・4月12日の時点で、約14万件の申請が有り、州銀行傘下のベルリン投資銀行から13億ユーロ・約1540億円を支払い済み。現在は、資金切れの為申請はストップして居る。
ベルリン市の市長の一人で・・・ベルリン市には3人の市長が居る、文化・欧州担当官のクラウス・レーデラー氏に話を聞いた処、ドイツ連邦(国)からの即時支援金9000ユーロ・約107万円と、ベルリン市・州政府による即時支援金5000ユーロ・約60万円の最も大きな違いは、後者が生活を保つ為に使う事が許されて居る点だと云う。
例えば、州が給付する後者は家賃や買い物の支払いにも使う事が出来る。一方、国が給付する前者は、ビジネスマネジメントに関連したものにしか使用が認められて居ない。例えば、仕事場の家賃や資材経費等がこれに当たる。何故、国レベルでは無く夫々の州が独自の支援プログラムを出す必要が在ったのだろうか。
国の政策から零れ落ちる人を助ける
「ベルリンでは、ドイツ連邦政府からの援助金がカバーし切れ無い分野が多いと云う事が先ず一つ有りました」とレーデラー氏は言う。確かに、筆者の様な自宅をオフィスとして仕事をして居るライターやデザイナー・翻訳家・ミュージシャン等、固定経費が少ない仕事に従事して居る人に取っては、国が給付する即時支援金は余り意味が無い。しかし、仕事がキャンセルされれば補償も無く、即座に収入がゼロに為るのもフリーランスの宿命だ。
「そして又、連邦共和国は州の権限が大きく、文化は州夫々の問題と云う原則を持って居ます。ベルリンだけで無く数多くの州が、国が対象として居ないグループ・・・その中にアーティストも含まれますが・・・彼等の為の様々なプログラムを行いました」
ちなみに、日本ではアーティストへの支援が注目を浴びたが、これはドイツに於いて文化が生活の中に根付いて居ると云うだけで無く「文化芸術」が重要な「産業」の1つで有る事にも由来して居る。博物館・美術館の数は全国で約6,800。世界中で開催されて居るオペラ公演の約3分の1がドイツの舞台で演じられ、全国80以上のオペラ座がある。
特に首都で有り人口約380万人を抱えるベルリンには、劇場・博物館・美術館・図書館やギャラリー等、市内に810以上もの文化施設が存在する。それに加えクラブ等は数はハッキリしないものの、ベルリンのクラブ委員会に依ると、2019年は14.8億ユーロ・約1,754億円もの収益を挙げて居り、9,000人以上もの人が働いて居ると云う。大企業は少ない代わりにフリーランス人口の割合も、ドイツ平均の9.9%より高く11.9%と為って居る。
3月18日、個人フリーランス等を対象に即時支援金が決定。当初、申請の数は2万人と想定されて居た。金額以外はその詳細が判ら無いママに、3月27日12時よりオンラインの申請がスタート。その瞬間にサーバーが落ち、再開迄1時間が掛かった。申請の処理速度は遅く初日の申請処理は約1万人弱。
「この調子では、お金を貰うのは1ヶ月後か」「サイトの説明が不十分」等の不満も見受けられたが、翌日からは担当スタッフを増員・処理速度をアップしサイトも更新した。そして申請受理から僅か2〜3日で、指定の銀行口座に5,000ユーロのお金が振り込まれたのである。「月末と云う事も在って、兎に角早さを重視した」とレーデラー氏は云う。詳細な審査は後回しにして、現時点では無作為審査のみだと云う。
「此処で暮らす人」達の目線で信頼を勝ち得る
州の規模も異なるので簡単に数字を比較するのは難しいが、ドイツでも3本の指に入る大きな負債を抱えるベルリンと云う州・街が、何故どうしてこの様な早い決断をする事が可能だったのだろうか。「可能だった」のでは無い。「可能にした、そうし無ければいけ無かったのだ」とレーデラー氏は言う。
「勿論、最終的に何処かにツケが回って来る事は判って居ます。でも、今マサにその存在自体が脅かされて居る様な人達が居る為らば、先ず、何よりも早くそうした人々を助け無ければいけ無いでしょう。又事実として、ベルリンはドイツの中でも最もフリーランス・個人フリーランスの密度が高い街です。
