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2020年10月11日

眼鏡を替えたのに……(十月八日)



 題名の「かえた」を、どの漢字で書くか悩んでしまった。「変えた」「替えた」「換えた」「代えた」、どれだろう。日本語の同訓異字は、明確な違いがないことが多いので困る。常用漢字で整理された結果わかりにくくなったものもあるしさ。とりあえず適当にひとつ選んでおいたが、普通は、どの漢字が一番いいのかわからないときには、高島俊夫氏の説にしたがってひらがなで書くことにしている。今回は何となく漢字の気分だったのである。

 それはともかく、今月朔日の記事に書いたように、新しい眼鏡、老眼鏡をかけ始めた。眼鏡をかけていることが原因となる頭痛は起こっていないが、長時間PCの画面を見つめていると、焦点が合わないというかぼやけて見えるようになることがある。これは老眼鏡の同一の部分を使って見続けることができていないのが原因だろう。
 それで、火曜日と水曜日はPCで仕事をするのが辛くなって、目を休めるために昼寝を余儀なくされた。頭痛とまでは行かなかったが頭が重くて何も考えたくない状態だったから、自宅作業の時間帯で助かった。火曜日は昼寝の後に仕事に出たんだけど、頭もすっきりしていたし、目もPCが使える程度には快復していた。

 レンズの下のほうで本を読むというのは、うまく行かなかった原因が見えた気がする。大きめの文字で書かれた文章であれば読みやすいのである。ああ、だから、いろいろな出版社がお年より向けというか、老眼鏡向けに活字の大きな、版型も大きかったきもする文庫を発売していたのか。文庫本の活字なんてお年より向けではなくても、ページ数を増やして単価を上げるために少しずつ大きくなってきていたものではあるけど。
 テキストファイルをPDF化してリーダーで読む際には、ページ数を減らすために、小さめの活字を使っていて、眼鏡なしで読むには最適の大きさなのだが、老眼鏡で読むには小さすぎるようだ。だからといって活字を大きくしてPDFを作り直す気にもなれないし、今後も読書は眼鏡なしかなあ。今のところ新しい眼鏡では起こっていないけど、頻繁にかけたり外したりを繰り返していると眼鏡をどこに置いたかわからなくなるんだよなあ。眼鏡かけてるの探したりとかさ。

 それはともかく、新しい眼鏡をかけ始めて早十日近く、職場でもいろいろな人と顔を合わせたのだが、誰も気づいてくれない。もう何年もいっしょに仕事をしている人たちにも何も言われなかった。武漢風邪騒動で対面する時間をできるだけ短くしているせいもあるのかもしれないが、何か言われたらどう答えようかと身構えていただけにちょっと肩透かしである。先週末うちのの実家にいったときも何も言われなかったし。
 前回眼鏡を新しくしたときには、すぐに気づかれてあれこれコメントをもらった記憶があるのだけど、お店の人に前の眼鏡と同じようなのを選んでくれるようにお願いした結果だから、店員さんがいい仕事をしてくれたと言ってもいいのか。先月までかけていた眼鏡は、黒に少しだけ赤を使った小洒落たデザインのフレームだったのに対して、新しいのは黒だけの地味なデザインだから気づきにくいというのもあるのかもしれない。前のデザインも気に入っていたけど、新しいののシンプルさも好きなんだけどね。
 それに老眼鏡に小洒落たデザインなんてそぐわないから、オレンジ色とか黄色とかがあしらわれていたフレームは退けたのだし。そう考えるとこの年になって新しい眼鏡ということは老眼鏡だからということで、周囲の人たちに気を使わせてしまったのかもしれない。年を取ると僻みっぽくなっていけない。困ったものである。
2020年10月9日23時。









2020年10月10日

地方議会選挙2020結果4(十月七日)



 三つ目のANOが勝てなかった地方は、リベレツ、中央ボヘミアと隣接するフラデツ・クラーロベー地方である。この地方では前回は第一党になったANOを押しのけて、第二党の社会民主党が市民民主党などと連立を組んで知事を出していた。社会民主党が全国的な凋落を止められない中、知事の座を維持できるのかどうかに注目が集まった。
 フラデツ・クラーロベー地方で第一党になったのは、市民民主党が市長無所属連合などと組んで結成した同盟で、全45議席中12議席を獲得した。第二党になったANOも議席は12だが、得票率で1.5パーセントほど負けての2位だった。3位が海賊党で7議席、4位に社会民主党と緑の党というありえない組み合わせで4議席、同じく4議席を取ったのが、キリスト教民主同盟を中心とする同盟とTOP09を中心とする同盟の2つ。最後にオカムラ党が5パーセントの壁を越えて2議席獲得。全部で7つのグループが議席を獲得したわけだが、単独で候補者を立てたところが少ないので、政党の数で言うと10を越えることになる。

 選挙後の連立交渉は、ここもすんなり進み、市民民主党を中心にした同盟が、海賊党と、キリスト教民主同盟、TOP09を中心とする同盟と連立することになった。つまりANOと社会民主党、オカムラ党の三つが排除されるという形である。知事に選ばれることになったのは、市民民主党の上院議員である。ここでも兼職が起こるわけである。
 この地方で市民民主党と市長無所属連合の同盟が獲得した票は23.5パーセント。地域差というものを考えず、全国的な両党の獲得票の傾向から考えると、「東ボヘミア人」という地域政党も同盟に加わっているし、それぞれ単独で立候補した場合とあまり変わらない結果のようにも思われる。別々に合計23パーセントよりも、一つにまとまって23パーセントの方が獲得議席数が増えるのかな。比例代表制はよくわからない。

 次はANOが勝ったのに、ANO外しの連立が成立した、もしくは成立しそうなところだが、南ボヘミア地方、ビソチナ地方、南モラビア地方、パルドビツェ地方がこれに当たる。
 このうち南ボヘミアでは第一党のANOと第二党の市民民主党の差はほとんどなく、どちらも55議席中12議席を獲得した。ここでは第一党のANOだけではなく、海賊党と市長連合もはずした連立が成立し市民民主党から知事が選ばれることが決まっている。つまり連立に参加するのは市民民主党、社会民主党、キリスト教民主同盟、TOP09と「南ボヘミア人」という地域政党になる。

 ビソチナ地方でも、勝者のANOを排除して、第二党となった海賊党と、第三党の市民民主党を中心に、社会民主党。キリスト教民主同盟、市長連合からなる連立が成立し、知事は市民民主党から出されることになっている。これは海賊党と市民民主党の獲得した議席数が同じで、海賊党に有力な政治家がいないことが理由だろうか。

