2018年02月03日
「貧乏ゆすり」健康法!? 行儀は悪くても体には良いことだらけ
貧乏ゆすりが癖になっている人は、ガタガタガタと音を立てると周囲からの冷たい視線にさらされ、肩身の狭い思いをしているかもしれない。貧乏ゆすりは、親からマナー違反だとしつけられた人が多いので、行儀が悪い人と思われがちなのだ。
ところが、ひょっとしたら貧乏ゆすりは、現代人の悩みである座りっぱなしの弊害をなくす健康法になるかもしれないことが分かった。座りながら貧乏ゆすりをするだけで、驚くほど血流を改善する効果があることが研究で明らかになったのだ。
□貧乏ゆすりに健康効果!?
アメリカ、ミズーリ大学コロンビア校の栄養と運動生理学のジャウメ・パディーヤ助教授と同僚は、貧乏ゆすりには滞りがちな下半身の血流を上昇させ、筋肉運動の効果が期待できるかもしれないと考えた。
そこで、仮説を確かめるために、研究に参加してくれる11人の健康な大学生を募集し、超音波と血圧計を使い、参加者の足の主な動脈の血流レベルを測定した。
その後、机の前で3時間座ってもらい、各被験者の片足は動かさずに、片方の足だけ貧乏ゆすりのように1分間動かして4分静止するのを繰り返した。
3時間かけて、参加者の動脈の血流を監視したところ、貧乏ゆすりをした片足の方は血流が増加し、動かさなかった片足は血流が減少した。
□予想外なほどの血流改善効果があることが分かった
研究したパディーヤ助教授によると、「正直にいうと、貧乏ゆすりには驚くほどの効果があった」という。貧乏ゆすりをした片足の血流と動脈の状態は改善されており、博士の予想を上回るものだった。
貧乏ゆすりでは足はほんのわずかずつ動くだけなので、筋肉の収縮は、実際にはかなり小さい。しかし、座りっぱなしの健康の害を打ち消すには十分な効果があるのだ。
もしも歩き回ることができない長い会議中には、つま先をほんのわずかトントンと動かすだけでも健康効果が得られるので、ぜひ取り入れてみてはいかがだろうか。ただし貧乏ゆすりは周りをイライラさせるようなので、音を出さないようくれぐれも気を付けよう。
□年々研究が進む貧乏ゆすり 冷えの改善効果もあった
貧乏ゆすりについては他でも研究が進んでおり、さまざまな健康効果が期待できることが分かって来ている。国立長寿医療研究センターの中村昭範・脳機能診断研究室長は、脳神経の働きと貧乏ゆすりとの関係などを調べたが、貧乏ゆすりは、何かに集中したりイライラしたりすることで、足の動きを止めている大脳の動きが抑えられるために起こるようだ。
中村室長らの研究によると、貧乏ゆすりには手足の冷えの改善効能があるという。貧乏ゆすりの時のふくらはぎをサーモグラフィーという温度観測装置で観察したところ、ふくらはぎの皮膚の温度が5分後に平均で約2度上昇した。最も上がった人は、3.3度も上昇した。
これだけでは運動の代わりにはならないが、冷えに悩む人には効果的な対策となりそうだ。
□エコノミークラス症候群予防としても期待できる
貧乏ゆすりで皮膚の温度が上昇する理由は、ふくらはぎの血流が改善されるためだ。ふくらはぎが血流改善されると、全身の血流改善にもつながりやすく、女性の悩みに多いむくみの改善にもなる。
さらにうれしいことに、貧乏ゆすりは飛行機の長距離フライトのエコノミークラス症候群の予防にもなるようだ。飛行機では狭い座席で長時間過ごし、頻繁に歩くことも難しいため、静脈の血栓が肺の血管などに詰まって、エコノミークラス症候群が起こる恐れがある。
わざと貧乏ゆすりをして血流を改善すれば、血栓が詰まるのを予防することができ、エコノミークラス症候群になる危険を減らせるのだ。
貧乏ゆすりには、さまざまな健康効果が期待できることが分かってきている。あとは貧乏ゆすりのイメージさえ改善できれば、健康法として貧乏ゆすりがあちこちで見られる日も近いかもしれない。