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2020年03月11日

バビシュ首相迷走か(三月八日)



 ビソチナ地方のノベー・ムニェスト・ナ・モラビェで行われていたバイアスロンのワールドカップが終わった。大会そのものよりも、政府の突然の決定によって無観客で行われたことの方が話題になっている。疑問なのは、感染の恐れが少ないとされる屋外での競技を無観客で行うことを求めておきながら、アイスホッケーなどの屋内の競技では普通に観客を入れての試合を許可していることである。
 今週末は、金曜と土曜日を使って、ブラチスラバで、すっかり魅力をなくしたデビスカップの予選? が行われ、連邦ダービー、つまりチェコとスロバキアが対戦したのだが、観客は意外と少なく、金曜日は5割ほどの入りで、土曜日はさらに少ないように見えた。アナウンサーの話では、入場券は9割以上売れており、コロナウイルスの感染を恐れて来場を控えた人が多かったのかもしれないという。

 警戒する人は、禁止されなくても自ら行かないことを選ぶもので、能天気な人は熱があろうと試合を見に出かけるのだろう。バイアスロンの大会だって、立ち入り禁止を示した柵の中に入った観客はいなかったが、柵の外側からレースを見て、遠くから声援を送る人たちはかなりの数存在した。日本だったらそんな観客まで追い払いかねないけど、立ち入り禁止区間外ということで黙認されていた。中継では大会関係者が、そんな熱心な観客に感謝の言葉を述べていた。
 土曜日のサッカーのチェコリーグの試合では、ホームで試合をしたプルゼニュがファンに対して、熱などの症状が出ている人は無理して見に来ないでくれと呼びかけていた。対戦相手がチェスケー・ブデヨビツェで観客数八千人ほどというのは、呼びかけの効果があったのかどうかよくわからないけど、屋外で行われるスポーツならこのぐらいの対応でよかったんじゃないかとは思う。

 バイアスロンを無観客にして、サッカーを無観客にしなかった理由としては、国際大会であるバイアスロンには、感染者が多発しているイタリアから観客を入国させたくなかったという事情があって、サッカーのほうは、日曜日にスラビア対スパルタのプラハダービーが行われるので無観客にしたら両チームのファンが暴れて収拾がつかなくなるという恐れがあったのかもしれない。コロナウイルスとスパルタ、スラビアファンの暴動、どちらが怖いかと言われたら断然後者である。バイアスロンのほうは、無策を批判されて発作的に決めたようにも思えるけど。
 専門家たちにポピュリズムの発露だと批判された北イタリアとプラハを結ぶ飛行機の便を停止した件は、EUでもやりすぎだと批判されたらしい。そして、木曜日には、北イタリアに滞在して土曜日以降にチェコに帰国する人には、無条件で14日間の自宅待機を命じるという対策を決定した。違反した場合は最大300万コルナの罰金が科される。これも厳しすぎるという批判を浴びている。この手の対策は、やってもやらなくても批判されるものだが、突然すぎると批判する人の気持ちはわからなくない。感染者が出たらとか、人数が何人を越えたらという条件付きで事前に発表しておけば混乱は少なかっただろうに。

 週明けからはさらに対策を進めて、イタリアから戻ってくる人が使う可能性の高い、オーストリア、ドイツとの国境の通過点で、警察官や税関職員、消防隊員などを動員して検問を設け、入国者のチェックをすることになっている。最初は、入国後どうするべきなのかが書かれたビラを配ると言っていたのだが、最終的には、選ばれた人に対して検温も行うことになっていた。熱が高い人を見つけたらそのまま病院で隔離するのだろうか。ビラの配布は鉄道の国際列車の中でも行われるらしい。ゴミが増えるだけだろうけど。
 この14日間の自宅待機の義務は、チェコ国民と外国人で永住許可を持ってチェコに在住している人を対象にしている。だから、旅行者や留学生などは対象とならない。留学生は留学先の学校が何らかの対応をするだろうけど、旅行者どうするんだろう。この状況で北イタリアから旅行に出るというイタリア人はいないと思うけど、イタリアに留学している外国人や旅行客なら、イタリアを逃げ出してよその国にと動いても不思議はない。

