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2021年09月01日
赤い部屋
赤い部屋とはフラッシュ動画のひとつである。
フラッシュ動画黄金時代に登場した、ホラー系の作品。
【内容】
ストーリーは深夜、ネットサーフィンをする青年が何気なく邪魔で消すポップアップに「あなたは/が好きですか?」と表示された場面に遭遇する。
有人との話で消してはいけないポップアップのことを知っていた主人公は若干、戸惑いの感情を覚えるものの、ポップアップの×印を押してしまう。
何事か問題が発生するか身構える主人公であったが、何も起きることはなかったのだが、謎のセリフを残したポップアップは再度出現し、再びクリックして消していくことになるのだが、×印を押していないのに数度に渡り、再表示されることになる。
遂にはポップアップそのものに変化が生じ、「あなたは/が好きですか?」 「あなたは /が好きですか?」 「あなたは / が好きですか?」といった具合に間の文字間隔が広がっていく。
そして最終的には「あなたは赤い部屋が好きですか?」と音声と共に表示され、主人公は悲劇的な結果を迎えるのであった。
なお、大分昔からGoogleの使用変更で、有名作品である「赤い部屋」がもう閲覧できない可能性が高まりつつある。
時代の推移と共に消え去っていく名作の「赤い部屋」であるが、いささか怖さが半減しているものの、YouTubeやニコ動などで一応見ることは出来る。
フラッシュ黄金時代といえば、軽く思い出すだけで「おびたのワサビ」、「モナーの冒険」、「楽しい国語」、「ロイツマ」、「片翼の田代」、「棒人間の戦い」など様々なものが思い浮かぶ。
アングラぽかったネットの過去の遺産であるが、もうそう感じているだけでインターネット老人会に入るべきかもしれない。
余談ではあるが、学生時代フラッシュ倉庫に入れ浸っていたのは内緒である。
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2021年08月31日
クビキリサイクル 3
早速ネタバレをするなら、「首切り死体」の時点で勘の良い読者もといミステリーマニアは犯人が誰であるのか、気付いていたものだと思われる。
ただ重要なのはどっちが真犯人であるのだが、伊吹かなみを殺したのは園山赤音である。
まず解説するならば第一の事件は、地震が発生した後に園山赤音が伊吹かなみを殺害して、その後、ペンキをぶちまけて、疑似的な密室状態を構築する。
そしてその後、容疑者として軟禁された園山赤音は共犯者である逆木深夜が掘り返した伊吹かなみの死体を窓から入れて、立ち去り、彼女は投入された死体に自身の服を着せて軟禁部屋から出ることにする。
その際、使用されたのが密室内にあった「椅子」と「死体」の二つを利用して、園山赤音は何とか外に出ることに成功。
本来ならば、完全な密室とするためドアは閉じたかったことだろうが、内側から閉めることしかできないので断念。
ちなみに伊吹かなみが埋葬される時は寝袋で、園山赤音の場合は担架といった具合に異なっている。
死体は一度しかリサイクル(再利用)しないので、二度目の埋葬の時、どれだけ汚れても構わなかったというわけである。
伊吹かなみの付添人である逆木深夜が園山赤音に協力する理由は、そもそも島に来る前に二人には交流があり、実は険悪な仲ではなかった。悪戯として二人は入れ替わり、数学者は画家として振舞い、画家は数学者として変装していたのである。
より分かり易く述べるなら、最後あたりで登場した園山赤音の正体は彼女に変装した伊吹かなみであるのだが、ラストにおいてそれは正しくないことが明らかになっている。
殺人の動機は「きみ達全員の脳を食べてやろうとしただけだ」と語る(偽)園山赤音であるが、異常な殺人事件後、半ば人攫いに近い形でいーちゃんは哀川潤のクルマに乗せられて、事の真相を知ることになる。
その事の真相は、赤神イリアの島流しにあった事件のソレではなく、園山赤音と伊吹かなみの両者が入れ替わり孤島に来る前から、既に入れ替わりが行われていた点である。
流れとしては、
1. 伊吹かなみが逆木深夜を付添人として持つ、何者かに殺される。
2.(真偽者)園山赤音が伊吹かなみに変装して、島へ行く。
