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2018年07月20日
裏口入学(七月十九日)
文部省のお偉いさんが、私立の医科大学に便宜を図る代わりに、息子を入試で合格させるという取引をしたという容疑で逮捕されたらしい。相変わらず文部省の役人はと、あきれたのは当然ながら、これ、どうやって立証するのだろうかと不思議に思った。文書で契約書を残したりメールでやり取りするような間抜けなまねをしていないとは、文部省の役人のやることだから言い切れないけど、普通は口約束で済ませるだろうから、この役人が捕まったのは、大学側のリークがあったからかもしれない。
ただ、この問題は、役人と大学を批判してお仕舞いにすればいいというものでもない。この事件は文部省の大学に関する行政のゆがみを反映したものであって、私立大学が文部省によってがんじがらめにされており、官僚の要求に理不尽であっても従わざるをえなくなっている現状も批判されるべきである。何せ、文部省が推進している大学改革とやらは、たかが一完了の息子の入試合格と引き換えに変更できる程度のものでしかないことが明らかになったわけだし。
いわゆる裏口入学に関しては、国立大学であれば絶対に許されることではないだろうけれども、私立大学だとどうなのだろうか。わけのわからない推薦入試なんてものもあって、どう見ても推薦に値するとは思えないようなのが推薦されていた現実を考えると、一般入試とは別枠で寄付金入試なんてのがあっても、名称以外は悪くないような気もする。少なくとも今回の文部官僚の賢とは違って、ちゃんと自腹を切って対価を払っているわけだから。
今は知らず、かつては私立大学で附属高校の学生の中で推薦に値しないレベルの学生を優先入試と称して、入試の点数に下駄を履かせるなんてことをやっていたわけだが、あれも考えてみれば、高三までにつぎ込んだ学費および寄付金、大学入学後の寄付金(優先入試を使った場合は義務だったと言っていた)で合格を買い取ったようなものである。
それに、日本の大学が批判されていたのは、入学するのにエネルギーを使いすぎるあまり、入学後に勉強しなくなるということなのだから、入り口が表だろうが裏だろうが、大学でちゃんと勉強していさえすれば特に問題はない。むしろ、勉強しない必要な知識を身につけていない学生に対しては単位を与えず、場合によっては退学放校にするという厳しさが必要なはずである。それをアホ文部省が、単位の取得割合が低いとか、留年製が多いとかいって、その内容も意味も考えることなく大学の評価を下げる理由にしてしまうから、卒論を書く能力のない学生を、卒論が書けるように指導するのではなく、変わりに指導の先生が卒論を書いてしまうなんて大学が出てくるのである。
件の医科大学では、裏口入学者のリストを作ったとかいう話もあって、魔女狩りのように裏口から入学した学生たちを大学から追放したがっているようにも見える。不真面目な勉強しない学生なら追放もやむなしだけど、真摯に勉強している学生から学ぶ機会を奪ってはなるまい。三十年ほど前のことだが、とある私立の医学部では中学校レベルの英語の授業についてこられない学生が居るなんて話がまことしやかに流れていたから、裏から入った学生の多くは出るほうも裏から卒業できることを期待していたようである。
私立大学の裏口入学が本気で犯罪だというのなら、この文部官僚と医科大学を摘発して終わりにせずに、徹底的に捜査をして片っ端から摘発するべきであろう。そして、ことは大学への裏口入学に留まらず、企業へのコネ入社も問題にされるべきではないか。広告代理店やらテレビ局やらでは、政治家や財界の大物の子弟が能力にかかわらず一定数採用されるという話もあって、例の電通の過労死事件も、コネ入社の無能な仕事をしない社員の分まで他の社員が働かされていたのも原因のひとつだといわれているぐらいである。対価を払っていない分、金での裏口入学よりもたちが悪いと考えるのは間違っているだろうか。これが私企業の判断だからという理由で許容されるのであれば、私立大学がコネやら金やらで合格させるのも許容範囲ということになりはしまいか。
畢竟大学というところは、どのように入学したかよりも、入学して何を学んだかのほうがはるかに大切だと思うのだけど、違うのか。裏口入学で集めた資金も、私的に使うのではなく、恵まれない優秀な学生を支援するための資金として使用すれば、裏口で入った学生が真面目だった場合には、一石二鳥である。だから、今のすべてがあいまいでうやむやになってしまう裏口入学はやめて、金銭枠での入試制度を導入するのがいいのでないだろうか。文部省は許可出さないだろうけど。
最初の予定とはぜんぜん違うところに着地してしまった。うーん。この文章、自腹を切らずに息子を入学させた文部官僚を擁護するつもりはまったくない。むしろ日本の大学教育をめちゃくちゃにしてしまった文部省に対する批判のつもりなのだけど……。
2018年7月19日23時59分。