 南モラビアでは、第二党になったキリスト教民主同盟から知事が出ることになった。キリスト教民主同盟と、3位の海賊党、4位の市民民主党、5位の市長連合が連立を組むようである。二年前の市町村長選挙でも、南モラビアの中心都市であるブルノで、第一党のANOはずしの連立が成立しており、今回もそれに続いたと考えてよさそうだ。この地方は、地方知事だけでなく、ブルノの市長などの汚職疑惑が相次いでいるからANOとANO以外であんまり大差はないような気がするんだけど。

 パルドビツェ地方では、前回と同様に第一党になったANOではなく、社会民主党から知事が出ることになった。全国的に凋落が止まらない社会民主党だが、パルドビツェ地方では、名称隠しなのか他の政党と3PKという同盟を組んで出馬し、ANOに次ぐ第二党の座を獲得した。連立を組むのは知事を出す社会民主党等と、同じ数の議席を獲得した市民民主党+TOP09と、KPPというグループに市長連合となっている。海賊党はここでも連立から排除された。

 続いて第一党になったANOが知事を出して連立与党を主導することが決まっている地方だが、モラビア・シレジア地方とズリーン地方、それにウースティー地方の三つだけである。
 かつて共産党と社会民主党の支持者が多いことで知られたモラビア・シレジア地方は、左寄りの政策を取り入れたANOによって席巻され、ANOの大票田となっている。今回も30パーセントちょっとというリベレツ地方の勝者である市長連合に次ぐ得票率だった。その結果全65議席中24議席を獲得し第二党以下の各党に倍以上の差をつけることに成功した。この圧倒的な勝利と、これまでの協力関係がうまくいっていたことが理由で、ANOの知事が知事を続け、市民民主党+TPO09と、キリスト教民主同盟、何とか議席を確保した社会民主党が連立することになった。

 北ボヘミアのウースティー地方でもANOが他の党に倍以上の差をつける圧勝を果たし、全55議席中17議席。それに第二党の市民民主党8議席、市長連合7議席をくわえて、32議席で過半数を確保する連立が成立する見込みである。ただし、議席を確保した党が全部で8もあるため、別の組み合わせになる可能性もある。ただANOを排除してしまうと過半数を確保するのが難しくなりそうである。
 ここも石炭(褐炭)の産地で、共産党と社会民主党の支持が高かったのだが、度重なるスキャンダルで社会民主党は地方議会の議席を失ってしまった。確か、一時党首として党を引っ張ったパロウベク氏がこの地方から出たのではなかったか。あれこれもめた挙句の果てが、この凋落である。

 最後のズリーン地方は、ANOと第二党のキリスト教民主同盟の差は小さく、キリスト教民主同盟が知事を出して連立を指導する可能性もあったのだが、現知事のチュネク氏の存在が嫌われたのか、ANOではなく、チュネク外しの連立が成立しそうである。この二党は得票率の差が0.45パーセントほどで、獲得議席数は、全45議席中どちらも9だった。連立を構成するのは、ANOに加えて、海賊党と市民民主党、社会民主党の4つの党である。
 ちなみに、この地方では、バーツラフ・クラウス若の率いるトリコローラが、他の政治団体と組んで候補者を立て、全国で唯一議席を確保した。オカムラ氏が最初に上院議員選挙に当選したのもズリーン地方の選挙区だったし、ここの有権者たち、たまにあれっというような選択をするのである。チュネク氏もフセティーン市長、ズリーン地方知事、上院議員の三職を兼ねていたこともあったと記憶するしさ。

 のこりのカルロビ・バリ地方、プルゼニュ地方、オロモウツ地方は、ANOが第一党になったのは共通するが、それぞれの事情で連立交渉に時間がかかっており、どの党から知事が出るのか見通しが立っていない。いやあ、ついつい長々と書いてしまった。
2020年10月8日23時













2020年10月09日

地方議会選挙2020結果3(十月六日)



 結果といいつつまともな結果を書いていなかったので、いくつか注目に値する結果の出た地方、特にANOが第一党になれなかった地方について簡単に書いておく。

 まずは、リベレツ地方からである。この地方は、市長無所属連合の揺籃の地とも言うべきところで、前回の選挙で第一党になったのも市長連合で、現職の知事も市長連合の人である。ただ、最近この地方知事に関して汚職の疑いで捜査を受けるというスキャンダルが勃発したこともあって、どのような結果になるのか注目を集めていた。チェコの場合には、汚職で摘発されても、裁判で無罪になることも多く、またどうせ他もやっているだろうというイメージがあることもあって、疑惑の政治家に対して比較的寛容である。
 結果は、市長連合が圧勝し、全45議席のうち半数に迫る22議席を獲得した。これまでよりも議席を増やしているので、知事の疑惑はあまり問題にされなかったと考えてよさそうだ。第二党になったのは10議席のANO、それに海賊党と市民民主党が5議席ずつで続き、3議席を確保した5位のオカムラ党までが、5パーセントの議席を獲得するためのラインを超えた。

 リベレツ地方でも、社会民主党と共産党の凋落は著しく、共産党は3パーセントちょっと、社会民主党は2パーセントちょっとの票しか集められず、どちらもそれまでの4議席を失うことになった。全部で16の政党、政治団体が候補者を立てているが、バーツラフ・クラウス若が市民民主党から追い出されて設立したトリコローラとか、一時国会に議席を持った緑の党が議席を獲得できなかったのは幸いである。

 選挙後の連立の交渉では、市長連合が海賊党と市民民主党に声をかけていて、市民民主党はこの3党連立に積極的らしいが、海賊党が難色を示して、2党だけの連立を求めていたらしいが、最終的には市長連合の主張が通って3党で連立することが決まったようだ。気になるのは、この地方の市長連合が、全国的に使われている市長無所属連合ではなく、リベレツ地方(のための)市長連合という名称を使い続けていることで、中央からの自立性を主張しているのだろうか。

 二つ目は、人口が最も多い中央ボヘミア地方で、これまではANOが第一党で知事の座も確保していた。ただ、ANOの女性知事が、いろいろと、武漢風邪騒ぎの最中にマスクなどの医療物資が届かないと不満の声を上げた消防士を裁判で訴えるとか、やらかしたせいで支持を落としており、前回と比べると得票率も議席数も減らすことが予想されていた。結果は減らしたものの予想ほどではなく、議席数は−1で15議席となり三番目だった。
 中央ボヘミア地方で勝ったのは、下院議員を務める党首のラクシャン氏が候補者名簿に登場した市長無所属同盟で全65議席中18議席を獲得。第2位の市民民主党は、2議席少ない16議席、3位のANOを挟んで、4位の海賊党が12議席、5位のTOP09と緑の党などの同盟が4議席で、ここも5つの政党が議席を獲得した。
 社会民主党と共産党は、リベレツ地方に比べれば善戦したとは言うものの、どちらも4パーセントちょっとで、5パーセントの壁を越えることはできず、社会民主党は11、共産党は8つの議席を失うことになった。オカムラ党も0.4パーセントほど足りずに議席の確保には至らなかった。不思議なのは、議席は確保できなかったけど、「モラバネー(モラビア人たち)」といういかにもモラビア的な団体が候補者を立ていて、0.07パーセントとはいえ票を投じた人たちがいることである。