3. 第一の殺人で、伊吹かなみに変装した誰でもない彼女は、いーちゃんの絵を描き終えた後、変装した本物の園山赤音を殺害し、赤音に成りすます。絵の違和感は園山赤音に変装した伊吹かなみが描いたものであり、いーちゃんが二人に出会うまで時計に些細な変化が生じており、いーちゃんはそれを違和感として抱くことになる。
4.(真偽者)園山赤音は鴉の濡れ羽島から逆木深夜共に出てから、数学者として更に精力的に活動するようになる。
といったものである。
分かり易く述べるなら
といった具合である。
ややこしい……。
つまり、鴉の濡れ羽島において入れ替わりが三度行われており、園山赤音を殺した人物は彼女の経歴丸ごと乗っ取ったということになる。
なお、不穏なセリフとして園山赤音が作中において、彼女が最も尊敬する人物は七愚人のヒューレット助教授と述べており、「彼が女性なら歴史が変わっていた」と述べている。
なお、戯言シリーズが進むにあたって、園山赤音に成り代わった誰でもない彼女であるが、最終章では人類最強の請負人・哀川潤になることを目標に定めて行動しているものの、彼女の殺害に何度チャレンジしても成功していない模様。
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ただ重要なのはどっちが真犯人であるのだが、伊吹かなみを殺したのは園山赤音である。
まず解説するならば第一の事件は、地震が発生した後に園山赤音が伊吹かなみを殺害して、その後、ペンキをぶちまけて、疑似的な密室状態を構築する。
そしてその後、容疑者として軟禁された園山赤音は共犯者である逆木深夜が掘り返した伊吹かなみの死体を窓から入れて、立ち去り、彼女は投入された死体に自身の服を着せて軟禁部屋から出ることにする。
その際、使用されたのが密室内にあった「椅子」と「死体」の二つを利用して、園山赤音は何とか外に出ることに成功。
本来ならば、完全な密室とするためドアは閉じたかったことだろうが、内側から閉めることしかできないので断念。
ちなみに伊吹かなみが埋葬される時は寝袋で、園山赤音の場合は担架といった具合に異なっている。
死体は一度しかリサイクル(再利用)しないので、二度目の埋葬の時、どれだけ汚れても構わなかったというわけである。
伊吹かなみの付添人である逆木深夜が園山赤音に協力する理由は、そもそも島に来る前に二人には交流があり、実は険悪な仲ではなかった。悪戯として二人は入れ替わり、数学者は画家として振舞い、画家は数学者として変装していたのである。
より分かり易く述べるなら、最後あたりで登場した園山赤音の正体は彼女に変装した伊吹かなみであるのだが、ラストにおいてそれは正しくないことが明らかになっている。
殺人の動機は「きみ達全員の脳を食べてやろうとしただけだ」と語る(偽)園山赤音であるが、異常な殺人事件後、半ば人攫いに近い形でいーちゃんは哀川潤のクルマに乗せられて、事の真相を知ることになる。
その事の真相は、赤神イリアの島流しにあった事件のソレではなく、園山赤音と伊吹かなみの両者が入れ替わり孤島に来る前から、既に入れ替わりが行われていた点である。
流れとしては、
1. 伊吹かなみが逆木深夜を付添人として持つ、何者かに殺される。
2.(真偽者)園山赤音が伊吹かなみに変装して、島へ行く。
3. 第一の殺人で、伊吹かなみに変装した誰でもない彼女は、いーちゃんの絵を描き終えた後、変装した本物の園山赤音を殺害し、赤音に成りすます。絵の違和感は園山赤音に変装した伊吹かなみが描いたものであり、いーちゃんが二人に出会うまで時計に些細な変化が生じており、いーちゃんはそれを違和感として抱くことになる。
4.(真偽者)園山赤音は鴉の濡れ羽島から逆木深夜共に出てから、数学者として更に精力的に活動するようになる。
といったものである。
分かり易く述べるなら
何者でもない彼女に伊吹かなみは殺害される。
↓
密会した場所で、二人は入れ替わることを提案。
↓
何者でもない彼女は島内で伊吹かなみとして振舞う。
↓
何者でもない彼女は園山に変装していた伊吹かなみを殺害し、園山赤音になった。
といった具合である。
ややこしい……。
つまり、鴉の濡れ羽島において入れ替わりが三度行われており、園山赤音を殺した人物は彼女の経歴丸ごと乗っ取ったということになる。