その多くがアーティストですが、それだけで無く美容師やタクシー運転手・配管工でも同様です。資金繰りに大きな余裕が無く即時支援金が必要と為る職業グループも多い。ですから、ベルリン州政府は、非常に早くこの援助プログラムに合意しました」
又、この「フリーランス」には、職業の限りが無い処も重要な点だ。例えば、セックスワーカーが含まれて居る事も忘れてはいけ無い。3月16日から性風俗施設は閉鎖されて居る。3月31日、ベルリン=ブランデンブルク放送のニュースでは、性的サービス職業組合のスポークスマン、ヨハンナ・ヴェーバー氏がインタビューに答え「他の職業の、個人フリーランサーと全く差異無く、同じ様に即時支援金を申請する事が出来た」と語った。
又、東欧等から来て性風俗産業に従事して居る人達に対しては、ドイツの連邦家族省は、この危機的状況に際し、売春保護法で制定されて居た「性風俗施設での宿泊を禁止する」と云う一節を廃止し、そこに住む事を許可して居る。
この即時支援金に関しては、今後、提出された納税者番号等の情報を元に申請の真偽に付いては審査を行って行く予定だと云うが、申請の時点では「コロナ危機に依って、存在が危機的状況に在る」事だけを、確約する必要があるだけだ。レーデラー氏はしかし未だ足り無いと言う。
「日々の収入で成り立って居る小規模な民間の文化施設等は、国からの融資では助ける事が出来ません。この状況がコロナ以降も続けば返済は困難に為ります。資金繰りに困って居た人が、借金を抱える様な、更に悪い状況にしてはいけ無い。此処には返済不要な補助金が必要です。全ての問題に効く解決策は有りません。ですから、出来る限りバリエーションを考え無ければ」
レーデラー氏への上記のメールインタビューは、4月8日に回答されたものだが、翌4月9日、同氏は「ベルリンは、現在存続が危ぶまれる民間の文化施設に対し3000万ユーロ・35.5億円の即時支援を行う」と、新しい即時支援金・Soforthilfe IVを発表した。
「全ての人を救う」
「ドイツは凄い、それに比べて日本は・・・」と云う様な、単純な比較は意味が無いと思う。こう云った支援・対処が生まれる中には、感染の広がりや国境を接する国での惨状を見ての危機感の違い・政治制度や歴史・夫々の産業の貢献度等様々な背景がある。
ベルリンの即時支援を実際に目の当たりにし、メルケル首相の演説等を聞いて居ると、国を州を率いる政治家達が「ドイツで暮らす人達全てを、可能な限り救おう」と云う姿勢が、アラユル形でアピールされ、それが信頼を勝ち得て居る大きな要因に為って居ると云う実感がある。
市民・・・敢えて国民では無く「ドイツに暮らす全ての人」と云う意味を込めて、メルケル首相がテレビ演説で使った言葉を選びたい・・・が、主権者として、政策を決める政治の仕組み「民主主義」が確りと機能して居る。これが、ドイツの満足度の高さの理由では無いだろうか。
フリーライター 河内 秀子 東京都出身 2000年からベルリン在住 2003年 ベルリン美術大学在学中からライター・コーディネーターとして活動 雑誌『Pen』『derdiedas 』等でもベルリンやドイツの情報を発信させて頂いて居ます 趣味は漫画と東ドイツとフォークが刺さったケーキの写真収集 食べ歩き 蚤の市やマンホール・コンクリ建築も大好物 Twitterで『#日々是独日』ドイツの風景を1日1枚アップして居ます@berlinbau
【管理人のひとこと】
詳細で判り易いレポートを有難うございました。この様な、実際の現場の空気を知る事が出来るのが何よりの「生きた情報」なのでしょう。ドイツの国民性・・・ベルリン市の他との違いも初めて知りました。この様な社会政策を作り上げるドイツの為政者と比較し我が国を観ると、確かに政治家・官僚の根本的・本質的な違いが浮き出て来ます。立ち位置と目線がマルっ切り天と地程異なって居るのです。
