玉置浩二『CAFE JAPAN』一曲目、「ファミリー」です。
この三年前、玉置さんは「家族」という超ウルトラヘビー級チャンピオンな曲を放っています。それが心の弱っているときにうっかり聴くと寝込みかねないハードパンチを連続でぶち込んでくるものですから、この曲も(家族=ファミリー)ちょっと身構えて聴き始めますと……
なにやらカフェかバーでちょっと控えめに話している人たちが演奏が始まるのを待つような雰囲気、そしてはじまるピアノによるメインテーマ、そして絡められてゆくオカリナのような音……そんなクレジットはありませんから、例によってわたくしの耳がポンコツなだけでこれはギターなのでしょう。パーカッションがストト……と鳴りつつ「Thank you Everybody……KOJI! TAMAKI!」とアナウンスする玉置さんの声、これはもうショーの始まりです!アルバム『ソルトモデラートショー』やTV番組「玉置浩二ショー」で後年鮮明になりますが、玉置さんはこういうショー仕立ての演出を好む方のようで、とてもハマっています。
クレジットに「フランキー堺に捧ぐ」とありますので、これは96年夏にお亡くなりになったフランキー堺さんに、おそらくはもう曲が出来上がってから訃報に接してクレジットを入れたのだと思います。わたくしフランキー堺さんのことはよく存じ上げないのですが、こんな感じのショーをおやりになっていて、それをTVで観るのが玉置さんはお好きだった、そしてフランキー堺さんのことを思い浮かべながらこの曲を作ってレコーディングしたら、リリース直前期、もう歌詞カードの最終編集くらいしかできない時期になってお亡くなりになったから……なのかもしれません。
つまり、これは「家族」の世界とは全然違います!(遅い)
この曲……ほんとうに最初からフランキー堺さんみたいなショーマンのことを描いたんじゃないのって感じがします。夜汽車に乗って津々浦々でショーを行ってきたけども、帰るところは家族のところ……、いや、家族みんなで旅をしている一座みたいな感覚すらありますね。家に帰ったらゆっくり話そう、いろいろあったツアー中のことも、出会った人たちとのことも、満天の星のことも。この時期の玉置さんはすっかり調子を回復しており精力的にツアーを行っていましたから、一緒にツアーをしている矢萩さんや田中さん六土さんはもちろん、カルロスさんたち、そして安藤さんのことを「ファミリー」と認識するようになったんじゃないか、と思うのです。さあみんなお疲れさま、そろそろ家(東京)に帰ろうか……そして東京で打ち上げやって、ゆっくりいろいろ話そうよ!「家族」のときは自分を生み育ててくれた血族だけがこの世の頼りって感じでしたが、この「ファミリー」ではすっかり一緒に仕事をしてゆく仲間を心の支えとして生きて行ける状態を取り戻しているとわかります。
ホーンの音が鳴って曲を盛り上げていきますが。例によってクレジットがありません。こんなときはシンセで音を出していると考えるほうが普通なんですが……この曲は藤井さんもマニピュレーターに入ってないし……安藤さんがキーボードでやったんですかねえ……ちょっと謎です。わたくし鍵盤あまり弾きませんもので、ペダル使って抑揚をつけたのか、あとからミックスでどうにかしたのか……なんともわかりません。
さて曲は「ふたりの愛のこととか!」と非常に意味深なセリフで間奏に入ります。間奏は玉置さんのソロですね。歌詞カードに大きく写真の乗っているフェンダーのストラト、エリック・クラプトンモデル、これのフロントを使ったトーンだと思います。わたくしこの写真を見て、そしてこの音を聴いてクラプトンモデルを買いに行ったことは言うまでもありません(笑)。18万円もしたので見ただけで帰ってきましたが。なにせつい一年半前に『LOVE SONG BLUE』のために激寒の年末年始を過ごしたわたくしにそんな金があるわけないのでした。ふ、ふん!あんな電池の必要なオモチャギターなんかほしいもんか!(とれないブドウは酸っぱい理論)。ちなみに、いまでも持ってません。クラプトンモデル。ちょっとムリしてでも買っておけばよかった!結局違うハイエンドメーカーのストラトで同じ配色のギターを買ったのですが、それはそれでとても満足度が高いギターで、いまでも秘蔵のギターとしてここ一番に使っている一方で、どうしても玉置さんのあれじゃない、という気持ちがずっと引っかかって残っているのです。
