2018年02月07日
「自分の人生はいいことばかり」は記憶障害の前兆? 脳機能の低下を補うためか
高齢者が何らかの出来事を思い出すとき、正の記憶(いいこと)ばかり思い出すのは、記憶障害の初期段階の可能性が高いとする研究結果が、米カリフォルニア大学の研究者らによって発表された。
研究では、平均年齢74.8歳の高齢者32人に、あまり複雑ではない物語を暗唱してもらい、実験直後、20分後、1週間後に物語の詳細を口頭で質問。回答内容に応じて「物語の正の部分を記憶している」「物語の負の部分を記憶している」「物語の中立的な部分を記憶している」の3グループに分類した。
さらに、記憶力の状態を調査するため、アルツハイマー病の診断などで用いられるテストを実施し、被験者たちを「記憶力が高いチーム」と「記憶力が低いチーム」に分類し、朗読実験の結果と照らし合わせた。
ただし、「記憶力が低いチーム」であっても何らかの疾患であると診断されるほど深刻な記憶力低下は見られなかったという。
その結果、「記憶力が低いチーム」は「物語の正の部分を記憶している」傾向にあるが、中立的な部分を覚えておらず、「記憶力が高いチーム」はその逆に、「物語の中立的な部分を記憶している」が、正の部分はあまり覚えていなかった。
研究者らはこの結果について、記憶力低下を補うために、いいことだけをなるべく記憶するようになっているのではないかと指摘。「いいことを優先的に記憶することで、記憶があいまいになっているという不安感を補っているのではないか」とコメントしている。
今回の研究は、疾患や実際の脳機能との因果関係を示すものではない。