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2018年07月30日

四日目、もしくはコメンスキーいずこ〈LŠSS2018〉(七月廿六日)



 四日目は授業の開始に少し遅れた。9時ごろに教室に入ると、ちょうどこれから一つの課題をするところだった。課題はある国に対するステレオタイプ的なイメージを、外国人が持っているイメージと、その国の人が外国人が持っているだろうと考えているステレオタイプを比較してみようというものだった。とくに意外なものは挙がらなかったのだが、日本について外国人がイメージするものとして冗談で挙げてみたテレビ番組「風雲タケシ城」をドイツの人たちが知っていたのは、ちょっとした驚きだった。
 文法事項については、この日も特に新しいことはなかった。格変化の練習として7格をやったのだが、さすが最上級のクラスだけあって、名詞、形容詞、指示代名詞なんかの格変化は単複ともほぼ頭の中に入っている。問題はそれらが組み合わされたときに、とっさにすべての言葉を正しい形にするのは難しい。数詞まで組み合わされて双数をつかう名詞が出てきたりすると、困難さは更に大きくなる。みんな熱心だから、自分が当たりそうなところだけでなく、他の人の答えもチェックして自分の考えと違うと、即座に質問する。この辺が単位を取るための義務ではなく、自分の意思でチェコ語ができるようになるために勉強しに来ている人たちの強さなのである。

 この日の新しい出来事としては、休憩時間にコドーでコーヒーを買うのに水筒に入れてもらうようになったことが挙げられる。オロモウツではいくつかの喫茶店が手を組んで、使い捨ての紙コップではなく、繰り返し使えるプラスチックのコップにコーヒーを注いで販売するというのを始めている。このコップは使用後に返却することになるのだが、最初にデポジットとして50Kč出すことで使用でき、返却すると出した50Kčが戻ってくる。コップを返却するのは、プロジェクトに参加している店ならどこでもいいらしい。
 アイデアとしては悪くないと思う。悪くないと思うのだけど、自分では使う気にはならない。それは、プラスチックのコップの色が緑と紫で、コーヒーを入れると毒々しい感じになりそうなコップなのである。コドーの紙コップが、一回の使用で捨ててしまうのは本当にもったいないと思うようなできのものであるだけにその落差は大きい。だから、もったいない紙コップを使わなくてもいいように小さな水筒を持ち歩くことにしたのである。
 コーヒーを飲む器は、せめて内側だけでも白であってほしいものである。白いプラスチックというものもあるはずだが、汚れやすい、汚れて見えやすいのが嫌われたのだろうか。それなら薄い茶色でもよかったような気がする。コドーの紙コップの外側がそんな感じの色だった。茶色系なら木のコップに見えるような加工をすることも可能である。もし、このプロジェクトが大きな成功を収められない場合には、原因の一つとなるのは、コップの色合いの悪さであろう。プラスチックというよりはゴムのようにも見えたし。

 授業が終わって事務局に出向く。クラス分けテストの疑問点を質問するためである。事務局の人と一緒に読んでみて、やはりちょっとおかしいということで合意に達した。テスト3に関して言えば、こちらがおかしいと感じた最後の部分、過去であるはずが現在になっていた部分ではなく、冒頭の一文がおかしいのだと教えてくれた。「z Francie」と「z Paříze」を同時に使う選択肢を選ぶしかなかった時点で、ちょっといやな問題だなあと思ったのだが、この「z Paříze」がなければ、フランスから手紙を送るという書き出しで、実際には現在ニースにいて、ニースから直接チェコに戻るという内容になって、文法的にも内容的にも何の問題もないものになる。「z Paříze」があるから、フランスのどこで手紙を書いているのかわからなくなったのである。

 その話を終えてコンビクトを出ようとしたら、日本の方が三人いて、一緒に昼食に出向いた。サマースクールの常連という人の勧めで最初に行った店は休業中。その近くのレノメーも閉まっていた。プリマベシも閉店したし、喫茶店マーラーの近くのディスティニもいつの間にか別の店になっていたし、オロモウツの飲食店の生存競争も大変である。結局、これも開店と閉店を繰り返して現在営業中のハナーツカーで昼食ということになった。食事中にアウトドア用品を主に扱っているお店から注文した品が届いたというSMSが届いた。
 今年の夏は暑い。いやサマースクールが始まる直前ぐらいから急に暑くなった。ありがたいのは3年前の最悪の夏とは違って、日が落ちると涼しくなるチェコの夏ではあることだ。仕事でなら長ズボンはいて暑さに耐えようという気にもなるが、勉強するならできるだけ快適な状態で勉強したいものだ。クラス分けのテストの日に長ズボンで出かけて失敗したと思ったので、初日から半ズボンというか膝丈のズボンである。その膝丈ズボンも、汗をかくせいで何日も履き続けるわけにもいかず、最近新しいのを買っていなかったせいもあって、履くものがなくなりそうで急遽新しいのを購入することにしたのだ。
 このサマースクールのために、すでにリュックと靴を買ったし、なかなかの散財である。ここ数年この手の買い物をしていなかったし、自分がこんな機会でもなければ買い物をしない怠け者であることを考える悪いことではない。もう少し何かかにか必要に迫られて買うことになりそうである。

 お店に行く前に学校に戻る。午後の講義が、「コメンスキー4.0」という題名なので、最近コメンスキーに縁のある人間としては聞かずばなるまい。実際はコメンスキーについてというよりは、チェコの教育制度についての話で、面白くなかったわけではないけれども、コメンスキーを期待していた人間にとってはちょっと期待はずれだった。さて、次に午後の講義にでるのはいつになるだろうか。チェコの歴史に付いてチェコ語でやってくれればなあ。この講義は伝統的に英語で行われているのである。ちょっとどころでなく残念な話である。
2018年7月29日18時55分。









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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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