アフィリエイト広告を利用しています
<< 2017年01月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
検索
リンク集
最新コメント
チェコの銀行1(十二月二日) by ルイ ヴィトン 時計 レディース hウォッチ (03/20)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしやん (12/30)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしゃん (12/30)
メンチンスキ神父考再び(七月卅日) by にっしゃん (12/30)
カレル・チャペクの戯曲残り(二月朔日) by K (08/16)
最新記事
カテゴリーアーカイブ
記事ランキング
  1. 1. 『ヨハネス・コメニウス 汎知学の光』の刊行を寿ぐ(四月十日)
  2. 2. no img 『羊皮紙に眠る文字たち』『外国語の水曜日』(三月十九日)
  3. 3. no img コメンスキー――敬虔なる教育者、あるいは流浪の飲んだくれ(九月廿七日)
  4. 4. no img すべての功績はピルスナー・ウルクエルに(一月廿六日)
  5. 5. no img 「トルハーク」再び(三月廿日)
  6. 6. no img トルハーク四度(十月二日)
ファン
タグクラウド










ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2017年01月30日

医学部の話、其の二(正月廿七日)



 ふう、やっと追いついた。本来、毎日定期的に、一定の分量、一定の時間、文章を書く癖を付けるために始めた企画だったのに、日によって分量に大きな違いが出てしまっているのは問題である。時間のほうは、あまり変わらないと信じたい。いや、大抵はあまり変わらないのだが、時に遅れている文を取り戻すために、必死に長時間書き続けなければならないことがあるだけだ。ちょうど、足掛け三本目に入った今日のように。

 さて、パラツキー大学の医学部で勉強する学生の話によると、医学部に入るためには日本で行われる入試に合格しなければならないらしい。毎年一回医学部の先生が日本に出向いて、英語で試験をして、その試験に合格した人だけが、大学で勉強することを許されるのである。希望者が全員、入学できるわけではないので、毎年の日本人の入学者の数は一定ではない。多い時で五、六人、少ないときは、一人か二人ということもあるようだ。
 英語での入試を通り抜けているので、パラツキー大学の医学部で勉強している学生たちは、英語で授業が受けられる程度には英語が堪能である。一期生などは、最初が肝腎ということで、チェコに来る前に、アメリカで一年間の英語の研修を受けた上でチェコに来たほどである。もちろん、試験を受けるためにも、研修を受けるためにも仲介のエージェントにお金を払う必要があるだろうし、チェコ人とは違って勉強するための学費も毎年納める必要があるのだろうが、あれこれすべてあわせても日本の大学の医学部で勉強するよりははるかに安い金額で済むのだという。
 そんな関門を潜り抜けてきた人たちが全員、問題なく進級できているのかというとそうでもなく、志半ばで諦めて日本に帰ってしまう人、試験にどうしても合格できずに放校になってしまう人もいるようだ。やはり、日本語で学んでも難しいことを、外国で外国語で勉強するというのは、生半な覚悟ではできないことだし、覚悟だけでまっとうできるような簡単なものでもないのだろう。一期生も三人か四人いたと思うのだが、現時点で卒業できたのは一人だけだと聞いているし。

 一年目を乗り越えるのが一番大変らしいのだが、その際に一番大きな壁として立ちはだかる科目が、「アナトミエ」とチェコ語で言っていたから、「解剖学」ということになるのかな。『ターヘル・アナトミア』=『解体新書』への類想から、杉田玄白たちと同じような苦労をしているのだろうと、失礼ながら同情してしまう。玄白たちには、オランダ語ができる人もまともな辞書もなかったという苦労があったが、今の医学部生たちが学ぶべきことは、玄白の時代の何倍、何十倍にも及んでいるだろうし。
 試験を乗り越え自費でお金を払ってまで、チェコに医学の勉強をしに来た学生たちは、いったいに勉強に対して非常に熱心である。ほとんど四六時中勉強しているので、先日行われた新年会のような集まりが企画されても、参加する人はほとんどいない。たまたま大切な試験に合格したばかりで、ちょっと休憩が必要だとか、試験には全部合格してしまったとか、そんな事情でもない限り、勉強が忙しいことを理由に、欠席する。これが、学生としての正しい姿である。エラスムスのプログラムでチェコに来ていた留学生たちに爪の垢をせんじて飲ませてやりたいほどである。

 だから、チェコで、いや一般的に外国で医学を勉強しようという人たちは、みんなオロモウツの医学部にいる人たちのような人ばかりなのだろうと思い込んでいた。それが、先日ブルノの知り合いのところに出かけたときに、必ずしもそうではないことを知らされてびっくりしてしまった。最近、ブルのでは日本人の学生らしき人の姿が増えているらしいのだが、それに気づいてあちこち聞いて回ったところ、ブルノのマサリク大学の医学部でも日本人学生の受け入れが何年か前に始まっていたのだが、去年の九月には、何と廿人だか、卅人だかの日本人学生を受け入れたということがわかったのだという。
 その中には、信じられないことに、普通に生活するためのコミュニケーションすら英語でとれない人も交じっているらしい。そんな状態で英語で医学の勉強をするために、大枚はたいてチェコまで来るというのだから、度胸があるというか何というか。医学の勉強を始める前に、英語の勉強をして来いよと思うのは不思議なことではあるまい。この辺りにも、日本でまかり通っている言葉なんてのは現地に行けば何とかなるという無責任きわまる言説が影を落としているのだろう。
 百歩譲ってそれが真実であったとしても、チェコに来たところで英語がどうにかなるとは思えないし、言葉を何とかしながら、その言葉を使って高等教育を受けるのが至難の技どころではすまないというのは、多少の想像力があれば理解できるはずだ。チェコ語のサマースクールでさえ、英語で説明するクラスにいた人の中には、英語での説明が理解しきれずに苦しんでいる人は多かったのだ。いわんや医学をである。

 いや、考えてみれば英語もろくにできない人が来ているということは、オロモウツの医学部とは違って選抜すらしていない可能性がある。希望するものは、すぐに挫折することがわかっていても、誰でも受け入れるというのは、大学と仲介業者に問題がある可能性がある。ブルノに長い知人の話ではマサリク大学はがめつく金儲けしか考えていないというから、数を集めようという大学側に日本の業者が巻き込まれた可能性もあるのかな。
 噂では、親の反対を押し切ってブルノにやってきた子供を連れ戻しに親がやってきたなんて話もあるらしい。その無鉄砲さには拍手をしてもいいけど、ブルノにやってきた医学部の学生たちが、希望を失った後に、ごろつき外国人としてチェコに残ってチェコ社会に迷惑をかけたりしないように祈っておこう。現状では彼らが失敗したとしても自業自得しか言いようのない状態なので、頑張れと言う気にも、応援する気にもなれない。オロモウツの医学部生のように、頑張れなんて言われなくても頑張っているのなら応援する気にもなるが、ブルノからは今のところそんな話は聞こえてこない。

 とまれ、どこで何を勉強するのであれ、勉強というものには大きな覚悟が必要だし、覚悟だけでどうにかなるというものでもないのである。特に外国で勉強しようという場合には。
1月27日23時30分。


posted by olomoučan at 07:26| Comment(0) | TrackBack(0) | チェコ
プロフィール
olomoučanさんの画像
olomoučan
プロフィール


チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。