 イタリアでの休暇から帰ってきた医師がコロナウイルス感染が明らかになり、症状が出る前の二日にわたって、通常通り診察を行っていたというニュースもある。この件に関しては、日本だと大批判になりそうだけど、診察をしていたのは症状が出る前で、症状が出た時点ですぐに診察をやめて、保健所に連絡をして検査を受けているのだから、その行動には何の問題もないという判断が下されている。診察に際しても、念のために患者との距離を取っていたなんて話もある。この辺の対応はさすが専門家である。
 実際問題、イタリアから帰ってきた医者を、自動的に全員自宅待機にして診察させなかったら、チェコの医療体制は崩壊しかねない。お金持ちになったチェコの人たちにとって、子供の春休みを利用して、北イタリアなどのアルプスのスキー場に出かけるのは、ごく普通のことになっていて、医療関係者も例外ではない。ということで、医療関係者に関しては、今回の自宅待機命令の例外とされた。他には飛行機のパイロットと長距離トラックの運転手が例外扱いされる。出入りのたびに二週間も自宅待機をしていたのでは、輸送システムが破たんしかねないということなのだろう。

 自宅待機命令を決めたのがバビシュ氏なら、例外規定を押し込んだのは厚生省などの医療関係者だと見る。厚生省は事の初めから、チェコ人の感染者を出さないことよりも、チェコ国内での感染をできるだけ出さないことと、医療システムを崩壊させないことを目的として対策を取っているように見える。チェコの感染が発覚した人の中には、病院に入院せずに自宅で隔離されて療養している人たちもいるのである。恐らくは症状が全くないか、きわめて軽く、家族全員が感染したため、家から出なければ感染者を増やす恐れがないと判断された場合だけだろうけど。このまま快癒すれば、医療機関の負担は小さなもので済む。
 現時点で感染者31人、重症者0というのは、対策がうまくいっていると言ってよさそうである。あとはバビシュ首相とゼマン大統領が批判に対する条件反射でヒステリックな対策を言い出さないことを祈っておこう。
2020年3月9日17時。





 今日、火曜日になって状況が大きく変わった。プラハ市内のタクシー運転手が、恐らくイタリアからチェコに入った人を乗せた際にだろうが、コロナウイルスに感染したことが明らかになったのである。しかも発熱などの症状が出てからも何日か仕事を続け客を運んだという。ということは、チェコ国内で感染の輪が広がる可能性が高いということである。
 それで、バビシュ首相は、日本の安倍総理大臣に倣って、いきなり学校の閉鎖を決めた。大学も授業を中止するというから安倍首相よりも上である。ただ、同時に行ける人は仕事に行くように呼びかけているので、子供たちを預ける幼稚園や託児所は閉鎖しないようだ。
 現時点では、一律閉鎖じゃなくて、熱があったりして体調が悪い奴は、仕事にも学校にも行かないでうちで寝ていろぐらいの対応でいいと思うんだけどなあ。スロバキアで感染者が出た段階で、すぐに学校閉鎖の命令が出たのに慌てて対応したのかな。

 同時に100人以上の人が集まるようなイベントの開催も禁止された。多くのスポーツでリーグ戦も佳境に向かうこの時期、無観客でなら開催できるのだろうか。ハンドボールとアイスホッケーの試合は無観客で開催された。とにかくプラハダービーの後でよかったという感想しかない。
 これまで、プラハとウースティー・ナド・ラベム地方でしか出ていなかった感染者が、すりーん地方とオロモウツ地方でも新たに確認された。オロモウツ地方の感染者は外資系の会社の社員という話だが、日系企業ではないことを願っておこう。韓国の会社の韓国人社員だった。情報が二転三転したけど、結局日系企業で働く日本人で、ドイツとイギリスに出張に行っている間に感染したらしい。知り合いだったらどうしよう。(3月11日修正)
 感染者数の合計は、61人で、今日一日で20人以上増えた。
3月10日追記。







posted by olomoučan at 07:36| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



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