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2017年01月12日

バイアスロン(正月九日)



 スポーツネタが続くのは体調があまりよくなく難しいことを考えられないからである。それに冬のキュウリの季節であんまりネタがないというのもある。

 現在チェコで行われるスポーツイベントで、一番人を集めることができるのは、サッカーでもアイスホッケーでもなくバイアスロンである。ビソチナ地方のノベー・ムニェスト・ナ・モラビェで、ほぼ毎年行われるワールドカップの大会には、連日三万人前後の観客が押し寄せ、四日間の合計で十二万人以上の人を集めるというから、圧倒的な数字である。三万人収容できるサッカーやアイスホッケーのスタジアムなんて現在のチェコでは夢のまた夢である。
 このバイアスロンの観客の数字には、世界中の選手が参戦しているワールドカップの一戦なのでドイツやオーストリアなどの近隣の国を中心に大挙して押しかけてくる国外からの応援団の数が含まれているから、単純にサッカーやアイスホッケーの観客数と比較することはできないのだろうが、チェコでここまでバイアスロンが人気をのばしているのは、やはり選手たちの活躍が大きい。選手たちが活躍するから観客が集まりスポンサーも集まる。その結果、毎年のようにチェコ国内でワールドカップの大会が開催できるという好循環が起こっている。
 かつては、ノルディックスキーのクロスカントリーや、ジャンプ、複合の大会もチェコで毎年のように行われていたのに、最近回数が減っているのは、チェコの選手たちが活躍活躍できなくなっているからに違いない。ジャンプの場合にはハラホフのジャンプ台の老朽化が進んでワールドカップでの使用には堪えないという理由もありそうだけど。天候不順での中止が相次いだのも痛かったかもしれない。

 以前は年に数回、誰かが表彰台に上がる程度だったチェコのバイアスロンが一気に上昇気流に乗ったのは、数年前のガブリエラ・ソウカロバーの登場によってだった。去年結婚して名字がコウカロバーに一文字だけ変わってしまったけれども、このコウカロバーが安定して好成績を残すようになったことで、プレッシャーが減ったのか、ビートコバーの成績も上向き始め、プスカルチーコバーという新しい選手の台頭ももたらした。男子選手たちは相変わらず不安定な成績だけど、以前に比べれば上位に来る確率が高く、上位に入れる選手の数も増えているから、確実に成績は向上している。

 チェコのバイアスロンの、いや一般にスポーツの中継、報道を見ていて感じるのは、日本の報道と比べて選手たちに対する敬意にあふれていることだ。チェコで行われたワールドカップの大会では、もちろん優勝が期待されていたわけだが、下位に終わったとしても選手たちを非難するような言葉が聞かれることはまずない。特に十位以内に入った選手たちに対しては、いい成績だと賞賛するのである。ほとんど最下位に沈んだとしても、バイアスロンの射撃というのは風の状態に左右されることも多いわけだし、期待通りにはいかなかったけれども、これがスポーツなんだというコメントがよく聞かれる。もちろん怠慢なプレーなんかは強く批判されるのだけれども。
 これが、日本だとマスコミが、失敗した原因と称して関係あることないことあれこれ記事にして負けた選手たちに追い打ちをかけるのだろうけれども、チェコではそんなことはほとんど起こらない。おそらくチェコのような小国の選手たちが、他国よりも劣った環境で世界に伍して戦っていることのすごさを、そして試合の結果というものは多くの場合水物であることを理解しているのだろう。これが、チェコが小さな国でありながら、優秀なスポーツ選手を輩出し続けている理由の一つであるような気がする。

 ノベー・ムニェスト・ナ・モラビェのワールドカップでは、初日から十位以内に入る選手はいても表彰台に上る選手がなかなか出てこない中、あきらめずに応援を続けたチェコ人観客の期待に応えて、最後の最後でコウカロバーが優勝して、絵にかいたような大団円を迎えた。ほかにもいろいろいい話はあったのだけど、時間がないので省略。
 そして、年が明けて最初の大会の最終レースでは、コウカロバーが優勝、プスカルチーコバーが三位に入るという快挙を成し遂げてしまった。しばらくチェコのバイアスロン熱は引きそうにない。あとは、どこかのレースで男子選手が優勝してくれると最高なのだが、男子は優勝できなかったことがニュースになるフランスのフルカート(チェコ風の発音ね)が絶対王者として君臨しているから難しいかな。
1月9日16時30分。


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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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