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2017年01月13日
ルハチョビツェのチェトニークたち(正月十日)
普段からディープなチェコファンにしかわからないような文章を書き散らしている自覚はあるが、本日の分はその中でも、チェコ系日本人とか、日系チェコ人になりつつある人にしかわからないようなものになってしまいそうである。ちなみに、チェコ語が堪能な日本人と、日本が堪能な日本人のことをこのように呼んでいる。ただ、どっちがどっちになるのか決めきれていないのだけど。
すでに記事にはしたが、アントニーン・モスカリークの畢生の大作「チェトニツケー・フモレスキ」は、チェコのテレビドラマ史上における最高の傑作である。「マヨル・ゼマン」だという人もいるかもしれないけれども、それにこういうのは好き好きだとも思うけれども、あれは共産主義のプロパガンダ臭が強すぎて、見ていられない部分がある。
とまれ、近年チェコテレビでも、民放でも量産されているテレビドラマの数々は、「チェトニツケー・フモレスキ」の足元にも及んでいない。いや、まあ、いくつかそれなりに評価できるのはなくもないのだけど、とりあえず、「チェトニツケー・フモレスキ」は、チェコのドラマ史上に於いて隔絶した存在であることを断言しておく。
さて、去年たまたまチャンネルを合わせていたトーク番組に登場した女優が、あまり知られていない人で名前も顔も覚えていないのだけど、少々誇らしげに、「チェトニツケー・フモレスキ」のあとにつながるようなドラマに出演するのだと語っていた。それが表題の「ルハチョビツェの憲兵たち」という番組のことだった。最初に話を聞いたときには、「フモレスキ」が終わったあと、つまりナチスによってチェコスロバキアの国土が奪われた時期、そして占領時代の話になるのかと思っていた。
だから、多少は期待していたのだよ。「チェトニツケー・フモレスキ」とまでは行かなくても、そこそこ見られるドラマに仕上がって、毎週金曜日の夜はパソコンの前ではなくてテレビの前に座るようになるのではないかと。それにナチスドイツの占領下のチェコ系住民の生活を、憲兵隊員たちの活躍を通して描くのだとすれば、なかなか野心的な作品だということになる。
この時代を描いた作品となると、どうしても保護領に潜入して総督を暗殺した部隊についての話が中心になって、一般の人の姿が描かれることはほとんどない。今でも繰り返し放送されるブリアンやノビーの出てくる戦前のモノクロ映画の中には、第一共和国の時代ではなくナチスの保護領下で制作されたものも多い。ただ、喜劇を演じる俳優たちがどのような葛藤を抱えて演技していたのかについては想像するしかないのである。
話をもとに戻そう。年末に近づくと簡単な予告編が流されるようになり、最初の違和感を感じた。それは、まず憲兵隊達の制服が、「フモレスキ」のものとは違っていることだった。違っているのが、新しく見えるのではなく、古い時代のもののように見えた。違和感は、それだけではなかったのだが、正直な話、この予告編を見て、番組に対する期待は大きく落ち込んだのだった。
そして、新年最初の金曜日、テレビの前の座ったのだが、途中からの予想通り期待は裏切られた。背景となる時代が「フモレスキ」よりも前の第一次世界大戦が終わってチェコスロバキアが独立した直後なのは問題ない。この時代の戦争から帰ってきた兵士たちや、ドイツ系の住民たちの扱いがどうだったのかなんてことが描き出されるのであれば、こちらもあまり取り上げられない時代だけに見るかいはある。だけど……。
唯一、面白いなと思ったのが、ドイツ系のベテランの憲兵が登場してちょっと変なチェコ語でしゃべるところだろうか。新人たちに指示というよりは、ヒントを与えて捜査を進めさせていくのは、悪くなかった。ただ、あれこれ人気が出そうなものを詰め込んで、わけがわからなくなっているところがあるような気がした。いろいろ詰め込みすぎてまとまりがない。つまり、このブログと同じである。うーん、見続けるか、悩むなあ。
ところで、ナチスの保護領時代の俳優たちの様子を描いたドラマも制作されていたようで、近々放送が始まる。ブリアン、ノビー、マルバンなど戦前のモノクロ映画でおなじみの俳優達が登場するというのだが、期待するべきなのかどうなのか、見るべきか見ざるべきか、それが問題である。テーマとしては面白そうである。ただ、昨年のクリスマスに放送された童話映画もひどかったし、ルハチョビツェの話もあれだたったし、チェコテレビの制作する作品に、今後も期待してもいいのかどうかがわからない。別のことをするったって大したことをするわけじゃないんだけど、せいぜいこのブログの文章を書いているぐらいか、ドラマや映画を見て時間の無駄だったというのはできれば避けたいんだよなあ。
とりあえず、一回目ぐらいは見てみるか。
1月10日23時。