 選挙後の連立交渉は、この地方は選挙前からANO外しで話し合いがついていたこともあって、ANO以外の4党が連立することがあっさり決まった。知事になるのは、市長無所属連合の名簿1位だった女性候補である。ただこの人、どこかの町の町長を務めていて、町長と知事の兼職は流石にまずいと思うのだけど、市長無所属連合がどう判断するか注目である。日本的に考えたら県知事と県内の市町村の首長を兼任するのはありえないと思うのだが、民主主義が大好きなチェコだからなあ。
 このANO外しは、単に反バビシュというだけでなく、ANOの知事が、任期の途中で連立を組み替えるという連立から外された党にとっては裏切りを働いたという中央ボヘミア地方独自の事情も絡んでいる。恐らく第一党になった政党から知事を輩出するという合意がなされていたものと考えられる。選挙前から連立交渉ってのはフライングじゃないの? と思わなくもないし、こういうあからさま過ぎる反ANOの姿勢が、逆に既成政党に主導されたANOいじめのように見えて、ANOの支持者を増やさないまでも、支持者が減らない原因になっているのだろう。
2020年10月7日10時。












2020年10月08日

地方議会選挙2020結果2(十月五日)



 今回の地方議会の選挙は、来年行なわれる予定の下院の総選挙の前哨戦という意味も持つ。だから、各種世論調査で30パーセント前後の支持率を保ち続けているANOが、比較的弱いとされる地方議会選挙で他の政党にどのぐらいの差をつけて勝つのかも注目を集めていたが、もう一つの注目は、バビシュ首相と対決姿勢を強めているいくつもの野党のうち、どこが抜け出して野党第一党になるかだった。これには、地方議会の選挙だけでなく上院議員の選挙の結果もかかわってくるから、今週末ま結果は出ないのだけど。

 バビシュ首相と対決姿勢を強めている政党としては、既存の政党側から市民民主党、キリスト教民主同盟、TOP09の三党、新興勢力としては海賊党と市長無所属連合の二党が上げられる。このうち、キリスト教民主同盟は、地方によって支持率のばらつきが大きくANOの対抗馬とするには弱い。地方議会選挙に、下院や上院の議員を務める党の大物を出馬させて票を集めるという子供のけんかに親が出るような手法を使っているのも高く評価できない。

 カロウセク氏がキリスト教民主同盟を割って結成したTOP09は、結党当時の勢いを失いその他の政党の中に埋没しつつある。一時市民民主党出身の政治家が党首を務めていたことからもわかるように、党の象徴だったシュバルツェンベルク氏が引退した後、迷走に迷走を重ねている印象である。実質的な党首だったカロウセク氏も、次の下院の選挙には出ないと言って、裏から反バビシュ連合の結成に尽力するというのだけど成功するとは思えない。この党は、結局シュバルツェンベルク党の顔をしたカロウセク党だったのだろう。世代交代をするなら党名も変えてしまった方がよさそうだ。

 市民民主党は、一時の解党の危機を脱して支持を増やしたが、それも最近頭打ちになった感がある。かつて1990年代から2000年代の初めにかけて、社会民主党と組んで好き勝手にやらかした過去を忘れていない有権者も多く、かつての支持者が完全にもどってきていない印象である。地方に大物政治家がいて中央の意向を無視しがちだという問題もまだ残っているようだし、しっかり過去の清算をしないと、新しい政治家たちは出てきつつあるけれども、ANOを批判しても、お前らも同じことやってるだろという反論に、程度が違うという反論しか出来なくなってしまう。

 以上三つの既存の政党の中で、ANOと対決できそうなのは、市民民主党しかない。実際、今回の地方議会の選挙でも既存の政党の中では圧倒的な支持を集めて一丸多くの議席を確保した。多少の凸凹はあっても全国的に支持者がいるから、どの地方でもある程度の票をえて議席を確保するだけの力があることを示した。疑念があるとすれば、今回来年に向けての実験の意味もあったのだろうが、いくつもの地方で単独ではなく他党と共同で同盟を組んで候補者を立てていた点である。それが新たな支持者の掘り起こしにつながって議席増をもたらす可能性もあるが、かつてのチェコ最大の政党である市民民主党の支持者の中には、姑息な手段だとして反発する人も出そうである。

 そうなると、期待は新興の二政党、海賊党と市長無所属連合ということになる。同時にこの二党は今回の地方議会選挙で前回と比べてもっとも議席数を増やした政党でもある。ただし、どちらの政党にも弱点があって、それをどう解決するかが、来年の下院の選挙で、勝てないまでも、バビシュ政権の成立を阻止するための課題になるだろう。

 海賊党はいくつかの市議会選挙で議席を獲得して、市政で実績を上げた後、地方議会に足場を築く前に国政選挙に進出して、一躍野党の第一党を争う立場に立った。そのため国政にかかわる政治家たちは知名度も高めているのだが、地方に、この地方ならこの人という有力者がいないのが弱点になっている。二年前の市町村議会の選挙でも議席を増やし各地で実績を積み重ね、今回の地方議会選挙でもANOについで二位の座(いろいろな政党の同盟があって明確には決められないのだが)を獲得したから、時間をかければANOに対抗できる唯一の政党になるとは思うのだけど……。
 問題は、保守派の有権者には敬遠されているところか。これも、市町村議会から国会までの活動を通して、意外とまともなどころか、極めてまともな政党で、日本の野党とは違って実務能力もあることを示しつつあるから、そのうちに保守派の中からも海賊党支持者が出てくるかもしれない。このぽっと出ではなく、地道に勢力を拡大してきた政党に必要なのは、やはり時間であろう。