なお、不穏なセリフとして園山赤音が作中において、彼女が最も尊敬する人物は七愚人のヒューレット助教授と述べており、「彼が女性なら歴史が変わっていた」と述べている。
なお、戯言シリーズが進むにあたって、園山赤音に成り代わった誰でもない彼女であるが、最終章では人類最強の請負人・哀川潤になることを目標に定めて行動しているものの、彼女の殺害に何度チャレンジしても成功していない模様。
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2021年08月30日
クビキリサイクル 2
タイトルがネタバレも良いところのクビキリサイクルなのだが、まず話の流れとして、
1. いーちゃんが伊吹かなみに絵を描いてもらう。
2. 逆木深夜・姫菜真姫・千賀ひかりらのいる場所で談笑。その時、地震が発生。地震は鴉の濡れ羽島においてそう珍しくなく、逆木深夜は伊吹かなみと連絡を取り、「ペンキがこぼれたものの無事」であることを確認している。
3. 翌朝、いーちゃんの絵を一晩で仕上げた伊吹かなみが首切り死体となって死亡されているところを発見される。絵の具がこぼれたのは地震後であり、伊吹かなみが死亡したのは絵具の缶が倒れた後であると断定された。絵の具の液は一超えできるものではなく、島内で起きる密室殺人のスタートとなった。
4. 伊吹かなみの遺体を逆木深夜と共に寝袋に入れた状態で、島に唯一ある桜の木の下に埋める。状況整理として皆に事情聴取を行い、昨晩誰とも一緒ではなかった園山赤音に嫌疑がかかり、軟禁状態になる。いーちゃんと玖渚友は殺人現場の調査をし、いーちゃんを描いた絵画に違和感を覚える。
5. 玖渚友の情報通により、島内で険悪な仲を見せていた園山赤音と伊吹かなみが一緒に食事をしている情報を得、疑惑を覚える。その翌日、園山赤音が伊吹かなみと同じ首切り死体となって発見された。第一の事件同様、軟禁場所も壁の上部に開いたドアがあるものの、何の道具もなしに昇れるような高さではなく、密室の状態である。ちなみに現場には椅子と死体しかなく、椅子を利用しても壁の窓に届かない高さである。ちなみに園山赤音の安否を最後に確認、施錠したのは千賀ひかりであり、彼女に殺人の容疑が掛かることになる。
6. 園山赤音の死体は担架で運ばれ処理して、玖渚の自室に戻ると彼女のパソコンが鉈か何かの凶器で破壊されていた。パソコンが破壊した人物は一連の殺人事件の犯人であると推定されるも、誰がいつ、どのタイミングで壊したのか疑問視される。玖渚の部屋に戻るまでは誰も欠いていない状態で園山赤音の死体を見て、自室に戻ったらパソコンが破壊されていたからである。
7.いーちゃん、・玖渚友・千賀ひかりが玖渚の待機する室内に、佐代野弥生が訪れ、嘘をついていたことを自白する。彼女いわく「地震のときに班田玲はいなかった」というものであった。天才が集められる島において何故呼ばれたのか、その理由は殺人を犯すことが目的で料理人である佐代野弥生が死体を材料に何かを作らされるのではないかと恐れる中、いーちゃんは殺人事件のヒントを見つけ、反撃に出るのであった。
クビキリサイクル 3へ
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2021年08月27日
クビキリサイクル
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣いとは西尾維新のデビュー作である。
戯言シリーズの第一弾。
どうでもいいが、この時点から想影真心の存在が示唆されていた。
クビキリサイクル
クビシメロマンチスト
クビツリハイスクール
サイコロジカル 上下
ヒトクイマジカル 上下
ネコソギラジカル 上中下
といった風に続いている。
全体を通じて戯言シリーズは、ラノベとしては最高傑作のひとつであるが、ミステリー小説としてみるならば下の上といったところが、個人的感想である。最終巻に至っては、一応ミステリーの要素もあるらしいのだが、傍から見れば推理なんぞしていない。
【内容】
あらすじ
「絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が
“科学・絵画・料理・占術・工学”
五人の「天才」女性を招待した瞬間、
“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする!