そして「遠慮なくやろう これからは」とまた歌が始まるのです。これは、「ファミリー」のみんなに向けた言葉であるいっぽうで、自分に向けた言葉でもあるんじゃないでしょうか。なにせ安全地帯の頃はバンド運営にわがまま言い放題の玉置さんでしたが、音楽的には不本意な曲を作り続けてとうとう倒れてしまったのです。これからは、自分の好きな音楽を、自分の好きなようにやるんだ!須藤さんと金子さんがくれたもう一回の音楽人生、心ゆくまま思いのままにやらないと罰が当たるわ!その途中でいろんな出逢いも別れもあるだろうけども、それも含めてみんな精一杯楽しむんだ、それでいいんだ!とふっきれた玉置さん自身の宣言であるように聴こえたのです。ですからわたくし、一曲目のこの時点で、玉置さんの完全復活を確信したのでした。そう、あれだけの力作であった『LOVE SONG BLUE』ですら、わたくしにはまだひっかるものがあったのです。第15ラウンドまで倒れずにリングに立っていたボクサーを見るような気分で、明らかに実力は十分なのにどこかKOパンチを撃つのを怖がっているんじゃないのか……?かつては後先など一切考えずにバシバシと打ちまくっていたKOパンチでわたしたちを浅いラウンドで幾度も感動と涙のマットに沈めてきた超ハードパンチャーなのに、ある時とんだカウンターをくらってしまったばっかりにカムバックに時間を要したあげくに強打がすっかりなりを潜めた……ような感覚を味わっていたのです。「ファミリー」の曲名から「家族」を思いだしてビビっていたわたくし、もう大丈夫だ、「ありがとう さよならって」の歌い回しが「ふたりの愛のこととか」と自信たっぷりに変わっているところ、「明日からもLOVE」の凄まじい歌いっぷりを聴いて、そう確信したのでした。
もちろんこの曲はCAFE JAPANショーの序曲、まだまだ第一ラウンドにすぎません。次曲以降、怒涛のハードパンチがバシバシ決まりますので、わたくしのノックアウトされっぷりをどうぞお楽しみに!
玉置浩二 / CAFE JAPAN(完全生産限定盤/Blu-specCD2) [CD] 価格:2,088円 |
そんなにいいドラマだったんですね。ドラマってあんまり観たことないんですよ。テレビ若いときにはドラマやってる時間には観るヒマがなかったような気もしますし、たんに部屋にたいていいつも誰かいたから遊んでた(生音セッションしてた)ような気もします。仕方ありません、人間なにもかもはできない……。
「行くよ!」の玉置さんのシャウトが良かったです(ドラマを観ていない方はアーカイブで)
フランキー堺さんの昔の白黒映画で、たぶん私は貝になりたい、あたりの映画を中学3年の受験生の冬に、深夜にフランキー堺さんが出られていて顔も芝居もユニークで一発で名前を記憶しました。
玉置浩二ショーでもいつでしたか唄っていて、この曲にはタキシードが似合います。歌詞も独特で
よく書けるなぁ、と感心。作詞作曲歌玉置浩二。
カフェジャパンは、田園が入ってて、発売からすぐ購入しました。ラブソングブルーからもカリント工場からもかなり遠く近く、玉置浩二ソロの佳曲が勢ぞろい。金子洋明さんとの相性が凄くあっていたのと、あと須藤さんともよく作れましたね。そういう人と組める、出会いを呼び込むパワーは昔の巫女さんか竜の如く凄いです。
次の曲はほんとに楽しそうですよね。わたくし当時驚きました。精一杯記事を書かせて頂きます!
cafe japanの踊りだしたくなる愉快さが大好きなので、トバさんの音楽的解説が今から楽しみです。