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2018年07月10日

政治家と学歴1(七月九日)



 水曜日にも下院での信任が得られそうな第二次バビシュ内閣で、批判を一番に集めているのが、ハマーチェク氏の内相と外相の兼任で、二番目が法務大臣のマラー氏の学歴の問題である。最初の話では法学の学位をとったスロバキアの私立大学で書き上げた卒業論文が盗作、剽窃の疑いありだという話だったのが、ブルノのメンデル大学で農学系の学位をとったときの論文にもその疑いがあるという話になった。よくわからないのだが、この人もともとは理系の人でブルノのメンデル大学でウサギの研究をした後、スロバキアのパンヨーロッパ大学という、いろいろと問題のある私立大学で法学の学位をとったらしい。それで弁護士か何かの法律関係の仕事をしていたところをANOに勧誘されたのかな。

 その二つの卒業論文に関しては、メンデル大学のほうは、前半の実験の理論的な背景を説明する部分が、他者の論文の引用であるにもかかわらず、出典を明記していないのが、盗用に当たるのだという。ただ後半の実験とその結果をまとめた部分は独自の研究であり盗用ではないという話である。いちいち引用して出典を明らかにするのが面倒だったのが、そこも自分の説として考えていたのかは知らないけれども、この論文が盗用扱いされるのは確実なようだ。
 もう一つのスロバキアの大学での論文に関しては、最初はこちらが盗用じゃないかと批判されていたのだが、盗用ではないが、その内容のレベルの低さが問題になると専門家がコメントしていた。そもそもこの大学での教育に関して、認可されていないはずのチェコの支部に所属していたとかいないとか、更なる問題も出てきているようである。このあたり、旧共産圏の私立大学というのは、どうして認可されたのだろうかといいたくなるようなものが多いのである。

 バビシュ氏やマラー氏本人が主張するように、本当に有能で法務大臣としての責務を問題なく果たすことができるのであれば、たいした問題でもないような気もする。学歴の有無が政治家として能力を左右するわけではない。それに学生の書く卒業論文なんて、所詮は学生の書くものだから、例外を除けば他の卒業論文も五十歩百歩だろうし、近年チェコで流行しているらしい卒論を外注する、つまり業者にお金を出して書いてもらうのに比べればましであろう。卒論を書いてくれる業者に頼むと、引用などの情報の出典の情報は、完璧に、ときに必要以上に表記されることになるらしい。
 それに例のプルゼニュの西ボヘミア大学でスキャンダルが勃発したときには、今回のものとは比べ物にならないくらいの完全な盗用があって、ほとんど同じ内容の卒業論文を書いて卒業した人が何人かいたという話もある。あのとき、何人もの政治家が夏休みの間に学位を獲得したりしていたが、それを理由に国会議員を辞任したというような話はなかったと思う。
 法の公正を担保すべき法務大臣は、単なる立場が違うという考えにも一理あるのだろう。ただ、人の噂も七十五日で、プルゼニュ大学事件の首謀者の一人、ホバネツ氏を内務大臣に就任させた社会民主党は、この人事を批判する前に、党内の要職を占める政治家たちが、同じ過ちを繰り返していないか確認するほうが先であろう。いや、政治にかかわるようになってから学位をとった政治家たちの卒業論文を、マラー氏の卒業論文と同じようにチェックすると面白い結果が出るんじゃなかろうか。以前亡くなったグロシュ氏が首相になったときには、ムラダー・フロンタ紙がグロシュ氏が学位をとった卒論を分析してかなり辛辣な評価をしていたのだけど、同じようなことをまたやってくれんもんかねえ。

 第一次バビシュ内閣では法務大臣は、ソボトカ内閣で党員ではない専門家大臣として抜擢されたロベルト・ペリカン氏が引き続き頑張っていたのだけど、バビシュ氏のやり口についていけなくなったのか、政界からの引退を決めて、大臣だけでなく昨年当選したばかりの下院議員も辞職してしまった。そのペリカン氏の後釜に座ったのがマラー氏なのだが、前任者と比べてどうかといわれると、現時点の印象では頼りなさの方が先に立つ。バビシュ氏の操り人形としては適任なのだろうけど、野党からの批判の集中砲火を浴びた場合に頑張りきれるのか心配である。

 なんてことを書いたら、マラー氏が今日突如辞任を発表した。このままではバビシュ内閣の信任投票にもANOの評判にも悪影響がありそうだから身を引くことにしたのだそうだ。同時に、自分は引用の出典を書き忘れるという小さなミスはしたかもしれないけれども、それは本来大臣を辞職するような問題だとは思わないとか何とかいうことも強調していた。
 その結果、水曜日に予定されている信任投票にむけては、首相のバビシュ氏が暫定的に法務大臣を兼任することになるようだ。外務大臣と法務大臣という重要な役職が暫定で兼任の状態で発足する内閣というのも前途多難そうである。野党側からは、刑事事件の容疑者として捜査の対象になっている人物が、司法権を掌る法務大臣になるのは末期的症状だなんていう批判が上がっていた。同じような口実で、社会民主党が内務大臣をANOから取り上げたんじゃなかったか。もういっそのこと内閣の信任は諦めて、下院の再選挙を行なった方がましじゃないかなんて気がしてきた。

 実は昨日、この内容で書いて投稿するつもりだったのだが、疲れていたせいか書くのを忘れてしまった。ちょっと書く日と投稿する日を調整したほうがよさそうである。毎日書くというのがぐだぐだになりつつあるのはあまりいい傾向ではない。一度休むとこうなるのだよ。
2018年7月9日23時23分。







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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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