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眼球が成長しない「小眼球症」ってどんな病?

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盲目の天才ピアニスト、辻井伸行さんにより世に知られるようになった眼疾患が「小眼球症(しょうがんきゅうしょう)」です。しかし本当の意味での小眼球症の症状については、正しく理解されているとはいえません。

先天的なものが多く、その多くが全盲になるといわれる小眼球症。日本では約1万人に1人にあらわれるという、希少な眼疾患の症状や治療法について調べてみました。

極めて稀な「小眼球症」、全て全盲だと考えるのは間違い?
小眼球症とは、文字通り先天的に眼球が小さい症状を指します。ただしその症状は一定ではなく、全ての患者が全盲になるわけではありません。小眼球症は、角膜や水晶体、網膜や硝子体(しょうしたい)などの組織的な発生異常により、眼球の発達、つまり“見る能力”が障害されることから起こる眼疾患です。

欧米の研究によると、小眼球症があらわれる頻度は出生数10万人に対して、10人から19人と推測されています。これを日本に置き換えると約1万人に対して1人という計算になるため、疫学上の統計では日本の発症率も同等だと考えられています。

臨床的には「無眼球(むがんきゅう)」や「極小眼球」、「先天性嚢胞眼(のうほうがん)」と呼ばれる症状が重度の症状とされ、こうした症状には重篤な視覚障害、つまり全盲があらわれます。また、眼球のサイズが小さくとも構造がほぼ正常な場合には「真性小眼球」と呼ばれます。

小眼球症の診断は“眼球の長さ(眼軸長)”、“角膜の大きさ(角膜径)”など、眼球の大きさをもとに診断されるため、症状の程度はさまざまです。平均的な眼球のサイズは成人で直径24mm、角膜の直径が11mmとされており、正常な眼球の容積に対して2/3以下のものが小眼球として診断されます。

「小眼球症」は遺伝子疾患によるものなの?
小眼球症は先天的にあらわれる眼球の異常ですから、もちろん遺伝的な原因が指摘されています。事実、小眼球症の初期発生に関与する原因遺伝子として「SOX2」、「PAX6」、「CHX10」などいくつかが解明されており、遺伝形式としても常染色体優性や劣性遺伝によるものだと考えられています。

しかし胎生5〜6週期でのウイルスによる胎内感染などによっても小眼球の症状があらわれることが指摘されており、必ずしも遺伝だけを原因とすることはできません。

また薬物やアルコールなどの環境要因も関係する場合があると考えられており、その原因の全てを特定できるまでにはいたっていないようです。

「小眼球症」の治療と対策は?
残念ながら、小眼球症を根治する治療法は発見されていません。もちろん、「無眼球」や「極小眼球」のように全盲状態を有する重篤な症状においては、それを回復させる治療法もありません。

しかし対症療法的なものとしては、眼窩(がんか)や眼瞼(まぶた)の形成状態の維持を目的とした「調整義眼」を用いるなど、医療的な意味での義眼が使用されます。例えば小眼球症は片目だけにあらわれることもあるため、こうした場合には調整義眼の役割は非常に重要となります。

また、小眼球症には強度の屈折異常が合併するため、幼児期に小眼球症が判明し、かつ視力を有する場合にはメガネを装用するなど、保有する視力を伸ばす訓練が必要とされます。基本的に、治療が適応される小眼球症の治療法は、低視覚者に向けた「ロービジョンケア」などが中心になるといえるでしょう。

小眼球症の原因は遺伝的な要因が強いとされていますが、辻井伸行さんのようにハンディキャップに負けることなく、偉大な才能を開花させた方も存在します。なによりも重要なのは、私たち1人1人がさまざまな疾患や障害に対する理解を深め、その才能や人生を、決して阻害させる方向に進まないことです。

一番恐ろしいのは小眼球症のような疾患ではなく、「目」をふさごうとする私たちの心なのかもしれませんね。






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