工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友(♀)と
その冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃん(♂)は、
「天才」の凶行をQED(証明終了)できるのか?
人に優しく慈悲深く、優秀で有能で、
万能で、そして何より魅力的――
その上で天才だなんて人間は会ったことがありません。
もしいらっしゃるようでしたら、
首を洗って待ってます。
登場人物
赤神イリア――舞台となる鴉の濡れ羽島の主人。複数ある財閥界のひとつである赤神家から、殺人の疑惑をかけられて島流しの刑に処されている。天才を招聘しては日々を過ごすという日常を送っている。
班田玲――千賀三姉妹(三つ子)の上に立つメイド長。
千賀あかり――千賀三姉妹のメイドの長女。いーちゃんに対するアタリが強い。
千賀ひかり――千賀三姉妹の次女。いーちゃんには他の「天才」の客同様、対等に接する。嘘吐き。
千賀てる子――千賀三姉妹の三女。いーちゃんに対するアタリがキツイ。嘘吐き。
伊吹かなみ――天才画家。園山赤音とは非常に険悪な仲。付き添い人として、逆木深夜を連れている。
逆木深夜――伊吹かなみの付き添い人。伊吹かなみを唯一無二の人物と捉えている。鴉の濡れ羽島に訪れた理由は、彼女を更生させるため。
園山赤音――天才数学者。かつて、いーちゃんが所属していた海外の研究部門ERシステムに所属していた。いーちゃんからすれば先輩にあたる人物であるだけではなく、世界の回答に最も近い七愚人の一人である。
姫菜真姫――未来や人の心を読み取れる占い師でもあり、超能力者。いーちゃんをからかっている。殺人事件が発生した際は、自身の持つ能力を一切使わずに傍観者として徹していた。
佐代野弥生――天才料理人。鴉の濡れ羽島に招待されており、客の立場だが屋敷の厨房で料理を振舞っている。島内の事件が連続的になるに従って、冷静さを欠くようになる。
玖渚友――「青色サヴァン」の異名を持つ天才・技術屋。人外ともいえる集中力を有しており、二本の上で三つのキーボードを操るなどといった離れ業をやってのける。玖渚機関のトップにして勘当されている。彼女が島に訪れた理由は、赤神イリアが島流しの刑にあった殺人容疑に興味を抱いたため。
いーちゃん――戯言遣い。語り部にして狂言回し。玖渚の精神病のひとつである「極端な上下移動の際、同行者がいないと暴れ出す」特性のため、逆木深夜のように介助人として連れ添い。島内で発生する連続事件を解決するため、動きだすことになる。
哀川潤――人類最強の請負人。第一事件が発生した際、島の主人である赤神イリアが哀川潤に事件解決を頼むべく、警察を呼ぶことはなかった。赤神イリアのお気に入りであり、「推理小説における探偵、怪獣映画における怪獣」だと評している。
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2021年08月26日
八尺様 3
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らせられ、助手席にKさんが座り、庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。
「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。
そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。
車列なかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。
間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。
「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」
またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いていたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。
目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。
無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣が声を荒げる。
慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。
コツ、コツ、コツ。
ガラスを叩く音が始まる。
周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。
やがて、声と音が途切れたと思った時、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した・
やがて車は道の広い所で止まり、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の音尾たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。
その後は親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。
バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係のある人で、つまりは薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったようだ。
それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにもいかなく、また夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
道中、最悪ならじいちゃんか親父を身代わりになる覚悟だったとか。
そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと念を押された。
家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に電話をかけたかと聞いたが、そんなことはしていないと断言された。