 もう一つの市長無所属連合の場合には、もともと政権に不満を持つ地方自治体の首長たちが集まって結成した党で、地方単位で微妙に違う名称を名乗っていることもあって、党全体としてのイメージにかけるところである。今回の地方選挙でも、単なる市長無所属連合だけでなく、リベレツ地方市長無所属連合のように、チェコテレビの得票率集計では別扱いされているものがいくつかあって、一つの政党なのか別物なのか掴みにくいのである。
 結党の経緯からも明らかなように地方自治に関しては、明確な政策を持ち、高い実務能力を誇るが、ことが外交や国防などという国政レベルの問題になったときにどこまで党全体として意見をまとめられるのかという疑問もある。それから、今回の選挙で地方議会の議員になった人の多くが、同時に市町村の長を務めているのだが、これも兼職できるのが理解できない。ただ、市長たちが作った党であるということは、地方議会であれ、国会であれ、候補者たちが市長たちになるのは当然と言えなくもない。

 政治学者の中には、海賊党と市長無所属連合が来年の下院議員の選挙で同盟を組んで候補者を立てるのがANOを下野させる最善の手だという人がいるが、あまり賛成できない。二つの党の支持者って反バビシュでは一致できても他の点ではあまりに対照的な気がする。実際にこの二党が同盟を組んで立候補したオロモウツ地方では、ANOの得票率は27パーセントと平均よりもかなり高く、この二党は19パーセントほどだった。単独でこれだけの得票率ならすごいが、二党合わせてなら別々に立候補していても大差はなかっただろうと思われる。
 個人的には、ANOの次は海賊党だと確信しているのだが、それが来年の下院選挙で実現するとは、現時点では思えない。あせりすぎているように見えることもあるんだよなあ。あせらずに地道に勢力を増やしていけば、海賊党の時代が来るはずである。
2020年9月6日12時。










2020年10月07日

地方議会選挙2020結果1(十月四日)



 金曜日と土曜日の二日間、より正確には、金曜日の午後と、土曜日の午前中から午後2時までを使って行われた地方議会の選挙の結果は、事前の予想通りバビシュ党であるANOの圧勝だった。全部で13ある地方のうち、リベレツ地方、中央ボヘミア地方、フラデツ・クラーロベー地方を除いた10の地方で、第一党となったのだから、圧勝といっても過言ではなかろう。全国における得票率でも20パーセントを越えて、他の政党、政党同盟を圧倒していた。

 ただし、これがバビシュ氏が望んでいたレベルの圧勝かというとそうも言い切れないところがあって、ANOだけで議会の過半数を確保して、単独与党として知事を出せるような勝利をおさめた地方は一つもない。国政における野党側のANO外しの連立交渉もあって、ANOが地方政府の与党となって、地方知事を輩出できるのは、10よりもはるかに少ないと予想されている。
 この多くの地方でANOが野党化しそうな原因は、国政で連立を組んでいる社会民主党と、与党ではないけれども政府を支持している共産党の凋落である。武漢風邪第二波の対応に失敗したことや、直前の討論会でのバビシュ氏の迷走ぶりから、ANOが予想ほど票を伸ばさないのではないかとか、一部のANO支持者が見限り始めたのではないかという予想は出ていた。ということは、中道右寄りの支持者を失ったANOは、左の社会民主党と共産党の支持者を取り込むことで、選挙に勝つだけの票を集めることに成功したのだろう。

 そうでも考えないとこの固定支持者の多い2党が、社会民主党は多くの議席を失い、一部の地方では議席を一つも確保できず、共産党は議席が0の地方が過半数という結果は理解しづらい。共産党の場合には、オカムラ党に票が流れた可能性も高いが、どちらの党も大躍進を遂げた海賊党よりも得票数、議席数が少なかっただけでなく、オカムラ党にも逆転されてしまったのである。これは正直以外すぎる結果だった。
 日本と同じで、共産党を中心とする左の政党を支持する人の高齢化が進んでいて、今回の武漢風邪の中で行われた選挙は棄権することを選んだ人も多いのかもしれないが、高齢者も投票できるように老人ホームには出張投票所が設置され、希望する人のところにか感染対策をした選挙管理委員会が投票所の出前を行ったことを考えると、それだけが、この2党の凋落の原因とは考えにくい。

 特に社会民主党は、春の武漢風邪対策で、がちがちの規制強化派であるプリムラ氏が引いた後に対策本部の長となって、対策の指揮を執ったハマーチェク内務大臣が、政治家の人気調査では圧倒的な支持を集めるなど、個人の政治家の人気は回復する傾向にあったので、それが地方議会選挙にもいい影響を与えることが予想、いや期待されていたのだが、完全に期待外れに終わった。
 最近の社会民主党は、選挙運動も迷走することが多く、ポスターなんかを見ても何がやりたいのか、何が主張したいのか意味不明なことが多く、それが選挙での低迷にもつながっている。今回もハマーチェク氏を題材にした選挙運動用のクリップビデオの出来が酷く、いや作品としての出来はいいのかもしれないが、有権者に何も訴えかけないという点で最低なものだったらしい。

 せっかく、自らをチェコの救世主と位置付けて張り切っていたバビシュ首相を押しのけて、感染症対策の顔になって、好感度と支持を高めたのに、ビデオに登場するハマーチェク氏が、友人なのかどこぞのおっさんと、バイクで二人乗りしてツーリングするという、えっと目を疑ってしまう内容のビデオが選挙に向けて公開されたらしい。ハマーチェク氏の活動のおかげで、ツーリングできるようになりましたということなのか、二人乗りしても感染しないということなのか、有権者置き去りである。
 それなら、ANOは左っぽい政策も取り入れていて、地方政府の与党になる可能性も高い、つまりはその公約が実現する可能性も高いから、ANOに入れてしまえと考えた社会民主党支持者がいたとしても驚きはない。ANOとの連立に走ったことで、ANOにアレルギーを感じる支持者を失った上に、連立したことを責めない支持者の一部も失ったと考えると、踏んだり蹴ったりである。

 ANOが、期待したほどの価値を収められなかった理由としては、上にも書いた通り武漢風邪対策の迷走と、バビシュ氏の酩酊したゼマン大統領をも思わせる党首討論会での醜態が挙げられるが、もう一つは、伝統的な大政党とは違って地方組織が弱い、地方で活動して実績を上げてきた政治家がほとんどいないことも挙げられるだろう。
 例外的に、ANOの現職の知事が実績を持ってANO以外の党からも評価され、一般市民にも支持されているモラビアシレジア地方では、ANOは30パーセント以上という数字で圧勝し、選挙後の連立交渉でもANO外しは起こっておらず、ANOの知事が再度知事に選ばれることが確実視されている。

 ちなみに、我らがオロモウツ地方では、現職の知事はANOの人なのだが、モラビアシレジア地方の知事ほどの指示は集めていない。それでもANOが27パーセントの票を集めて圧勝し、55議席中18議席を確保したが、海賊党と市長連盟の同盟が13議席、キリスト教民主同盟を中心とする同盟が12議席、市民民主党が7議席、オカムラ党が5議席という結果になっており、ANO外しで2位から4位までの3つのグループが連立を組む可能性が高い。