日本のソレは、今でも「お上」の立ち位置と目線しか感じられ無い、旧態依然の「上からの施し・遣って遣る・・・」そのものなのですね。AAコンビの一人の財務大臣が「俺も昔、国民に無差別に配って遣ったが、何の経済的効果も生まなかった。二度と恵んで遣ら無い・・・」と云ったとか。多寡が無差別に1万か2万の支給で好景気が生まれると期待する方が可笑しいのです。布マスク2枚と同じ効果しか期待しては為ら無いと考えるのが常識。
我が国でも「無条件一人10万円支給」が本題に上がりましたが、どれだけのスピード感で執行出来るかで「非常時での官としての能力」が問われます。審議会・委員会・国会の議論を延々として・・・支給が6月頃にでも為ったら世界から笑われてしまいますよ。フランス革命前のマリーアントワネットの様に寛ぐ誰かさんを見せ付けられ、指を咬んで泣く庶民・・・がそのまま私達なのです。為政者が、マルで別世界に住む人かの様な感受性しか持ち合わせて無いのが国民の大いなる不幸なのですね。
コロナ給付金 日本だけが「不正受給」を過剰に恐れて居る
コロナ給付金 日本だけが「不正受給」を過剰に恐れて居る
〜現代ビジネス 笹野 大輔 4/15(水) 7:01配信〜
マスクを手放せ無いハズレ男
布マスクは、宛(さなが)ら「はずれ券」の様なものだ
今日本では休業要請と補償はセットで無ければ為ら無い・・・と云う声が挙がって居るが、政府から国民に支給されるのは、30万円か布マスク2枚、その後又追加マスクあり。しかも30万円は殆どの人が該当し無いので、宛ら布マスクは、ハズレ券の様なものだ。
これが非常時でも給料の下がら無い政治家や国家公務員が考えた結果なのであれば、イッソノコト国から届いた布マスクに油性マジックで「ハズレ」とでも書いて着用すれば好い。そうすれば彼等の目に触れるのかも知れない。
ニューヨーク 半旗が飾られて居る
一方で、アメリカ・ニューヨークでは感染者数が現在の日本位の頃(約8,000人)、時期で云えば3月20日頃、もう既に新型コロナに依る失業保険の給付が始まって居た。ニューヨークでは、3月22日に医療従事者やスーパーマーケット・ドラッグストア等必要不可欠な職業以外は出勤禁止の命令が出たが、3月13日にトランプ大統領の非常事態宣言、3月16日にニューヨークの全ての飲食店・学校・裁判所が閉鎖された事に依り、それ以外の業種の自主的な閉鎖・解雇が始まり、在宅勤務が可能な人はテレワークの導入が進んで居た。
詰り、新型コロナ感染拡大が現在の日本の状態に為る前から、主にアメリカの中小企業がレイオフ・一時解雇を積極的に活用して居た。レイオフされた人は失業保険金を毎週貰い、それが現在も続いて居るので実質的な支援金に為って居る。
日本の報道ではアメリカの失業者数の増加ばかり取り上げて居たが、報道の裏でアメリカ人の最低限の生活は補償されて居たのである。アメリカ・ニューヨークの失業保険受給の方法は後述するが、インターネットでの登録に1日・申請してからは2日で銀行口座に失業保険金が振り込まれて居る。
これは新型コロナに依るアメリカ人の経済的損失が大きかった為に、何時もより迅速に支給されて居り、通常で有れば4週間から6週間掛かって居た。
文 ニューヨーク在住 ジャーナリスト 笹野 大輔氏
全く足り無いが・・・
3月17日には、国からの支援金は大人一人に付き1000ドルで調整に入ったが、3月25日、大人1,200ドル・約13万円、子供(17歳未満)も一人に付き500ドル・約5万4,000円、確定申告を済ませた人で年収が9万9000ドル・約1,072万円以下の人は受け取れる、と曖昧では有るが早期にアメリカ政府は国民への支援金を決めた。
そして先週、具体的な金額が公表され、年収が7万5,000ドル・約813万円以下の人は1,200ドル・約13万円、収入が少なく確定申告をして居ない人やリタイアした人にも一律1,200ドル・約13万円を支給する事に為り、4月10日から順次受け取りが始まった。2回目の支給も検討中。