――やっぱり、あれは……。
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。
八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということだ。
まだ子供や若年の人間が極限の不安な状態にあるとき、身内の声であのようなことを言われれば、つい心を許してしまうだろう。
それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。
「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通じる道のものがな」
と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという)
今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえたらと思うと…。
所感
個人的な意見になるが、非常によくできたストーリーだと思う。
田舎特有の風習というか、そういったところがマッチしておりストーリーの完成度は高い。
八尺様の説明は必要最低限に抑えられくどくなく、丁度良い塩梅である(同じく洒落怖のリゾートバイトは良くも悪くも長すぎ)。
しかし贅沢を言うならば、オチをつけるためか後日談で「自分の元に八尺様が来るかもしれない」といった内容はいらなかったように思える。
敢えて、大人になったバージョンとして「どうなるのか」といった懸念を抱かせるためか、皆のところに解き放たれた八尺様が現れるかもしれないという想起を抱かせるなら、もう少し良い方法があったのではないかと思う。
2021年08月25日
スプリガン中村(FGO)
スプリガン中村とはアヴァロン・ル・フェに登場するNPCのキャラクターである。
アヴァロンのストーリー内において、オーロラ並に(ネタ的な意味)でキャラが濃い。
まるでお笑い芸人のような名前だと思ってはいけない。
【内容】
そもそもスプリガン中村とは、アヴァロンの中では過去奴隷階級の人間であり、妖精でも何でもない。正体は鎖国時代における薩摩出身の日本人。
土の氏族の長で金髪にエルフ耳をしているが、妖精っぽく中身を変装させているだけ。妖精は良くも悪くも純粋である。
不老不死ではないのだが、かなりの御老体であるにも関わらず実年齢と比較して若い見た目をし長生きしている理由は、独自開発した薬を飲んでいるためである。
性格は参謀タイプのせせこましい性格であり、エジソン……じゃなかった、ボガードからはゲス呼ばわりされている。その評価は実に正しいもので、スプリガンと名乗る以前のキャップレス時代に先代スプリガンを誅殺した過去を持っている。
物語後半では、あのオーロラと手を組むものの根っからの悪人というわけではなく、美術品に目がない、守銭奴タイプと言えば非常に分かり易い。ストーリー内では自身が強固と信じて疑わない宝物庫内で(恐らくアルビオンの厄災に巻き込まれ)圧死したものだと思われる。
スプリガン中村の過去
そもそも何故、薩摩出身の日本人である彼が妖精が跋扈するアヴァロンにいるのかというと、妖精の伝承におけるチェンジリンクよろしく、主人公と同じ世界である汎人類史からやってきた漂流物だからである。
この「漂流物」には様々なものがあり、単なる書物や物品等が異聞帯であるブリテンに流れ込んでくるのであるが、スプリガン中村だけに限らずバーゲストの元にもチェンジリンクにより紛れ込んだ虚弱な少年が現れている。
バーゲストの元に訪れた少年は彼女の手により療養生活をしているのでるが、ムリアンが主催するショーの競り合いではシェイクスピアの原本が出ていたりなど、汎人類史から流れ込んできたもの(というか人間そのものを含め、人の手により創造されたモノ)には妖精にとって価値ある商品となっており、『人間(もしくはそのもの)から織りなす流行物』に気紛れな妖精は非常に敏感である。
スプリガン中村が異国でもない異世界に漂流した当初は妖精に奴隷として扱われ、雌伏を余儀なくされたものの、登場時には妖精の族長として振舞っているなど、中々の逆転人生を送っている。
なおエネミーでも何でもなくオーロラ同様、ただのNPCである中村であるが、ネタ的な人気があり、アヴァロンのガチャにおいて村正・オベロンに続き、なぜか彼がピックアップの対象(ネタ)として候補に挙がっていたぐらいである。
なお、スプリガン中村は長年妖精を騙し続けたことから、真のプリテンダーではないかとの見解を示す一派もいる模様。
なお、どうでもいいが結構頭脳派で作中において中々の曲者であった。
八尺様 2
しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるようなものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことか…
「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。そうだな。明日朝の七時になるまでは絶対にここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」
と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。
「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」
とKさんにも言われた。
テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。
そんな状態でいつの間にか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。
(この頃は携帯を持ってなかった)
なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツ叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がゆかなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。
落ち着いてお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。
そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」
じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そうしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。
ふと、隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。
一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。
そのとき、
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」
あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いいている光景が浮かんで仕方が無かった。
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。
とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、つけっぱなしのテレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。画面隅に表示される時間は確か七時三十分となっていた。
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。
どうやら眠ってしまったか気を失ってしまったかしたらしい。
盛り塩はさらに黒く変色していた。
念のため、自分の時計を見たところはほぼ同じ時刻だったので、恐る恐るドアを開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。
下に降りると、親父も来ていた。
じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持って来たのか、ワンボックスのバンが一台あった。
そして、庭に何人かの男たちがいた。
八尺様 3へ
2021年08月24日
八尺様
八尺様とは2ちゃんねる発祥の都市伝説にて創作された怪異譚である。
ストーリーのラストでは全国をうろつき回っているとの噂があるが、現在では日本特有の萌え化によりホラー要素は消え、時と場合によっては優しいお姉さんになったりしている。
しかし、八尺様の初当時は本当に怖い話であった。
ポポポ……。
【内容】
内容
親父の実家は自宅から二時間弱ぐらいのところにある。
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗るようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行っていた。
じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。
でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこんなことだ。
春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。そうしたら、
「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」
と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。
それも濁音とも半濁音とも、どちらにもとれるような感じだった。
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人女性が見えた。まあ、帽子はその女が被っていたわけだ。
女性は白っぽいワンピースを着ていた。
でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い女なんだ…
驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。
そのときは、もともと背が高い女が蝶厚底のブーツを履いていたか、踵の高い靴を履いた背の高い男が助走したかくらいにしか思わなかった。
その後、今でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。
「さっき、大きな女を見たよ。男が女装していたのかなあ」
といっても「へぇ〜」くらいしか言わなかったけど、
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声を出してたし」
と言った途端、二人の動きが止まったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。
その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びさせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。
ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。
じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけにはいかなくなった」といった。
――何かとんでもなく悪い事をしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。
あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。
そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。
ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、
「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」
と震えた声で言った。
そえからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。
この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。