 それにしても、今更なのだが、理解不能なのは、下院議員の現職にある人間が、辞職もしないままに、地方議会の選挙に立候補し、当選したら当然のように兼職が認められることである。これって日本の世襲議員の山並みに、民主主義にとってはよくないことじゃないのか。民主主義、民主主義うるさい連中がこれを放置しているのが理解できない。たまに禁止しようという動きは出るけれども、選挙が近づくとうやむやにされるというのがチェコの現実である。既存の政党と違ってANOはこれを原則として禁止しているのかな。それも支持がなかなか減らない理由である。
 この話もうちょっと続けよう。
2020年9月5日18時。










2020年10月06日

地方議会選挙2020(十月三日)



 十月の第一週の週末は、日本の県に近いレベルの地方行政単位である「クライ(地方と訳すことが多い)」の議会の選挙が行なわれた。首都のプラハは、行政レベルでは地方と同じ扱いをされるが、議会選挙は市町村議会の選挙と同時に行なわれるため、今回はプラハを除く13の地方で議員を選ぶ選挙が、比例代表制で行われた。同時に、二年に一回、三分の一ずつ改選される上院の選挙も行なわれたので、全部で81の選挙区のうち27の選挙区では、二つの選挙が同時に行なわれることになった。

 チェコの地方公共団体の首長は直接選挙ではなく、議会に議席を得た政党間の連立交渉で、過半数を確保した側が与党となって、与党の議員の中から選ばれる。だから、選挙で勝って第一党になっても知事や、市町村長を輩出できず、野党の立場に落ちてしまうこともある。その場合、議員になっても国政の大臣に当たるような要職につくこともできなくなる。
 国政の場合には大統領が組閣指名件を持っているので、大抵は下院の第一党の党首が首相に指名されて組閣することになるのだが、地方政府の場合には指名権を持つ人がいないので、第二党以下か連立を組んで第一党を排除する形で連立与党を形成することも多い。というか、バビシュ氏のANO党の台頭以来、第一党となったANOを排除した連立が成立する例が増えている。また地方では、個人的な人間関係による連立なんてこともあるので、国政レベルではありえないような組み合わせの連立が成立することもある。

 今年の選挙は、他のあらゆるものと同様、武漢風邪の流行の影響を被っており、感染者や隔離対象者向けの、ドライブスルー投票所と出張投票所の設置が決まっている。この二つは、本来の投票日である金曜日と土曜日に行うと、選挙管理委員の仕事が大変になるだけではなく、感染の温床になる恐れもあるということで、期日前の水曜日と木曜日に行われることになっていた。回収された投票用紙は開票の始まる土曜日の午後まで役所に保管されるという。ここで保管期間中にすり替えが起こったらどうするなんて質問がニュースでのインタビューで飛び出す辺りはチェコである。

 その最初の投票が行われた前日の火曜日だったか、当日の水曜日だったかは記憶が定かではないのだが、チェコテレビで各党の党首を集めた討論会のようなものが放送された。それまでは、毎日地方ごとにその地方で候補者を立てている政党、グループの地方代表を集めて、政策を論じる討論会が行われてきて、最後の最後に中央の政党の党首を集めたという経緯のようだが、大失敗だった。
 それまでの地方代表の討論会は、出席者の大半が司会役を務めたチェコテレビのアナウンサーの質問に素直に答えていて、質問とは関係のない話を始めたり、他の人が回答しているところに口を挟むような人はほとんどおらず、大きな混乱もなく進行したという印象(ちゃんと見ていないので印象でしかないけれども)だったのだが、党首の討論会はひどかった。

 まず、司会者の質問に直接答える党首がほとんどいなかった。手前味噌、我田引水の連続で、司会者が質問に直接答えるように何度も繰り返さなければならなかった。他の党の回答しているところに茶々を入れたり、発言を被せたりするのも多く、正直まともに聞いていられなかった。一番ひどかったのがANO代表のバビシュ首相だったのだけど、他の党首たちも多かれ少なかれ似たようなことはしていた。仮に自分が有権者だったとしたら、この討論会で投票する党を決めるのは不可能に近い。どれも選びようがないのだ。
 それぞれの党首の振る舞いのひどさに程度の差はあったとはいえ、五十歩百歩だったし、バビシュ氏は反バビシュの陰謀があることを叫び、野党側は大声で反バビシュを叫んでいて、あまり具体的な話は出ていなかった。いや出たのかもしれないけれども、ほとんど印象に残らなかったというのが正しい。

 所属政党を問わず、すべての人が主張していたのは、地方議会と上院とはいえ、民主主義のためには重要な選挙だから、棄権せずに投票してほしいということだった。たださえ投票率の低い、大抵は30パーセントちょっとにおわる地方議会選挙なので、今回の武漢風邪騒ぎで棄権者が増えたら、EU議会並の20パーセント台になるのではないかという恐れがあったのである。投票率が下がることで不利になると予想される党も、こぞって投票を呼び掛けていたのは、民主主義を標榜する以上は当然のことというべきか、みな楽天的だというべきか。
 昨日から始まった選挙は意外と投票率が高くなり、最終的には35パーセントを越えて40パーセントに近づいた。これは地方議会の選挙としては過去二番目に高い数字だという。結果についてはまた明日である。
2020年10月4日22時。











2020年10月05日

アイスホッケー界の惨状(十月二日)



 チェコのスポーツの中で、今年の武漢風邪流行で最大の被害を被ったのが、アイスホッケーだというのには、異論のある人は少ないだろう。サッカーが最後までリーグ再開をあきらめずに、最後の最後で味噌をつけたとはいえ、何とか再開にこぎつけたのとは対照的に、すでに始まっていたプレーオフを中止して、新しいシーズンを開催することに集中していた。
 これは、アイスホッケーの方が、サッカーよりも試合数も平均すれば一試合あたりの観客数も多く、チームの財政における入場料収入の割合がはるかに多いという事情による。つまり、無観客で試合を行っても、財政上は赤字か、黒字でもごくわずかでしかないから、観客なしで試合を行うぐらいなら中止にした方がましだという判断だったようだ。同様の理由でリーグの打ち切りを決めたのがドイツのハンドボールリーグで、その時点で1位だったイーハ率いるキールが優勝扱いになったのだった。チェコのアイスホッケーの場合にはプレーオフの順位は決まらなかったけど。