ちなみに支援金は、年収が7万5,000ドル・約813万円より高い人の場合でも支給されるが、減額されて行く。年収8万ドル・約867万円の人は950ドル・約10万円、年収8万5,000ドル・約921万円の人は700ドル・約7万5000円、年収9万ドル・約975万円の人は450ドル・約5万円、年収9万5000ドル・約1,029万円の人は200ドル・約2万円、年収9万9000ドル・約1,072万円以上の人は支給無し、と云う具合だ。ハズレは年収1,072万円以上の人と云う事に為るが、年収が高い所為か不満の声は出て居ない。
但し、この国からの支援金の1200ドル・約13万円を希望の光の様に思って暮らして居る人は少ないだろう。全く足り無いからだ。ニューヨークではワンルームマンションの1ヶ月分の家賃も支払え無い。だから、同じ13万円でもアメリカと日本、そして例えばマレーシア等では物価が違うので金額の比較は簡単には出来無い。だが、政府の支援金額の決定と失業保険金に依る実質的な支援のスピード面で、日米で格段の違いが有る事は理解し易いだろう。
ニューヨーク州の失業保険申請画面。質問はステップ毎に進んで行く。画像はステップ5「(新型コロナ)パンデミック失業支援」のチェック画面
穴が有れば埋めて行くしか無い
勿論、ドンな制度でも零れてしまう人が出て来る。それはニューヨークでも同様だ。しかし、ニューヨークでは穴が有れば埋めて行く作業も早い。例えばレストランの様な業種で有れば、オーナーは社員をレイオフ(一時解雇)する事に依り、失業保険金の支給を受けさせる事で、社員の生活を取り敢えず確保出来る。
只、オーナーは高額な店舗の家賃で資金繰りに困る事に為る。社員も同様で食べる事、電気ガス水道と云った生活に於けるインフラの支払いは失業保険金から出来ても、自宅アパートの家賃で困って来る。すると、ニューヨークは90日間家賃(店舗・住宅)の支払いが無くても、ビルのオーナーやアパートのオーナーは立ち退きを迫る事は出来無いと宣言した。(住宅ローンの場合も90日間)それでも何処かに穴が有るので政治家や官僚は連日埋めて行って居るのだ。
ニューヨークでの失業保険金の申請は以下の通りに為る。先ずはインターネットでの登録だが、氏名・生年月日・職業・運転免許証の番号、そしてソーシャルセキュリティ(日本ではマイナンバー)の番号を入力。申請には、質問に「はい、いいえ、数字を選択」で答えて行く方式だ。
「新型コロナで職を失いましたか?」「何時からソコに勤務して居ましたか?」「最後に働いた日は何時ですか?」「会社から有給休暇を貰って居ますか?」「他の団体から支援金を貰いましたか?」「退役軍人ですか?」等あるが、年収も月給も時給も入れる項目も無ければ金額を入力する処も無い。唯一金額に触れる質問は「この期間に(直近の1週間が表示される)に504ドル・約5万5000円以上貰いましたか?」で、此処でも「はい、いいえ」のチェックを入れるだけに成って居る。(※週504ドルはニューヨーク州の失業保険金の支給最高額)
正確に数えた訳では無いが、50問位の質問に答えると申請が受理される。感覚としては、インターネットで好く有る性格診断の様な形だ。勿論、会社からの離職票も雇用保険被保険者証も要らず、印鑑も写真も通帳も要らないので、何かファイルをアップロードする事も無い。当然、説明会も無ければ失業認定も無い。人に依っては質問の不備が有り電話対応に為る事が有るが、大抵はインターネットだけで済む様に出来て居る。
不正受給を恐れて居ては
ニューヨークの知り合いの歯科助手3名がホボ同時に申請したが、3名共申請が受理されて2日目に1週間分の失業保険金が支払われて居た。金額は504ドル・約5万5000円。支払い方法は、銀行振り込みかデビットカード。デビットカードの場合は、カードの裏にマスターカードのマークが付いて居り、スーパーやドラッグストアのレジでマスターカードのマークが付いて居れば使用出来る。現金が必要で有れば、一部の銀行でデビットカードを現金化も出来る。
デビットカード