八尺様は大きな女の姿をしている。名前の通り八尺ほど背丈があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な藁方をする。
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か乗せていること、それに気味悪い笑い方は共通している。
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
この地区(今は◯市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区域)に地蔵によって封印されていて、よそへ行くことがない。
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。
最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前。
これは後から聞いたことであるが、地蔵によって封印されているというのは、八尺様がよそへ移動できる道というのは理由はよく分からないが限られていて、その道の村酒井に地蔵を祀ったそうだ。
八尺様の移動を防ぐためだが、それは東に死、南北の境界に全部で四ヶ所あるらしい。
もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、周辺の村と何らかの協定があったらしい。
例えば水利権を優先するとか。
八尺様の被害は数年から十数年に一度くらなので、昔の人はそこそこ有利な協定を結べば良しと思ったのだろうか。
そんなこと聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。
「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。
ここにきてはじめて、「何だかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。
八尺様 2へ
2021年08月20日
首吊りスヤスヤ永眠システム(FGO)
『首吊りスヤスヤ永眠システム』とは、この人でなし! キャスター・クーフーリンを攻撃の主体とした全体攻撃Bastardによる周回システムである。
【内容】
名前の由来は、編成チームのクーフーリン(セリフ:首はつらねえよ)、コヤンスカヤ(のスヤスヤ)、オベロンのスキルデバフである永続睡眠効果のそれぞれをとって、首吊りスヤスヤ永眠システムと名付けられた様子。
おぞまそや、汎人類史……。
Bastard強化の際明け幕として、お馴染みのマーリン・コヤンスカヤ・オベロンのそれぞれが挙げられる。
☆5配布として諸葛孔明(Arts・Bastard・Criticalどれでもいい汎用性)を貰っていた場合、更なる戦力と強化の幅が広がるのであるが、実質このシステムはかなり強い。
何せ☆3のキャスター・クーフーリンが彼彼女らの強化バフを貰えれば、倍等の敵をウィッカーマンで焼き殺すだけではなく、簡単に50万ほどのダメージが出るからである。
正直、☆3にしてはかなりの破格ダメージである。
その強さから運営側から、モルガンの再ピックアップから外されたなどとの噂があるが真偽の方は定かではない。
個人的にオススメ礼装は黒聖杯などの宝具底上げモノであるが、特別聖杯を捧げる間でもなく巣のレベル70で、かなりの高ダメージを与えることが出来るため、聖杯を消費することはないように思える。
☆3なので編成コスト的に組みやすいのも高ポイント。
唯一、問題があるとすれば、☆5であるコヤンスカヤとオベロンを所持しておく必要がある点だろうか。
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蛍火の社へ
「蛍火の社へ」とは、短編少女漫画のひとつである。
「夏目友人帳」と同じ舞台の全く異なったストーリーと言えば大体伝わる。非常にどうでも良いが、銀髪のキャラクターにギンの字が付く名前が多すぎるように思える(例:蟲師・銀魂)。
内容は非常に感動できる。
【内容】
登場人物
ギン
人でも妖怪でもない、曖昧な存在。迷子になった蛍を社で発見した。蛍(人)に触れることができないため、手拭いや木の棒といったもので間接的に「手を繋ぐ」という行為をしている。
常に狐面を被っているが、ストーリー終盤で高校生頃の年齢になった蛍にあげている。人に触れられない儚い存在なのに、夏が待ち遠しく、人込みをかき分けてでも蛍に会いたくなると述べている。
実は赤ん坊の頃、親に捨てられて妖に育てられた。
竹川蛍
妖怪がいるといわれている山神の森に迷い込み、ギンと出会う。出会った当初は小学生低学年といった年齢であったが、夏の時期になると祖父の家に帰省して、毎年夏休みをギンと過ごす。
幼い頃はギンを驚かせたり、仮面を取ったりとお転婆であったが、年齢を重ねるにつれてそれなりにおしとやかになっていく。
ギンに自分のことは忘れた方が良いと告げられるものの、柔らかな口調で断った上に「自分のことを忘れないで欲しい」と述べている。
高校生の夏、ギンと一緒にいった夏祭りを最後に今生の別れを遂げた。
蛍火の社のストーリー内容は、神隠しのような妖怪の住む神社――非現実的な中で、他愛もない関係を蛍とギンが過ごしていく。
最初ギンは蛍を軽くあしらう程度の関係であったものの、冬の季節において、まるで夏になるとやってくる蛍の来訪を待ち望んでいるかのような描写がある。
現にギンは夏祭りにおいて、高校生になった蛍に自身の狐面をあげており、仮面越しにキスをするというストレートな行動に出ている。
妖怪と人間が入り混じる夏祭りの後、かつての蛍と同じく知らない間に異界に迷い込み、転びかけた子供の腕を――人間に触れてしまったことによって、その存在が消えていくことになる。
元々亡霊のような存在であり人間と交わることのできないギンであった為か、消失の最中、「ようやくやっと蛍に触れられる」と述べ彼女が抱き着くのだが、空蝉のように着物だけ残してギンは蛍の燐光を残して消えていった。
ラストにおける場面では悲恋そのものであるが、人間と死者が結ばれない関係をズルズルと過ごす心苦しい展開よりも、円満な結果を迎えている。
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