 とまれ、観客を入れての新シーズンの開幕を目指したアイスホッケー界の目論みは、夏のシーズン前キャンプの時点で、不安を感じさせるものになっていた。いくつかのチームで、感染者が発生し、それが屋内スポーツのせいか、集団感染につながる例が多く、活動の一時休止を、一度ならず余儀なくされるチームもあった。
 それでも何とか、9月半ばの開幕にこぎつけたアイスホッケーのティップスポルト・エクストラリガだが、今週末には第7節が行われることになっている。サッカーとは違って週一ではないので、進行が早いのである。その第7節が今日の時点で、全14チーム、7試合のうち6試合が延期が決まっていて、実施されるのは火曜日に予定されているズリーンとブルノの1試合だけという悲惨なことになっている。

 悲惨なのは順位表もで、すでに第6節まで終わっているはずなのに、試合数が6になっているチームは一つもない。以前ニュースで対戦相手が隔離で試合が出来なくなったチーム同士が話し合って、ずっと先の第20節ぐらいの試合を行ったという話も流れていたけれども、そんな対策をしてなお、5試合済みのチームが3つしかなく、トシネツとカルロビ・バリ、リトビーノフは2試合、ビートコビツェは1試合、ブルノにいたっては1試合もできていないのである。
 第7節のブルノの試合が火曜日になっているのは、復帰のためにぎりぎりまで遅らせた結果と考えてもよさそうだ。テレビ中継の関係かもしれないけど。とまれ、この状態では、アイスホッケー協会が、一応2週間という期限を切って出されたスポーツの試合を観客なしで行えという命令に反発して、それなら全部延期してしまったほうがましだと言っていたのは、この惨状を見れば当然というか、単なる強がりというか……。

 これまでの経緯を簡単にまとめておくと、第1節ではブルノとビートコビツェが、感染者が出ての活動停止で、2試合延期。第2節も同様。ただし、20節のリトビーノフとパルドビツェの試合が代替プログラムとして実施された。第3節では、カルロビ・バリが隔離に加わって延期は3試合で、対対プログラムとしては11節のリトビーノフとトシネツの試合が行われた。
 第4節はトシネツとリトビーノフが隔離で5試合延期、いや2試合開催で、代替が第26節のムラダー・ボレスラフとスパルタの試合の計3試合。第5節も、パルドビツェが隔離され、同じく2試合+代替の19節リベレツ対スパルタ。第6節は隔離からビートコビツェが復帰したものの、代替試合がなかったため開催は2試合だけ。
 今週末の第7節は、夏のキャンプ期間に何度か活動を停止していたチェスケー・ブデヨビツェとオロモウツが隔離チームに追加された結果、開催できるのはスリーンと隔離から解放されたブルノの1試合ということになった。代替で第9節のビートコビツェとブルゼニュの試合が日曜日に行われることになっている。

 テレビ中継や、国際大会に出場するチームへの配慮などで、もともと本来の日程とは違う日に試合が開催されることが多く、順位表の試合数のでこぼこもサッカーよりは大きくなりがちなアイスホッケーではあるけれども、ここまでひどいのははじめて見た。こんな状況で、リーグ戦をプレーオフを含めて最後まで開催できるのかどうか、不安になってくる。
 ただ、アイスホッケー界の弁護をしておくと、週に一回しか試合のないサッカーと違って、試合間隔の狭いアイスホッケーでは、試合前の定期検査で陽性者が出た場合に、陰性者だけを対象にして再検査をして全員陰性が確認できたら試合を開催するという方法はとりにくいというのは確かである。屋内スポーツで一人感染者が出ると、広がりやすいという面もあるのかもしれない。ただ、チームとしての感染対策ではサッカーの方が厳密にやっているようにも見える。

 それはともかく、チェコの二大プロスポーツであるサッカーとアイスホッケーのリーグが行われないのは、チェコ人全体の精神衛生上もよくないのは、春の非常事態宣言の時期に明らかになったことだから、プリムラ厚生大臣には、試合の禁止だけはしないように願っておこう。
2020年10月3日14時。










2020年10月04日

眼鏡ができた(十月朔日)



 見栄を張って眼鏡という言葉を題名に使ったけれども、正確には老眼鏡というのが正しいだろうか。九月の十日ごろにシャントフカの眼鏡屋に出かけて、視力などを測ってもらった上で注文した老眼鏡が完成したという連絡が入ったので、取りに出かけた。午前中は自宅作業だったので、お昼過ぎに職場に出る途中に立ち寄った。この自宅作業が増えたのは、武漢風邪のおかげと言うべきか、せいと言うべきか、自分でも答が出せない。

 注文したときに、ろくに確認しなかったので、自分がどの会社の、どの値段のフレームを注文したのかわからなかった。それで帰宅した後に、もらった書類の記載から、EAMという会社のものだろうと推測して、お店のホームページで探したのだけど見つからなかった。受け取ってみてびっくり。アルマーニだった。怪しい日本語版もついている保証書の表紙には「EMPORIO」とロゴに書かれているけど、中には「ジョルジオ・アルマーニの眼鏡」と書かれていた。
 うーん、この手のブランド品はあんまりほしいとは思わないんだけどなあ。眼鏡だからいいかという気持ちと、よりによって老眼鏡にアルマーニ……という気持ちがせめぎあう。救いは、かけ心地が非常にいいことで、つるの部分の素材がいいおかげか、これまでかけてきた眼鏡よりもかけ心地がよくて、ちょっと悔しい気分になってしまう。気にしないのが一番なんだろうけど。このブランドが眼鏡のフレームにまで手を出しているとは思わなかった。下請けに作らせているか、眼鏡のフレームメーカーがブランドの使用権を買ったというところかな。

 さて、肝心の遠近両用のレンズのほうは、最初に取り出して見せられたときには、あれこれ書き込みがあって、これからレンズを取り替えるのかと思ったら、布で拭えば消えるペンでかかれたものだったようで、一度かけてみてよく見えるようになったことを確認した後、あっさりと消してくれた。いやあ、以前一度眼鏡の度を強いものに変えたときにも、いやそれ以前に始めてめがねを作ったときにも思ったけれども、あたらいい世界が見えるような気分である。
 前回お店に入ったときには、何か書かれているとしか思えなかった、店の壁に書かれた眼鏡のフレームのメーカーの名前やら、あることに気づきもしなかった値段の表示やらが目に飛び込んできた。あのときは見えていなかったから値段もブランドも確認しないまま、かけ心地がよくて、お店の人に似合うといわれたのを選ぶことが出来たのだ。ブランド名が見えていたら、無駄に時間をかけて悩んだに違いないから、それはそれでよかったのかもしれない。

