2019年10月28日
高たんぱく質な食事が引き金に…難病尿素サイクル異常症とは?
オーストラリアの筋トレに励む20代の女性が、高たんぱく質な食事を摂取していたため亡くなっていたことが分かりニュースになりました。(参考)
死因は「尿素サイクル異常症」と呼ばれる難病だと判明しましたが、一体どのような疾患なのでしょうか?
原因と症状の詳細から、健康な人が高たんぱく質な食事を摂取するのとは違い、どのような危険があるのかを医師に解説していただきました。
尿素サイクル異常症とは
体内循環サイクル尿素サイクルを動かすために必要な要素が生まれつき欠けているため、うまくアンモニアを処理できないのが尿素サイクル異常症という一連の病気です。
尿素サイクルのどこがうまく動かないかによって、たくさんの病気に区別されます。
8,000人から4万人に一人という珍しい病気です。
尿素サイクルのメカニズム
たんぱく質は食べ物として取り込まれるほか、不要になった筋肉を壊した際に体内で発生することもあります。たんぱく質は肝臓で分解され、アミノ酸になり、さらに分解されてアンモニアが生じます。
アンモニアはそのままでは有害なので、さらに分解して無害な尿素にします。アンモニアを尿素にする過程を尿素サイクルと呼びます。
尿素サイクル異常症の原因
尿素サイクルを動かすのに必要な要素を指示する遺伝子に、生まれつき異常があることが原因です。
遺伝子の異常は子どもに伝わるため、様々なパターン(常染色体劣性遺伝、X染色体連鎖性遺伝)で遺伝します。家系に同じ病気の人がいる場合もあれば、親は症状がないために気づかれていなかった場合もあります。
尿素サイクル異常症の症状
赤ちゃんの病気の症状体内に有害なアンモニアが溜まり、赤ちゃんの頃から発症する典型的なパターンだと、以下などの症状が生じます。
・元気がない
・意識がもうろうとする
・痙攣(けいれん)
・嘔吐
・呼吸数が多い
また、乳幼児の突然死の原因の一つであるとも言われています。
重症の場合は長くは生きられませんが、症状が軽い場合は大人になってから症状が生じる場合もあります。
尿素サイクル異常症と高たんぱく質な食事の危険性
たんぱく質を食事で摂ると、有害なアンモニアも多くなるため、尿素サイクル異常症の患者さんにとっては危険です。
しかし、たんぱく質を摂らないと体を成長させることができませんし、たんぱく質を全く摂らなくても、自分の体の筋肉が分解されてアンモニアができてしまいます。
体に負担のかからない形でアミノ酸やたんぱく質を摂取し、必要エネルギーを他の栄養素で補う必要があります。
尿素サイクル異常症の検査
新生児マススクリーニング検査
尿素サイクル異常症は多くの病気の総称ですが、一部の病気については、生後すぐ産院で行われる新生児マススクリーニング検査にて診断が可能です。
ただしすべての尿素サイクル異常症を新生児マススクリーニングで見つけられるわけではなく、また新生児期に発症していない場合には見過ごされてしまう場合もあります。
血液検査
新生児以降は、意識がおかしい・嘔吐を繰り返す・体重が増えないなどの症状から、異常を疑って血液検査をすることで診断されます。
尿素サイクル異常症の治療方法
病気の状態や重症さに合わせて、食事から摂取するたんぱく質やアミノ酸を制限し、栄養やカロリーを取れるように点滴を行ったり、アンモニアを体から追い出すために血液浄化療法(血液透析)を行うこともあります。
尿素サイクルをうまく働かせるのに必要な因子を外から投与することもあります。
筋トレでプロテイン摂取
尿素サイクル異常症は非常に珍しい病気で、基本的に子どもの頃に診断がついています。
しかし、たまたま非常に軽症で診断がついていなかった場合、たんぱく質を摂り過ぎたことで悪化したり、感染症をきっかけに悪化する場合もあります。
意識がおかしい、痙攣があるなどの場合は、病院を受診し検査を受けましょう。
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