2019年06月10日
尿で発電!? 難民キャンプ、被災地で活躍が期待される新テクノロジー
今や世界の常識と言っても過言ではない再生可能なエコ電力。エコ電力と言えば、太陽光や風力、水力など大自然の力を使ったエネルギーというイメージが一般的だ。しかし、今注目のエコ電力は、人の尿から作りだす常識破りのエネルギーである。
□人の尿から発電する「発電トイレ」
イギリスのブリストルにある西イングランド大学。この大学の生協の中にあるバーのトイレがエコ発電の現場である。学生はこのトイレを使うことで、学校へ寄付をすることができる。寄付するのは使用料ではなく「尿」である。
実はこのトイレ、尿から発電する「微生物燃料電池」を備え付けたトイレなのである。このトイレの「電池」に存在する細菌は、人の尿を餌にして生活している。
そして餌である尿を分解して自分のエネルギーにする際、同時に電気を発生する。その電力を利用可能な形に変えるのが、「発電トイレ」である。
□難民キャンプで実用化を目指す
このトイレ、試験的に難民キャンプに設置されているものと同じタイプのトイレである。
難民キャンプのような電力の届かない場所で、トイレ発電などを研究開発しているOxfamという会社と、西イングランド大学の共同研究のために、この発電トイレが大学に設置されている。より現実的な調査研究をすることを目的として設置してあるのだ。
この発電トイレのメリットは、もちろん誰もが日常排せつする尿から発電できることだけでなく、理論的には無限に使えるという点である。このトイレの現在の目的は、難民キャンプの小屋を照らすライトに使う電力をまかなうことである。
□日本でも研究は進んでいる
難民キャンプのように電力のないところで使えるということは、自然災害の多い日本においては被災地での活用も期待したいところだ。
この微生物燃料電池は、2000年頃に「シュワネラ菌」という細菌が発見されたことで、一気に研究が進んだ分野である。実は、代謝の過程で発電する細菌が存在することはかなり以前からわかっていたことだ。それがシュワネラ菌であることが判明し、世界が注目し、さまざまな研究が行われ始めたのである。
現在では日本でも研究が進んでおり、東京薬科大学は発電する田んぼを所有している。また、岐阜大学では、家畜から出る排せつ物や生活用水から電力・水・リンを回収することに成功し、電力以外のリサイクルも同時に可能にした。
難民キャンプや発展途上国では、人の排せつ物は、しばしば衛生面での問題を引き起こす。し尿処理と発電が同時にできるこの電池が実用化されれば、まさに一石二鳥である。
尿のチカラが照らす明るい未来は近いのかもしれない。