 それから、老眼鏡の一番の売りであるレンズの近くを見る、具体的には本を読むときに使う部分も確認した。今までの眼鏡よりは文字がきれいに見えて読みやすくはあるのだが、お店でもそのあともなかなかうまく視線を動かすことができず、現時点ではないよりはましだけど、宝の持ち腐れになっている。まだ一日目なのでそのうちなれると信じたい。
 外に出てから周囲を見回すようになって気づいたのだが、眼球だけを動かして左右を見ると、見えるものがにじんでしまったり、焦点を合わせるのに時間がかかる場合がある。これが遠近両用レンズの欠点といわれるものだろうか。お店の人にも視線を動かすだけではなくて、顔全体を見る方向に向けるようにしないと、こける恐れがあるから気をつけろと言われたし。

 年を取るとままならないことばかりが増えていくのだなあ。なんてしょうもない感慨で終わってしまうのもあれなので、日本語の説明もあったということは日本に輸出されている可能性もあるということなので、ちょっと同じのがないか探してみた。同じのはなかったけど意外と安いのに驚いた。チェコだと軒並み5000コルナ以上だったんだけど、1万円から1万5千円の幅で収まっている。

 例えばこれ

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 今のレートは知らないけど、1コルナ=2円ということはないだろう。眼鏡に限らず工業製品は意外と高いのがチェコの現実なのである。レンズの値段がわからないからあれだけど、フレームだけなら日本で買った方が安くつきそうだ。

 因みに今までかけていた眼鏡と同じブランドの眼鏡はこれ。こっちの方が高いのまである。ちょっと意外である。チェコで買ったときの値段は、今回のと同じぐらいだったかなあ。

Carrera 8822眼鏡フレームca8822???0tzz-5617???マットルテニウムハバナフレーム、レンズ直径56?mm、

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 例によって例のごとくぐだぐだになってしまった。
2020年10月2日22時。









2020年10月03日

非常事態宣言再び(九月卅日)



 辞任したボイテフ氏に代わって就任したプリムラ厚生大臣が、武漢風邪対策の指揮を取るようになって、対策としてのさまざまな規制が強化されてきたが、来週の月曜日、つまり10月5日にまた非常事態宣言が出されることになった。実際のところ、非常事態宣言を出して規制を強化する役を担わせるために、ANOの党員でも、ANO推薦の国会議員でもないプリムラ氏を厚生大臣の座に据えたのだから、予定通りというところではあろう。バビシュ首相がプリムラ氏が正式に提案するまでは、非常事態宣言は不要だと公言していたのは、ANOは規制の強化に積極的ではないというイメージを守るためだろうか。
 ただ、同じ非常事態宣言とは言っても、全国一律で外出禁止令が出て経済活動をストップさせるようなものではないという。春とは違って、レストランなどの飲食店も、大きなショッピングセンターも営業禁止にはならないし、日本の小学校と中学校をあわせた基礎学校も授業は継続される。もちろん完全に普段どおりとは行かないのだが、規制が行われても地方単位のものがあるのはありがたい。

 非常事態宣言にともなって強化される規制としては、レストランなどの飲食店に関するもので、深夜0時以降、午前6時までのあいだの営業禁止が、プリムラ氏の登場で午後十時以降に早められていたのだが、追加で6人よりも多いグループでの飲食が禁止された。人数が多ければ多いほど大声で話すようになり、食事中はマスクの着用義務もなくなるから、感染の危険性が高まると考えられたようだ。
 さらに、ドイツでも導入したとかいう話なのだが、レストランなどの飲食店に入る際に、登録を義務付けるという案も出ている。具体的にどうするのかはわからないが、そのレストランで感染者が確認された場合に、誰がいつどの時間にその店にいたかを把握できるようにしたいということのようだ。いやあ、これ無理だろう。昼食時の混雑を考えたら、店側で来客の名前などを記録していくような余裕があるとは思えない。まあ、それ以前に実行されるかどうかもまだ未定なのだけど。

 劇場関係では、歌を伴う公演が禁止された。つまり普通の演劇やクラシック音楽のコンサートは問題なく開催できるが、ミュージカルやオペラなど歌が中心となる公演は開催禁止。だから歌手のコンサートも屋内であれ、屋外であれ行えないということである。しゃべる演劇はよくて歌うのは駄目というのはよくわからない。
 ネット上の冗談では、これはボイテフ元厚生大臣に対する復讐だというのがある。ボイテフ氏は昔ノバがやっていたオーディション番組に応募して歌を歌っていたらしいのである。予選落ちではなく、準決勝までは進んだらしいから、それなりには歌えて人気もあったのだろう。だからボイテフ氏にコンサートを開かせないように導入された規制だというのである。

 スポーツ関係では、選手、スタッフなど試合場にいる人の数は制限しないが、すべて無観客で行われることになった。これには特にアイスホッケー協会が強く反対していて、何で演劇はよくてホッケーは駄目なのか理解できないと言っている。スポーツの応援の場合には演劇と違って大声で叫ぶことが多いし、終わった後、ファンが集団で飲みに行きがちなのも嫌われた結果のようである。
 因みにスロバキアではすでに非常事態宣言が出されていて、スポーツに対する規制も発表されている。それが会場にいる人数が合計で50人以下とかいう無観客での試合の開催すら不可能な数字で、アイスホッケーの選手たちを中心に抗議集会が行われていた。最終的には政府が譲歩して、開催は可能になったようだが、当然無観客である。

 春にはすべて閉鎖されてオンラインでの授業が行われるところもあった学校関係では、高校の授業がオンラインで行われることが求められている。ただし、これは全国一律ではなく、それぞれの地方の保健所が、感染状況を元に判断して、対面授業を地方全体で禁止するのか、しないのか、もしくは一部の町だけで禁止するのかを決めることになっている。またオンラインではできない実習系の授業は通常通り行われる。大学は高校に準じるようだが、同時に大学独自、学部独自の対策を導入しているところが多いので、すでに一部をオンラインに移行している大学もある。
 幼稚園、保育園、日本の小学校、中学校に相当する学校は、通常通り授業が行われ、マスク着用の規制も高校に比べるとゆるいものになっている。高校大学は授業中もマスク着用が義務付けられるが、中学校以下は、廊下などの他のクラスの人と共同で使う部分でだけマスクが義務付けられているのかな。語学の授業とかマスクしていると大変そうである。

 他にも結婚式や葬式などのイベントの参加人数制限とか、セルフサービスのスーパーマーケットでは使い捨ての手袋を提供しなければならないとか、細かな規制は出ているが、春に行われたものが多く、同時に春ほどは厳しくないという印象である。それでも、いつまで続くかわからないというのは、気を滅入らせてくれる。
 それはともかく、プリムラ厚生大臣とハマーチェク内務大臣の一日あたりの新規感染者が6000を越えるという予言は今のところ実現していないし、非常事態宣言とそれに伴う厳しい規制が本当に必要なのかという疑問はこの騒ぎが収まるまで消えることはないだろう。
2020年10月1日22時30分。