そして又1週間経てば又インターネットで申請するのだが、質問は5つ位に絞られ、1つは「この期間に(直近の1週間が表示される)に504ドル・約5万5000円以上貰いましたか?」と云う質問がある位で、所要時間は1分以内で再申請が終わる。毎週日曜日に再申請して火曜日入金。ソレでこの3名は既に4週間が過ぎ、4週間必ず入金されて居る事を確認した。
ニューヨークの失業保険の受給は26週間だったが39週間に延長された。又、失業保険金は州とは別に連邦政府から一律追加で毎週600ドル・約6万5000円が7月31日迄毎週支払われる事にも為った。
新型コロナ感染拡大に於いて、アメリカ・ニューヨークの失業保険の申請で興味深い点は、ニューヨーク州からの支給額は人により毎週104ドル・約1万1,000円から504ドル・約5万5,000円の幅で州に依り金額は変わる、或る意味でドンブリ勘定で有り、或る程度の不正受給は黙認して居る処である。非常時のスピード支給の為なら一部の悪人の不正には目を瞑り、大多数の善人を優先して居るのである。
不正受給を恐れて居ては善人への支給が何ヶ月も先に為ってしまう。現にコノ3名は2名が正社員・1名がパートタイムで週3回のみ出勤だったが、3名共同額の失業保険金を受け続けて居る。だが、コレがアメリカでの最低限の生活を支援する方法に為って居るのだ。
「一時解雇」と云う選択
日本では、2月24日MBS(毎日放送)の<「バス売却して運転手の給料に宛てる」客激減で社長が苦渋の選択>と云う記事に有る様に、観光バス会社を運営して居た会社が、中国等からの観光客が激減した為、10台在ったバスを売りながら9人の運転手の給料を払うと云う事態に為って居る。
お金を政府機関から借りるにしても、全くメドが付か無い中では無理もある。そして何よりこのバス会社の社長が心優しいからバスを売る決断をされた訳だが、今日本で小さな店舗を営業して社員を雇って居る社長達も同様の状況だろう。
バス会社の話は、レイオフ・一時解雇の説明をする際に判り易い。例えばバスを売り続けて社員に給料をもう払え無く為ると、倒産に為り会社事無く為ってしまう。或いは、バスは残ったとしても、事業を再開した頃には運転手9人とバス3台と云う事にも為り兼ね無い。だから、アメリカではレイオフ・一時解雇が盛んに行われて居る。
レイオフを実行出来るので有れば、バス10台を会社に残せるかも知れないし、事業再開の時運転手達を再雇用すればバスを買い直す必要も無く、バスも運転手も直ぐに稼働出来るので給料も払える様に為る。勿論、両者とも痛みは伴う。
だが、非常時に無傷で居られる事は難しく、もしそうで有りたいので有れば、ベーシックインカムの議論を急ぐべきだろう。只、議論をして居るだけでは実効性が無いので、現状では、食べるに困ら無い勉強に困ら無い生活のインフラに困ら無い・・・と云う最低限の処を日本政府がサポートすべき時期に来て居る。
生活が懸かって居ては休業も出来無い
アメリカでも制度の穴はマダマダ有るが、給料を貰う為に電車通勤を続けると云う事態では無い。人命に集中する為には、綺麗事を言って「お店を休業してください」と唱えても、生活が懸かって居ては休業も出来無いのだ。そうすると元気で無自覚な人が街に出て、新たな新型コロナ感染者を増やして行く。
この連鎖を止める為には、ドンな形で在っても日本は国民への支援金が必要に為る。出来無い理由を探して居る場合では無い。中途半端な対策では新型ウイルスの感染拡大を止められ無いのだ。
現在ニューヨークでは、徹底した人との接触を避ける行動により、感染者数や入院者数が「高止まり」して居る状態に為った。ニューヨーク州知事は4月30日に感染のピークを迎えるとして居たが、少し早まる気配を見せて来たのだ。
国や自治体からの外出規制要請は、何かしらの生活への補償が有ってコソ徹底されるものであって「日本人は優秀だから自粛要請を守って来る筈」と云う類のものでは無い。守ら無い人にも事情が有るのだ。筆者が現在の日本に住んで居たなら、ハズレマスクをして出勤して居るのかも知れない。
笹野 大輔 ジャーナリスト 以上
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