2020年10月02日

マスコミには何も期待できず(九月廿九日)



 マスコミの安倍首相に対する批判を読んでいると、どうも安倍首相の手によって戦前的なものがよみがえろうとしているというストーリーを作り出したがっているような印象を受けるのだが、今の日本で一番戦前と変わっていない存在は、どう考えても、政治家でも軍隊でもなく、マスコミである。戦前の日本が国を挙げて戦争に向けてひた走った最大の原因の一つは、マスコミの実よりは虚の多い過激な報道だった。

 日露戦争の際の報道に関しては、ジャーナリストの宮武骸骨が口を極めて批判している文章を読んだことがあるが、苦労してまとめた講和条約にあれこれいちゃもんをつけて、日比谷焼討事件を引き起こしたのも、マスコミの報道だった。その後も、夜郎自大的に根拠もなく日本を持ち上げ、アメリカなどのやり口を過激に批判することで、戦争やむなしの雰囲気を作り出したのではなかったか。軍部はむしろマスコミの作り出した雰囲気の前に引っ込みがつかなくなって、戦争に踏み切り、マスコミ受けのために景気のいい大本営発表を繰り返したようにも見える。
 戦後は、軍国主義から平和主義に衣替えをして、一見大きく変わったようにも見えるけれども、戦前の報道姿勢を反省もしないまま、表面だけ変わっただけに過ぎないのではないか。事実や論理よりも感情に訴えかけて、世論などと呼ぶのも申し訳ない、ある種の雰囲気を作り出すという手法は変わっていない。戦前は日本人の自尊心を煽ることで戦争すべきだという雰囲気を作り出し、戦後は戦争の恐ろしさと戦争に加担したという罪悪感を煽ることで、日本を世界にも例を見ない変な国にしてしまった。

 空気を読むとか読まないとか、肯定されたり批判されたりする日本人のメンタリティがマスコミによって一から作り上げられたというつもりはないし、日本の今のマスコミが日本人のメンタリティの中から出てきたのは確かだろうけれども、同時にそのマスコミが日本的メンタリティを強化した結果が今の日本である。雰囲気に飲み込まれて思考能力を失って悪事を働いても、誰も責任を感じることなく、当然自ら責任を取ろうともしない。だから不祥事で失脚させられた元官僚が恥知らずにもマスコミに登場し、大きな顔でえらそうなことをいえるのである。登場させるほうも登場させるほうだけど。
 その責任を取らない際たるものがマスコミで、虚報を垂れ流してもろくな訂正もせずに報道を続けている。たまに検証をすることもあるみたいだけど、自己弁護以外の何物にも見えない。だから、今年の春に各地で発生して問題になっていた、あれこれ自粛することを主張しながら、自分たちが他人に自粛を強要することは自粛しない奇妙な集団の存在なんて、マスコミの報道のあり方なしには考えられない。

 今年の春に大学が軒並みキャンパスを閉鎖して授業を休講、もしくはオンライでの授業に移行することになったのも、マスコミが作り上げた自粛するべしの雰囲気に飲み込まれた結果だといっていい。その学生たちの不満や苦境の原因を作った連中が、苦境や不満を賢しらに記事にするのはどうなのかね。

 それはともかく、他にも目を疑うような記事を読まされた。見出しからは、大学によるオンライン授業の活用の差、もしくはオンライン授業の質の差を問題にしているように読めたのだが、そこまで取材する能力がなかったのだろう。中心になっていたのは大学閉鎖期間の大学側からの欠席がちな学生へのアプローチの仕方だった。授業担当の教員が学生に電話をかけさせられる大学が高く評価されていたのだが、いつから日本の大学は教員が学生に電話するかどうかで評価されるようなちゃちなものになってしまったのだろうか。大学の先生たちもなれないオンライン授業に学生の管理までさせられて、ただでさえ少ないと嘆きの声が聞こえてくる自分の研究のための時間が減ってしまうことだろう。

 しばしば、マスコミをにぎわす記事に、日本の大学の世界レベルのランキングが云々というのがある。個人的には欧米規準で格付けされるこの手のランキングなんて、日本の大学の評価にそのまま使うのはある特定の分野を除けばまったく意味がないと思うのだが、そのランキングで日本の大学の地位が下がっているというので大騒ぎをするが日本のマスコミである。原因としては研究力が落ちているとか何とかそんな結論になるのだろうが、その一方でさらに研究者の時間を奪うようなことを推奨するのだから意味不明である。結局その場限りのご都合主義の批判でしかないのである。
 それにしても、いつから日本の大学はどれだけ学生の面倒を見るかという、本来の役割である研究とも教育とも関係のない部分で評価されるようになったのだろう。学費を出す親にしてみれば面倒見のいい大学に送り出すほうが安心ではあるのだろうが、今の学生たちはわずらわしいとは感じないのだろうか。

 どこぞの新聞社系の週刊誌の手抜き企画、大学別就職ランキングだったか、就職先一覧だったかが、なぜか当たってしまったのもよくないのだろう。あれで大学を勉強しに行くところではなく、就職させてもらいに行くところだと勘違いする人が増えた。日本の新卒一括採用で、本来勉強に費やすべき学生時代のかなりの部分を就職活動につぎ込む制度自体がおかしいのだろうけど、それを声高に批判するマスコミは存在しない。
 因みに手抜き企画というのは、自分たちでは取材もせずに毎年時期になると、大学に卒業生の進路をまとめて送るように連絡をして、送られてきたものを適当に表にしてお仕舞いというものだからだ。大学には謝礼もなければ掲載誌を送って来もしないらしい。入試の準備やら何やらで糞忙しいときに余計な仕事をさせるのに、依頼にこたえて当然、むしろ大学の名前が出るのだからありがたく思え的な態度に怒りを抱えている大学関係者は多いと聞く。

 東京医科大学を始めとするいわゆる「不正入試」は批判しても、多くの学生がスポーツ推薦で体育学部以外の学部に進学する異常さも、そのスポーツ推薦で進学した学生たちの学生としての姿も批判しようとはしないのがマスコミだからなあ、期待するだけ無駄なのである。念のために言っておけば、大学スポーツを否定するきはない。ただ、学力の足りない学生をスポーツの実績だけで入学させるなら、スポーツ関係の学部、学科を作れというだけの話である。

2020年9月30日16時。












posted by olomoučan at 06:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 戯言
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